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ぶりょう
ふりがな文庫
“
無聊
(
ぶりょう
)” の例文
ただ
静
(
しずか
)
にして居ったばかりでは単に
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむというよりも、むしろ厭やな事などを考え出して終日不愉快な事を
醸
(
かも
)
すようになる。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
その日も
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しんでおりましたから、例のごとく同心控え室へ陣取り、そこの往来に面したひじ掛け窓の上にあごをのっけて
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しかし少し何かするとすぐに少し発熱するので、やはり読み書きも許されず
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しみます。しかしあせらずに養生しています。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
長い月日を病床に
呻吟
(
しんぎん
)
する不幸な人々の神経を有害に刺激する事なしに
無聊
(
ぶりょう
)
を慰め精神的の治療に資する事もできはしまいか。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
同宿の外人の娘達も、午後中、何処へも出ずに
無聊
(
ぶりょう
)
そうに部屋でごろごろ横になっているらしい。そのうち二人で本でも読み出したらしい。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
多分最初は、麻雀という時間のかかる競技が、彼のように多くの閑を持つ人間を、
無聊
(
ぶりょう
)
から救ってくれたからでありましょう。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その間、日吉は
無聊
(
ぶりょう
)
な顔して、ふところから
黍
(
きび
)
の
茎
(
くき
)
みたいな物を出してはポリポリ
齧
(
かじ
)
っていた。その茎の汁は青臭いなかに甘い味があった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
旅の不自由と、国の言葉の恋しさと、信じ難いほどの
無聊
(
ぶりょう
)
とは、異郷で
邂逅
(
めぐりあ
)
う同胞の心を十年の友のように結び着けるのだとも想って見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「人生苦あり、以て楽むべし。人間死するあり、以て生くるを知る。死苦共に脱し得て甚だ、
無聊
(
ぶりょう
)
なり。仙人は
若
(
し
)
かず、凡人の死苦あるに。」
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三千代の退屈という意味は、夫が始終外へ出ていて、単調な留守居の時間を
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむと云う事であった。代助はわざと
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
片隅なる
盲翁
(
めくらおやじ
)
は、
毫
(
いささか
)
も悩める気色はあらざれども、話相手もあらで
無聊
(
ぶりょう
)
に
堪
(
た
)
えざる身を同じ枕に倒して、時々
南無仏
(
なむぶつ
)
、
南無仏
(
なむぶつ
)
と小声に
唱名
(
しょうみょう
)
せり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
光り物は母屋の廊下を通過するか、軒先から屋根の上などへ現われて消える、響音も
慟哭
(
どうこく
)
もごく
微
(
かす
)
かで、あたかも「化物共は
無聊
(
ぶりょう
)
を
喞
(
かこ
)
っている」
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と病中の
無聊
(
ぶりょう
)
にかかる研究心を起せしと見ゆ。中川は何事にも一応の
理窟
(
りくつ
)
を組立つる
癖
(
くせ
)
あり「イヤ、食合せの
禁忌
(
きんき
)
という事は必ずあるべき事だ。 ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
これら男子の労働者が、
無聊
(
ぶりょう
)
を慰すべく
旗亭
(
きてい
)
に集るや、相手無しには飲めぬから、ついに酌婦を招いて
悪巫山戯
(
わるふざけ
)
をする。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
こんな
出鱈目
(
でたらめ
)
な色刷でも
無聊
(
ぶりょう
)
な壁を
慰
(
なぐさ
)
めるものだ。灯が
柔
(
やわらか
)
いせいか、濡れているように海の色などは青々と眼にしみた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
満足はしていないながらも、
無聊
(
ぶりょう
)
に堪えられないということはなく、どうかすると斯様な生活ぶりに、自然の興味をさえ見出すこともあるのです。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ひとりでは
大人
(
おとな
)
になった気でいても、誰も大人と見ぬぞかなしき、という和歌を一首つくって末弟に与えかれの在野遺賢の
無聊
(
ぶりょう
)
