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等閑
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なおざり
ふりがな文庫
“
等閑
(
なおざり
)” の例文
この非芸術的濫訳横行の中にあって、二葉亭の『あいびき』は殆んど原作の一字一句をも
等閑
(
なおざり
)
にしない飜訳文の新らしい模範を与えた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
畢竟するに婦人が婚姻の契約を
等閑
(
なおざり
)
に附し去り、却て自から其権利を棄てゝ自から鬱憂の淵に沈み、習慣の
苦界
(
くがい
)
に苦しむものと言う可し。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「神慮の鯉魚、
等閑
(
なおざり
)
にはいたしますまい。略儀ながら
不束
(
ふつつか
)
な田舎料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直って
真魚箸
(
まなばし
)
を構えた。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
されば義尚の方でも実隆をば
等閑
(
なおざり
)
ならずもてなし、禁裏当番かつは御連歌の御催しがあるので実隆にとりては是非祗候すべきはずの日にも
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
もったいなくも征夷大将軍、源氏の
棟梁
(
とうりょう
)
のお姿を刻めとあるは、職のほまれ、身の面目、いかでか
等閑
(
なおざり
)
に存じましょうや。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
ついにメルキオルは、給料を手にしなくなってからは、ヴァィオリニストの職務をますます
等閑
(
なおざり
)
にするようになった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
万一討ちもらしたら他領までも付け入って討ち取るように、それを
等閑
(
なおざり
)
にしたらきっと
御沙汰
(
ごさた
)
があるであろうという意味のことも書き添えてあった。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
今日までこの領域の価値をほとんど全く
等閑
(
なおざり
)
にしてきたのは、多くの批評家多くの美学者達の無理解によるのです。
美の国と民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
天なるものにつきての考察を
等閑
(
なおざり
)
にする近代の文化に毒されているからである。もし中世の人ならば私の言説を最も普通のこととして聴いたかもしれない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
しかしながら食物が生存の大本であると思えば一日も
等閑
(
なおざり
)
には出来ません。
先刻
(
さっき
)
のお話にライスカレーの事が出ましたが
我輩
(
わがはい
)
は至ってライスカレーが
好
(
すき
)
です。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「夫婦苦楽を共にするということは
努々
(
ゆめゆめ
)
等閑
(
なおざり
)
にさるべきことではない」のだから、ことこれに関しては
三つの「女大学」
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし、これらの主張も皆それらは純粋小説論の後から起るべき問題であって、今、純粋小説を
等閑
(
なおざり
)
にして文学としての能動主義も浪曼主義も、意味をなさぬと思う。
純粋小説論
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
国の大事ぞ、
等閑
(
なおざり
)
になせそ、もし何者にもあれ天神の難問を
能
(
よ
)
く解き開き得ば厚く賞与をすべきなりと、一国内に
洽
(
あまね
)
く知らしめて
答弁
(
こたえ
)
を募るに応ずるものも更になし。
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は、自分の娯しみを全く
等閑
(
なおざり
)
にして、ひたすら西洋人の態度をぬすみみた。だが、そのツァイスの精巧なレンズの目標が、果してどの見当であるかさえ、皆目推量もつかなかった。
風船美人
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
けれども
三四日
(
さんよっか
)
等閑
(
なおざり
)
にしておいた
咎
(
とが
)
が
祟
(
たた
)
って、前後の続き具合がよく解らなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蝋燭
(
ろうそく
)
を
二梃
(
ちょう
)
も立てて一筋の毛も
等閑
(
なおざり
)
にしないように、
鬢
(
びん
)
に毛筋を入れているのを、道太はしばしば見かけた。それと反対で毛並みのいいお絹の髪は二十時代と少しも変わらなかった。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一樹の
蔭
(
かげ
)
に共にやどり、一河の流れを共に汲む、それさえ多生の縁だという、まして相馴れて三年となる、
等閑
(
なおざり
)
でないわしの心、折りにふれ物につけ、お前も知ってくれたと思うよ。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
天祐和尚の逗留中に権兵衛のことを沙汰したらきっと助命を請われるに違いない。大寺の和尚の
