ゆつ)” の例文
「さあ。事情次第だが。実はゆつくり君に相談して見様と思つてゐたんだが。うだらう、きみにいさんの会社の方にくちはあるまいか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「叔父さん」と子供はあとを見送りながら呼んだ。「そんなに急がないで、ゆつくりおきよ、ワシントンはもう死んぢやつてるんだよ。」
此次このつぎ座敷ざしきはきたなくつてせまうございますが、蒲団ふとんかはへたばかりでまだあかもたんときませんから、ゆつくりお休みなさいまし
「本当にかう毎晩のやうに火事があつては、ゆつくり寝ても居られねえだ。本当に早くうかて貰はねえでは……」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『さうだツか、お泊りやすか。……其の方がゆつくりしてよろしおますな。……なア奧さん。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しなはおつぎを今朝けさゆつくりさせてやらうとおもつてた。それでもおつぎはにはとりまたいたときむつくりきた。いつもとちがつてあまりひつそりしてるのでおどろいたやうにあたりをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
烟草をしづかゆつくり吸ひ込み、軽い穏な雲を吹き出し、時としては烟管を口から引き出し、匂ひの善い烟に鼻のあたりで環を書かせ、物体もつたいらしくうなづいて、その腹からの大賛成を表します。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
『大丈夫だといふに。……ゆつくり晝寢でもしてゆくから、構はず歸り給へ。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其所そこまで買物かひものたから、ついでつたんだとかつて、宗助そうすけすゝめるとほり、ちやんだり菓子くわしべたり、ゆつくりくつろいだはなしをしてかへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
写真師は顔を真赤にしてげ出した。そしてあとゆつくり考へてみると、成程米国の副統領には顔は一つしか無かつた。ちやう屠牛所とぎうしよの牛と同じやうに。
「まア、御疲れだせうに、ゆつくり横にでも成つて休まつしやれ。牟礼むれには三里には遠いだすから」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『大丈夫だといふに。……ゆつくり昼寝でもしてゆくから、構はず帰り給へ。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「おつう、せかねえでもえゝぞ、今朝けさすこ工合ぐえゝわりいからゆつくりすつかんなよ」おしなはいつた。おつぎはしばらくもぢ/\しながらおびしめ大戸おほどを一まいがら/\とけてをこすりながらにはた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
御米およねなほした。宗助そうすけ途方とはうれて、發作ほつさをさまるのをおだやかにつてゐた。さうして、ゆつくり御米およね説明せつめいいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あきまへん、とてもあきまへんよつて、お先きへ往かしとくなはれや、そしてお爺さんはあとからゆつくりおいなはれ。」
母の手紙はあとでゆつくりる事として、取り敢ず食事を済まして、烟草をかした。其けむを見ると先刻さつきの講義を思ひ出す。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、可哀かあいさうに。こんなに縛られてゐて、どんなにか苦しからうよ。さあさあゆつくり息をつくといい。」
「うん、まあ、ある様ない様なもんだ。ければ当分あそぶ丈の事だ。ゆつくりさがしてゐるうちにはうかなるだらう」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「画つてものは、そんなに忙しさうにいちや駄目だよ、ゆつくり落着いて掛らなくつちや。」
いづゆつくりみんなでつてめやう、都合つがふがよければ小六ころく列席れつせきするがからうといふのがわかれるとき言葉ことばであつた。二人ふたりになつたとき、御米およね宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なに二ヶ月や三ヶ月は、書物か衣類を売り払つてもうかなるとはらなかたかくゝつて落ちいてゐた。ことの落着次第ゆつくり職業をさがすと云ふ分別もあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
美禰子は食物くひものを小皿へ取りながら、与次郎と応対してゐる。言葉に少しもよどみがない。しかもゆつくり落付いてゐる。殆んど与次郎の顔を見ない位である。三四郎は敬服した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これをへやなかへ入れて、片付けるんです。今に先生も帰つてて手伝ふ筈だから訳はない。——君、しやがんで本なんぞ読みしちや困る。あとで借りて行つてゆつくりむがいゝ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)