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蠢
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うご
ふりがな文庫
“
蠢
(
うご
)” の例文
牢屋のやうな恐ろしく嚴重な格子戸に、大一番の
海老錠
(
えびぢやう
)
をおろして、薄暗い六疊ほどの部屋の中には、何やら黒いものが
蠢
(
うご
)
めきます。
銭形平次捕物控:208 青銭と鍵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
無気味な粘土細工は
蝋人形
(
ろうにんぎょう
)
のように色彩まである。そして、時々、無感動に
蠢
(
うご
)
めいている。あれはもう脅迫などではなさそうだ。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
女衒
(
ぜげん
)
、などなど、これらの
生業
(
なりわい
)
と共に社会の裏側に
蠢
(
うご
)
めき続け、その時も尚パリの裏街、——貧しい詩人や絵描きや音楽家や
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
仏教にあっては、私たちの内部に「菩提(梵語 〔Bodhi〕 の漢音訳で「
覚
(
さと
)
り」の義)心」が
蠢
(
うご
)
めくときがそれであるといたします。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ニヤ/\と
両
(
りやう
)
の
頬
(
ほゝ
)
を
暗
(
くら
)
くして、あの
三日月形
(
みかづきなり
)
の
大口
(
おほぐち
)
を、
食反
(
くひそ
)
らして
結
(
むす
)
んだまゝ、
口元
(
くちもと
)
をひく/\と
舌
(
した
)
の
赤
(
あか
)
う
飜
(
かへ
)
るまで、
蠢
(
うご
)
めかせた
笑
(
わら
)
ひ
方
(
かた
)
で
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
姑獲鳥
(
うぶめ
)
と
布柱
(
ぬのばしら
)
と盲人と、猩々との縦隊は声なく進み、その行く手の遥かのあなたには高く
厳
(
いか
)
めしく聳えている、
別櫓
(
べつやぐら
)
の方へ
蠢
(
うご
)
めいて行った。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼はその柔らかい感触に、得体の知れぬ
蠢
(
うご
)
めきを受け、又ゆうべの夢が、生々しく甦って来るのを感じた。そして苦汁は軽く
揮発
(
きはつ
)
して行った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
得意の鼻を
蠢
(
うご
)
めかしているのが
癪
(
しゃく
)
に触ったばかりでなく、第一こんなで「偉い女」になれるかどうか、それを非常に心もとなく感じたのです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
作物は何れもひどく威勢を
殺
(
そ
)
がれた。殊にも夥しいのは桑の葉の被害だった。毎朝、
黝
(
くす
)
んだ水の上を、蚕がぎくぎく
蠢
(
うご
)
めきながら流れて行った。
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
しかし彼女はこの時既に自分の胎内に
蠢
(
うご
)
めき掛けていた生の
脈搏
(
みゃくはく
)
を感じ始めたので、その微動を同情のある夫の
指頭
(
しとう
)
に伝えようとしたのである。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
活東子
(
くわつとうし
)
は
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うご
)
めかして『いや、
之
(
これ
)
は、
埴輪
(
はにわ
)
よりずツと
古
(
ふる
)
い
時代
(
じだい
)
の
遺物
(
ゐぶつ
)
です。
石器時代
(
せききじだい
)
の
土器
(
どき
)
の
破片
(
はへん
)
です』と
説明
(
せつめい
)
した。
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
人差指は、材木に
巣喰
(
すく
)
って肥え太った鉄砲虫のように見える。そのとき彼の前では、自分の五本の指が全然別な生きものとして
蠢
(
うご
)
めきあっている。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
床の間はついてゐたが、細長い建方なので、居間は障子を閉めると薄暗く、隅の炬燵で蒔は蒲団にくるまり、ぜいぜい息の音を立て、時々
蠢
(
うご
)
めいた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
そうして彼の眼の底に
蠢
(
うご
)
めくものは結局、瘠せ衰えた彼の妻と、その
周囲
(
まわり
)
を飛びまわったり
匐
(
は
)
いまわったりしている子供たちの姿ばかりになってしまった。
老巡査
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
老婦人を囲んで、
怪
(
あや
)
しげなる服装をつけた頭のない生物が、
蜥蜴
(
とかげ
)
のように
