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羞
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はじ
ふりがな文庫
“
羞
(
はじ
)” の例文
自分の為にこんな騒ぎまで起ったかと思うと、口ではさかしく応対しても、さすがに
羞
(
はじ
)
らわないではいられなかったのだ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
正直を言えば、嬉しく、心楽しい思いであった。この老人をなつかしみ、帰りを喜ぶ
羞
(
はじ
)
らいと思ってもいいのだろうか。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
そうして、真に生活する限り、猿真似を
羞
(
はじ
)
ることはないのである。それが真実の生活である限り、猿真似にも、独創と同一の優越があるのである。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると、さも
嬉
(
うれ
)
しそうに
莞爾
(
にっこり
)
してその時だけは
初々
(
ういうい
)
しゅう
年紀
(
とし
)
も七ツ八ツ若やぐばかり、
処女
(
きむすめ
)
の
羞
(
はじ
)
を
含
(
ふく
)
んで下を向いた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
直輝は
袴
(
はかま
)
の
紐
(
ひも
)
を、きゅっとしめながら云った。支度がすんで居間へもどると、茶を
点
(
た
)
てて来た加代は、
羞
(
はじ
)
をふくみながら一枚の短冊をそっとさし出した。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
どんな
羞
(
はじ
)
を忍んでも
厭
(
いと
)
わないから、一度会ってこちらの悲しい真心を立ち割って話して見たならば、いかに冷淡無情を商売の信条と心得ている
廓者
(
くるわもの
)
でも
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
物事の径路がハッキリして来ると、今までは半信半疑であった事件が、マザマザと考えられて来、妻の露骨な仕打ちが、わが事のように
羞
(
はじ
)
らわれて来た。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
四郎が去った後で閻は
羞
(
はじ
)
と
憤
(
いきどお
)
りにたえられないので自殺しようと思って、帯で環をこしらえて
縊死
(
いし
)
しようとしたが、帯が
断
(
き
)
れて死ぬることができなかった。
五通
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
その新しさ、新しさをうけいれてゆく弾力、自分の未発展なものへの期待、その故に
羞
(
はじ
)
らいをもっている。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
まだ世馴れざる里の子の
貴人
(
きにん
)
の前に出でしように
羞
(
はじ
)
を含みて
紅
(
くれない
)
潮
(
さ
)
し、額の皺の
幾条
(
いくすじ
)
の
溝
(
みぞ
)
には
沁出
(
にじみ
)
し
熱汗
(
あせ
)
を
湛
(
たた
)
え、鼻の
頭
(
さき
)
にも
珠
(
たま
)
を湧かせば
腋
(
わき
)
の下には雨なるべし。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、ロッセ氏は、
羞
(
はじ
)
らいながら
応
(
こた
)
えた。金博士からメンタルテストをされたように感じたからであろう。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
黒襲
(
くろがさね
)
に
白茶七糸
(
しらちゃしゅちん
)
の丸帯、
碧玉
(
へきぎょく
)
を刻みし
勿忘草
(
フォルゲットミイノット
)
の
襟
(
えり
)
どめ、(このたび武男が米国より
持
(
も
)
て来たりしなり)四
分
(
ぶ
)
の
羞
(
はじ
)
六
分
(
ぶ
)
の
笑
(
えみ
)
を含みて、
嫣然
(
えんぜん
)
として
燈光
(
あかり
)
のうちに立つ姿を
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
島田髷
(
しまだまげ
)
に
平打
(
ひらうち
)
をさして、こてこて白粉や紅を塗って、
瘟気
(
いきれ
)
のする人込みのなかを歩いているお庄の
猥
(
みだ
)
らなような顔が、明るいところへ出ると、
羞
(
はじ
)
らわしげに
赧
(
あか
)
らんだ。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ひたすら、留守中の世話になった礼やら詫びを、くり返すのみで、すぐ
羞
(
はじ
)
らいにさしうつ向いた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中央なる机には美しき
氈
(
かも
)
をかけて、上には書物一、二巻と
写真帖
(
しゃしんちょう
)
とをならべ、
陶瓶
(
とうへい
)
にはここに似合わしからぬ
価
(
あたい
)
高き花束を
生
(
い
)
けたり。そが傍らに少女は
羞
(
はじ
)
をおびて立てり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
日の光りに照らされて、鮮紅に、心臓のごとく
戦
(
おのの
)
くのを見ても、また微風に吹かれて、
羞
(
はじ
)
らうごとく揺らぐのを見ても、かぎりない、美しさがその中に見出されるであろう。
名もなき草
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
節子の苦しみと悩みとは、それを包もう包もうとしているらしい彼女の
羞
(
はじ
)
を帯びた
容子
(
ようす
)
は、一つとして彼女の
内部
(
なか
)
から押出して来る恐ろしい力を語っていないものはなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と叫んで弥生の声は、嬉しさと
羞
(
はじ
)
らいをごっちゃにして、今にも消え入りそうだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
お勢との
関繋
(
かんけい
)
がこのままになってしまッたとは情談らしくてそうは思えんのか?
