白髪頭しらがあたま)” の例文
旧字:白髮頭
私は番人夫婦にむかって、「お前さん達は長年この別荘に雇われていなさるのかね」と、何気なく尋ねると、夫の方は白髪頭しらがあたまを撫でて
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
縁側の障子の隙間すきまからは、泣きれた白髪頭しらがあたまの老女が頼み少ない姿で拝んでいるのが、平次の眼にまざまざと映るのでした。
白髪頭しらがあたまを振り立てて川破りの小男に向って来て、なだめるように次のような理解を試みたのを、白雲は、村役の白髪頭と共に耳にうつしとって
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見ると隣家の金蔵きんぞうであった。白髪頭しらがあたまがしかもはげあがって、見ちがえるほどじじになっていた。向こうでも自分の老いたのに驚いたようである。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それも道理、道夫がもう大丈夫ですと答えると、その老人は帽子を脱ぎ、それから白髪頭しらがあたまを脱いで机上に置き、頬につけていたひげをむしりとった。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
田舎娘は今日か明日かとお迎へを待つてゐるうちに、とうと八十年の月日を過して、白髪頭しらがあたまの婆さんになつてしまつた。
○「へえー肋骨あばらぼねが出て、歯のまばらな白髪頭しらがあたまばゞあが、片手になた見たような物を持って出たんだね、一つの婆で、上から石が落ちたんでげしょう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
下人の眼は、その時、はじめてその死骸の中にうずくまっている人間を見た。檜皮色ひわだいろの着物を着た、背の低い、せた、白髪頭しらがあたまの、猿のような老婆である。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その先頭第一に御紹介致しまするは、最前から赤煉瓦塀の横で畠を打っております、あの白髪頭しらがあたまの老人で御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そうでございましょうか。」と、おじいさんは、白髪頭しらがあたまをかしげて、あたらしくいれたちゃ助役じょやくまえしました。助役じょやくちゃわんをとりげながら
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
親達が失望して情ながるかおは手紙の上に浮いて見えるけれど、こうなると妙に剛情ごうじょうになって、因襲の陋見ろうけんとらわれている年寄の白髪頭しらがあたまを冷笑していた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
買って自身ではいりましたんで、まことにやぶからぼうのようなお話ですが、真実真銘、この白髪頭しらがあたまに免じて——
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
顔をのぞき込むがごとくに土間に立った、物腰のしとやかな、婆々は、客の胸のあたりへその白髪頭しらがあたまを差出したので、おもてを背けるようにして、客はかたながめると
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『あの子供達は、決してろくなものにならないね、』フィリーモンは白髪頭しらがあたまを振りながら言いました。
爺さんはいつでも手拭を後鉢巻うしろはちまきに結んでいるので、禿頭はげあたま白髪頭しらがあたまか、それも楽屋中知るものはない。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは五十を越した、中背の、がっしりした体格の男で、白髪頭しらがあたまに大きな禿はげがあった。
老母は雪のような白髪頭しらがあたまをまっすぐに起こして一同を見まわした、その気高くきざんだ顔のしわじわが波のようにふるえると、あわててハンケチをふところからだして顔にあてた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
この予期すべき出来事を、桂屋へ知らせに来たのは、ほど遠からぬ平野町ひらのまちに住んでいる太郎兵衛が女房の母であった。この白髪頭しらがあたまおうなの事を桂屋では平野町のおばあ様と言っている。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
老爺だ、六十ばかりの白髪頭しらがあたまの老爺が笹の中に長くなって顔を腑伏うつぶせて眠っている。「オーイ、どうした、オーイ。」と声を挙げて呼んで見ると、「ウーム」といいながら身を起す。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
降らすとなれば、大公儀のお咎めは何とある? 間違えば福知山三万石のお家は断絶じゃぞ! それでも臣下の本分が相立つならこの白髪頭しらがあたまの作左衛門から血祭りにして斬り込まれい
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍服の上へムク/\する如き糸織の大温袍おほどてらフハリかぶりて、がぶり/\と麦酒ビール傾け居るは当時実権的海軍大臣と新聞にうたはるゝ松島大佐、むかひ合へる白髪頭しらがあたま肥満漢ふとつちよう東亜滊船きせん会社の社長
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そこで、くるりと廻れ右をして、白髪頭しらがあたまを二つ並べながら、また戻って来る。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おおかた十五も年上の老い女房にょうぼうをわずかの持参金を目当てにもらい、その金もすぐ使い果し、ぶよぶよ太って白髪頭しらがあたまの女房が横ずわりに坐って鼻の頭に汗をきながら晩酌ばんしゃくの相手もすさまじく
