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きゃしゃ
ふりがな文庫
“
華奢
(
きゃしゃ
)” の例文
無言で
頷
(
うなず
)
きながらふところの中で君太郎の
華奢
(
きゃしゃ
)
な手を握りしめていたが、私もこの時ほど君太郎をいとおしく感じたことはなかった。
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
吹けば飛ぶような、恐ろしく
華奢
(
きゃしゃ
)
な身体と、情熱的な表情的な大きな眼が、その多い髪と、小さい唇とともに、恐ろしく印象的です。
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さんざん自問自答したあげく、バサッとお湯の飛沫を立てて、いきなり今松は白足袋の似合いそうな旦那の
華奢
(
きゃしゃ
)
な肩口をつかまえた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
女は普通の日本の
女性
(
にょしょう
)
のように絹の手袋を
穿
(
は
)
めていなかった。きちりと合う
山羊
(
やぎ
)
の革製ので、
華奢
(
きゃしゃ
)
な指をつつましやかに包んでいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夫のように
頑健
(
がんけん
)
で抵抗力の強い人は自分達のような
華奢
(
きゃしゃ
)
で病気に罹り
易
(
やす
)
い者の気持が分らないのだと云う考があり、貞之助の方には
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
辱
(
はずか
)
しめに怒っているふうでもない。そのクララは東京生れというのがうそじゃないらしい、ほっそりとした
華奢
(
きゃしゃ
)
な身体つきだった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
いじらしくも朝から晩まで……
華奢
(
きゃしゃ
)
な首筋がどうかなりはせぬかと、よそ目には案じられるほど、あの偉大な火球を追いつづける。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
袖口から出ているその手は、白く、
華奢
(
きゃしゃ
)
な手である。それは、巧みに鳥籠の中にはいる手のように思われた。その手は慣れている。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
真下にも一輪の白い花があって——
華奢
(
きゃしゃ
)
で美男で色白の、小次郎の顔とて花ではないか——うつむいて来る雌花を受けようとしている。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
勝平が、そう答え
了
(
おわ
)
らない
裡
(
うち
)
に、瑠璃子の
華奢
(
きゃしゃ
)
な白い手の中に
燐寸
(
マッチ
)
は燃えて、
迸
(
ほとばし
)
り始めた
瓦斯
(
ガス
)
に、軽い爆音を立てゝ、移っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかもついにはその
華奢
(
きゃしゃ
)
な指を伸べて、一束四銭の札が立っている葱の山を指さすと、「さすらい」の歌でもうたうような声で
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
クリストフは、彼の
華奢
(
きゃしゃ
)
な長いよく手入れの届いた両手を認めた。それは彼の身体つきに似合わない、多少病的な貴族味をそなえていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
またある家では二階の窓際に置いてある鉢植の草花に、水をやっている
華奢
(
きゃしゃ
)
な女の手首と、空色の着物の袖だけが見えていた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
そして微かな身震いが彼女の
華奢
(
きゃしゃ
)
な体の周りに震える。ナポリの穏やかな空気が草地の
香
(
かおり
)
高い銀の
百合
(
ゆり
)
の周りに震えるように。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そして、すらりとした
華奢
(
きゃしゃ
)
な体を、揺り
椅子
(
いす
)
に横たえて、足へは
踵
(
かかと
)
の高い
木沓
(
きぐつ
)
をうがち、首から下を、深々とした黒
貂
(
てん
)
の
外套
(
がいとう
)
が覆うていた。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
婦人用かと思われる
華奢
(
きゃしゃ
)
な籐椅子の前に突立っている姿はさながらに魔法か何かを使って現われた西洋の妖怪のように見える。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
君は役者か音楽家にでもありそうな、やさしい
華奢
(
きゃしゃ
)
な指をしている。そして君の心もちも、根はやさしくて華奢なんだよ。……
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ぼくの乗せて頂いたのも、
