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逆落
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さかおと
ふりがな文庫
“
逆落
(
さかおと
)” の例文
「それから取っ組み合いが始まったが、恐ろしく強い野郎で、その上
匕首
(
あいくち
)
を持ってやがる。
切尖
(
きっさき
)
を
除
(
よ
)
けるはずみに、
鼠坂
(
ねずみざか
)
を
逆落
(
さかおと
)
しだ」
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
たとえば、
逆落
(
さかおと
)
しは、坂落しでいいのである。それを“逆落し”と誇張したから、ふつうの“坂”では物足らなくなってしまう。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まあどんなだとお思いになります? まるで天国から地獄の底へ
逆落
(
さかおと
)
しにされたようなものではございませんか。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
小舟は空を突くかと波の小山の頂上へ乗り上げ、次の瞬間には、暗闇の地獄の底へと
逆落
(
さかおと
)
しだ。小山の中腹に突入すれば、上下左右ただ
渦巻
(
うずま
)
く水であった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いとも危うく身を遁れて、泰助は振返り、
屹
(
きっ
)
と
高楼
(
たかどの
)
を見上ぐれば、得三、高田相並んで、窓より半身を
乗出
(
のりいだ
)
し、
逆落
(
さかおと
)
しに狙う短銃の
弾丸
(
たま
)
は続いて飛来らん。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
佐吉は
絆纒
(
はんてん
)
をぬぎすてると、
逆落
(
さかおと
)
しに川の中へ躍りこみ、ほどなく佐倉屋をかかえて上って来て、艫から差しだしている手へ佐倉屋の襟をつかませたが、フト
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして
二人
(
ふたり
)
で、
両手
(
りょうて
)
を
合
(
あわ
)
せて一
心
(
しん
)
に
祈願
(
きがん
)
をこめて
居
(
お
)
りますと、やがてどっと
逆落
(
さかおと
)
しに
落
(
お
)
ち
来
(
く
)
る
滝
(
たき
)
の
飛沫
(
しぶき
)
の
中
(
なか
)
に、二
間
(
けん
)
位
(
くらい
)
の
白
(
しろ
)
い
女性
(
じょせい
)
の
竜神
(
りゅうじん
)
の
優
(
や
)
さしい
姿
(
すがた
)
が
現
(
あら
)
われて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「何を
怒
(
いか
)
るや
怒
(
いか
)
り
猪
(
い
)
の——
俄
(
にわか
)
に
激
(
げき
)
する数千
騎
(
き
)
」
突如
(
とつじょ
)
として山
崩
(
くず
)
れ落つ
鵯越
(
ひよどりごえ
)
の
逆落
(
さかおと
)
し、
四絃
(
しげん
)
を
奔
(
はし
)
る
撥音
(
ばちおと
)
急雨
(
きゅうう
)
の如く、
呀
(
あっ
)
と思う間もなく身は
悲壮
(
ひそう
)
渦中
(
かちゅう
)
に
捲
(
ま
)
きこまれた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
二十二で
伜
(
せがれ
)
の千
吉
(
きち
)
を
生
(
う
)
み、二十六でおせんを
生
(
う
)
んだその
翌年
(
よくねん
)
、
蔵前
(
くらまえ
)
の
質見世
(
しちみせ
)
伊勢新
(
いせしん
)
の
番頭
(
ばんとう
)
を
勤
(
つと
)
めていた
亭主
(
ていしゅ
)
の
仲吉
(
なかきち
)
が、
急病
(
きゅうびょう
)
で
亡
(
な
)
くなった、
幸
(
こう
)
から
不幸
(
ふこう
)
への
逆落
(
さかおと
)
しに
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
貴様をスポーンとこの井戸の中へ
抛
(
ほう
)
り込んだら、それこそいい音がするだろう、人間界から天上界とやらへ舞い上ったものを、スポーンと井戸の中の地獄へ
逆落
(
さかおと
)
しにかけると
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いや、悪事ばかり働いたわたしは、「はらいそ」(天国)の
荘厳
(
しょうごん
)
を拝する代りに、恐しい「いんへるの」(地獄)の猛火の底へ、
逆落
(
さかおと
)
しになるかも知れません。しかしわたしは満足です。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「じゃ、上から
逆落
(
さかおと
)
しかなんかで、バラバラと撃っちまえば、いいじゃないの」
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蛇のように小さくのたくっている梓川の本谷まで、私の立ってる山稜からは、
逆落
(
さかおと
)
しに、まっしぐらに、遮るものなく
見徹
(
みとお
)
されるので、私は髪の毛がよだって、岩壁を厚く縫っている偃松を
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
ただこの順境が一転して
逆落
(
さかおと
)
しに運命の
淵
(
ふち
)
へころがり込む時、いかな夫婦の間にも気まずい事が起る。親子の
覊絆
(
きずな
)
もぽつりと切れる。美くしいのは血の上を薄く
蔽
(
おお
)
