編纂へんさん)” の例文
ちょいとのぞいてみると、いわく「世界お伽噺とぎばなし法螺ほら博士物語」、曰く「カミ先生奇譚集きたんしゅう」、曰く「特許局編纂へんさん——永久運動発明記録全」
妖怪研究の結果を編纂へんさんして、『妖怪学講義』の題目にて世間に発表したるも、その書はあまり大部にして容易に通読し難きを知り
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
年若きゼミール王は、「即位」の大典をあげるや、ただちに天下の学者に命じて、最も精密なる「人類の歴史」を編纂へんさんせしめたのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
と断わったことがあったが、吉井勇よしいいさむさんが編纂へんさんした、武子さんの遺稿和歌集『白孔雀しろくじゃく』のあとに、柳原燁子やなぎはらあきこさんが書いていられる一文に
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
自分の想像するところでは、結局教科書を編纂へんさんする機関の中に科学的な頭脳とその主動的な要素が欠除しているのではないかと思われる。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この仕事に没頭することちょうど満四年。太初たいしょ元年にようやくこれを仕上げると、すぐに彼は史記しき編纂へんさんに着手した。遷、ときに年四十二。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
『新俳句』編纂へんさんより今日に至る僅かに三、四年に過ぎざれどもその間における我一個または一団体が俳句上の経歴は必ずしも一変再変に止まらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
編纂へんさんに着手してみると、思いのほかに時間がとれて、仕事が進まないのでその当時は徹夜することも珍しくなかった。
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三葉三四郎が編纂へんさんした『世界映画史』の口絵写真にある、今から四十年まえに大人気を博した女賊映画の主人公プロテアのような姿の美女であった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大戦争前に独逸ドイツの御用学者らがそろいもそろって政治的人類学という雑誌を編纂へんさんして、仏人ゴビノーという曲学者より聞いた独逸民族優勢説をかつぎ出し
民族優勢説の危険 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「僕は今旅行案内の編纂へんさんをしてゐるんだ。まづ今までに類のない、大規模な旅行案内をこしらへて見ようと思つてね。」
塵労 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
古事記や書紀の編纂へんさんがこの時期に行われたのも、天皇家の日本支配を正統づける文献が必要であった為であり、その必然の修史事業のくわだてによっても
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
兄エドモン・ド・ゴンクウルは弟ジュウルの歿後ぼつごそのよわいようやく六十に達せんとするの時、あらたに日本美術の研究に従事しまず歌麿うたまろ北斎ほくさい二家の詳伝を編纂へんさんせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼はまず、学校用の古い編纂へんさん書から、抜粋文集から、読み始めた。それはリーリ・ラインハルトやその良人にとって、学生時代に役だったものであった。
江湖雑誌こうこざっし編輯へんしゅうで二十円、英和字典の編纂へんさんで十五円、これが道也のきまった収入である。ただしこのほかに仕事はいくらでもする。新聞にかく、雑誌にかく。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この本を編纂へんさんするに当って、四十数カ所の全部について記事を集めることが出来なかったのは残念である。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
直衛が頑強がんきょうに反対し、そのため甲斐守教信かいのかみのりのぶうとまれて、御代代実録という、藩史編纂へんさんの頭取に左遷された。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今なら文化生活で、美妙の得意はこの安価洋風装飾に現れていた。が、その頃は字書を編纂へんさんしていたので文壇人としては既に一歩を降り坂に踏入れていたのだ。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「直接編纂へんさんの任に当る私はいの一番でございます。お蔭を持ちまして、好い精神修養が出来ましょう」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
国語読本の編纂へんさんに専門の詩人や文学者を除外しているために、こういう粗野な読本が出来上り、これに依って国民の感情教育が非常に退化させられていると思います。
捨吉達が同級生の一人のお父さんにあたる人で、新撰讃美歌集の編纂へんさん委員たる長い白いひげはやした老牧師が通った。青山と麻布あざぶにある基督教主義の学院の院長が通った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『日本紀』というおおやけの記録が、編纂へんさんせられるよりもずっと以前から、こちらでは海陸二つの世界の交通が、ほぼ完全に閉鎖せられていたのに対して、南の方の島々には
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
維新は、水戸義公の大日本史編纂へんさんをはじめ、契沖けいちゅう春満あずままろ真淵まぶち宣長のりなが篤胤あつたね、または日本外史の山陽さんようなど、一群の著述家の精神的な啓蒙によって口火を切られたのです。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私の手もとに明治四十年発行の東京市編纂へんさん「東京案内」という本があるが(この明治四十年というのは、私の生れた年なので、この本には特別の感情が持たれるのだが)
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
同じく十八世紀で、百科全書編纂へんさん者として名高いダランベールも、ヴォルテールに劣らぬ人の悪い男であるが、彼の百科全書第二巻、愛書狂のページには斯んな事が書いてある。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
