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暢気
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のんき
ふりがな文庫
“
暢気
(
のんき
)” の例文
旧字:
暢氣
盲目
(
めくら
)
のお婆さんは、座が定ると、
懐
(
ふところ
)
から手拭を出して、それを例のごとく三角にして
冠
(
かぶ
)
つた。
暢気
(
のんき
)
な鼻唄が唸
る
(
うな
)
るやうに聞え出した。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
陸田城代は自白書を書くだろうか、「日日平安」などという
暢気
(
のんき
)
な人だから、高をくくって書くかもしれない。と菅田平野は考えた。
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「お前はそんな
暢気
(
のんき
)
なことを言うが、旦那が亡くなった時に俺はそう思った——俺はもう小山家に縁故の切れたものだと思った——」
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「火鉢にあたるやうな
暢気
(
のんき
)
な対局やおまへん。」といふ
詞
(
ことば
)
をふと私は想ひ出し、にはかに坂田三吉のことがなつかしくなつて来た。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
これに身廻りの品を合せると、五人しかいない人夫の中から一人を要した程の重さであった。私達は何と
暢気
(
のんき
)
なことであったろう。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
ピャッツァ・シニョリナから小路を出ると
暢気
(
のんき
)
そうに白雲の行ききするアルノの橋を渡って、花園の月桂や、ミルトゥスの間をぬけて
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
で、彼らは
平素
(
ふだん
)
であったならもっともっと大騒ぎでもっともっと非難攻撃すべきこの重大の裏切り事件をも案外
暢気
(
のんき
)
に見過ごした。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
案内の男が
二言
(
ふたこと
)
三言
(
みこと
)
支那語で何か云うと、老人は手を休めて、
暢気
(
のんき
)
な大きい声で返事をする。七十だそうですと案内が通訳してくれた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに張飛が飲み友達でも呼ぶように、
暢気
(
のんき
)
に呼ばわってくる声が、雷鳴に似た烈しさよりも、かえって不気味に聞えるのだった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
約束の会は
明日
(
あした
)
だし、
好
(
すき
)
なものは晩に食べさせる、と
従姉
(
いとこ
)
が言った。
差当
(
さしあた
)
り何の用もない。何年にも
幾日
(
いくか
)
にも、こんな
暢気
(
のんき
)
な事は覚えぬ。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下塗を乾かすために
団扇
(
うちわ
)
で
煽
(
あお
)
いだりしたものですが、今はそんな
暢気
(
のんき
)
な事をやっていられないから、はじめから濃いやつを塗る。
久保田米斎君の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「外に隠れる場所はねえ。急場の思い付きだ、たぶん一度隠れたその塀の間から、
暢気
(
のんき
)
そうに懐手をしてノソリと出て来たろう」
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
元が
暢気
(
のんき
)
な生れで、まだ苦労ということを味わわないお千代は、おとよをせっかくここまで連れて来ながら、おとよの胸の中は
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
いつ頃だつたか、一寸はつきり判りかねるが、長崎に
素行
(
そかう
)
といふ俳人があつた。ひどい
行脚
(
あんぎや
)
好きで
閑
(
ひま
)
さへあれば
暢気
(
のんき
)
に旅に出歩いてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
唯三人でやつて居た頃は随分
暢気
(
のんき
)
なものであつたが、遠からず紙面やら販路やらを拡張すると云ふので、社屋の新築と共に竹山主任が来た。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
もう、富豪の
迷児
(
まいご
)
を見つけてお礼にありつこうなんかという
暢気
(
のんき
)
なものではない。新しい命令が全市へ飛んで、警官はいっせいに緊張した。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
兵馬の眼で人間がその昔の時よりも
暢気
(
のんき
)
に見えるのは、自分にさしさわりない他人ばかり残っているというせいでもあるまい。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
生れつきの
暢気
(
のんき
)
な彼は、台所の酒を盗み出したり残酒をもらったりして、それを唯一の楽しみにしてなんの不平もなしにその日を送っていた。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
昨年秋頃、この校訂版中の「雪と雪華」の項の執筆を頼まれ、比較的
暢気
(
のんき
)
な気持で、その原稿を書き上げて、送っておいた。
百科事典美談
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
酒を
呑
(
の
)
み出した紳士のまはりの人たちは少し
羨
(
うらや
)
ましさうにこの豪勢な北極近くまで猟に出かける
暢気
(
のんき
)
な大将を見てゐました。
氷河鼠の毛皮
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
折角卒業の
間際
(
まぎわ
)
まで漕付けながら
袴
(
はかま
)
を脱ぐ如く
暢気
(
のんき
)
に学校を
罷
(
や
)
めてしまい、シカモ罷めてしまって後に何をする見当もなく
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
女連れや子供づれの湯治客が、
暢気
(
のんき
)
に熊笹の間を縫って行くばかりではない。二間半ほどの道の一方によせて、トロッコの軌道が敷けていた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宍戸 それと云ふのが、お二人とも、
暢気
(
のんき
)
な方で、わたしが、たまに、お留守中、掃除をするくらゐなものですから……。
百三十二番地の貸家
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
恋のために朗らかになる
性
(
たち
)
で、よしんばほんの
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
の幸福にしろ、それを与えてくれた相手に感謝を惜しまぬ、
暢気
(
のんき
)
でお人好しな連中もある。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
非常時も、このごろのように諸般の社会相が、統制の
厳
(
きび
)
しさ細かさを生活の
末梢
(
まっしょう
)
にまで反映して、芸者屋も今までの
暢気
(
のんき
)
さではいられなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ここまでくれば、もう下りようはないだろうという安心から、こういうのどかな生活が、死ぬまでつづくような
