機関からくり)” の例文
旧字:機關
晋の区純おうじゅんは鼠が門を出かかると木偶でくが槌で打ち殺す機関からくりを作った(『類函』四三二)。北欧のトール神の槌は専らなげうって鬼を殺した。
一面から云えば、まことに見え透いた機関からくりではあるが、組頭もその情を察して大抵はその養子に跡目相続を許可することになっている。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
子供だましのようだが、こんな機関からくりがあろうとは知らないから、田丸主水正は、まっ蒼な顔——。ピタリ、鉢のまえに平伏していると
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もとよりその財貨宝玉は、すべて悪政の機関からくりからしぼりとった民の膏血こうけつにほかならぬ。……これを奪うのは天の誅罰ちゅうばつといえなくもあるまい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おつるところにはたらきざしあるゆゑに陰にして陽のまろきをうしなはざる也。天地気中の機関からくり定理定格ぢやうりぢやうかくある事奇々きゝ妙々めう/\愚筆ぐひつつくしがたし。
田舎のお祭によく見るやうな見せ物——ひよう大鱶おほふか、のぞき機関からくり、活動写真、番台の上の男は声をからして客を呼んでる。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
はじめは、不思議ふしぎ機関からくり藩主様とのさま御前ごぜんせいふて、おしろされさしけえの、其時そのときこさへたのが、五位鷺ごゐさぎ船頭せんどうぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
親爺が見番の役員なので、二人をき止めるために、どんな機関からくりをしていないとも限らず、気がめているのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「驚くな貝六、——仔細あって俺は、この機関からくりの裏を知って居るが、こいつは七万両という大金の仕事だぞ」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
離婚といふに未練はなけれど、金輪内雅の名詮自称、やりくり一つで持つ機関からくりに、幾千円の穴明けてはと。金に七分の未練ありて、弁護士同士が四角四面の交渉中。
今様夫婦気質 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
陰に廻りて機関からくりの糸を引しは藤本の仕業にきわまりぬ、よし級は上にせよ、ものは出来るにせよ、龍華寺さまの若旦那わかだんなにせよ、大黒屋の美登利紙一枚のお世話にも預からぬ物を
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いやいやれは嘘ぢやらうわ。わしが今日見た地獄の機関からくりより、もつと面白いものはから天竺にも決しておぢやらぬわ。……何、秋でも冬でも牡丹の花が咲いておぢやるてや。え。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
したがって、あの寝台の構造のうちに、怪しい機関からくりが仕掛けてあるかもしれませんからね
で、伯父はもう二年越し、その金を使ってくれ、利子は年六分でいいからと、しつこく僕を責めるんです。しかし、その機関からくりはわかってるんで、伯父はただ僕を助けたいんですよ。
竹田の芝居のはやつたのも、一つは水機関からくりの機械力によつて、人の技術でゆかぬ技を出した為である。水機関の性質上、やはり舞台で水を奇術風にとり扱ふことになるのは当然である。
夏芝居 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
頭脳の機関からくりが手早く働いてねうちのあるものをみ出せる友達を持ちたがった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
なんたる卑劣漢であるか、後に捕吏の調査するところによれば、この家はいたるところこの種の機関からくりに満ち、壁、畳、廊下、台所に至るまで不真面目と御都合主義の組合せだったという。
なる程お玉という娘の父親は竜神松五郎という海賊かも知れませんが、そんな奴には種々いろいろ魂胆こんたんがありまして、人の知らねえ機関からくりも御座いますから、再調さいしらべの役目を私奴わたくしめにお云附いいつけ下せえまし
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
これは仕掛しかけがあって、誰か上人の方へ筒抜けをする機関からくりだとこう思ったから、小手調べに二つ三つ手近なやつを引ん抜いてみたら驚くじゃねえか、ちゃあんとあの上人が見抜いてしまやがった。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな人の悪い事は自分にはできない。自分はただ人間の研究者いな人間の異常なる機関からくりが暗い闇夜やみよに運転する有様を、驚嘆の念をもってながめていたい。——こういうのが敬太郎の主意であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは実に不思議な機関からくりであった。