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それが其家そこの主人のむかし書生をしていた家の御嬢さんなので、主人はもちろん妻君も驚ろいたという話がある。次に背中合せの裏通りへ出ると、白髪頭しらがあたま廿はたちぐらいの妻君を持った高利貸がいる。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにばあさんは亡くなった爺さん同様酒を好んだ。本家の婿は耶蘇教信者で、一切酒を入れなかった。久さんのおかみは時々姑に酒を飲ました。白髪頭しらがあたまの婆さんは、顔を真赤にして居ることがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
年老いた地主は白髪頭しらがあたまを真綿帽子で包みながら、うちの内から出て来た。南窓の外にある横木に倚凭よりかかって、寒そうに袖口そでぐち掻合かきあわせ、我と我身を抱き温めるようにして、辰さん兄弟の用意するのを待った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白髪頭しらがあたま蒲公英たんぽぽ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
平次が濠端をやって来る、白髪頭しらがあたまの頑固そうな老人を見付けたのは、ちょうど三縁山の昼の鐘が鳴り納めた時でした。
私は自分の白髪頭しらがあたまを両手でつかむと、すっぽり帽子のように脱いだ。次に耳の下からつらなる頬髯ほおひげ口髭くちひげとをとった。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
白髪頭しらがあたまのおじいさんは、いい気持きもちで、こっくり、こっくりとこしかけて居眠いねむりをしながらゆめていました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
書生はどうしたのかと思いながら、彼女のいえの前へ行って見ました。するとまゆり上げた彼女は、年をとった木樵きこりのじいさんを引き据え、ぽかぽか白髪頭しらがあたまなぐっているのです。
女仙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は遂に、自分の席をすこし動いて、白髪頭しらがあたまを、信長のほうへすりつけて云った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねえ、キャラコさん、……このわたしが、……こんな白髪頭しらがあたまの老人が、お世辞をいうとは、まさかおかんがえにはならないでしょう。わたしは、ほんとうの気持を告解コンフェッセしているんですよ」
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
健三は自分を出来るだけ富有に、上品に、そして善良に、見せたがったその女と、今彼の前にかしこまって坐っている白髪頭しらがあたまの御婆さんとを比較して、時間のもたらした対照に不思議そうな眼を注いだ。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白髪頭しらがあたまの甚右衛門は帳場から顔を出して、笑いながら挨拶した。
ロダンが白髪頭しらがあたまをのぞけた。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「なぜですか。こんなにおおきいのが、なぜいけません。わたしってきた大根だいこんが一等賞とうしょうでございます。」と、おばあさんは、白髪頭しらがあたまをふりたてていかごえでいいました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
灯の中に浮いた白髪頭しらがあたま、血潮の中に浸るあわせがらなどを一と目見ると、お礼はよろよろとなりました。
もう一人、モウリ博士の白髪頭しらがあたままじっていた。博士は、さっきまで寝ていたはず。ここへ出てきたのは、疲れが直ったからであろう。思いのほか元気な老博士だった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お前さんはまだ知らないのかい? わたしはどういう運命か、母親の腹を出た時には白髪頭しらがあたまをしていたのだよ。それからだんだん年が若くなり、今ではこんな子どもになったのだよ。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、白髪頭しらがあたまを圧し伏せる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、この有様を見てとって、気味がわるいなあといった顔付きになって、白髪頭しらがあたまを左右に振った。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかもあの平太夫へいだゆうが、なぜか堀川の御屋形のものをかたきのように憎みまして、その時も梨の花に、うらうらと春日はるびにおっている築地ついじの上から白髪頭しらがあたまあらわして、檜皮ひわだ狩衣かりぎぬの袖をまくりながら
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白髪頭しらがあたまのおばあさんは、かんがえていましたが
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家の中から顔を出した白髪頭しらがあたまの老女があった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
家の中から顔を出した白髪頭しらがあたまの老女があった。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)