をなぐさめてやった。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
清貧と安逸と
無聊
(
ぶりょう
)
の生涯を喜び、酔生夢死に満足せんと
力
(
つと
)
むるものたり。曇りし空の光は軒先に
遮
(
さえぎ
)
られ、
障子
(
しょうじ
)
の紙を
透
(
すか
)
してここに特殊の陰影をなす。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ある時、汽車の旅の
無聊
(
ぶりょう
)
に、みんなが
餐
(
さん
)
を共にし、酒も飲んだ。日本の留学生の二三は快活に飲み快活に話したが、二三の留学生は黙々として何も語らない。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
果然
(
かぜん
)
雨天順延となって、私の旅行日程にもまた一日の狂いが生じて来たので、
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむよりは雨の日本ラインの情趣でも探勝しようかとなった訳である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
秀麿の心理状態を簡単に説明すれば、
無聊
(
ぶりょう
)
に苦んでいると云うより外はない。それも何事もすることの出来ない、低い刺戟に
饑
(
う
)
えている人の感ずる退屈とは違う。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
百事齟齬す、
正
(
まさ
)
にこれ死して益なく、生もまた
懶
(
ものう
)
きの苦境に迫る。ここにおいて五月六日庸書檄を作り、筆耕以て
無聊
(
ぶりょう
)
を消ぜんとす、これもまた獅子
毬
(
まり
)
なるかな。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
九州の温泉宿ではまた
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しんだあげく、湯に
浸
(
つか
)
りすぎて熱病を
患
(
わずら
)
ったが、時々
枕頭
(
まくらもと
)
へ遊びに来る大阪下りの芸者と口を
利
(
き
)
くほか、一人も話し相手がなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この夏は、伸子が動坂にいたので、妻や子供達の留守の毎晩を、佐々は、比較的
無聊
(
ぶりょう
)
を感じずに過してきた。彼は二十六日に帰るという佃のハガキを見ると、云った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
車中の
無聊
(
ぶりょう
)
を紛らすため、Bは近頃になつて習ひ覚えた西洋将棋の盤を出して、かねがねその道の達人と聞いてゐるA氏に挑戦した。A氏も
固
(
もと
)
より異存のある
筈
(
はず
)
がない。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
何事も制度と型にはまった徳川時代は、生命の躍動を感ずる人々に取っては、実に
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しめられた。無聊に苦しむ人は何をしなければならぬという一定の目的はない。
流れ行く歴史の動力
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
ことには白い空の雲に、または海の緑に映じて高く抽け出でて立つのを見ると、立ち止まってはこれら労働に終始した人々の、生涯の
無聊
(
ぶりょう
)
さを考えずにはおられなかった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
航海も日数経て、女がいるだけ、
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむと始末にこまる。大和が誘いの水をむけて
明治開化 安吾捕物:07 その六 血を見る真珠
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
勿論、印度洋あたりの
無聊
(
ぶりょう
)
なときに、チップの金額を一定にしょうと云い出すものがあって、すでに金額は定まっていたのだが、さて支払日となると規定のことも破れてしまう。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ツイその数日前の或る新聞にも、「開国始末」で
冤
(
えん
)
を
雪
(
そそ
)
がれた
井伊直弼
(
いいなおすけ
)
の亡霊がお礼心に沼南夫人の
孤閨
(
こけい
)
の
無聊
(
ぶりょう
)
を慰めに夜な夜な通うというような
擽
(
くす
)
ぐったい記事が載っていた。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それも出来ず、始終、
臥床
(
とこ
)
に就くではないが、
無聊
(
ぶりょう
)
そうにぶらぶらしておられました。
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
私にとっては『退屈』は気心の合った友達のようなもので、私は誰と共にいるよりも、『退屈』と共にいて、
無聊
(
ぶりょう
)
を
託
(
かこ
)
っている方がいい。いわば私は退屈を楽しんでいるのである。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむようになったので、毎日のように蓄音器を鳴らしたが、旧シュトルツ邸へ越して来た瑞西人の所から、少し遠慮して貰えないであろうかと、或る日故障を云って来た。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼はそこで毎日
