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臓腑
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ぞうふ
ふりがな文庫
“
臓腑
(
ぞうふ
)” の例文
旧字:
臟腑
が、つぎの一瞬、かれは再び栄三郎の一刀を
臓腑
(
ぞうふ
)
に感じて、焼けるような痛苦のうちにみずから呼吸をひきとりつつあるのを知った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
クリストフは幻覚に襲われ、一身を挙げて緊張していたが、
臓腑
(
ぞうふ
)
までぞっと震え上った。……ヴェールは裂けた。
眩惑
(
げんわく
)
すべき光景だった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
停車場
(
ステエション
)
前で
饂飩
(
うどん
)
で飲んだ、
臓腑
(
ぞうふ
)
が
宛然
(
さながら
)
蚯蚓
(
みみず
)
のやうな、しツこしのない
江戸児擬
(
えどっこまがい
)
が、
何
(
ど
)
うして腹なんぞ立て
得
(
え
)
るものかい。ふん、だらしやない。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これはもちろん単純なる女学生の唱歌には相違なかったが、しかし不思議に自分の中にいる日本人の
臓腑
(
ぞうふ
)
にしみる何ものかを感じさせられた。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
悪人の
臓腑
(
ぞうふ
)
を引出して
遣
(
や
)
ろうと、虎も
引裂
(
ひっさ
)
く気性の文治郎、
耐
(
こら
)
え兼て次の間にあります一刀に目を付けるという、これからが喧嘩になります。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
許すも許さぬもない、これへ登りつくなり、自然にヘバッてしもうたのじゃ。わしにせよ、これ以上の我慢は、口から
臓腑
(
ぞうふ
)
を
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それゆえこの小説の
臓腑
(
ぞうふ
)
といえば、あるひとりの男の三歳二歳一歳の思い出なのである。その余のことは書かずともよい。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
空
(
から
)
の胃袋は
痙攣
(
けいれん
)
を起したように引締って、
臓腑
(
ぞうふ
)
が
顛倒
(
ひッくりかえ
)
るような苦しみ。臭い腐敗した空気が意地悪くむんむッと
煽付
(
あおりつ
)
ける。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
寺と墓地とは縁もゆかりもない千歳村の此耕さるべき部分の外に行き得る場所はないのであろう乎。都会が頭なら、田舎は
臓腑
(
ぞうふ
)
ではあるまい乎。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「口から
臓腑
(
ぞうふ
)
が飛びだすほど駈けてきたんだが、十五ミニュートとは、だいぶちがう。……だが、念には念を入れ、もうひとかえりやって見よう」
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
何となれば去勢する鶏は産れてから七、八十日位の雛鳥に限るから
身体
(
からだ
)
も小さいし、腹の中の
臓腑
(
ぞうふ
)
や筋骨も弱いし大きなものを扱うよりも非常に困難だ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
斬り開かれた腹部から中庭の石に
臓腑
(
ぞうふ
)
がつかみ出されていたにかかわらず、どくっどくっと、死直後の
惰力
(
だりょく
)
的
動悸
(
どうき
)
を打って、あたたかい血を
奔出
(
ほんしゅつ
)
させていた。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
正道はうっとりとなって、この詞に聞き
惚
(
ほ
)
れた。そのうち
臓腑
(
ぞうふ
)
が煮え返るようになって、
獣
(
けもの
)
めいた叫びが口から出ようとするのを、歯を食いしばってこらえた。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分は急に陰気になって下へ
降
(
さが
)
る、とうてい
交際
(
つきあい
)
はできないんだと思うと、背中と胸の厚さがしゅうと減って、
臓腑
(
ぞうふ
)
が
薄
(
うす
)
っ
片
(
ぺら
)
な一枚の紙のように
圧
(
お
)
しつけられる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
僕なんぞは
臓腑
(
ぞうふ
)
ぐるみほうり出したって、焼いた玉ねぎ一つくらいにしか、値ぶみしてくれやしない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それに照らすと人の
筋骨
(
きんこつ
)
から
臓腑
(
ぞうふ
)
まではっきりと映ったので、最初に見た者はおどろいて気絶した。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
切支丹の拷問に「囚徒」を
逆吊
(
さかづ
)
りにして、その頭の
鬱血
(
うっけつ
)
と、胸を
臓腑
(
ぞうふ
)