華奢
(
きゃしゃ
)
な
白塗
(
しろぬ
)
りのリンカン・ジェフアで、車内に、ラジオも、シガレット・ライタアも
装備
(
そうび
)
してある
豪勢
(
ごうせい
)
さでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
下袴
(
つるまき
)
はうすい紅で、右の腰のあたりで、大きく蝶結びに結ばれていた。安物らしくピカピカ光った
上衣
(
ちま
)
の袖から、
華奢
(
きゃしゃ
)
な小さな手が出ていた。
プウルの傍で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
殊にこっちの伜が
気嵩
(
きがさ
)
のたくましい生まれつきならば格別、自体がおとなしい
華奢
(
きゃしゃ
)
な
質
(
たち
)
であるだけに、母としての不安は又ひとしおであった。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は渡欧前の数日を加賀君の邸で送った。今ここに来ると、停車場の待合から、君の
華奢
(
きゃしゃ
)
な旅姿が、ひょっくりと表われそうでならなかった。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
馬は
華奢
(
きゃしゃ
)
な白馬で、女鞍が置いてあり、鞍にリボンなど着いて居るのを見ると、ひょっとしたらイベットの馬かも知れない。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
碧緑
(
へきりょく
)
とも
紫紺
(
しこん
)
とも思われて、油を塗ったような光沢がある。胴体はいかにも
華奢
(
きゃしゃ
)
であるが、手足はよく均衡が取れていて、行動が
敏捷
(
びんしょう
)
である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
柄
(
がら
)
にもない
華奢
(
きゃしゃ
)
な
洋杖
(
ステッキ
)
蝙蝠傘などを買って来たのがそもそもの過りであった、私は苦笑して、その柄と
尖
(
さき
)
とを両手に持った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
生前曹操が最も可愛がっていたのは、三男の
曹植
(
そうしょく
)
であったが、植は
華奢
(
きゃしゃ
)
でまた余りに文化人的な
繊細
(
せんさい
)
さを持ち過ぎているので、愛しはしても
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狼狽
(
まごまご
)
している私の前へ据えた手先を見ると、
華奢
(
きゃしゃ
)
な蒼白い手で、薬指に
燦
(
きら
)
と光っていたのは本物のゴールド、リングと見た。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
岩城文子の
華奢
(
きゃしゃ
)
な細い奇麗な指には一つの指輪さえなかった、こんな指にこそダイヤも引立つだろうのに——、と思った。
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
音楽の間にドドドウと
舷
(
ふなべり
)
を打つ重い濤音とともに、ギギギと船全体を軋ませ、ぐうっと右にロールした。踊り手達は
華奢
(
きゃしゃ
)
な靴の踵の上で辷った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その白い花々は三方から吹き寄せられると、芝生にひっかかりながら、小径の砂の上を
華奢
(
きゃしゃ
)
な小猫のように転げていった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私の眼にも判る一
大きさ
(
サイズ
)
小さなゴブラン織りの宮廷靴が、
蹴合
(
けあ
)
いに勝って得意な時の鶏の足のような
華奢
(
きゃしゃ
)
な傲慢さで絨毯の
毛波
(
ケバ
)
を押しつけていた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「どうぞベルリンでお暇がございましたら、ちょっとでもお立ち寄りくださいまし。」紋章入りの
華奢
(
きゃしゃ
)
な名刺を渡して
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
前挿
(
まえざし
)
、
中挿
(
なかざし
)
、
鼈甲
(
べっこう
)
の照りの美しい、
華奢
(
きゃしゃ
)
な姿に重そうなその
櫛笄
(
くしこうがい
)
に対しても、のん気に婀娜だなどと云ってはなるまい。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒙古人など
沍寒
(
ごかん
)
烈風断えざる冬中騎して三千マイルを行きていささか
障
(
さわ
)
らぬに、一夜地上に
臥
(
ふ
)
さば
華奢
(
きゃしゃ
)
に育った
檀那
(
だんな
)
衆ごとく極めて風引きやすく
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
としよりがその始末なので、若い者は
尚
(
なお
)
の事、遊び馴れて
華奢
(
きゃしゃ
)
