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雖
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いへども
ふりがな文庫
“
雖
(
いへども
)” の例文
緑雨
(
りよくう
)
は巧に現社界の魔毒を
写出
(
しやしゆつ
)
せり。
世々良伯
(
せゝらはく
)
は少しく不自然の傾きを示すと
雖
(
いへども
)
、今日の社界を
距
(
さ
)
る事甚だ遠しとは言ふ可らず。
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
将門傾国の
謀
(
はかりごと
)
を
萌
(
きざ
)
すと
雖
(
いへども
)
、何ぞ旧主を忘れんや。貴閣且つ之を察するを賜はらば甚だ幸なり。一を以て万を
貫
(
つらぬ
)
く。将門謹言。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
伊太利に名どころ多しと
雖
(
いへども
)
、このアマルフイイの右に出づるもの少かるべし。われは天下の人のことごとくこれを賞することを得ざるを
憾
(
うらみ
)
とす。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
法律
(
はふりつ
)
に
照
(
てら
)
しても
明白
(
あきらか
)
だ、
何人
(
なにびと
)
と
雖
(
いへども
)
、
裁判
(
さいばん
)
もなくして
無暗
(
むやみ
)
に
人
(
ひと
)
の
自由
(
じいう
)
を
奪
(
うば
)
ふ
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
るものか!
不埒
(
ふらち
)
だ!
壓制
(
あつせい
)
だ!
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それから家老
中泉撰司
(
なかいづみせんし
)
を
以
(
もつ
)
て、
奉行所詰
(
ぶぎやうしよづめ
)
のもの一同に、
夜中
(
やちゆう
)
と
雖
(
いへども
)
、格別に用心するやうにと云ふ
達
(
たつ
)
しがあつた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
歌の性質から見ても、冷やかに客観の出来た他人の手でなくては、人前に披露する事は、如何におほらかな古人と
雖
(
いへども
)
、能はぬ種類の歌さへあるではないか。
万葉集のなり立ち
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
時世の推移と共に変遷ありと
雖
(
いへども
)
、究竟清風明月を歌ひ神仙隠逸を詠じ放浪自恣なるに過ぎず、絶へて時代の感情を代表し、世道人心の為めに歌ふものあるなし。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
豪奢
(
がうしや
)
の
身分者
(
みぶんしや
)
にとつては、
縦
(
たと
)
ひミユンヘンと
雖
(
いへども
)
決して事を欠かせるやうなことはないのである。
南京虫日記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
然
(
さ
)
れば園丁の云ふところ亦
遽
(
にはか
)
に信ずるに足らず。余
屡
(
しば/\
)
先考の詩稿を反復すれども詠吟いまだ一首としてこの花に及べるものを見ず。母に問ふと
雖
(
いへども
)
また其の名を知るによしなし。
来青花
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
專門
(
せんもん
)
は
工科
(
こうくわ
)
の
器械學
(
きかいがく
)
だから、
企業熱
(
きげふねつ
)
の
下火
(
したび
)
になつた
今日
(
こんにち
)
と
雖
(
いへども
)
、
日本中
(
にほんぢゆう
)
に
澤山
(
たくさん
)
ある
會社
(
くわいしや
)
に、
相應
(
さうおう
)
の
口
(
くち
)
の
一
(
ひと
)
つや
二
(
ふた
)
つあるのは、
勿論
(
もちろん
)
であるが、
親讓
(
おやゆづ
)
りの
山氣
(
やまぎ
)
が
何處
(
どこ
)
かに
潛
(
ひそ
)
んでゐるものと
見
(
み
)
えて
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
よばるゝものは
多
(
おほ
)
しと
雖
(
いへども
)
、
選
(
えら
)
ばるゝ
者
(
もの
)
は
少
(
すく
)
なし。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
言
(
ことば
)
甚だ
謔
(
ぎやく
)
に近しと
雖
(
いへども
)
、以て文明と戦争の関係を知るに足れり、戦争の精神、年を
逐
(
お
)
ふて減じ行き、いつかは戦争なき時代を見るを得んか。
想断々(1)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
逍遙子が實を記するはよしと
雖
(
いへども
)
、その記實によりて談理を廢せむとするはあしかりなん。烏有先生が理を談ずるは辯を好むに似たれども、その記實にあかず思へるは無理ならじ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その色彩目を奪ふと
雖
(
いへども
)
、こゝに寫し得たるは人間の美しさにして、彼石の現せるは天上の美しさなり。ラフアエロがフオルナリイナ(作者意中の人)は心を動すに足らざるにあらず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
