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袖垣
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そでがき
ふりがな文庫
“
袖垣
(
そでがき
)” の例文
さて、濡縁なりで、じかに障子を、その細目にあけた処へ、裾がこぼれて、
袖垣
(
そでがき
)
の
糸薄
(
いとすすき
)
にかかるばかり、四畳半一杯の
古蚊帳
(
ふるがや
)
である。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袖垣
(
そでがき
)
のあたりの
萩叢
(
はぎむら
)
を割って、ぬうッと、誰やら
頬被
(
ほおかむ
)
りをした男の影が、中腰に立ち、こなたの書院の明りに、顔をさらして見せた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こっちの
手水鉢
(
ちょうずばち
)
の
側
(
かたわら
)
にある
芙蓉
(
ふよう
)
は、もう花が
疎
(
まばら
)
になったが、向うの、
袖垣
(
そでがき
)
の外に植えた
木犀
(
もくせい
)
は、まだその甘い匂いが衰えない。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二七不動に近き路地裏に
西京汁粉
(
さいきょうしるこ
)
の
行燈
(
あんどう
)
かけて、
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
に
石燈籠
(
いしどうろう
)
置きたる店口ちよつと風雅に見せたる家ありけり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
不意に庭の方で
靴
(
くつ
)
の音がして、
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
の向うから、派手な
茄子紺
(
なすこん
)
の両前の背広を着て、金縁の濃い色眼鏡を掛けて
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
袖垣
(
そでがき
)
に
辛夷
(
こぶし
)
を添わせて、
松苔
(
まつごけ
)
を
葉蘭
(
はらん
)
の影に畳む上に、切り立ての
手拭
(
てぬぐい
)
が春風に
揺
(
ふ
)
らつくような所に住んで見たい。——藤尾はあの家を貰うとか聞いた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
通らでも事は済めども言はば近道の
土手々前
(
どてでまへ
)
に、
仮初
(
かりそめ
)
の
格子門
(
かうしもん
)
、のぞけば
鞍馬
(
くらま
)
の
石燈籠
(
いしどうろ
)
に
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
しをらしう見えて、
椽先
(
ゑんさき
)
に巻きたる
簾
(
すだれ
)
のさまもなつかしう
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
檐
(
のき
)
には
尾垂
(
おだれ
)
と竹の雨樋が取付けてあり、広い庭に
巴旦杏
(
はたんきょう
)
やジャボン、
仏手柑
(
ぶしゅかん
)
などの異木が植えられ、
袖垣
(
そでがき
)
の傍には
茉莉花
(
まつりか
)
や
薔薇花
(
いけのはな
)
などが見事な花を咲かせている。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
文登
(
ぶんとう
)
の
景星
(
けいせい
)
は少年の時から名があって人に重んぜられていた。
陳
(
ちん
)
生と隣りあわせに住んでいたが、そこと自分の書斎とは僅かに
袖垣
(
そでがき
)
一つを隔てているにすぎなかった。
阿霞
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
道庵の見取図は入口が右なのに、ガラッ八のは左、
袖垣
(
そでがき
)
も、障子も、縁側も、そっくりそのままと言っていいくらい正反対になっているのは、一体何を意味するのでしょう。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこに一軒の家の
袖垣
(
そでがき
)
のような低い
生垣
(
いけがき
)
の垣根があった。その生垣越しに
縁側
(
えんがわ
)
が見えた。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庸三は暗い茶の間の窓の下から、
袖垣
(
そでがき
)
で仕切られた庭の方へまわって、縁側の板戸ぎわに身を寄せて、そっと声をかけたが、やがて、葉子の声がして板戸が一枚繰りあけられた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのお高の眼に、
袖垣
(
そでがき
)
を越して映ったものは、門からはいってくる磯五の姿であった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
船から河岸へ通う物揚場の石段の上には、切石が
袖垣
(
そでがき
)
のように積重ねてある。その端には鉄の鎖が
繋
(
つな
)
いである。二人はこの石に
倚凭
(
よりかか
)
った。満洲の方の
噂
(
うわさ
)
が出た。三吉は思いやるように
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
父には五つの歳に別れまして、母と
祖母
(
ばば
)
との手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、
山茶花
(
さざんか
)
もあり
百日紅
(
さるすべり
)
もあり、黄金色の
茘枝
(
れいし
)
の実が
袖垣
(
そでがき
)
に下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
採光法、照明法も材料の色彩と同じ精神で働かなければならぬ。四畳半の採光は光線の強烈を求むべきではない。外界よりの光を
庇
(
ひさし
)
、
袖垣
(
そでがき
)
、または庭の
木立
(
こだち
)
で適宜に
遮断
(
しゃだん
)
することを要する。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
「朝顔が咲くのを見たわ」おふさは夜具の中で参太の手を引きよせた、「
手洗鉢
(
ちょうずばち
)
の脇の
袖垣
(