が圧迫することのために、口からはもとより、ついには目と鼻とからまで出血して、たいてい七
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
多くの家族の者らは
暗闇
(
くらやみ
)
のうちに散り失せ、自分の子供らがいかになったかも知らず、いわば往来の上におのれの
臓腑
(
ぞうふ
)
を落としてゆくのは、さほど珍しいことではない。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ちょうど、
霍乱
(
かくらん
)
か何かのような、一時は
臓腑
(
ぞうふ
)
まで吐くんじゃないかと思いました。が、それでもうんと吐いたのは容態が軽い方で、あまり吐かない女どもは重うございました
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それから新たに祭壇を設けて遺骸を安置し、その
臓腑
(
ぞうふ
)
を大木の根元に埋め、幹をけづつて英語の書ける従者に、リヴィングストーンの姓名と誕生日と死亡日とをほらせました。
アフリカのスタンレー
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
卵色の膜に包まれた
臓腑
(
ぞうふ
)
がべろべろと
溢
(
あふ
)
れ出た。屠手の中には牛の爪先を関節のところから切り放して、土間へ
投出
(
ほうりだ
)
すのもあり、胴の中程へ出刃を入れて肉を裂くものもあった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
猫の身になつたらお
腹
(
なか
)
の
臓腑
(
ぞうふ
)
がしめつけられてずいぶん苦しいことに違ひありません。
身代り
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
しいて抜こうとすれば、針が根元から切れ傷口から
臓腑
(
ぞうふ
)
が出て、蜂が死んでしまう。
進化論と衛生
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
すなわち彼は、英国の海岸を外より脅かさんとせるドイツの恐るべきを知ると同時に、国家の
臓腑
(
ぞうふ
)
を内より
腐蝕
(
ふしょく
)
せんとする貧困のさらに恐るべき大敵たることを発見したものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
切り裂かれた
疵口
(
きずぐち
)
からは怨めしそうに
臓腑
(
ぞうふ
)
が
這
(
は
)
い出して、その上には敵の余類か、
金
(
こがね
)
づくり、
薄金
(
うすがね
)
の
鎧
(
よろい
)
をつけた
蝿
(
はえ
)
将軍が陣取ッている。はや乾いた眼の玉の池の中には
蛆
(
うじ
)
大将が
勢揃
(
せいぞろ
)
え。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
しかしそれは思っただけで、恋争いの敗北の痛みは、
臓腑
(
ぞうふ
)
に深く刻みつけられた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
そこには、兎が
臓腑
(
ぞうふ
)
を出し、雪を血に紅く染めて小児のように横たわっていた。
雪のシベリア
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
藪
(
やぶ
)
医者のような男の半身像が赤い舌をペロリと出しているのである。それからライフという当時ハイカラな名の薬の看板はガラス絵だった。
痩
(
や
)
せた男が
臓腑
(
ぞうふ
)
を見せて指ざしている絵だった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
強×
(9)
され、×
(10)
を
刳
(
えぐ
)
られ、
臓腑
(
ぞうふ
)
まで引きずり出された女たち!
間島パルチザンの歌
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
「そりゃあ、むろんさ。
臓腑
(
ぞうふ
)
の中が糞尿だらけになっては、たまらんよ。」
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
鼻の
孔
(
あな
)
から
洟汁
(
はなじる
)
をたらし、口から臭い息を吐き、
腋
(
わき
)
の下からぬる/\した汗を出すこと、体内には糞や尿や膿や血や
膏
(
あぶら
)
が溜ってい、
臓腑
(
ぞうふ
)
の中には汚物が充満し、いろ/\の虫が集っていること
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それは
臓腑
(
ぞうふ
)
と臓腑を
擦
(
す
)
りあわすような呻きであった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
どろどろと
臓腑
(
ぞうふ
)
ごと溶けて流れた血の
痕
(
あと
)
の
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
同時に、右から左へかけてはすかいに胴がわれて、一時に土を染めて流れ出す血、
臓腑
(
ぞうふ
)
……いつのまにか、ものの見事に斬られていたんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
せつな、ウオオッという吼え声とともに、牝の巨体は、その
臓腑
(
ぞうふ
)
の中に短刀を入れたまま、ころげ出て草原をまろび、
彼方
(
かなた
