くはだ)” の例文
それはあの弱々しい美しいお糸が考へさうも無い惡魔あくま的なくはだてですが、平次の推理には素より一點の疑ひをはさみやうもありません。
あつくして問るべしまづ第一に天一坊の面部めんぶあらはれしさうは存外の事をくはだつる相にて人を僞るの氣たしかなり又眼中に殺伐さつばつの氣あり是は他人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこでペインに「小生も貴君きくんと同様の事業をくはだて居り候へども、貴君のすでに之を完成されたるは結構千万の儀にて、先鞭せんべんの功は小生よりお譲り可申まうすべく云々うんぬん
〔譯〕智仁勇は、人皆大徳たいとくくはだて難しと謂ふ。然れども凡そ邑宰いふさいたる者は、固と親民しんみんしよくたり。其の奸慝かんとくを察し、孤寡こくわあはれみ、強梗きやうかうくじくは、即ち是れ三徳の實事なり。
思ふに畫と云ふ事に初心しよしんな彼は當時繪畫に於ける寫生の必要を不折ふせつなどから聞いて、それを一草一花の上にも實行しやうとくはだてながら、彼が俳句の上で既に悟入した同一方法を
子規の画 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とはむかうの消息通せうそくつうぼくかせたことばだが、ばくちきで、またばくちの天才てんさい支那人しなじんだけに麻雀道マアジヤンだうおいてもなかにはおそろしい詐欺さぎ、いんちきをくはだてるものが可成かなりあるらしい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しかし、先生を敬慕する弟子たちが集つて、先生の晩年を慰めようといふくはだてなんです。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
けれども人間にんげんには智恵ちゑといふものがあつて、これにはほかとりだの、けだものだのといふ動物だうぶつくはだおよばない、といふことを、わたし川岸かはぎしまつてるからつて、れいをあげておさとしであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この男は、おきみ達が逃亡をくはだてゝゐたことを既に感づいてゐたのである。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
なにもあれこの反古ほご新聞しんぶん記事きじによると、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさこの秘密ひみつなる旅行りよかうくはだてたのはすでに一ねんはん以前いぜんことで、まへにもいふとうわたくしがまだ亞米利加アメリカ大陸たいりく漫遊まんゆうしてつた時分じぶんことで、其後そのゝち
世帶の苦勞に、しひたげ拔かれたお關が、伜の憂鬱症を救ふ唯一の道として、母子心中をくはだてたことも、また考へられない節ではありません。
チユウヤといふ偉い武士が、彼れの友達のジオシツといふものと共に、皇帝に対する陰謀をくはだてたことがある、このチユウヤの妻は、才色兼備の女だつた。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
足早あしばやに立去しはおそろしくもまたたくみなるくはだてなり稍五ツ時頃に獵師れふしの傳九郎といふが見付みつけ取散せし笈摺おひずる并に菅笠すげがさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれさとりといふ美名びめいあざむかれて、かれ平生へいぜい似合にあはぬ冒險ばうけんこゝろみやうとくはだてたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これを一揷話さふわにして、熊井熊五郎はいよ/\最後の飛躍をくはだてたのです。それから八日目の十月二十五日に、錢形平次の家にんな手紙が投げ込まれました。
其方儀そのはうぎせん平助へいすけ養子やうしに相成候節約束をそむき藤五郎藤三郎の兩人をはいし我子すけ五郎に家督かとくを繼せんため種々しゆ/″\惡事等あくじとうくはだて候段不屆ふとゞき思召おぼしめし改易かいえきの上八丈ヶ島へ遠島ゑんたう仰付おほせつけらる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
思はず里言葉の出るお染の薄墨うすずみ太夫は、此處まで來る前に、この無法なくはだてをどんなに止めたことでせう。
騷擾などくはだてる樣子もなく、それに見境もなく火を放つて、江戸の町人を苦しめるといふことは切支丹にしてもありさうもないことのやうに考へられるのでした。
門松を焚いたドンド燒の匂ひが、宗吉の鼻へ十何年か前の親子心中をくはだてた日のこと——父親と母親と三人並んではりにブラ下がつたあの時の光景を思ひ出させます。
あの色白でポチヤポチヤして、小股こまたの切上がつた娘——その癖妙に冷たいところのある娘が、大量の人殺しなどをくはだてようとは八五郎にはどうしても信じられなかつたのです。
新吉は、兄の腕にも膝にもすがり寄つて、その無法なくはだてを止め度い心持で一杯でした。
その上、今朝江戸御留守居の大垣殿お長屋へ——國元居城の大修理は、籠城の用意と相見えた、謀叛むほんくはだて證據の品を揃へて、公儀へ訴出るが何うだ——といふ投手紙が飛び込んだ
平次は早くも、このくはだての奧に、並々ならぬ用意のあることを見て取つたのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
佐太郎の方でも一時は父親を自殺にみちびいた錢形平次をうらみましたが、平次は御禁制の鐵砲買込みのくはだてをさまたげた外には他意がなく、詮索せんさくすればわけもなく知れた筈の鐵砲の買主をかば
「この家は慶安けいあんの春、謀叛むほんくはだてて御處刑になつた、丸橋忠彌の道場の跡だ」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「又浪人共を狩り集めて、謀反むほんくはだてる者がないとも申されません——」
くはだててゐたことを、かなり突つ込んで言ふのです。