上衣うはぎ)” の例文
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた官女くわんぢよよ、とちよ、三葉形みつばがたぬひを置いて、鳥の羽根はねの飾をした上衣うはぎひきずる官女くわんぢよよ、大柄おほがら權高けんだかで、無益むやく美形びけい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
黒絹くろぎぬ上衣うはぎは壁に掛けてあつた。泥の汚點しみは綺麗に落されてゐる、濡れて出來た皺も延ばしてある、すつかりきちんとしてゐたのだ。
ジヤケツの上衣うはぎの長いのやの大きくひろがつたのなどは、昔長崎へ来た和蘭船オランダぶねの絵の女を見る様に古風であるだけ今日こんにちの目には田舎ゐなか臭い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
眺め廻すうちに、女は早や帽子をり、上衣うはぎを脱ぎ、白く短き下衣シユミーズ一ツになりて、余がかたへなる椅子に腰掛け、巻煙草を喫し始め候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
金線にかざられた黒い四角な帽子をかぶり、真白まつしろな服の上に、赤と金との模様のついた上衣うはぎをつけて、太い長い珠数を手にしてゐました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
長い廊下の果に、主人の花紋くわもんいんした上衣うはぎの後影が隠れた。上衣の裾はかろく廊下の大理石の上を曳いて、跡には麝香じやかう竜涎香りうえんかうとの匂を残した。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
其處そこで「アウト」「ストライキ」のこゑ夕暮ゆふぐれそらひゞいて、審判者アンパイヤー上衣うはぎ一人ひとりくろいのも目立めだつてえる。
手品師はするりと上衣うはぎをぬぎてた。彼は快活に周囲を見廻し、それから心持昂揚かうやうした声でかう云つた。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
その傍にはトムさんの夢にも忘れることの出来ない可愛ゆいお嫁さんが、今ではりつぱなお妃となつてみな白鳥でできた、純白の上衣うはぎをきて、坐つてゐるではありませんか。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「暑い、暑い」と、渠は洋服の上衣うはぎを脱ぎ棄て、「おい、お君、氷をあつらへて來ないか?」かう云つて、直ぐ、にこ/\しながら、碁盤を座敷へ取り出し、「どうだ、君?」
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
『あいつ等、上衣うはぎを洗つたんで寒いんですよ。それであゝして歩いてゐるんですよ……』
一少女 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
そして糊の附いた上シヤツを上衣うはぎの上へはおつて、シヤツの裾を振り廻しながら出て来た。母親はふいと振り向いて見て、腰に両手を支へて笑つてゐたが、目からは涙が出て来た。
又、寒い風が吹いて来て、お猫さんの上衣うはぎを、川の中へふきとばしました。お猫さんは二ママ四方位にひゞきわたる程、大きく「ハクシヨン、ハクシヨン。」と、くしやみをしました。
丁度クリストフは手鼻をかんだ処で、そのとばしりが地の透くやうになつた上衣うはぎに掛かつてゐるのを、丁寧にゴチツク形の指で弾いてゐる。クリストフは想像の出来ぬ程衰弱してゐる。
老人 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
記者はそんな折にいつもするやうに煙草をふかさうと思つて上衣うはぎのポケツトに手を入れた。指先に触つたのは煙草では無くて、矢張その頃の文士の一人フランソア・コツペエの詩集であつた。
さすがに焼けトタンを張りめぐらした壕舎を見て、彼女は、思つたよりもひどい家だとびつくりしたにちがひない——流行のすその短いチンチクリンのモンペの上衣うはぎを羽織のやうに着てゐた。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
金絲のぬひはくをした上衣うはぎきらめかして大買人おほあきんどもあれば、おもさうな荷物を脊負しよつてゆく人足にんそくもある、香料かうれうたへなるかほりり/\生温なまぬくい風につれてはなを打つ、兒童こども極樂ごくらくへでもつた氣になつて
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
上衣うはぎぬぎ汗みづくなれやかく歎きしかく言挙ことあげ君ひたすらに (内田訓導)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
古い型のモオニングの上衣うはぎは兎に角、ズボンがひどく窮屈であつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
裏通りを三四丁た所で、平岡がさきへ立つて或家あるいへ這入はいつた。座敷ざしきのき釣忍つりしのぶかゝつて、せまにはが水で一面にれてゐた。平岡は上衣うはぎいで、すぐ胡坐あぐらをかいた。代助は左程あついとも思はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
湯あがりを御風みかぜめすなのわが上衣うはぎゑんじむらさき人うつくしき
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いちごいろ薔薇ばらの花、可笑をかしな罪の恥と赤面せきめんいちごの色の薔薇ばらの花、おまへの上衣うはぎを、ひとがみくちやにした、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
薔薇色繻子じゆすの、非常に短かい、スカアトには出來るだけたつぷりとひだがとつてある服が、今まで着てゐた茶色の上衣うはぎと代つてゐた。
二三日前、辰子が上衣うはぎのボタンがないと言つて妹の物を貰つて自分でつけてゐたから、お庭にボタンを落したのはあの子に違ひないです。
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
主客しゆかく五人は翁の机に対し半円形を作つて語つた。翁は鼠色のアルパカの軽い背広の上衣うはぎに黒いパンタロン穿き、レジヨン・ドノオル(勲一等)の赤い略章を襟に附けて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その友達は青服のズボンをはいて黒セルの上衣うはぎを着込んで、鳥打帽をかぶつて久しぶりに佐賀に帰つて来た。或る日手荷物をげて汽車から降りて来る姿を一目見て私は直ぐに彼れであることを知つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
ひようとして寒き風来る山はなに上衣うはぎいそぎ着けぬ氷沢かも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みどりの上衣うはぎ、しろづぼん。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
私は、一二軒の店に立寄り、手紙をポストに滑らせると、ひどい雨の中を、上衣うはぎをびしよれにして、しかしほつとした心持ちで歸つて來た。
倫教ロンドン巴里パリイに比べて北へ寄つて居る所為せゐか、七月になつても薄寒うすさむを覚える様な気候である。巴里パリイの様に上衣うはぎを脱いでコルサアジユだけで歩く女をだ一人も見受けない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた女、高慢かうまん上衣うはぎを着た女、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
老びとのあか上衣うはぎはをさなくてにものがなし毛絲編みをる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
猩猩緋しやう/″\ひ上衣うはぎを黒の上に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
老びとのあか上衣うはぎはをさなくてにものがなし毛糸編みをる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春がて来た上衣うはぎをば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
素朴な黒の上衣うはぎに赤木綿のバンドを占め
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しろ上衣うはぎと髪の毛に
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)