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老爺
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おやじ
ふりがな文庫
“
老爺
(
おやじ
)” の例文
「
何
(
ど
)
うだか。分りゃしませんよ。
老爺
(
おやじ
)
め、なるべく遅く帰って来ればいゝのに。こう思っているのじゃありませんか。はゝゝゝゝ。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
スウェーデンの
牧牛女
(
うしかいめ
)
は狼を
黙者
(
だんまり
)
、
灰色脚
(
はいいろあし
)
、
金歯
(
きんば
)
など呼び、熊を
老爺
(
おやじ
)
、
大父
(
おおちち
)
、十二
人力
(
にんりき
)
、
金脚
(
きんあし
)
など名づけ決してその本名を呼ばず
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
所詮
(
しょせん
)
牛をそらすくらいならば、なぜ車の輪にかけて、あの
下司
(
げす
)
を
轢
(
ひ
)
き殺さぬ。怪我をしてさえ、手を合せて、随喜するほどの
老爺
(
おやじ
)
じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
坂下の花屋の小屋に、主人の乗換馬の白が預けてあるからと聞いて——小次郎はその花屋の軒に立ったが、きょうも
老爺
(
おやじ
)
はいなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凧を拵えようと思うけれど、骨がなくて弱っている所へ桶屋の
老爺
(
おやじ
)
が来た。竹を少し呉れと言ったら、いくらでも上げると言った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
と言うから、鐚が木口の後ろを見ると、いかにも人のよさそうな
老爺
(
おやじ
)
が一人、なべーんとした
面
(
かお
)
をして、しょんぼりと控えている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「どうしなすった。喧嘩でもしなすったかね。」と、橋番の
老爺
(
おやじ
)
はそこにある水桶の水を汲んでやりながら、少しく眉をひそめて訊いた。
放し鰻
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或
(
ある
)
冬の事、この
老爺
(
おやじ
)
というのが、元来
談
(
はなし
)
上手なので、近所の子供
達
(
だち
)
が夜になると必ず皆寄って来て、
老爺
(
おやじ
)
に
談
(
はなし
)
をせがむのが例であったが
千ヶ寺詣
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
云えば
直
(
すぐ
)
に殺されるか、刺違えて
死兼
(
しにかね
)
ぬ忠義
無類
(
むるい
)
の
極
(
ごく
)
頑固
(
かたくな
)
な
老爺
(
おやじ
)
でございますから、これを
亡
(
な
)
いものにせんけりアなりません。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
言うまでもなく、いつぞや身投げを助けられた
老爺
(
おやじ
)
と銭形の平次、寮の騒ぎを
他所
(
よそ
)
に、土手の蔭にヒソヒソと物語りします。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところがその山羊髯
老爺
(
おやじ
)
がソレでいて、ドコか喰えない感じがする。凄いところが在りそうな気がして、たまらなく薄気味が悪いから
怪訝
(
おか
)
しい。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
久助は、
老爺
(
おやじ
)
ではあったが、そういう宴席のとりなしなどは、巧みなものであった。口数をきかずに用が足りて、万事によく気が届くのであった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
上に
熊手
(
くまで
)
のかかった帳場に、でッぷりした肌脱ぎの
老爺
(
おやじ
)
が、立てた膝を両手で抱えて、眠そうに
倚
(
よ
)
りかかっていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「やれやれ
情
(
なさけ
)
ない、のう、お
前様
(
まえさん
)
。」
老爺
(
おやじ
)
頷
(
うなず
)
き、「御慈悲をば頼んでみるじゃ。」と二人は土下座をして
平突張
(
へッつくば
)
り
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
老爺
(
おやじ
)
もわがためには紀念すべき人である、だからこの画をこの
老爺
(
おやじ
)
にくれてやって八幡に奉納さすれば、われにもしこの後また退転の念が生じたとき
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
あの
老爺
(
おやじ
)
さんは確か二円五十銭で買ったはず、五十銭
儲
(
もう
)
けるとはひどい、もっと負けさせなさいなどいっています。しかし、三円なら値ぎりようもありません。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その照明にグロテスクに