そでがき
)
に
絡
(
から
)
まってるの、なにか動くようだからひょいと見たのよ、そうしたら朝顔の蕾が開くところだったの」
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ついそこの
袖垣
(
そでがき
)
のところに落っこちていたんでね。
右門捕物帖:19 袈裟切り太夫
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
袖垣
(
そでがき
)
にバラをからませた鉄柵の門から内を覗くと、中央に広い草花のガーデンが見え、両側が長い
厩舎
(
きゅうしゃ
)
となっていて、奥に宏壮な洋館があった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戸袋を五尺離れて、
袖垣
(
そでがき
)
のはずれに
幣辛夷
(
してこぶし
)
の花が怪しい色を
併
(
なら
)
べて立っている。木立に
透
(
す
)
かしてよく見ると、折々は二筋、三筋雨の糸が途切れ途切れに
映
(
うつ
)
る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
向う側は、
袖垣
(
そでがき
)
、
枝折戸
(
しおりど
)
、夏草の茂きが中に
早咲
(
はやざき
)
の秋の花。いずれも
此方
(
こなた
)
を背戸にして別荘だちが二三軒、
廂
(
ひさし
)
に
海原
(
うなばら
)
の緑をかけて、
簾
(
すだれ
)
に沖の船を縫わせた
拵
(
こしら
)
え。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつも小手毬やライラックが散った後、離れ座敷の
袖垣
(
そでがき
)
のもとにある八重山吹の咲くのと同時ぐらいなので、今はまだ、ようよう若葉が芽を吹きかけているだけである。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何心なく振り返ると、
袖垣
(
そでがき
)
の上から一と目に見える縁側に、
二十歳
(
はたち
)
ばかりの武家風とも町家風ともつかぬ娘が立って、二人の後ろ姿を見送っているのと、顔を見合せてしまいました。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
袖垣
(
そでがき
)
のところにある、枝ぶりのいい
臘梅
(
ろうばい
)
の葉が今年ももう黄色く
蝕
(
むしば
)
んで来た。ここにいるうちに、よく水をくれてやった鉢植えの
柘榴
(
ざくろ
)
や
欅
(
けやき
)
の
姿
(
なり
)
づくった
梢
(
こずえ
)
にも、秋風がそよいでいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
信如
(
しんによ
)
が
何時
(
いつ
)
も
田町
(
たまち
)
へ
通
(
かよ
)
ふ
時
(
とき
)
、
通
(
とほ
)
らでも
事
(
こと
)
は
濟
(
す
)
めども
言
(
い
)
はゞ
近道
(
ちかみち
)
の
土手々前
(
どてゝまへ
)
に、
假初
(
かりそめ
)
の
格子門
(
かうしもん
)
、のぞけば
鞍馬
(
くらま
)
の
石燈籠
(
いしどうろ
)
に
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
しをらしう
見
(
み
)
えて、
縁先
(
ゑんさき
)
に
卷
(
ま
)
きたる
簾
(
すだれ
)
のさまもなつかしう
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……すると、だいぶ夜も更けてからホトホトと雨戸を叩くものがあるので起き出して雨戸をあけて見ると、
袖垣
(
そでがき
)
の萩の中に死んだお梅のすぐの妹のお米が袖を引きあわしてしょんぼり立っている。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
然れども余は不幸にしていまだかつて油画の描きたる日本婦女の
髷
(
まげ
)
及び
頭髪
(
とうはつ
)
に対し、あるひは
友禅
(
ゆうぜん
)
、
絣
(
かすり
)
、
縞
(
しま
)
、
絞
(
しぼり
)
等の衣服の
紋様
(
もんよう
)
に対して、何ら美妙の感覚に触れたる事なく、また
縁側
(
えんがわ
)
、
袖垣
(
そでがき
)
、障子
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして、武者屋敷といえばどこも同じな
冠木門
(
かぶきもん
)
の
袖垣
(
そでがき
)
まで、渡に送られて出て来ると、おりふし、外から戻って来たかれの新妻とばったり出会った。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十畳の廊下外の
廂
(
ひさし
)
の下の、井戸の
処
(
ところ
)
にある
豊後梅
(
ぶんごうめ
)
も、黄色く
煤
(
すす
)
けて散り、離れの
袖垣
(
そでがき
)
の
臘梅
(
ろうばい
)
の黄色い絹糸をくくったような花も、いつとはなし腐ってしまい、
椎
(
しい
)
の木に
銀鼠色
(
ぎんねずいろ
)
の
嫩葉
(
わかば
)
が
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
然れども余は不幸にしていまだかつて油画の描きたる日本婦女の
髷
(
まげ
)
及び
頭髪
(
とうはつ
)
に対し、あるひは
友禅
(
ゆうぜん
)
、
絣
(
かすり
)
、
縞
(
しま
)
、
絞等
(
しぼりとう
)
の衣服の
紋様
(
もんよう
)
に対して、なんら美妙の感覚に触れたる事なく、また
縁側
(
えんがわ
)
、
袖垣
(
そでがき
)
、
障子
(
しょうじ
)
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「へえ。あの
袖垣
(
そでがき
)
の所にあったのを抜いて来たの」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
から
老梅
(
ろうばい
)
の枝へと、
軽業
(
かるわざ
)
でも見せるように
逃
(
に
)
げてしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
袖
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
垣
常用漢字
中学
部首:⼟
9画
“袖”で始まる語句
袖
袖口
袖無
袖乞
袖畳
袖屏風
袖摺
袖褄
袖手
袖萩