)” の例文
そのとき薪が一本、馬鹿にパチパチねて炉の口の方へすべりだしたのを、女房は木履サボのつま先で蹴かえしながら、もじもじして
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
はじめは陰にこもった鈍い響きであったが、やがてぜるような轟きに変って、窓のガラスがびりびり鳴るほどの烈しさになった。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
五時頃から滿と健はもう目をさまして、互いのとこの中から出す手や足を引張り合つたり、ぜるやうな呼び声を立てたりして居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この懶惰なまくらな芸人は手脚てあしをもじもじさせてゐたが、ぴちとぜたやうな音がしたと思ふと、身体からだはそのまゝ見えなくなつてしまつた。
物のぜる音だけが、静かさを破った。兵隊が話し合う声が、変に遠くに聞えた。なびく煙の向うに、桜島岳が巨人のようにそびえていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
その幽かだったPPPが急に大きい影像をつい目のさきにじかせて、逆に振り向くと、「やあ、やあ、やあ。」と満面の笑顔を輝やかせた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それがちよいと言を御切りになると、すぐ又何かがぜたやうな勢ひで、止め度なく喉を鳴らして御笑ひになりながら
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
セエラはこの夢から覚めまいと思って、一生懸命眼をつぶっていましたが、ぱちぱちと火のぜる音を聞くと、眼をあけずにはいられませんでした。
海胆うにのやうに棘の生えた皮の中からぜ出たあの鳶色の栗の実は栄一には一つのインスピレーシヨンであつた。
ハゼと云うのは、もちごめってふくらましたものを申しますな。どう云う字を書くか存じませんが、多分あれを炒る時にぜるからハゼと申すのでしょうか。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それは物のぜる音でした。いや、物の焼けるすさまじい音といった方がよいかも知れません。それに絡んで、犬のほえるのが、次第次第に高くなって行くのです。
スプリングのすそがぱっとめくりあげられ、一握の小砂利が頬めがけて叩きつけられぱちぱちぜた。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
安次の死体は二人に蹴りつけられる度毎に、へし折れた両手を振って身を踊らせた。と、間もなく、二人はぜた栗のように飛び上った。血が二人の鼻から流れて来た。
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
町は悦気たのしげ密語さざめきに充ちた。寄太鼓よせだいこの音は人々の心を誘ふ。其処此処に新しい下駄を穿いた小児こどもらが集つて、樺火で煎餅などを焼いてゐる。火がぜて火花が街路みちに散る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もう村人の声もしない、ぜる音ばかりが続き、凝乎じっとしては熱風で息がまりそうだった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
火の上がる処には何だか貝殻を吹き鳴らすやうな音と、ぱち/\とぜる音があつた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
物のぜ焼けるひびきが、ピチピチ、ギシギシと、いうように、雪之丞の耳を掠めた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
佐藤の言葉は矢のように私を射て、肉がぜたようにそれが抜けなかった。一人になるとともに、痛みはあたらしく、なまなましくよみがえった。私はどうにかせねばならなかった。
演技の果て (新字新仮名) / 山川方夫(著)
紫色がぜて雪白の光茫こうぼうを生んでいるものもある。私は星に一々こんな意味深い色のあることを始めて見た。美しい以上のものを感じて、脊椎骨せきついこつ接目つぎめ接目つぎめに寒気がするほどである。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
煙草たばこを一ぷくふだけの時間じかんに、成熟せいじゆくしきつた大豆だいづやうやくぱち/\とかるこゝろよひゞきてつゝはじめた。大豆だいづことごとにはつちたふされた。三にん連枷ふるぢつてはしからだん/\とからつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人々の ひしめく群の 戦争の囲みの中からじけ出された あなた
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
ぜる火と、える鉄と
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それがちよいと言を御切りになると、すぐ又何かがぜたやうな勢ひで、止め度なく喉を鳴らして御笑ひになりながら
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
豆はぜ割れるほど實が肥つたし、麥もそろそろ熟れかかつて來たので、野良仕事も一先づ片付いたかして、見渡した處人つ子一人そこらに働いて居ない。
