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些少
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さしょう
ふりがな文庫
“
些少
(
さしょう
)” の例文
『
些少
(
さしょう
)
ながら、席料の代わりに謝金を包みて床の間の上に置けり。また、別に残肴を入れたる折二箱あり。請う、晩酌の助けとせよ』
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
われわれは柿崎に利用されているだけだ、道場の稽古も、出稽古も、すべて六人に任せていながら、毎月の手当は極めて
些少
(
さしょう
)
である。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もっとも
些少
(
さしょう
)
の
東西
(
もの
)
なれども、こたびの路用を
資
(
たす
)
くるのみ。わが
私
(
わたくし
)
の
餞別
(
はなむけ
)
ならず、
里見殿
(
さとみどの
)
の
賜
(
たま
)
ものなるに、
辞
(
いろ
)
わで納め給えと言う。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「よく教えてくれました。いろいろおもてなしにあずかってかたじけない。
些少
(
さしょう
)
でござりまするが、お
灯明
(
とうみょう
)
料にご受納願いとうござる」
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そういう場合になれば、私たちも出来るだけのことは
些少
(
さしょう
)
なりとも致しましょう。只、現在は私の経済力も到って小さくて残念ですが。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
そこに
些少
(
さしょう
)
の
庇護
(
ひご
)
や作為が加えられたろうけれども、しかし親子の間柄が案外うるわしかったであろうことは、ほゞ想像出来なくはない。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これ
等
(
ら
)
の件々は
逐一
(
ちくいち
)
計
(
かぞ
)
うるに
暇
(
いとま
)
あらず。
到底
(
とうてい
)
上下両等の士族は
各
(
おのおの
)
その等類の内に
些少
(
さしょう
)
の
分別
(
ぶんべつ
)
ありといえども、動かすべからざるものに非ず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
道徳的干渉をなすよりも、唯
些少
(
さしょう
)
の金銭を与えて折々の災難を救ってやるのが最もよくその人を理解した方法であると考えていたのである。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
床の間の
脇
(
わき
)
、押入の中の手箱には、
些少
(
さしょう
)
ながら金子
貯
(
たくわ
)
えおき候えば、
荼毗
(
だび
)
の費用に御当て下されたく、これまた頼入り候。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
世界は、
些少
(
さしょう
)
の真実と多くの虚偽とで身を養っている。人間の精神は虚弱であって、純粋
無垢
(
むく
)
な真実とは調和しがたい。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
非常なはにかみ屋で、人前で目立つような
些少
(
さしょう
)
の行為も最もやりたがらぬ人だったのに、これだけは例外で、どうにも、やむを得ないという風だった。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ここで、お雪ちゃんがはじめて、「はい」と「有難う」との単語のほかに、
些少
(
さしょう
)
ながら感激の力のある言葉を発しました。これに力を得たお角さんは
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
太鼓の担ぎ賃として、これは
些少
(
さしょう
)
ながら、それがしからの御礼だ。失礼ではあろうが、笑って受取ってもらいたい。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
些少
(
さしょう
)
でも疑わしい者は容赦なく
拘引
(
こういん
)
された。その網に引っかかっただけでも、おびただしい人数といわれている。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
賃銀を渡す時間を早くして
貰
(
もら
)
おうというようなことがちアんと出ていたために(事はそんな
些少
(
さしょう
)
なことだったが)、皆の間に大きな評判を
捲
(
ま
)
き起したのである。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
諸君が
姑息
(
こそく
)
の慈善心をもって、
些少
(
さしょう
)
なりとも、ために御斟酌下さろうかと思う、父母も親類も何にもない。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
漢字廃止論のあるこの頃かかる
些少
(
さしょう
)
の
誤謬
(
ごびゅう
)
を正すなど愚の
至
(
いたり
)
なりと笑ふ人もあるべし。されど一日なりとも漢字を用ゐる上は誤なからんを期するは当然の事なり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は突然汽車で