)
の林へザッと躍り込んだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえば「人生案内」の最後の景において機関車のほえるようなうめくような声が妙に人の
臓腑
(
ぞうふ
)
にしみて聞こえる。
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして彼らは自分の血をしぼり出し、自分の
臓腑
(
ぞうふ
)
をしぼり出していた。それは痛ましいまた奇怪な光景であった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
今のように血を出して肛門の処を切り取って中の
臓腑
(
ぞうふ
)
を引抜いて逆さにして一晩釣るしておかねばならん。こうして涼しい処へ置くと土用中でも二日位持つ。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
運命の暴力は、いかに
吾人
(
ごじん
)
が完成しておりあるいは冷静となっていても、吾人の
臓腑
(
ぞうふ
)
の底より人間性を引き出し、それを外部に現わさせるだけの特性を持っているものである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
わしが小坊主のとき、先代がよう云われた。人間は日本橋の真中に
臓腑
(
ぞうふ
)
をさらけ出して、恥ずかしくないようにしなければ修業を積んだとは云われんてな。あなたもそれまで修業を
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「土左衛門の
臓腑
(
ぞうふ
)
を烏がついばむところがあるんだ。土左衛門は人形だが、烏は
真物
(
ほんもの
)
で、種を聞くと、桶へ入れて
菰
(
こも
)
の間に隠しておく、
鰌
(
どじょう
)
をついばむんだってね、そりゃ凄いぜ親分」
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
家の隅の暗いところに障子代りの
衣
(
きぬ
)
が垂れているので、その隙間から窺うと、そこには大きい鳥のような物が人の如くに立っていた。その全身は水晶に似て、
臓腑
(
ぞうふ
)
がみな透いて見えた。
中国怪奇小説集:15 池北偶談(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
切り開いた陰部から手を
挿入
(
そうにゅう
)
して
臓腑
(
ぞうふ
)
を引き出したものとみえて、まるで
玩具
(
おもちゃ
)
箱をひっくりかえしたように、そこら一面、赤色と紫とその濃淡の諸器官がごっちゃに転がっていた、がただ一つ
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
が、ただ先哲、孫呉空は、
蟭螟虫
(
ごまむし
)
と変じて、夫人の腹中に飛び込んで、痛快にその
臓腑
(
ぞうふ
)
を
抉
(
えぐ
)
るのである。末法の凡俳は、
咽喉
(
のど
)
までも行かない、唇に触れたら
酸漿
(
ほおずき
)
の
核
(
たね
)
ともならず、
溶
(
とろ
)
けちまおう。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さもないと施術の時
臓腑
(
ぞうふ
)
が膨脹して非常に困難だし、それに血管の動作が激烈だから出血しやすい。出血は施術に
大禁物
(
だいきんもつ
)
で
少
(
すこし
)
でも出血したらモー施術が出来ん。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
一
振
(
しん
)
一
撥
(
ぱつ
)
、また、眼もとまらぬ一
撃
(
げき
)
一
突
(
とつ
)
、すべて見事な肉体の
空
(
から
)
演舞だった。史進は、声を
嗄
(
か
)
らして、その
喉
(
のど
)
から
臓腑
(
ぞうふ
)
を吐かんとするほどに身も疲れてしまった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
作品を
臓腑
(
ぞうふ
)
から
迸
(
ほとばし
)
り出させた強い本能は沈黙してしまっている。なんのために作品が生まれたのかもうわからない。作品のうちに自分の姿を認めることもなかなかできない。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
絵というよりもむしろ
臓腑
(
ぞうふ
)
の解剖図のような気味の悪い色の配合が並べられている。
丸善と三越
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
いま水からあげたばかりの
布
(
ぬの
)
を石にたたきつけたように、花と見える
血沫
(
ちしぶき
)
が
四辺
(
あたり
)
に散って、パックリと口を開いた白い斬りあとから、土にまみれる
臓腑
(
ぞうふ
)
が
玩具箱
(
おもちゃばこ
)
をひっくりかえしたよう……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
放蕩
(
ほうとう
)
の酒で
臓腑
(
ぞうふ
)
を洗濯されたような彼の
趣
(
おもむき
)
もようやく解する事ができた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“臓腑”の意味
《名詞》
臓腑 (ぞうふ)
五臓と六腑。内臓。はらわた。
(出典:Wiktionary)
臓
常用漢字
小6
部首:⾁
19画
腑
漢検1級
部首:⾁
12画
“臓腑”で始まる語句
臓腑様