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根岸
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ねぎし
ふりがな文庫
“
根岸
(
ねぎし
)” の例文
この
老婆
(
ろうば
)
は以前は
大塚
(
おおつか
)
の
坂下町辺
(
さかしたまちへん
)
、その前は
根岸
(
ねぎし
)
、または
高輪
(
たかなわ
)
あたりで、度々
私娼媒介
(
ししょうばいかい
)
の
廉
(
かど
)
で検挙せられたこの仲間の
古狸
(
ふるだぬき
)
である。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして、着京後間もなく
根岸
(
ねぎし
)
の
鶯横町
(
うぐいすよこちょう
)
というのを尋ねて行った。前田邸の門前近くで向うから来る一人の青年が妙に自分の注意を引いた。
高浜さんと私
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「おとぼけなすっちゃいけません。
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
のない
女護
(
にょご
)
ヶ
島
(
しま
)
、ここから
根岸
(
ねぎし
)
を
抜
(
ぬ
)
けさえすりゃァ、
眼
(
め
)
をつぶっても
往
(
い
)
けやさァね」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
今夜はね、
根岸
(
ねぎし
)
の
里
(
さと
)
へ行って来るって
胡魔化
(
ごまか
)
して来たのよ。私だって、たまにはゆっくり
泊
(
とま
)
って見たいもの。——大丈夫よ。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
牛込の
喜久井町
(
きくいちょう
)
、
根岸
(
ねぎし
)
、
谷中初音町
(
やなかはつねちょう
)
、
日暮里金杉
(
にっぽりかなすぎ
)
等々、本田はそうして春泥の約二年間に転居した場所を七つ程列挙した。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
その頃の岡倉先生宅は
根岸
(
ねぎし
)
であった。夜分の来訪、何事かと岡倉さんは思ってお出でのような
面持
(
おももち
)
で私を迎えました。
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
根岸
(
ねぎし
)
か
向島
(
むこうじま
)
あたりにでもありそうな、寮ふうの構えで、うす
陽
(
び
)
が
塀
(
へい
)
ごしの松の影を、往来のぬかるみに落としていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
噫
(
あゝ
)
此行
(
このかう
)
、
氷川
(
ひかは
)
の
宮
(
みや
)
を
拜
(
はい
)
するより、
谷中
(
やなか
)
を
過
(
す
)
ぎ、
根岸
(
ねぎし
)
を
歩行
(
ある
)
き、
土手
(
どて
)
より
今戸
(
いまど
)
に
出
(
い
)
で、
向島
(
むかうじま
)
に
至
(
いた
)
り、
淺草
(
あさくさ
)
を
經
(
へ
)
て
歸
(
かへ
)
る。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
始終遊びつけた家では、相手の女が二月も以前にそこを出て、
根岸
(
ねぎし
)
の方に世帯を持っていた。笹村はがらんとしたその
楼
(
うち
)
の
段梯子
(
だんばしご
)
を踏むのが
慵
(
ものう
)
げであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
変なもので、伊香保なんぞへ
往
(
い
)
って居ると
交際
(
つきあい
)
が
殖
(
ふえ
)
る、帰って見ると
先達
(
せんだっ
)
ては伊香保でと云うので、
麻布
(
あざぶ
)
の人が
品川
(
しながわ
)
、品川の人が
根岸
(
ねぎし
)
へ来て段々縁が
繋
(
つな
)
がり
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
香取秀真
(
かとりほづま
)
香取先生は通称「お隣の先生」なり。先生の
鋳金家
(
ちうきんか
)
にして、
根岸
(
ねぎし
)
派の歌よみたることは
断
(
ことわ
)
る必要もあらざるべし。僕は先生と隣り住みたる為、形の美しさを学びたり。
田端人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
根岸
(
ねぎし
)
の
伯母
(
をば
)
さんにも相談して見ませう。多分間に合ひませう。」とお節が言つた。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
定めて
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な
家
(
うち
)
に住って閑雅な生活をしているだろうと思って、
根岸
(
ねぎし
)
の其宅を尋ねて見ると、案外見すぼらしい
家
(
うち
)
で、文壇で有名な大家のこれが
住居
(
すまい
)
とは
如何
(
どう
)
しても思われなかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
上屋敷から
根岸
(
ねぎし
)
の別邸へ移されて、
謹慎
(
きんしん
)
という、きびしい命をうけました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
は
一間
(
いっけん
)
で、壁は
根岸
(
ねぎし
)
というのです。掛軸は山水などの目立たぬもので、国から持って来たのですから幾らもありません。前には
青磁
(
せいじ
)
の香炉が据えてあり、隅には
払子
(
ほっす
)