遣
(
や
)
って来て、急に
入用
(
いりよう
)
が出来たから、是非とも少し都合してくれまいかと頼むので、健三は地方の銀行に預けて置いた貯金を
些少
(
さしょう
)
ながら用立てたら
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私たちは
幸
(
さいわい
)
にも各地から多かれ少かれ品物を拾いあげることが出来た。だが数で表わせば、それらを取り囲む無数の品物に対して、
真
(
まこと
)
に
些少
(
さしょう
)
な歩合を占めるに過ぎない。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ウェリントンは
頑固
(
がんこ
)
であり、そこに彼の価値はあった。そして
吾人
(
ごじん
)
はそれをけなすものではない。しかし彼の歩兵や騎兵の
些少
(
さしょう
)
といえども彼と同じく堅固だったのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
眼前にある
些少
(
さしょう
)
の故障を
懸念
(
けねん
)
して、この遷都の機会をうしなったら、この国の大事もついに去るであろう——実際、こんなふうに言わるるほどの高い
潮
(
うしお
)
がやって来ていた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
百年前の取扱いも
些少
(
さしょう
)
ながらその印象を止めているはずである。それでただ現在の重量や温度その他の外界条件一切を羅列しても一条の弾条の長さは決定するものではない。
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
囲中また徒士立ちて大なる棒また犬また銃を用いて兎の逃げ出るを防いだとあって、兎狩も大分面白い物らしいが、熊楠はこんな人騒がせな殺生よりはやはり
些少
(
さしょう
)
ながら四
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私
軽忽
(
きょうこつ
)
より誤って御足を
留
(
とど
)
め、まことに恐れ入りました。
些少
(
さしょう
)
にはござりますれど、御用を
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その歓喜に比しては比較にもならぬほど
些少
(
さしょう
)
なものであるのを知った時、
況
(
ま
)
してや投げ与えたと思ったその贈品すら、
畢竟
(
ひっきょう
)
は
復
(
ま
)
た自己に還って来るものであるのを発見した時
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「
些少
(
さしょう
)
ながら、これに金三百円ありまするじゃ。百円はわしの
寸志
(
すんし
)
、のお伴田さん、男子は何よりも気骨が大切じゃ。小さな事に有為な生涯を誤らないで、折角勉強して下さい」
自殺を買う話
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
「——が、手ぶらでは参りません。さしずめ、御配下への手当やら軍費として、
些少
(
さしょう
)
ではありますが、三
駄
(
だ
)
の駒に金銀を積んで来ました。御受領くださればありがとうぞんじまする」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もしここに、彫りあげるまで人に見られたくないという絶対境の作阿弥の芸術心に、
些少
(
さしょう
)
の尊敬しかはらわない人があって、今この小屋をすき間から、ソッとのぞいたとしたら……。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
天を根源とすることは言わば理論であって、道路もなく方角も
定
(
さだ
)
かならず、まぼろしの
拠
(
よ
)
りどころというものが無い。
高天原
(
たかまがはら
)
とても同じことだが、是にはまだ
些少
(
さしょう
)
の地理的観念がある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
些少
(
さしょう
)
の改変を加えるのは、必ずしも冒涜的なことではないと思うのである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
もしこれがアナトオル・フランスであったなら、こんな幼時の
些少
(
さしょう
)
な
砕
(
くだ
)
けた感動の種子からも、丹誠して見事な花を咲かせたであろう。鶴見は気まぐれにも、ここでそんな考を
運
(
めぐ
)
らして見た。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
かりにもし、ドイツ人は飲料水の代りに
麦酒
(
ビール
)
を飲むそうだから我々もそうしようというようなこと……とまではむろんいくまいが、
些少
(
さしょう
)
でもそれに類したことがあっては諸君の不名誉ではあるまいか。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
またはそれに
些少
(
さしょう
)
の変更を加えるに
止
(
とど
)
まるであろう。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
第二に、その装置すでに動揺しやすき組み立てを有するをもって、これに
些少
(
さしょう
)
の変動を与うるも、大なる動揺を呈するの事情あり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