蠢
(
うご
)
めいているところを又見るのかと思うと、いやアな気持に
襲
(
おそ
)
われて
参
(
まい
)
りました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
家の中には何も物の
蠢
(
うご
)
めく気配もなかった。さびついた
肱金
(
ひじがね
)
の音はだれの眠りをもさまさなかったのである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
牛をかわして、スタスタ下りる、振りかえれば、牛は追って来ようともしないで、夕暮の沈んだ空気の中に眼鼻も何もない黒いものが、むくむくと
蠢
(
うご
)
めいている。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
しかし、どうにかしなくてはならないものが彼の根元に
蠢
(
うご
)
めき始めていた。彼はぐっすり夕暮まで寝た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
は
些
(
いさ
)
さか
得意
(
とくゐ
)
の
色
(
いろ
)
を
浮
(
うか
)
べて
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うご
)
めかしたが、
軍艦
(
ぐんかん
)
「
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
」の
甲板
(
かんぱん
)
には
未
(
ま
)
だ
仲々
(
なか/\
)
豪傑
(
がうけつ
)
が
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
皆々黒衣が昨日の働きを聞て、口を極めて
称賛
(
ほめそや
)
すに、黒衣はいと得意顔に、鼻
蠢
(
うご
)
めかしてゐたりける。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「いやアもう。」と、老僧は口癖になつてゐることを言つて、少しばかり鼻を
蠢
(
うご
)
めかした。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
たそがれ、部屋の四隅のくらがりに何やら
蠢
(
うご
)
めき人の心も、死にたくなるころ、ぱっと灯がついて、もの皆がいきいきと、
背戸
(
せど
)
の小川に放たれた金魚の如く、よみがえるから不思議です。
喝采
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると小さい
蛆
(
うじ
)
が一匹静かに肉の縁に
蠢
(
うご
)
めいていた。蛆は僕の頭の中に Worm と云う英語を呼び起した。それは又麒麟や鳳凰のように或伝説的動物を意味している言葉にも違いなかった。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
檻の中では病人達の
蠢
(
うご
)
めく様が眺められた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
カンテラの光に、兵士たちが
蠢
(
うご
)
めいていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
今は
蠢
(
うご
)
めく蛆虫は、親を離れてアカイアの
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
兵卒達の胸に生々しい予告が
蠢
(
うご
)
めく
動員令
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
何か物の
蠢
(
うご
)
めく気配がする。
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ガラ八の鼻は少しばかり
蠢
(
うご
)
めきます。この鼻がまた錢形平次に取つては、千里眼順風耳で、この上もない調法な武器だつたのです。
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
何かいおうとするのでもあろう、これも痙攣をする唇を、二度も三度も
蠢
(
うご
)
めかしたが、それがポッカリとあいたかと思うと
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
膝をかけて
畝
(
うね
)
る頃には、はじめ
鞠
(
まり
)
ほどなのが、段々小さく、豆位になって、足の甲を
蠢
(
うご
)
めいて、ふっと
拇指
(
おやゆび
)
の爪から抜ける。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
坑夫達はそんな風に言って、そこを通りかかる
度毎
(
たびごと
)
に、青の鼻先へ
触
(
さわ
)
ってやるのだった。併し青は、黒い鼻先をほんの
微
(
かす
)
かに
蠢
(
うご
)
めかすだけであった。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
田螺
(
たにし
)
のように
蠢
(
うご
)
めいていたほかの連中もどこにも出現せぬ様子だ。いよいよいけない。もう出るか知らん、五秒過ぎた。まだか知らん、十秒立った。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この倉庫の白い柱組みの一本々々も例外なしに染め分けられていた。下で