な身体をして居ます。毎日朝から、いろいろ大小の与太者が佐吉さんの家に集ります。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
半面を
繃帯
(
ほうたい
)
に包んだ美青年の顔が、恐ろしいほどまっ青になっていた。毛布の中から出ている
華奢
(
きゃしゃ
)
な手首が、熱病やみのようにブルブル震えていた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その植物たちは熱帯地方の産で、
栄耀
(
えよう
)
な暮らしに慣れた
華奢
(
きゃしゃ
)
な生まれつきでしたから、故郷のことが忘れられず、南の空が恋しくてなりませんでした。
アッタレーア・プリンケプス
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「御支配は健脚だ、いや身体の
華奢
(
きゃしゃ
)
なものはそれだけ足の負担が軽いからそれで疲れないので、我々は頑健肥満に生れた罰でかえって山路に難渋する」
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
露月の霊腕になった美麗
華奢
(
きゃしゃ
)
をきわめた画面に驚嘆した片里は、席をはなれて一そう絵枠に近づきまるで酔ったような目でいつまでも眺め入りました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ツクヅクボウシとカナカナとは女性的で、
獲
(
と
)
るとすぐ死ぬ。姿も
華奢
(
きゃしゃ
)
で、優美で、青々とした精霊の感じがある。
蝉の美と造型
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
それと一緒に、すらりとした姿に大変よく似合った服をつけ、カステーラ菓子みたいにふんわりした卵色のボンネットをかぶった、
華奢
(
きゃしゃ
)
な娘がやって来た。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
十九でいながら十七にも十六にも見れば見られるような
華奢
(
きゃしゃ
)
な
可憐
(
かれん
)
な姿をした葉子が、慎みの中にも才走った
面影
(
おもかげ
)
を見せて、
二人
(
ふたり
)
の妹と共に
給仕
(
きゅうじ
)
に立った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
稚児
(
ちご
)
の行列の出るのを待とうと言うのだ。伯母は小さなキセルを出して煙草を吸うていた。この伯母は私の父に似て骨細で、
華奢
(
きゃしゃ
)
な、美しい才女であった。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
新しい奈良の都の住人は、まだそうした官吏としての、
華奢
(
きゃしゃ
)
な服装を
趣向
(
この
)
むまでに到って居なかった頃、姫の若い父は、近代の時世装に思いを凝して居た。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
頭痛でもするのか、白い
華奢
(
きゃしゃ
)
な指さきで、しきりにこめかみを押え、額に八の字を寄せてだまりこくっている。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夫の腕にもたれると、その
華奢
(
きゃしゃ
)
な姿は、彼の男らしい、すらりとしたからだつきと見事な対照を描きだした。
妻
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
衛府の太刀は装飾もかねるので、一体が
華奢
(
きゃしゃ
)
な作りだが、信連のは、かねてから事あるべきを期して入念に鍛えさせたもの、野戦の用にも耐える業物である。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
すぐ傍に坐っている顔の蒼いほど色の白い、
華奢
(
きゃしゃ
)
な
円味
(
まるみ
)
を持った、
頷
(
おとがい
)
のあたりがおとなしくて、
可愛
(
かわい
)
らしい。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
けれどもガドルフは、その風の
微光
(
びこう
)
の中で、一本の百合が、多分とうとう
華奢
(
きゃしゃ
)
なその
幹
(
みき
)
を
折
(
お
)
られて、花が
鋭
(
するど
)
く地面に
曲
(
まが
)
ってとどいてしまったことを
察
(
さっ
)
しました。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
うす汚ない拾い屋と、
華奢
(
きゃしゃ
)
な姿の町娘と、それを護るような三人の侍と。この奇妙な五人伴れは、伊達家の中屋敷をまわって、御成り道のほうへと歩いていった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「日比谷まで……今夜、音楽があるんだ」と言い放ったが、白い
華奢
(
きゃしゃ
)
な足を動かして
蚊
(
か
)
を追うている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
華
常用漢字
中学
部首:⾋
10画
奢
漢検1級
部首:⼤
12画
“華奢”で始まる語句
華奢立
華奢造
華奢姿
華奢贅沢