酒は水に因つて体を成し、茶は水に
縁
(
よ
)
つて用を発す。灘の酒は実に醸醞の技の巧を積み精を極むるによつて成ると
雖
(
いへども
)
、其の佳水を得るによつて、天下に冠たるに至れるもまた争ふべからず。
水
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
思ふにゾロアスタル、
釈迦
(
シャカ
)
の如き文籍未だ備はらず考証未だ
全
(
まつた
)
からざる、時代に属する人は之を置く、歴史以後の人、ソクラテスと
雖
(
いへども
)
、プレトーと雖、
孔丘
(
コウキウ
)
、
老冉
(
ロウゼン
)
、
荘周
(
サウシウ
)
と雖、之をイヱス
英雄論:明治廿三年十一月十日静岡劇塲若竹座に於て演説草稿
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
私如き者と
雖
(
いへども
)
それに異存は無い。
雷談義
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
今や往年の
拿翁
(
ナポレオン
)
なしと
雖
(
いへども
)
、武器の進歩日々に
新
(
あらた
)
にして、他の拿翁指呼の
中
(
うち
)
に作り得べし、以て全欧を猛炎に
委
(
ゐ
)
する事、
易々
(
いゝ
)
たり。
「平和」発行之辞
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
沒却哲理は詩の
須
(
すべから
)
く備ふべき性なり。シエクスピイヤの戲曲いかでか沒却哲理ならざらむ。逍遙子理想といふ語を哲學上所見の義に用ゐむ限は、沒理想の名目、取除けずと
雖
(
いへども
)
可なり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
アヌンチヤタは尋常の歌妓に非ずして、その妙藝は現に天下の仰ぎ望むところなりと
雖
(
いへども
)
、われ
往
(
ゆ
)
いてこれに從はゞ、その形迹世の
蕩子
(
たうし
)
と
擇
(
えら
)
ぶことなからん。我友はこれを何とか言はむ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
斯の如き事たる
素
(
もと
)
より今の思想界の必当の運命たるべしと
雖
(
いへども
)
、心あるもの陰に前途の濃雲を憂ふるは、又た是非もなき事共かな。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
此厄は世々の貴人大官
碩學
(
せきがく
)
鴻儒
(
こうじゆ
)
及至諸藝術の聞人と
雖
(
いへども
)
免れぬのである。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
余は八王子に一泊するを好まざりしと
雖
(
いへども
)
、老人の意見
枉
(
ま
)
げ難く止むことを得ずして、俗気都にも増せる
市塵
(
しぢん
)
の
中
(
うち
)
に一夜を過せり。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
而
(
しか
)
して
斯
(
かゝ
)
る気運を喚起せしめたるもの種々あるべしと
雖
(
いへども
)
、トルストイ伯の出現こそ、露文学の為に万丈の光焔を放つものなれ。
トルストイ伯
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ヱマルソン言へる事あり、尤も冷淡なる哲学者と
雖
(
いへども
)
、恋愛の猛勢に駆られて逍遙徘徊せし少壮なりし時の霊魂が負ふたる
債
(
おひめ
)
を
済
(
かへ
)
す事能はずと。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
然り、人間の歴史は多くの夢想家を載せたりと
雖
(
いへども
)
、天涯の歴史は太初より今日に至るまで、大なる現実として残れり。
一夕観
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
馬琴と
雖
(
いへども
)
是に感染せざるを得ざるは勢の然らしむる所なるが、馬琴の
中
(
うち
)
には別に勧懲主義排斥論をして浸犯するを得ざらしむるものゝ存するあるなり。
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
情及び心、一々其軌を異にするが如しと
雖
(
いへども
)
、要するに琴の音色の異なるが如くに異なるのみにして、宇宙の中心に懸れる大琴の音たるに於ては、均しきなり。
万物の声と詩人
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
もし外形の生命を
把
(
と
)
り来つて観ずれば、地球広しと
雖
(
いへども
)
、五尺の躰躯大なりと雖、何すれぞ沙翁をして「天と地との間を
蠕
(
は
)
ひまはる我は果していかなるものぞ」
各人心宮内の秘宮
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
そも人生といへる言葉には種々の意味あるべしと
雖
(
いへども
)
、極めて普通なる意味は、人間の生涯といふ事なり。
人生の意義
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
而
(
しか
)
して
後
(
のち
)
に
或
(
ある
)
義士
(
ぎし
)
の
一撃
(
いちげき
)
に
斃
(
たほ
)
れたりと
書
(
か
)
かば
事理分明
(
じりぶんめい
)
にして
面白
(