詞
(
ことば
)
でみれば、
等閑
(
なおざり
)
に聞きすてることはなるまい。和尚の立つのを待って処置しようと思ったのである。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして今私は自分の仕事を
等閑
(
なおざり
)
にしていることに気がついて来た。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「
神慮
(
しんりょ
)
の
鯉魚
(
りぎょ
)
、
等閑
(
なおざり
)
にはいたしますまい。略儀ながら
不束
(
ふつつか
)
な
田舎
(
いなか
)
料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直つて
真魚箸
(
まなばし
)
を構へた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
居家の私徳を
等閑
(
なおざり
)
にするにおいては、あたかも根本の浅き公徳にして、我輩は時にその動揺なきを保証する
能
(
あた
)
わざるものなり。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
弟のために身を犠牲にするという唯一の務めを、ちょっとでも
等閑
(
なおざり
)
にした罰を受けたのだと、みずから信じたかった。そしてますますその務めに身を投げ出した。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いずれにしても、
等閑
(
なおざり
)
には致されない事件と認められて、第一の報告者たる半七が、その探索を申し付けられた。半七はすぐ源次を近所の小料理屋へ連れて行った。
半七捕物帳:22 筆屋の娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
決して
等閑
(
なおざり
)
に書きなぐったのではないが、『其面影』のような細かい
斧鑿
(
ふさく
)
の跡が見えないで、自由に伸び伸びした作者の
洒落
(
しゃらく
)
な江戸ッ子風の半面が能く現れておる。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
美しさから云って一番卓越しているのは、むしろ中期以後のもの、すなわちおよそ百五、六十年この方のもの、今日の歴史家から全く
等閑
(
なおざり
)
にされている作品である。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
素人
(
しろうと
)
がいかに脳漿を絞っても専門家を
凌駕
(
りょうが
)
して天下後世へ伝わるほどの名句が出来るはずもないのに、無用な事へ心を労してそれがために実用の智識を
等閑
(
なおざり
)
にするのは最も憂うべき事だ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
等閑
(
なおざり
)
のこの四五日に藤尾の
眉
(
まゆ
)
にいかな
稲妻
(
いなずま
)
が差しているかは夢
測
(
はか
)
りがたい。論文を書くための勉強は無論大切である。しかし藤尾は論文よりも大切である。小野さんはぱたりと書物を伏せた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
此れも下女の不行届、其れも下男の
等閑
(
なおざり
)
など、逐一計え立て
徒
(
いたずら
)
に心配苦労して益なき事に疳癪を起すは、
唯
(
ただ
)
愚
(
ぐ
)
と言う可きのみ。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
しながら、
密
(
そっ
)
とその縄を取って
曳
(
ひ
)
くと、
等閑
(
なおざり
)
に土の割目に刺したらしい、竹の根はぐらぐらとして、縄がずるずると
手繰
(
たぐ
)
られた。慌てて放して、後へ
退
(
さが
)
った。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
個性中心の見方からして、工藝の美が
等閑
(
なおざり
)
にされたのも無理はない。否、高き工藝は、美術的であらねばならぬとさえ考えられた。だがこれが工藝への正当な見方であろうか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「くどくも云う通り、頼まれたお方が余人でないので、わたくしも
等閑
(
なおざり
)
には存じません」
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と毎日口に入るるものは
片時
(
へんじ
)
も
等閑
(
なおざり
)
にすべからず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
故に夫婦苦楽を共にするの一事は
努〻
(
ゆめゆめ
)
等閑
(
なおざり
)
にす可らず、苦にも楽にも私に之を隠して之を共にせざる者は、夫にして夫に非ず、妻にして妻に非ず。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
バスケットに、
等閑
(
なおざり
)
に
絡
(
から
)
めたままの、城あとの
崩
(
くず
)
れ
堀
(
ぼり
)
の
苔
(
こけ
)
むす
石垣
(
いしがき
)
を
這
(
は
)
って枯れ残った小さな
蔦
(
つた
)
の
紅
(
くれない
)
の、
鶫
(
つぐみ
)
の血のしたたるごときのを見るにつけても。……急に寂しい。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それはただに美を主眼とすることによって、用を
等閑
(
なおざり
)