が下っていました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
午後八時を過ぎる頃、わたしは雨を
衝
(
つ
)
いて
根岸
(
ねぎし
)
方面から麹町へ帰った。普通は
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から本郷台へ昇ってゆくのであるが、今夜の車夫は
上野
(
うえの
)
の
広小路
(
ひろこうじ
)
から電車線路をまっすぐに神田にむかって走った。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それから
根岸
(
ねぎし
)
の
御行
(
おぎょう
)
の松、
亀井戸
(
かめいど
)
の
御腰掛
(
おこしかけ
)
の松、
麻布
(
あざぶ
)
には一本松、
八景坂
(
はっけいざか
)
にも
鎧掛
(
よろいかけ
)
の松とか申すのがありました。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
四月頃もまるで
梅雨
(
つゆ
)
の如く、びしょびしょと毎日の雨で、江戸の市中は
到
(
いた
)
る処、
溝渠
(
どぶ
)
が開き、特に、
下谷
(
したや
)
からかけ、
根岸
(
ねぎし
)
、上野
界隈
(
かいわい
)
の低地は水が附いて
脛
(
すね
)
を没し
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
江戸の東北、
向島
(
むこうじま
)
浅草から
谷中
(
やなか
)
根岸
(
ねぎし
)
へかけて寺が多い。その上どころの湯灌場買いを一手に引き受けて、ほっくりもうけているのが神田
連雀町
(
れんじゃくちょう
)
のお古屋津賀閑山。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうして社長に売渡した器械の持主があとから出て来たのには実価以上の百円やって喜ばせて帰して、結局百五十円の純益金を得る。それをもって
根岸
(
ねぎし
)
の競馬に出かけるのである。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と
根岸
(
ねぎし
)
の
相坂
(
あひざか
)
の
團子屋
(
だんごや
)
の
屋臺
(
やたい
)
へ
立
(
た
)
つた。……
其
(
そ
)
の
近所
(
きんじよ
)
に
用達
(
ようたし
)
があつた
歸
(
かへ
)
りがけ、
時分時
(
じぶんどき
)
だつたから、
笹
(
さゝ
)
の
雪
(
ゆき
)
へ
入
(
はひ
)
つて、
午飯
(
ひる
)
を
濟
(
す
)
ますと、
腹
(
はら
)
は
出來
(
でき
)
たし、
一合
(
いちがふ
)
の
酒
(
さけ
)
が
好
(
よ
)
く
利
(
き
)
いて、ふら/\する。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
亀井戸普門院
(
かめいどふもんいん
)
の
御腰掛松
(
おこしかけまつ
)
、
柳島妙見堂
(
やなぎしまみょうけんどう
)
の松、
根岸
(
ねぎし
)
の
御行
(
おぎょう
)
の
松
(
まつ
)
、
隅田川
(
すみだがわ
)
の
首尾
(
しゅび
)
の
松
(
まつ
)
なぞその他なおいくらもあろう。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
打出されたところは昔
呉竹
(
くれたけ
)
の
根岸
(
ねぎし
)
の里今は
煤
(
すす
)
だらけの東北本線の中空である。
猫の穴掘り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
十二歳の時に
根岸
(
ねぎし
)
在住の菊川という牙彫の師匠の家に弟子入りをして、十一年の年季を勤め上げ、年明けが二十三の時、それから日本橋の馬喰町の木地問屋に仕事に通い出したというのですから
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
麻布網代町
(
あざぶあみしろちょう
)
、
小石川白山
(
こいしかわはくさん
)
、
渋谷荒木山
(
しぶやあらきやま
)
、
亀戸天神
(
かめいどてんじん
)
なんぞいつか古顔となり、
根岸
(
ねぎし
)
御行
(
おぎょう
)
の
松
(
まつ
)
、
駒込神明町
(
こまごめしんめいちょう
)
、
巣鴨庚申塚
(
すがもこうしんづか
)
、
大崎五反田
(
おおさきごたんだ
)
、中野村
新井
(
あらい
)
の
薬師
(
やくし
)
なぞ
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
熊本
(
くまもと
)
で漱石先生に手引きしてもらって以来俳句に凝って、上京後はおりおり
根岸
(
ねぎし
)
の
子規庵
(
しきあん
)
をたずねたりしていたころであったから、自然にI商店の帳場に新俳句の創作熱を鼓吹したのかもしれない。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一声の汽笛が高く長く尻を引いて動き出した上野の一番汽車は、見る見る
中
(
うち
)
に岡の裾を
繞
(
めぐ
)
ッて、
根岸
(
ねぎし
)
に入ッたかと思うと、天王寺の森にその煙も見えなくなッた。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
友達は年久しく恋していた女をば、両親の反対やら、境遇の不便やら、さまざまな浮世の障害を切抜けて、
見初
(
みそ
)
めて後の幾年目、やッとの事で新しい家庭を
根岸
(
ねぎし
)
に
造
(
つく
)
ったのだ。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
根
常用漢字
小3
部首:⽊
10画
岸
常用漢字
小3
部首:⼭
8画
“根岸”で始まる語句
根岸派
根岸流
根岸兎角
根岸田圃
根岸侘住居
根岸肥前守