それから『万葉集』は編纂へんさんした者は一人かも知れませんが、それの土台になったものは非常に沢山あって、色々の昔の歌集や歌を書いておいたものなどを集めて来たもので
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
漢学者兼編纂へんさん者としての三宅嘯山、元禄研究者古書翻刻者としての蝶夢和尚おしょうもあります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
僕が教科書を編纂へんさんすべき任に当ったら、先ず第一に誠心実意忠良無二の精神ある人物を択んでその人に托するね。しかるに今や天下の文学者を見渡してそういう人が何処どこにある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
三代の手を経て編纂へんさんされたものというから、愈〻、武蔵の直話などでないことは明らかで、ただ藩の人々に彼の父祖の話として伝えられたものが、武蔵の死後百年以上たってから
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田沢坦たざわゆたか大岡実おおおかみのる両氏編纂へんさんの「図説日本美術史」によって往時の復原平面図をみることが出来たが、中門以内だけの寺域を目算によって比較してみても、東大寺は法隆寺のおよそ十倍
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
彼が生涯の楽しみにしている「小学算術教科書」の編纂へんさんに取りかかるのであった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その仕事というのはダース博士から頼まれたチベット語の文典ぶんてん編纂へんさんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
翌十三年十月全集の第二巻が出ました時、平野氏の書かれた編纂へんさん後記に
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
参謀本部さんぼうほんぶ編纂へんさん地図ちづまた繰開くりひらいてるでもなからう、とおもつたけれども、あまりのみちぢやから、さはるさへあつくるしい、たび法衣ころもそでをかゝげて、表紙へうしけた折本をりほんになつてるのを引張ひつぱした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これが『新古今集』編纂へんさんの事業の、形にあらわれた最初であった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
つぎに著者ちよしや編纂へんさんした注意書ちゆういしよかゝげることにする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そのほかになかなか美しい人形や小箱なども陳列してあったが、いちばん自分の注意をひいたのは児童教育のために編纂へんさんされた各種の安直な絵本であった。
火事教育 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今般文部省にて編纂へんさんせられたる『国定小学修身書』を一読するに、その中に迷信の課題ありて、懇切に迷信に関する注意を与えられしも、その文簡短にして
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
わたくしは高瀬代二郎氏の著した細井平洲の詳伝と文部省編纂へんさんの『日本教育史資料』等を検したが、尾張明倫堂の教員の中に幽林鷲津幸八の名を見なかった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これは俳句分類といふ書物の編纂へんさんをして居た時に常に使ふて居たものでその頃は毎日五枚や十枚の半紙に穴をあけて、その書中に綴込とじこまぬ事はなかつたのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そうして廻国の遍歴が始まる時からそれが終るまでと、終りし以後更に十カ年をも合せ、日表を編纂へんさんし、その足跡と滞留の個所と期日とを明瞭にしようと試みました。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
子供が学ぶ新しい物の名は、大抵たいていは祖父が小さい時に教えられて、そのまましまって置いた古い智識でした。特に小学読本の如く子供のために編纂へんさんしたものではないのです。
誠実にこの鴎外全集を編纂へんさんなされて居られるようですが、如何にせんドイツ語ばかりは苦手の御様子で、その点では、失礼ながら私と五十歩百歩の無学者のようであります。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
君が油井伯の遺稿を編纂へんさんしている時、ったことがあるね、吾輩はあの時、青木寛の一家に復讐した話をして、もうこれから永遠の安静に入ると云ったが、今日は君達はじめ
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ガラマサどんは現に自分の逸話を私に編纂へんさんさせているのだから、むずかしい顔付になった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼はそこにある自分の本箱の中に、湖十の編纂へんさんした芭蕉ばしょうの一葉集、高輪の浅見先生に聞いてある古本屋から探し出して来た西行の選集抄、その他日頃愛読する和漢の書籍をしまって置いた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
参謀さんぼう本部編纂へんさんの地図をまた繰開くりひらいて見るでもなかろう、と思ったけれども、余りの道じゃから、手をさわるさえ暑くるしい、旅の法衣ころもそでをかかげて、表紙をけた折本になってるのを引張ひっぱり出した。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして全国の小学児童に代数や幾何きかの面白さを習得さすべく、彼自身の貴い経験によって、心血を傾けて編纂へんさんしつつある「小学算術教科書」が思い通りに全国の津々浦々つづうらうらにまで普及した嬉しさや
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
されど資力なくしてはこの種の大事業を成就じょうじゅし得ざるを以て彼は字書編纂へんさんの約束を以て一時書肆しょし冨山房ふざんぼうに入りしかど教科書の事務に忙殺せられて志を遂ぐる能はず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ジルケ教授は日本絵画史の編纂へんさんに従事せしかどその業成らざるに先立ちて千八百八十年代に歿ぼっしき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)