にするのみならず、少しよりできないことによってますます用途から離れてくる。そうして高価だということも経済的欠点になる。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
と今は何物をも
等閑
(
なおざり
)
に見ず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
古来女性の学問教育を
等閑
(
なおざり
)
に附して既に其習慣を成したることなれば、今日
遽
(
にわか
)
に之を起して遽に高尚の門に入れんとするも、言う可くして行わる可らざるの所望なれば
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
乏しい様子が、燐寸ばかりも、
等閑
(
なおざり
)
になし得ない道理は
解
(
よ
)
めるが、
焚残
(
もえのこ
)
りの軸を何にしよう……
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
技術もまた相当に保たれているのであります。ただ残念なことに前にも述べた通り、それらのものの値打ちを見てくれる人が少くなったため、日本的なものはかえって
等閑
(
なおざり
)
にされたままであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
徳教は耳より入らずして目より入るとは我輩の常に唱うる所にして、之を
等閑
(
なおざり
)
にす可らず。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その寛容と深切に対しても、
等閑
(
なおざり
)
に棄てては置けない、料金は翌日にも持参しなさい。で、二日ばかりおいて、両国まで、その持参です。……なくなしたお小遣の分まで恵与に預る。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上草履
(
うわぞうり
)
の
爪前
(
つまさき
)
細く
※娜
(
たおやか
)
に腰を掛けた、年若き夫人が、博多の
伊達巻
(
だてまき
)
した
平常着
(
ふだんぎ
)
に、お
召
(
めし
)
の
紺
(
こん
)
の
雨絣
(
あまがすり
)
の羽織ばかり、
繕
(
つくろ
)
はず、
等閑
(
なおざり
)
に
引被
(
ひっか
)
けた、
其
(
そ
)
の姿は、
敷詰
(
しきつ
)
めた
絨氈
(
じゅうたん
)
の
浮出
(
うきい
)
でた
綾
(
あや
)
もなく
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
されども少しく考え見るときは、身の挙動にて教うることは書を読みて教うるよりも深く心の底に染み込むものにて、かえって大切なる教育なれば、自身の所業は決して
等閑
(
なおざり
)
にすべからず。
家庭習慣の教えを論ず
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
無いとも限らん——有れば急病人の
許
(
とこ
)
から
駈着
(
かけつ
)
けて、門を
敲
(
たた
)
いても、内で寝入込んで、車夫をはじめ、玄関でも起さない処から、
等閑
(
なおざり
)
な田舎の
構
(
かまえ
)
、どこか垣の隙間から自由に入って来て
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
社会百福の
基
(
もとい
)
、また百不幸の源たるの理由は、前に
陳
(
の
)
べたる所を以て既に明白なりとして、さて古今世界の実際において、両性のいずれかこの関係を
等閑
(
なおざり
)
にして大倫を破るもの多きやと尋ぬれば
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そのまま
等閑
(
なおざり
)
にすべき義理ではないのに、主人にも、女にも、あの
羅
(
うすもの
)
の
償
(
つぐない
)
をする用意なしには、忍んでも逢ってはならないと思うのに、あせって
掙
(
もが
)
いても、半月や一月でその
金子
(
かね
)
は出来なかった。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
儒者の奴等が詩を作ると云えば
此方
(
こっち
)
は
態
(
わざ
)
と作らずに見せよう、奴等が書を善くすると云えば此方は
殊
(
こと
)
更らに
等閑
(
なおざり
)
にして善く書かずに見せようと、飛だ処に
力身込
(
りきみこん
)
で手習をしなかったのが生涯の失策。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ただ
等閑
(
なおざり
)
に言い棄てたが、小松原は思わず
拳
(
こぶし
)
を握った。生れて
以来
(
このかた
)
、かよわきこの
女性
(
にょしょう
)
に対して、男性の意気と力をいまだかつて一たびもために
露
(
あら
)
わし得た
覚
(
おぼえ
)
がない。
腑効
(
ふがい
)
なさもそのドン
詰
(
づまり
)
に……
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その父母たる者が夫婦の関係を
等閑
(
なおざり
)
にしたるにあり。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
夫人 いえいえ、農家のものは大切だから、
等閑
(
なおざり
)
にはなりません。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“等閑”の意味
《名詞》
いい加減にすること。なおざりにすること。
《動詞》
なおざりにする。
(出典:Wiktionary)
等
常用漢字
小3
部首:⽵
12画
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
“等閑”で始まる語句
等閑視