おもしろ
)
かるべしと
雖
(
いへども
)
、
罪
(
つみ
)
と
罰
(
ばつ
)
の
殺人罪
(
さつじんざい
)
は、この
規矩
(
きく
)
には
外
(
はづ
)
れながら、なほ
幾倍
(
いくばい
)
の
面白味
(
おもしろみ
)
を
備
(
そな
)
へてあるなり。
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
然りと
雖
(
いへども
)
、宇宙の人間に対するは蛇の蛙に於けるが如くなるにあらず、人間も
亦
(
ま
)
た宇宙の一部分なり、人間も亦た遠心、求心の二引力の持主なり、又た二引力の臣僕なり。
頑執妄排の弊
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
俳士をして俗に
媚
(
こ
)
ぶるの止むを得ざるに至らしめたるものあるは、余と
雖
(
いへども
)
之を知らぬにあらねど、高達の士の俗世に立つことの難きに思ひ至りて、黙然たること稍しばしなりし。
秋窓雑記
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
草薙
(
くさなぎ
)
の
剣
(
つるぎ
)
は能く見ゆる野火を薙ぎ尽したりと
雖
(
いへども
)
、見えざる銃鎗は、よもや薙ぎ尽せまじ。
人生に相渉るとは何の謂ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
三千年を流るゝ長江
漫※
(
まんばう
)
たり、其始めは神委にして、極めて自然なる
悖生
(
ぼつせい
)
にゆだねたり、仲頃、唐宋の学芸を誘引し、
印度
(
インド
)
の幽玄なる哲学的宗教に化育せられたりと
雖
(
いへども
)
、
凡
(
すべ
)
ての
羣流
(
ぐんりう
)
一種の攘夷思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
之を以て余は敢て現存の大家に向つて直接の批評を加へざるべしと
雖
(
いへども
)
、もし余が観察し行く
原質
(
エレメント
)
の道程に於て相衝当する事あらば、避くべからざる場合として之を為すことあるべし。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
凡
(
およ
)
そ
斯
(
かく
)
の如きことは極めて平々坦々たるが如しと
雖
(
いへども
)
、其実は無量の深味あるなり。
実行的道徳
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
或は聖美なるもの、或は毒悪なるもの、或は慈仁なるもの、或は
獰猛
(
だうまう
)
なるもの、宗教の変遷、思想の進達に従ひて其形を異にするが如しと
雖
(
いへども
)
、要するに二岐に分れたる同根の観念なり。
他界に対する観念
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
例
(
たと
)
へば太平記、平家物語、
等
(
など
)
は高等民種の
中
(
うち
)
に歓迎せられたりと
雖
(
いへども
)
、平民社界に迎へらるべき様なし、かるが故に彼等の内には自ら、彼等の思想に相応なる物語、小説の類生れ出でたり
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
もし悟るといふことを全然悟らざるといふ事に比ぶれば、多少は静平にして
澹乎
(
たんこ
)
たる妙味ありと
雖
(
いへども
)
、是も一種の階級のみ、人間は遂に、多く弁ぜざれば多く黙し、多く泣かざれば多く笑ひ
我牢獄
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
いかに深遠なる哲理を含めりとも、情熱なきの詩は
活
(
い
)
きたる美術を成し難し。いかに技の上に精巧を極むるものと
雖
(
いへども
)
、若し情熱を欠けるものあれば、丹青の妙趣を尽せるものと云ふべからず。
情熱
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
わが来り投ぜしところは、都門を離るゝ事遠からずと
雖
(
いへども
)
、又た以て
幽栖
(
いうせい
)
の情を語るに足るべし。これ唯だ海辺の一漁村、人烟稀にして家少なく、数屋の
茅檐
(
ばうえん
)
、燕来往し、一匹の小犬全里を護る。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
一人の自由を許すと
雖
(
いへども
)
、衆人の自由を認めず、而して日本の宗教的組織は主観的に精神の自由を許すと雖、社界とは関係なき人生に於て此自由を享有するを得るのみにして、公共の自由なるものは
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
秘奥の潜むところ、
幽邃
(
いうすゐ
)
なる道眼の観識を待ちて無言の冥契を以て、或は看破し得るところもあるべし、
然
(
さ
)
れども我は信ぜず、何者と
雖
(
いへども
)
この「秘奥」の淵に臨みて其至奥に沈める宝珠を探り得んとは。
心機妙変を論ず
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
吾人と
雖
(
いへども
)
、
聊
(
いさゝ
)
か万有的趣味を持たざるにあらず。
内部生命論
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
雖
漢検1級
部首:⾫
17画
“雖”を含む語句
雖然
猿雖
煩悩障眼雖不見
田乎婆雖作
荒野二者雖有
輅斉雖入地獄受苦
雖不知
雖千万人吾往矣
雖生於戎羯
雖称
雖老
雖辺土未清余妖尚梗而
雖近而不見