隈
(
くま
)
どられた顔とともに、
水腫
(
みずば
)
れのした
咽喉
(
のど
)
を振り立てながら、あのレクトル・エケクランツ
老爺
(
おやじ
)
が、その品物の真なることを肯定して
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
雨の中に立って
大
(
おお
)
元気なり。早速足ごしらいをして飛び立つ。案内者を一名雇う。
佐十
(
さじゅう
)
さんという頑強日光一の案内
老爺
(
おやじ
)
。
負梯子
(
おいばしご
)
に一行の荷物をのせて雨中を出かける。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
「ハイハイハイッ。お邪魔でがあすよ。ハイハイハイッ」と馬上なる六十あまりの
老爺
(
おやじ
)
、
頬被
(
ほおかぶ
)
りをとりながら、怪しげに
二人
(
ふたり
)
のようすを見かえり見かえり行き過ぎたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
何だと思うと
中風病
(
ちゅうふうやみ
)
の
老爺
(
おやじ
)
が、しびんに
遣
(
やっ
)
てる。実は客ではない、その家の病人でしょう。その病人と並べて寝かされたので、汚くて
堪
(
たま
)
らなかったのは
能
(
よ
)
く覚えて居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
見なさる通り今こそ
頭
(
かしら
)
に雪を
戴
(
いただ
)
き、額にこのような波を寄せ、
貌
(
かお
)
の
光沢
(
つや
)
も
失
(
う
)
せ、肉も落ち、力も抜け、声もしわがれた梅干
老爺
(
おやじ
)
であるが,これでも一度は若い時もあッたので
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
そのかたわらに見るから
憐
(
あわ
)
れをもよおすような、病みやつれた六十ばかりの
老爺
(
おやじ
)
、下草にべったりと両手をつき、
水洟
(
みずばな
)
をすすりながら、なにかクドクドとくり言をのべている。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「では早速そういう事に取掛るに就ては、内の
老爺
(
おやじ
)
をここへ呼んで来ますよ」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
七色の風船玉を売って歩く
老爺
(
おやじ
)
のまわりには、村の子供がたかっていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
木戸番の
老爺
(
おやじ
)
が番台の上に坐って、まねきの口上を述べていた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
老爺
(
おやじ
)
の
詞
(
ことば
)
を叩き消すように順作が云った。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
たちまちの内にあの
老爺
(
おやじ
)
は、牛の
韁
(
はづな
)
でございましょう、有り合せた縄にかけられて、月明りの往来へ引き据えられてしまいました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
後ろで声がしたので、酒の
雫
(
しずく
)
を拭きながらふりかえってみると、さっき
賭将棋
(
かけしょうぎ
)
をやっていた相手の門番、
伊平
(
いへい
)
という
老爺
(
おやじ
)
である。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老爺
(
おやじ
)
は火縄の手を休めて腰を立てると、武士は肩にかけた振分けの荷物を縁台の上に投げ出して、
野袴
(
のばかま
)
の
裾
(
すそ
)
をハタハタと
叩
(
たた
)
き
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其
(
そ
)
の白きを
履
(
ふ
)
んで散歩する市郎の
許
(
ところ
)
へ、
彼
(
か
)
の七兵衛
老爺
(
おやじ
)
が駈けて来て、大きな眼と口とを
頻
(
しきり
)
に働かせながら、
山𤢖
(
やまわろ
)
の一件を注進したのである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と云ううちに貫七爺は眼の
球
(
たま
)
を奥の方へ引込まして支那扇を畳んだ。その表情が東京の寄席で聞いた何とかいう怪談屋の
老爺
(
おやじ
)
にソックリであった。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「いやな野郎だな——とにかく、あの
老爺
(
おやじ
)
が
鳥屋
(
とや
)
につくまで、後を跟けてみるがいい。とんだ
草臥儲
(
くたびれもう
)
けかも知れないが」
銭形平次捕物控:084 お染の歎き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
主「それは/\、
何
(
ど
)
うかまア此の
老爺
(
おやじ
)
の生きて居ります
中
(
うち
)
に、
敵
(
かたき
)
が討てますれば、もう
私
(
わたくし
)
は
外
(