暢気
(
のんき
)
な気持になっていたのである。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして、その目的が充分に達せられた。その上に、それは、多少なり興奮してゐた一同の頭を一遍に和らげ、軽く
易々
(
やす/\
)
とした
暢気
(
のんき
)
な気持ちにさせた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
「そりゃ、あなた。お姉さまがたのなさることを見ていらっしったら、わかるでしょう。おばあさまの御機嫌をとらないで、あなたも
暢気
(
のんき
)
な人ね。」
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
暢気
(
のんき
)
な彼もそのことを考えぬではなかったが、口では「この不精阿女。」時にはそれ位のことは言った。が、一言の下に圧倒されてしまうのだった。
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
蛇
(
じゃ
)
の
目
(
め
)
の
傘
(
がさ
)
がはねて、
助六
(
すけろく
)
が出るなど、江戸気分なもの、その頃のおもちゃにはなかなか
暢気
(
のんき
)
なところがありました。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
母は
暢気
(
のんき
)
な顔をして暮し出しました。少し肥って、顔にごく
僅
(
わず
)
か
赭味
(
あかみ
)
がかって、立ち居振舞いに豊かな肉が胸や腹に漂うという中年近くの美人です。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
(なんという
暢気
(
のんき
)
というか、鈍感というか、あきれた二人達れだろう。自分たちの話に夢中になって、わたくしの
突
(
つ
)
き
当
(
あた
)
ったことに気がつかないのだ)
第四次元の男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今食う米が無くて、ひもじい腹を
抱
(
かかえ
)
て考え込む私達だ。そんな
伊勢屋
(
いせや
)
の隠居が心学に凝り固まったような、そんな
暢気
(
のんき
)
な事を言って生きちゃいられん!
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そういう蚊帳の外に稲妻が
閃々
(
せんせん
)
と
射
(
さ
)
す。蚊帳の中の人は
暢気
(
のんき
)
にそれを見ている、といったような情景が想像される。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
それと同時に、そうした繁劇な生活からやっと逃れることができて、
暢気
(
のんき
)
に図書館へでも来られるようになった現在の境遇を喜ばずにはおられなかった。
出世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
毎日幾度となく湯につかったり、散歩したり、寝転んだり、そしてその
暇々
(
ひまひま
)
に筆を
執
(
と
)
ったりして至極
暢気
(
のんき
)
に日を送っていたのです、ある日のことでした。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
局長は忙しいと言いながら、
暢気
(
のんき
)
そうに長々と野球の話をはじめるので、勝男の方がはらはらしたくらいだった。
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
何故そんなに面倒臭いことをするかと訊ねる者もあるが私は少しも面倒と思わない。
却
(
かえ
)
って
暢気
(
のんき
)
で、静かで、自分の性質に合っているとさえ思っている。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今までの
暢気
(
のんき
)
な書生生活を改めて真面目に仕事をせなければならぬことになって、その事務所を一時神田の錦町に置き、間もなくそれを猿楽町に転じた。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それに奥さんも割合に
暢気
(
のんき
)
なお方なので、いくらお困りになられていてもそれで買手が無ければしようがないといった風で、その話はそのままになすって
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
異性に対する自分の愛は妻に帰るよりほかはないのだと
暢気
(
のんき
)
に思って、一時的な衝動を受けては恨めしく思わせるような罪をなぜ自分は作ったのであろう。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それが父には
暢気
(
のんき
)
な言いごとと聞こえるのも彼は承知していないではなかった。父ははたして
内訌
(
ないこう
)
している不平に油をそそぎかけられたように思ったらしい。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
今度は独りだけに荷物とても無く、極めて
暢気
(
のんき
)
に登って行くとやがて峠に出た。何という事なく其処に立って振返った時、また私は優れた富士の景色を見た。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
「山遊びなんて、僕もそんな
暢気
(
のんき
)
なことはしていられなくなってね。今日は、山巡りに来た
序
(
つい
)
でなものだから……どうも草盗まれて、
萱
(
かや
)
まで刈られんので……」
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「いや、
被作虐者
(
マゾヒイスト
)
かもしれんよ」と法水は
半身
(
はんみ
)
になって、
暢気
(
のんき
)
そうに廻転椅子をギシギシ鳴らせていたが
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それが神楽坂になると、全く純粋に
暢気
(
のんき
)
な散歩気分になれるんだ。それは僕一人の感じでもなさそうだ。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
ころんでも只は起きぬ
狡獪
(
こうかい
)
さとで鳴らした人間だけあって、現在は、浮世ばなれた、
暢気
(
のんき
)
らしい日を送っていてもなかなかどうして、油断も隙もある男ではない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あの魔法使が一夜に建てたかと思われる、夢のような
都市
(
まち
)
へ行ってみたまえ。彼等は
暢気
(
のんき
)
にも鞭で奴隷を使っていて、夜が昼のように華やかなんだ。永遠の春だね。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「鱧の皮、細う切つて、二杯酢にして一晩ぐらゐ漬けとくと、
温飯
(
ぬくめし
)
に載せて一寸いけるさかいな。」と、源太郎は長い手紙を巻き納めながら、
暢気
(
のんき
)
なことを言つた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
……厭な金の話を耳に入れずに、子供ら相手に
暢気
(
のんき
)
に一日を遊んで暮したいと思ってくるのであった。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
“暢気”の意味
《名詞》
暢気(のんき ;「暖気」の唐宋音の当て字)
(context、dated)気晴らし。
気楽なこと。また、そのようなさま。
気が長いこと。
(出典:Wiktionary)
暢
漢検準1級
部首:⽇
14画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“暢気”で始まる語句
暢気者
暢気坊
暢気相
暢気千万
暢気顔