ほかに機関からくりがあるわけではないから、あらん限りの箭を射尽くさせてしまえば大丈夫だというので、こちらからも負けずに石を投げ込みました。
ところでこの二人が、お粂を種にして、一狂言書いたには、なかなか面白い機関からくりがあって、その発端と顛末てんまつはこういう訳。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兼ねてその機関からくりを作りたるもの故すなわち栓ありてひらけず、ついに人に捕えらると、ここを以て智不智を撰ぶとぞ。いわゆる猴智慧なるかなと見ゆ。
一陣ひとしきり風が吹くと、姿も店も吹き消されそうであわれ光景ありさま。浮世の影絵が鬼の手の機関からくりで、月なき辻へ映るのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縁日にはまだ覗き機関からくりが哀れな節を歌つてゐる。阿呆陀羅経が人を笑はしてゐる。——
市街を散歩する人の心持 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
さう/\おぼえて八百屋やをやお七の機関からくりたいとつたんだツけ。アラいやうそばつかり。それぢやア丹波たんばくにから生捕いけどつた荒熊あらくまでございのはうか。うでもようございますよわたし最早もうかへりますから。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一軒のあるじとなった今、銀子は時々このお神のことがおもい出され、大阪へ落ちて行ったとばかりで、消息も知れない彼女のそのころの、放漫なやり口の機関からくりがやっとわかるような気がするのだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三人は夢中になって徳利のかけらにとびかかり、一つ一つ手に取って念入りに調べた、だがそれらはいささかの瞞着まんちゃく機関からくりもない単なる徳利のかけらで、妖異よういを証明するなにものも存在しなかった。
「今度は機関からくり
船底の機関からくりは千太の仕業らしいが、千太自身がそんなことを企らむ筈がない、恐らく誰かに頼まれたのであろう。
危険けんのん機関からくりだで、ちひさくこさへて、小児こども玩弄おもちやにもりましねえ。が、親譲おやゆづりの秘伝ひでんものだ、はツはツはツ、」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何だか機関からくりを見られるようで、気がさすから、目立たないのが可かろう、銀流でもかけておけと、訳はありゃしねえ、出来心で遣ったんだ、相済みません。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これまでのお話によると、そのお信という女が自分の恋の邪魔になるお早という妾を殺そうとして、叔父の清吉を口説くどいて船底に機関からくりを仕掛けたというわけですね。
うしてつくる? ……つひ一寸ちよつくら手真似てまねはなされるもんではねえ。むねに、機関からくりつとります。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
是非ともその実証を突き留めて、いよいよ不慮の災難と決まればよし、もし又なにかの機関からくりでもあったようならば、係り合いの者一同を容赦なく召捕ってくれと云うのだ。
磧も狭しと見世物小屋を掛けつらねて、猿芝居さるしばい、娘軽業かるわざ山雀やまがらの芸当、剣の刃渡り、き人形、名所ののぞ機関からくり、電気手品、盲人相撲めくらずもう、評判の大蛇だいじゃ天狗てんぐ骸骨がいこつ、手なし娘
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、小さい蝶々を飛ばせるには、どんな糸を使うのか、それとも何かの機関からくり仕掛けにでもなっているのか。おれは上野の烏凧からすだこから考えて、多分この菅糸を使うんだろうと鑑定していた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
地方の盛場には時々見掛ける、吹矢の機関からくりとは一目て紫玉にも分った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地蔵を踊らせたのは坊主どもの機関からくりにしても、女の死体は誰が運んで来たのか判らねえ。寺の坊主が殺したのなら、わざわざ人の眼に付くように、地蔵に縛り付けて置く筈はあるめえと思うが……
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
地方の盛場さかりばには時々見掛みかける、吹矢ふきや機関からくりとは一目ひとめて紫玉にも分つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)