蠢
(
うご
)
めいている人間たちも、その一瞬は、同じ色どりの濃淡にまびれている。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そして又次には腕だけ、腹だけ、或は耳だけ、乳だけの、ずたずたに切られた巨大な人間の各部分が、薄暗い空間に浮いて、音もなく
蠢
(
うご
)
めいているのだ。
魔像
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
右の睾丸はゆっくりと
鮑
(
あわび
)
が
蠢
(
うご
)
めくように上り下りの運動をするが、左の睾丸はあまり運動する様子がなかった。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
泳いでる犬のような音を出してセーヌ河上に煙を吐き
蠢
(
うご
)
めいている一つの物が、チュイルリー宮殿の窓下をロアイヤル橋からルイ十五世橋まで往来していた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お秀は、何だか身体のしんからむず
痒
(
がゆ
)
いものを感じたように自分の乳房が
蠢
(
うご
)
めくらしいのを掌で押えました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そこいらの田に
蠢
(
うご
)
めいていた田植笠が、一つ二つ持ち上って、不思議そうにその女の姿に
見惚
(
みと
)
れはじめた。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どうして忘れるもんか、あの春ちゃんが殺される日、あたいは屋根裏の物置の中に鼠かなんかのように
蠢
(
うご
)
めいているあんた達を見せつけられて、あたし……。オーさん。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
苔が厚く
活物
(
いきもの
)
の緑が
蠢
(
うご
)
めいている、水草の動くのは、髪の毛がピシピシと流電に逆立つようだ。
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
『
斯
(
か
)
う
出來上
(
できあが
)
つたら
立派
(
りつぱ
)
なもんでせう。』と
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
は
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うご
)
めかしつゝ
私
(
わたくし
)
を
眺
(
なが
)
めた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
最初の裡くねくねと体を
蠢
(
うご
)
めかして居た妻も、軈ては気力尽きてぐったり動かなくなったのを見済まして、私は悠然と落ちた帽子を拾い着崩れた着物の襟を合わせ、是でいいんだ、ふん
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
由良松は低い鼻を
蠢
(
うご
)
めかします。色白の、柔和な感じの男ですが、石原の子分衆のうちでは、一番よく智恵のまわる三十男です。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのほとんど狼の食い
散
(
ちら
)
した白骨のごとき仮橋の上に、陰気な暗い提灯の一つ
灯
(
び
)
に、ぼやりぼやりと小按摩が
蠢
(
うご
)
めいた。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
水に沈み水に浮き、パッと飛び立ち
颯
(
さっ
)
と下りて来る、白い翼の
水禽
(
みずとり
)
以外、湖面に
蠢
(
うご
)
めく何物もない。岸に近く咲いているのは黄色い水藻の花である。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あとには依然として黒い者が
簇然
(
そうぜん
)
と
蠢
(
うご
)
めいている。この蠢めいているもののうちに浩さんがいる。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは不気味にピクピクと
蠢
(
うご
)
めいていたが、だんだん膨れ上ってきて、みるみる豚ぐらいの大きさになった。だがその怪物はたしかに代志子坊やに相違なかったのだった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まどろむこと一瞬間、焚火も全く消えた、一個の
逞
(
たく
)
ましい木像と、一個の冷たい大理石像と、小舎の中に横わる、一は依然として動かないのに、一は
蠢
(
うご
)
めいて待つものあり。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
人の怨み、わが身の罪業を思ひ知りて神仏の御手に
縋
(
すが
)
らむと思はずや。天地の大を以て見れば、さしも強豪、無敵の鬼三郎も
多寡
(
たか
)
の知れたる一匹の
蛆虫
(
うじむし
)
。
何処
(
いづこ
)
より
蠢
(
うご
)
めき来り。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
蠢
漢検1級
部首:⾍
21画
“蠢”を含む語句
蠢々
蠢動
蠢愚
蠢爾
蠢乎
蠢動妄動
蠢惑
蠢東西
蠢蟲