“機(をり)” の例文
も吐(つか)ず逃たりしが惡者共は何所迄もと猶も間近(まぢかく)逐來(おひきた)る故に半四郎は如何にもして逃行んとする機(をり)幸ひ脇道(わきみち)の有しかば身を飜(ひるが)へして逃込を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されどこの王國が民を得たるは眞(まこと)の信仰によるがゆゑに、これに榮光あらしめんため、これの事を語る機(をり)の彼に來るを宜(むべ)とす。 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
お房の母は、また、其れが苦になツて、機(をり)さへあれば其の非行(ひかう)を数へ立てて、所天(をツテ)を罵倒(こきおろ)した。雖然馬の耳に念佛(ねんぶつ)だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
おのれもまた機(をり)を得て購(か)はんと、其家の在り処(か)など予て問ひ尋ね置きたりしかば、直ちにそれかと覚しき店を見出して、此家(こゝ)にこそあれと突(つ)と入りぬ。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
マンチュアに蟄(ちっ)してゐやる間(あひだ)に、わしが機(をり)を見(み)て二人(ふたり)が内祝言(ないしうげん)の顛末(もとすゑ)を公(おほやけ)にし、兩家(りゃうけ)の確執(かくしつ)を調停(てうてい)し、御領主(ごりゃうしゅ)の赦(ゆるし)を乞(こ)ひ、やがて卿(そなた)を呼返(よびかへ)すことにせう
其(そ)の山(やま)が崩(くづ)れたので、當時(たうじ)大地震(おほぢしん)の觸頭(ふれがしら)と云(い)つた場所(ばしよ)の、剩(あまつさ)へ此(こ)の四五日(しごにち)、琅玕(らうかん)の如(ごと)き蘆(あし)ノ湖(こ)の水面(すゐめん)が風(かぜ)もなきに浪(なみ)を立(た)てると、うはさした機(をり)であつたから。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
いつでもしまひ際に人が少くなつた機(をり)を見て下りて來るのであらうか。それだから昨日まで、やつぱりこの病院にゐるといふ事を知らなかつたのかもしれない。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
それから私は機(をり)さへあれば、Café Minerva のことを訊ねて見た。日本媼もそれを知らなかつたし、教室の近くにある行附(ゆきつけ)の珈琲店の主人(あるじ)も知らなかつた。
カフエ・ミネルワ (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ついした愚痴から、お胸を痛め、御疲れの上の、御鬱陶を、麦酒(びーる)にでも致しましようかと。急にさゑさゑさらさらと、延ばす右手の袖軽く、喚鈴(よびりん)に指頭(ゆびさき)の、かかりける機(をり)もよし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ゆめゆめ今日は逢ふべき機(をり)ならず、辛(つら)くとも思止まんと胸は据ゑつつも、彼は静緒を賺(すか)して、邸内(やしきうち)を一周せんと、西洋館の後(うしろ)より通用門の側(わき)に出でて、外塀際(そとべいぎは)なる礫道(ざりみち)を行けば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
従つて、自分達の恋が、正式に認められるやうな機(をり)は、永久に来ないやうに思はれた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
我は今無言なり、膝を折りて柱に憑(もた)れ、歯を咬(か)み、眼を瞑(めい)しつゝあり。知覚我を離れんとす、死の刺(はり)は我が後(うしろ)に来りて機(をり)を覗(うかゞ)へり。「死」は近づけり、然れどもこの時の死は、生よりもたのしきなり。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
兵二 手を下すべき機(をり)もなく、空しく時を移し申した。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
機(をり)もよし、私は和やかな田園に赴(はし)つた
惜しき機(をり)をや失ひし
まちむすめ (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
晴(はら)さんと立上りしが否(いや)々荒立(あらだて)ては事の破れ何にもせよお浪を引さらひ女房にすれば男は立つ只(たゞ)惡(につく)きは富右衞門なりよき機(をり)もあらば此遺恨(このうらみ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と姫(ひめ)を救(すく)ひ出(いだ)さんため、只(たゞ)一人(ひとり)にて參(まゐ)りしは、窃(ひそか)に庵室(いほり)にかくまひおき、後日(ごじつ)機(をり)を見(み)て、ロミオへ送(おく)り屆(とゞ)けん存念(ぞんねん)、然(しか)るに參(まゐ)り見(み)れば、姫(ひめ)の目覺(めざ)むる少(すこ)しき前方(まへかた)
されどかの處女(をとめ)等彼にそのものいふ機(をり)を與へしとき、色あたかも火のごとく、たちあがりて 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
はた杢(もく)を信(しん)ずる者(もの)少(すくな)ければ、其(その)命令(めいれい)も行(おこな)はれじ、好(よ)き機(をり)もがなあれかしと時機(じき)の到(いた)るを待給(まちたま)ひぬ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
庇間合(ひあはひ)へ捨置(すておき)て早足(はやあし)に逃出(にげいだ)し手拭ひにて深く頬冠(ほゝかむ)りをなし膽(きも)太(ふと)くも坂本通りを逃行く機(をり)から向うより町方の定廻り同心手先三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)