夫婦正しく一身同体、妻の病気には夫の身を苦しめ、夫の恥辱には妻の心を痛ましめ、其感ずる所に
些少
(
さしょう
)
の相違あることなし。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかし日本の空気の是非なさは遠近を区別すべき
些少
(
さしょう
)
の濃淡をもつけないので、堀割の
眺望
(
ながめ
)
はさながら旧式の芝居の
平
(
ひらた
)
い
書割
(
かきわり
)
としか思われない。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「さぞ不本意だろうが」と、頼母は云いかけて、しかし、あとは云わずに、紙に包んだ物をそこへさし出し「
些少
(
さしょう
)
ではあるが謝礼だから」と云った。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
思った事と、それを言葉で表現する事との間に、
些少
(
さしょう
)
の
逡巡
(
しゅんじゅん
)
、駈引きの跡も見えないのです。あなた達は、言葉だけで思想して来たのではないでしょうか。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この殺人は、沈黙と、
些少
(
さしょう
)
の抗争の
裡
(
うち
)
にごく短時間に行なわれたに相違ない。多くの場合、
屍
(
し
)
体は、浴槽の幅の広い部分へ脚を向けている姿勢で発見された。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
為
(
な
)
して著述せるものに御座
候
(
そろ
)
因
(
よ
)
って本書を
普
(
あまね
)
く一般の家庭へ製本実費に
些少
(
さしょう
)
の利潤を附して
御購求
(
ごこうきゅう
)
を願い一面
斯道
(
しどう
)
発達の一助となすと同時に又一面には
僅少
(
きんしょう
)
の利潤を
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
些少
(
さしょう
)
ながらご進物としてさし上げそうろうまま、一服盛りにでもご手料理くだされたくそうろう
右門捕物帖:16 七化け役者
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「ただこの手紙を持って扇屋へ立寄り、名宛の人に渡してもらえばよろしい、名宛の人がおらぬ時は、預けておいてよろしい、返事は要らぬ、これは
些少
(
さしょう
)
ながらのお礼の印」
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
清水から五条坂にかけて軒並に
列
(
なら
)
ぶ店々を
覗
(
のぞ
)
いて見ましょう。何某何世と名のる焼物師も少くはありません。この都から作り出される焼物の量も
些少
(
さしょう
)
なものではありません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
もし小生の思い違いに候わずば、寛大なる貴下はこの陳述に動かされ、小生に
些少
(
さしょう
)
の好意を寄せ恵みをたれんとの念を起こしたまわることを、期待して誤りなきかと信じ申候。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
十円の
蝦蟇口
(
がまぐち
)
から一円出すのはその人に取って大金だが、千万円の
弗
(
ドル
)
箱から一万円出したって五万円出したって、比例をして見ればその人に取って実は大金ではない、
些少
(
さしょう
)
の喜悦税
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
コルネイユ師はそれらの人々のためにまた自分のために苦しんだ。しかし彼は忍従した。教会の長い歴史に比ぶれば、それらの困難の日々はいかに
些少
(
さしょう
)
なものであるかを知っていた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
龍宮
住居
(
ずまい
)
というわけのものでもない。……で
些少
(
さしょう
)
なれどこの
銀子
(
ぎんす
)
をお持ちあって、諸州を見くらべ、他の大きな
寨
(
とりで
)
に身を寄せ、おのおののご雄志を充分に、よそで伸ばしていただきたい
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
些少
(
さしょう
)
たりとも犯罪に対して何等その疑いは無いのでありますが、お話のごとき事が事実有り得るものかどうか、後学のため、一種人情に対する警官の経験の為に、云うて、その室で飾ると云われた
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一、古来、日本にて学者士君子、
銭
(
ぜに
)
を取りて人に教うるを恥とし、その風をなせるがゆえに、私塾にて
些少
(
さしょう
)
の受教料を取るも大いに人の耳目を驚かす。
学校の説:(一名、慶応義塾学校の説)
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「冗談を云っちゃあ困るね、私はおまえさんの眼の前で銭を数えた、駄賃のほかに
些少
(
さしょう
)
だがこころづけも添えて包んだ、おまえさんそれを見ていた筈じゃあないか」
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
少
常用漢字
小2
部首:⼩
4画
“些”で始まる語句
些
些細
些事
些々
些末
些中
些程
些子
些細事
些前