総
(
すべ
)
てこれ等の事は多少は文三の
羞
(
はじ
)
を忍んで尚お園田の家に居る原因となったに相違ないが、しかし
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
数々の
羞
(
はじ
)
を知らぬ
放埒
(
ほうらつ
)
な女を見て来続けている山口には、お杉の滑らかに光った淡黒い皮膚や、
瞼毛
(
まつげ
)
の影にうるみを湛えた黒い眼や、かっちり
緊
(
しま
)
った足や腕などは、忘れられた岩陰で
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
桟橋の上で青年と娘とが、
羞
(
はじ
)
らいながらぼそぼそと、話しているのが見て取れた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ただし大昔も
筑波山
(
つくばやま
)
のかがいを見て、旅の文人などが想像したように、この日に限って
羞
(
はじ
)
や批判の煩わしい世間から、のがれて快楽すべしというだけの、浅はかな歓喜ばかりでもなかった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ずばずば応対して女の子らしい
羞
(
はじ
)
らいも、作為の態度もないので、一時女学校の教員の間で問題になったが、商売柄、自然、そういう女の子になったのだと判って、いつの間にか疑いは消えた。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そしてあどけない
羞
(
はじ
)
らいを帯びた微笑を口元に浮べて
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
と
羞
(
はじ
)
らったような声で
一週一夜物語
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
はいと云って
羞
(
はじ
)
らいながら、しかし悪びれたようすもなく、うっとりとした笑顔をこちらへ向けた。
明暗嫁問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その一つは彼女が、いつか
羞
(
はじ
)
らいをもって彼に告げたごとく、彼女がこのたび杜と同棲する以前に於ては、ミチミの身体が全く純潔を保たれていたという意外なる事実であった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
若い将校は、
羞
(
はじ
)
らいぎみに外国語をつかう伸子の顔にじっと笑いをふくんだ目を注ぎ、もう一度直立してその拍子に踵をうち合わせ、チャリンと拍車を鳴らして、去って行った。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると辰夫は此等私の無礼極まる言説にも寧ろ益々粛然として、深い自卑と
羞
(
はじ
)
らう色を表わして項垂れてしまうから、私は取りつく島もない自卑のあまり前後不覚に
狼狽
(
ろうばい
)
する次第であった。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ふたり
限
(
き
)
りで、この御堂の
素莚
(
すむしろ
)
に坐っておると、ふたりが祝言いたした
清洲
(
きよす
)
時代の——あの弓之衆長屋が思い出されるではないか。そなたの
羞
(
はじ
)
らう
容子
(
ようす
)
、また、良人を迎える心からな容子。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一番
年長
(
うえ
)
のは
最早
(
もう
)
十四五になる。狭い帯を〆《しめ》て
藁草履
(
わらぞうり
)
なぞを
穿
(
は
)
いた、しかし髪の毛の黒い
娘
(
こ
)
だ。
年少
(
としした
)
の子供は私達の方を見て、何となくキマリの悪そうな
羞
(
はじ
)
を帯びた顔付をしていた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
俯向
(
うつむ
)
いた顔を挙げてちょいと見て、
羞
(
はじ
)
を含んだような物の言いようをする。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
老人は少し
羞
(
はじ
)
らいながら、そのすばらしく大きな麦藁帽子をぬいでみせた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
憤
(
いきどお
)
るよりも前に、まず
駭
(
おどろ
)
き、
羞
(
はじ
)
らい、
懼
(
おそ
)
れ、転がるように会場から
脱
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
でた。そして自分の部屋に帰って来て、安楽椅子の上に身を
抛
(
な
)
げだした。そしてやっとすこし気を取り直したのだった。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「わたしはよく覚えていない。」とお粂が
羞
(
はじ
)
を含みがちに言う。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二十歳
(
はたち
)
で嫁に来たお梶は、わたくしなにも存じませんと云うだけで、いつもひっそりと眼を伏せていた。寝屋にはいっても人形を抱くようで、なんの感動もあらわさず、
羞
(
はじ
)
らいさえもみせなかった。
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
羞
常用漢字
中学
部首:⽺
11画
“羞”を含む語句
羞恥
含羞
羞耻
嬌羞
羞明
含羞草
可羞
羞含
羞恥心
面羞
心羞
気羞
珍羞
羞痒
多羞
羞耻心
花羞
羞渋
羞恥家
羞顔
...