うた)” の例文
新字:
とほかゝりしに深編笠ふかあみがさかぶりて黒絽くろろ羽織はおりのぼろ/\したるを如何にも見寥みすぼらしき容體なりをしてうたひをうたひながら御憐愍々々ごれんみん/\と云つゝ往來にたつて袖乞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「拙者は長谷倉甚六郎、西國の浪人者だ。十年越しこの町内に住み、うたひや碁の手ほどきから、棒振り劍術、物の本の素讀などを少しばかり教へて居る」
もしも此様な場合に、たれかジヨンマーチでもうたつて呉れる者があつたら、彼は獨で舞踏ダンスをおツ始めたかも知れぬ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
伯母をばさんあの太夫たゆうさんんでませうとて、はたはたけよつてたもとにすがり、れし一しなれにもわらつてげざりしがこのみの明烏あけがらすさらりとうたはせて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
赤い苺がびつしりつて居る。苺は大分たべた。夫に到る處山桃がある。時々腕白も木になつてる事がある。何處であつたか熊野あたりの神社のうたであつたが
壱岐国勝本にて (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まへさん、お正月しやうぐわつからうたうたつてるんぢやありませんか。——一層いつそ一思ひとおもひに大阪おほさかつて、矢太やたさんや、源太げんたさんにつて、我儘わがまゝつていらつしやいな。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞおほどもたちが、さういふうたを、無心むしんうたひろげてくところから、あてをしたのでありませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
飮むべしと云ふこれにはげまされて何樓とかへのぼ歌妓うたひめありと聞て木曾の唄をたしかに聞ざるも殘念なればとそれを呼びてうたはすに名古屋の者なれば正眞の木曾調子にはゆかずと謙遜してさて唄ふ其唄
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
そのあとに、まだ耳鳴りのやうに殘つて居るうたの聲や人のさけびは、正に古酒「LEGENDE」の香ひにも、較ぶれは較ぶべきものであらう。(明治四十三年十二月二十九日伊豆伊東に於て)
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
だが、うたがない。かの女たちは、歌を忘れたカナリヤのやうである。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
無意むい無心むしんなる幼童えうどう天使てんしなりとかや。げにもさきに童謠どうえうありてより(おう)のきたるに一月ひとつきかざりし。しかるにいま此歌このうた稀々まれ/\になりて、さらにまた奇異きいなるうた
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御守殿お茂與といふのは一時深川の岡場所で鳴らしたしたゝか者で、大名の留守居や、淺黄裏あさぎうらの工面の良いのを惱ませ一枚ずりにまでうたはれた名代の女だつたのです。
げんに、このうた同樣どうように、おほくめのみこと神武天皇じんむてんのうとのかけあひにうたはれたといふうたが、それであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
もよふせしがのめうたへと調子づき追々亂酒らんしゆになり夜に入ると雖も猶更に各自おの/\謠ひ淨瑠璃じやうるりにだみ聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ればかりはと子細しさいもなく、千扁一律せんべんいちりついやいやをとほして、はては世上せじやういまはしきうたはれながら、せま乙名をとめにもかけず、けゆくとししみもせず、しづかに月花つきはなをたのしんで
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうすると、おほくめのみことうたも、片歌かたうた音數おんすうして、はやうたはれたものとおもふほかはありません。最初さいしよ一句いつくは、『やまとのたかさじ』の十音じゆうおんから出來できてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
船頭せんどう馬方うまかた木樵きこり機業場はたおりば女工ぢよこうなど、あるがなかに、木挽こびきうたうたはなかつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
通り懸りけるに山下の溷際どぶぎは深網笠ふかあみがさの浪人者ぼろ/\したる身形みなりにて上には丸に三ツ引の定紋ぢやうもんつきたる黒絽くろろほたるもるばかりの古き羽織を着しうたひをうたひながら御憐愍ごれんみんをと云て往來の者に手の内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
橋のたもとで下手なうたひを唸つて居るのを、拾つてくれたのも綱田氏だ。
うたふ……あはれさ、心細こゝろぼそさの、うたこゝろおもす。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白齒の美しさを山の手一圓にうたはれて居ります。