う皮の事であったと気がつく。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
逆落
(
さかおと
)
しの大雨を痛い程体中に浴びなければなりません。
C先生への手紙
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「それから取つ組合ひが始まつたが、恐ろしく強い野郎で、その上
匕首
(
あひくち
)
を持つてやがる。切尖を除けるはずみに、鼠坂を
逆落
(
さかおと
)
しだ」
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
キャラコさんは、大きく
呼吸
(
いき
)
を吸い込むと、池のほうへ
逆落
(
さかおと
)
しになっている急傾斜をすべり降りはじめた。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
又兵衛は両の手に
手綱
(
たづな
)
を結んで、ひたと馬の背に胸を伏せると、
逆落
(
さかおと
)
しに絶壁を乗り落した。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勇
(
ゆう
)
を
鼓
(
こ
)
して、そこを下れば、地底の闇に、
魑魅魍魎
(
ちみもうりょう
)
の
蠢
(
うごめ
)
く地獄巡り、水族館。不気味さに、
岐道
(
えだみち
)
を取ってけわしい坂を山越しすれば、その山の頂上から、魂も消しとぶ
逆落
(
さかおと
)
しの下り道。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
虹の目玉だ、やあ、八千年
生延
(
いきの
)
びろ、と
逆落
(
さかおと
)
しの
廂
(
ひさし
)
はづれ、
鵯越
(
ひよどりごえ
)
を
遣
(
や
)
つたがよ、
生命
(
いのち
)
がけの仕事と思へ。
鳶
(
とび
)
なら
油揚
(
あぶらげ
)
も
攫
(
さら
)
はうが、人間の手に持つたまゝを
引手繰
(
ひったぐ
)
る段は、お互に
得手
(
えて
)
でない。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
もし万一途中で
断
(
き
)
れたと致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの
肝腎
(
かんじん
)
な自分までも、元の地獄へ
逆落
(
さかおと
)
しに落ちてしまわなければなりません。そんな事があったら、大変でございます。
蜘蛛の糸
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それが前に云った通りぬるぬるする。梯子を一つ片づけるのは容易の事ではない。しかもそれが十五ある。初さんは、とっくの昔に消えてなくなった。手を離しさえすれば
真暗闇
(
まっくらやみ
)
に
逆落
(
さかおと
)
しになる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ガラツ八は段々を二つづつ飛上がつて二階へ行きましたが、間もなく、
凱歌
(
がいか
)
をあげて、
逆落
(
さかおと
)
しに降りて來ました。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どこよりも低いせいか、地下室にも似たここの一
郭
(
かく
)
は黒煙も余り立ちこめて来ない。その代りに焔は極めて強烈に櫓の中層から下へむかって
逆落
(
さかおと
)
しに燃えひろがろうとしている。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
虹の目玉だ、やあ、八千年生延びろ、と
逆落
(
さかおと
)
しの
廂
(
ひさし
)
のはずれ、
鵯越
(
ひよどりごえ
)
を遣ったがよ、
生命
(
いのち
)
がけの仕事と思え。
鳶
(
とび
)
なら
油揚
(
あぶらあげ
)
も
攫
(
さら
)
おうが、人間の手に持ったままを
引手繰
(
ひったぐ
)
る段は、お互に得手でない。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
逆落
(
さかおと
)
しに私の膝へさっと下りて来たことです。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、
飢
(
う
)
え疲れた兵も、凄まじい勢いで、一方の沢を
逆落
(
さかおと
)
しに突破した。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と見る見る頂から下り道、真鶴あたりの
樹立
(
こだち
)
の
梢
(
こずえ
)
、目の下の森をさして、列車は
颯
(
さっ
)
と
逆落
(
さかおと
)
し、風に
綾
(
あや
)
ある
紅
(
あか
)
、白、
蒼
(
あお
)
、いろいろの小旗の滝津瀬、ひらひらと流るる
状
(
さま
)
して、青海さして見えなくなる。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「魏勢が押し寄せてきたら、
逆落
(
さかおと
)
しに一撃を喰らわせん」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここから真下の敵へ
逆落
(
さかおと
)
しに斬り入ってゆく自分の
背
(
うしろ
)
には神があるとする強味——神こそはいつも正しきものに味方し給うものという強味——むかし信長が
桶狭間
(
おけはざま
)
へ駈けてゆく途中でも熱田の宮へぬかずいたことなども思い合わされて
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逆
常用漢字
小5
部首:⾡
9画
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
“逆”で始まる語句
逆
逆上
逆立
逆手
逆鱗
逆様
逆茂木
逆捻
逆襲
逆巻