ほか
)
に思い残すことは有りませぬ、何うか一刻もお早く」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女中は声を挙げて別荘番の
老爺
(
おやじ
)
を呼んだけれども、風雨の音に
遮
(
さえぎ
)
られて、別荘番の家までは、届かないらしかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
老爺
(
おやじ
)
はああいいますけれど、お上さんの気前を買って、私がお貸し申しましょう。だから入れられるだけ入れてみて下さい。倒されればそれまでです」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
たいがい
老爺
(
おやじ
)
と妻と息子と手提げが、四つぽかんとして通行人の膝から下を眺めてることが多かった。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
びっくりして振り向くと六十ばかりの
老爺
(
おやじ
)
が腰を
屈
(
かが
)
めて僕の肩越しにのぞき込んでいるんだ。僕はあまりのことに、何だびっくりしたじゃアないかと怒鳴ってやッた。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこの窓際まで来て、雨戸を開けて、
恰
(
あだか
)
も
戸外
(
おもて
)
の人と
談
(
はなし
)
をしているかの様子であった、
暫時
(
しばらく
)
して、
老爺
(
おやじ
)
はまた戸を閉めて、手に何か持ちながら
其処
(
そこ
)
の座に戻って来たが
千ヶ寺詣
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
彼
(
か
)
の田舎
老爺
(
おやじ
)
もこの事を知らなかったため横暴なる赤馬車に
虐
(
いじ
)
められているのであるが、いかに山の中とはいえ、かくのごとき不親切極まる営業振りは聞捨てにならぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
「やい、愚図々々してるとこうだぞ。」足を揚げて
老爺
(
おやじ
)
を蹴飛ばし、襟を
掴
(
つか
)
みて老婆を
突遣
(
つきや
)
る。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山猿のような例の
老爺
(
おやじ
)
が先に立って私と後藤君とは山道に掛かりましたが、左の方は断崖絶壁……下を
覗
(
のぞ
)
いて見ると、幾十丈とも分らぬ谷底の水が
紺青
(
こんじょう
)
色をして流れている。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ずいとはいり込むと、客が一人、
酒樽
(
さかだる
)
に腰を掛けて、
老爺
(
おやじ
)
を相手に盛んに弁じ立てている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「お前の
老爺
(
おやじ
)
が死んだのか」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
が、あの
老爺
(
おやじ
)
はとんとそれに頓着する
容子
(
ようす
)
もなく、ただ、二三歩譲っただけで、
相不変
(
あいかわらず
)
とぼとぼと寂しい歩みを運んで参ります。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「親分はいねえが、部屋の留守は年寄役でおれが預かっている。おれは、
念仏太左衛門
(
ねんぶつたざえもん
)
という
老爺
(
おやじ
)
だが、何か挨拶があるなら聞いてやろう」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
百姓の
老爺
(
おやじ
)
と子供とがその掛物を拡げて見ようとするところだから、米友は眼の色を変えて駈け寄って、横の方から、それをひったくりました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「第一、先般、御承知の一パイ屋の藤六
老爺
(
おやじ
)
が死にました時に仏壇の中から古い人間の頭蓋骨と、麦の
黒穂
(
くろんぼ
)
が出た事は、御記憶で御座いましょう」
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
怪しい
死
(
しに
)
ざまに見せかけて白翁堂の
老爺
(
おやじ
)
をば一ぺい
欺込
(
はめこ
)
み、又海音如来の御守もまんまと首尾
好
(
よ
)
く盗み出し、根津の清水の花壇の中へ埋めて置き
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼は苦しまぎれに門番の
老爺
(
おやじ
)
を口説いた。門番は内職をして小金を溜めているということを知っているからであった。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
妙な苦笑ひと一緒に、
澁紙張
(
しぶがみばり
)
にしたやうな五十恰好の
老爺
(
おやじ
)
が一人、木戸を押し開けて、縁側の方へ顏を出しました。
銭形平次捕物控:173 若様の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
爺
漢検準1級
部首:⽗
13画
“老爺”で始まる語句
老爺様
老爺染