まも)” の例文
旧字:
「聖骨」は単に石造の建築物中に納められているものとばかり想像して来たのに、これはまた四周一面頑丈な土壁でまもられていた。
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
何も悪意あつて排斥するでは無いが、学校の統一といふ上から言ふと、これた止むを得ん——斯う校長は身のまもりかたを考へたので。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わが祖先の諸霊よ! われらの上に来りてともに戦い、共にまもり給え。われら一家七名の者に、無限不尽の力を与え給わんことを!
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
国内の秩序をまもるために巡査の必要があるように、国際の平和と通商上の利権とを自衛するために国家としては軍備を或程度まで必要とします。
何故の出兵か (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「なに、あなたの身体からだは私達がどんな事があってもまもります。あなたは誰かにおどかされているんでしょう。威かされて、手伝いをしたんでしょう」
燕王は護衛指揮張玉朱能等をして壮士八百人をして入ってまもらしめぬ。矢石しせきいままじわるに至らざるも、刀鎗とうそう既にたがいに鳴る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
家をまもり盗をふせぎ、風雨に苦しんで残食と骨ばかりけ、時としては何一つ食わず、それに猫は常に飽食して竈辺かまどべに安居するは不公平ならずやと怒る。
兵十余人を付けてまもらしめ、火を挙げるのを合図に、全軍囲を衝いて千本桜に退却集合することを命じた。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
生きようとは思わないのだから、こわいものはない。剣をれば死ぬ気だから、じぶんをまもろうとしない。攻め一方の、じつに火焔かえんのごとく激しい剣法であった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五月下旬の或る曇日の午後、山城屋の旦那寺だんなでらの泰松寺でお辻の葬儀が営まれた。宗右衛門は一番々頭の清之助や親類の男達にまもられながら葬列の中ほどをつて歩いた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「身どもら、不運にして、先祖の地をまもるあたわず、すなわち、棄てて蝦夷地にはしる、されば、生命ある限り二度と再び立ち戻るを得ず、つつしんで永劫えいごう袂別けつべつをもうす」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
若年じゃくねんから御所のまもりに立つ弓取の身として、それだけは頼政も、痛恨事としていたとみえて、ある時、殿上の人に、所懐しょかいの和歌をそっと示したところ、みかどのお耳にはいって
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
非常に可憐かれんでいたいたしいふうのこの人に、自身をまもすきのないところと、豊かな貴女きじょらしさがあって、あの昔見た夜よりもはるかに完成された美の覚えられることによって
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
弱きものにも寄生する更に弱きものがある、顧れば白檜帯は、脚下に圧しつけられ、背丈を揃えた庭の短木のように、いじけて、それでも森厳として、太古ながらの座席をまもっている
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
そして同時に、本当の危険に対してはちやんと自分の身をまもらなければならない。遠くの方から毒を放つて吾々を害することの出来るものは、動物のどんな種類にでも、絶対にないのだ。
そんな気持きもちおそわれるのはんでからのない、なにわからぬ時分じぶんのこと、すこしこちらで修行しゅぎょうがつんでまいりますと、自分じぶん身辺しんぺんはいつも神様かみさま有難ありがた御力おちからまもられているようなかんじがして
その銅板画にはここに人が棲んでいる。戸を鎖し眠りに入っている。星空の下に、闇黒のなかに。彼らはなにも知らない。この星空も、この闇黒も。虚無から彼らをまもっているのは家である。
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
金玉きんぎょくもただならざる貴重の身にして自らこれをけがし、一点の汚穢おわいは終身の弱点となり、もはや諸々もろもろの私徳に注意するの穎敏えいびんを失い、あたかも精神の痲痺まひを催してまた私権をまもるの気力もなく
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もちろん乱れたる世の事ではあり、国家の軍隊警察その用を為さぬ際であったから、彼らは自然武芸を錬磨して、自らまもるの必要があり、ここに国法以外の私兵が生じた。これすなわち武士である。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
まへもつまもらねばならぬ前衛ぜんゑいむねに、お前の銃剣じうけんとき
昇天の当日には二千人の兵を派して翁の家をまもらせる。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
黒い海馬にまもられて、狂へる小舟は走つてゐた
白襟に縛され黒襟にまもられてゆく朝
動員令 (新字新仮名) / 波立一(著)
廖平こゝにおいて人々にって曰く、諸人のしたがわんことを願うは、もとよりなり、但し随行の者の多きは功無くして害あり、家室のるい無くして、膂力りょりょくふせまもるに足る者
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鋭い良心の詰責とがめは、身をまもる余儀なさの弁解いひわけと闘つて、胸には刺されるやうな深い/\悲痛いたみを感ずる。丑松はぢたり、おそれたりしながら、何処へ行くといふ目的めあても無しに歩いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
家宰阿賀妻の下知げちがあった。彼らはさッと一つところにかたまっていた。われらが殿をまもるのだ——と叫んでいた。固めるように身を寄せあった。彼らの身体の血がお互いに通い合うかと思われた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
強く鋭くて、能く敵を傷つくべき牙と、自ら身をまもるべき楯を持つ。
一身のたっときこと玉璧ぎょくへきもただならず、これを犯さるるは、あたかも夜光のたま瑕瑾きずを生ずるが如き心地して、片時も注意をおこたることなく、穎敏えいびんに自らまもりて、始めて私権を全うするの場合に至るべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分らをまもってゆくことができるのであります。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
仏教が渡来するに及んで咒詛じゅその事など起ったろうが、仏教ぎらいの守屋もりやも「さま/″\のまじわざものをしき」と水鏡みずかがみにはあるから、相手が外国流でおのれまもり人を攻むれば
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
京都にある三大寺院は公使らの旅館にあてるために準備された。三藩の兵隊はまた、それぞれの寺院に分かれて宿泊する公使らをまもることになった。尾州兵は智恩院ちおんいん。薩州兵は相国寺しょうこくじ
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)