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しめられていた。と、ある日、王主人が室へ入ってきた。
雷峯塔物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
夏子さま召上りものは何がお好きぞや、この頃の病のうち
無聊
(
ぶりょう
)
堪
(
たえ
)
がたく
夫
(
それ
)
のみにて死ぬべかりしを朝な夕なに訪ひ給ひし御恩何にか比せん、御礼には山海の珍味も及ぶまじけれどとて
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……それにしても、ただぼんやり見ているのも
無聊
(
ぶりょう
)
。……さいわい手前もからす凧を持って来ましたから、この塀そとで凧あげをしましょう。……どうです、藤波さん、あなたもひとつ。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
出すがよい。求婚者風にこちらでは扱わないでおこう。交友として
無聊
(
ぶりょう
)
を慰める相手にはなるだろう。風流男でいられる方が若い女王のいることをお聞きになっての軽い遊びの心持ちだろうから
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
もし相手が羊のようなものだったら、彼はかえって勝利の
無聊
(
ぶりょう
)
を感じる。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
富士男もゴルドンも一同が
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむのを見て、いろいろきもをくだいた、だがうっかりしたことをして、悪漢どもが知ったら、たいへんな目にあわねばならない、こう考えると手がでない。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
蓋
(
けだ
)
し当時南北戦争
漸
(
ようや
)
く
止
(
や
)
み、その
戦争
(
せんそう
)
に従事したる
壮年
(
そうねん
)
血気
(
けっき
)
の
輩
(
はい
)
は
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しみたる
折柄
(
おりから
)
なれば、米人には
自
(
おのず
)
からこの
種
(
しゅ
)
の
輩
(
はい
)
多
(
おお
)
かりしといえども、
或
(
あるい
)
はその他の外国人にも
同様
(
どうよう
)
の者ありしならん。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
わたしはかの女がいのち賭けで起して呉れるそれのお相伴に与って、僅に人生の
無聊
(
ぶりょう
)
を消し得たのではあるまいか。それならわたしは相当狡い人間である。やっぱり自分自身に就て愛想が尽きる。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
無聊
(
ぶりょう
)
だから盃をとらす……。」
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
無聊
(
ぶりょう
)
とを凌いでいった。
山谿に生くる人々:――生きる為に――
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「見らるる如く、至って
無聊
(
ぶりょう
)
ですが……実は、今日にも一度出向いて、親しく周都督へ賀をのべたいと思っていたところです」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汽船会社は無論乗客の
無聊
(
ぶりょう
)
を慰めるために蓄音機を備えてあるので、また事実上多数の乗客は会社の親切を充分に享楽しているでもあろうが
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
只、それまでは他に何んのなす事もなく、
無聊
(
ぶりょう
)
でありまする故、どうぞ縁の端にでもおりおり坐らせて置いて下さいませんか
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「勝ちたくても、負けたくても、相手が
釜中
(
ふちゅう
)
の
章魚
(
たこ
)
同然手も足も出せないのだから、僕も
無聊
(
ぶりょう
)
でやむを得ずヴァイオリンの御仲間を
仕
(
つかまつ
)
るのさ」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
航海中の
無聊
(
ぶりょう
)
は誰も知って居るが、自分のは無聊に心配が加わって居るので、ただ早く日本へ着けば善いと思うばかりで、永き夜の暮し方に困った。
病
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
清貧と安逸と
無聊
(
ぶりょう
)
の生涯を喜び、
酔生夢死
(
すいせいむし
)
に満足せんと
力
(
つと
)
むるものたり。曇りし空の光は軒先に
遮
(
さえぎ
)
られ、
障子
(
しょうじ
)
の紙を
透
(
すか
)
してここに特殊の陰影をなす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ひとりでは
大人
(
おとな
)
になった気でいても、誰も大人と見ぬぞかなしき、という和歌を一首つくって末弟に与え、かれの在野遺賢の
無聊
(
ぶりょう
)
をなぐさめてやった。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
聊
漢検1級
部首:⽿
11画
“無聊”で始まる語句
無聊頼
無聊至極