旋風 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「兩國の川開きなどで使ふ、打ち揚げ花火だよ。爐の中でこいつにねられてたまるものぢやない、——多分三寸玉くちゐ——いやもつと小さい、早打ちの小玉だらう」
町は樂し氣な密話さゞめきに充ちた。寄太皷の音は人々の心を誘ふ。其處此處に新しい下駄を穿いた小兒らが集つて、樺火で煎餅などをいてゐる。火がぜて火花が街路に散る。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
けたたましく自動車の鳴りぜる音、咽喉太のどぶとの唸り笛さへり霜の夜凝よごりに冴えて、はた、ましぐらに何処いづくへか駈け去りぬ。底冷そこびえの戸の隙間風、さるにても明け近からし。
女房は炉のそばに突立って、薪架まきだいの上にあかく燃えてパチパチねる細薪ほそまきをば、木履サボのつまさきで蹴かえしながらしきりに何か話しかけたが、男はむっつり黙りこんでいて滅多に返事もしない。
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
さすがに、雪之丞、家内から洩れる炎のいろ、ぜ燃えるひびきを感じとると、胸が躍った。その業火は、いよいよ彼の一生の悲願が成就する、幸先を祝った篝火かがりびのようにも思われるのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
小豆あずき粒くらいの大きさの花火が、両耳の奥底でぱちぱちぜているような気がして、思わず左右の耳を両手で覆った。それきり耳が聞えずなった。遠くを流れている水の音だけがときどき聞えた。
玩具 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたしを迎へてぜ裂ける。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
すると今度は英軍の塹壕から、一シルリングの銀貨が一つ空にり上げられた。独軍の塹壕で矢庭に小銃のぜる音がしたが、弾丸たまぽうへ逸れてしまつた。
と思うと、その煙の向うにけたたましく何かぜる音がして、金粉きんぷんのような火粉ひのこがばらばらとまばらに空へ舞い上りました。私は気の違ったように妻へ獅噛しがみつきました。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けたたましく自動車の鳴りぜる音、咽喉太のどぶとの唸り笛さへ、り霜の夜凝よごりに冴えて、はた、ましぐらに何処いづくへか駈け去り去りぬ。底冷そこびえの戸の隙間風、さるにても明け近からし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
行きつ、戻りつ、それを、五、六度、繰りかえしているうちに、ぼっという荒い音がして、軒が一時に燃え上る。こんどは、ほんとに燃えるのである。黒い煙と、パチパチという材木のぜる音。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたしの内からぜる
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
時々小さな魚が水の面に跳ね上るのが見られたが、水泡のぜ割れる微かな音一つ立てなかった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
くだまきぞ宵はぜたれ子がいてすずむしの音のみ今はとほりぬ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
発動機モツウルぜる……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
疳癖かんぺきの強い眼医者は、焼栗がぜたやうに、とうと声をはずませた。
物のぜ間なくとよめどうらかすみあたりの山のあやにのどけさ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鐵條網にいたりすなわちぜ死なむ命なりひたひたとそろふ足音
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ぜわれぬ。……あなひだるさや
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
鉄条網にいたりすなわちぜ死なむ命なりひたひたとそろふ足音
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ますらをはかねてしたれ行きいたり火とぜにけり還る思はず
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ますらをはかねてしたれ行きいたり火とぜにけり還る思はず
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これの子らなげき知らざり我が言ふをただおもしろと笑ひぜたる
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
廟行鎭はきさらぎさむき薄月夜おどろしく三人みたりぜにたるはや
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
廟行鎮はきさらぎさむき薄月夜おどろしく三人みたりぜにたるはや
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
男童は啼きぜる音がよきならしくだまきよしと夜に喜びぬ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)