暗黒あんこく)” の例文
ここでは月は、まるで大地のようにはてしなくひろがり、そして地球は、ふりかえると遥かの暗黒あんこくの空に、橙色だいだいいろに美しく輝いているのであった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
沈痛ちんつう悲慘ひさん幽悽ゆうせいなる心理的小説しんりてきせうせつつみばつ」は奇怪きくわいなる一大巨人いちだいきよじん露西亞ロシア)の暗黒あんこくなる社界しやくわい側面そくめん暴露ばくろしてあますところなしとふべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
のこらずの品物がていねいに書きめられたとき、両親と二人の男がうちの中にはいった。そしてわたしたちの車はまた暗黒あんこくのうちにかれた。
かくて、かなりの暗黒あんこくをうねっていくと、やがてゆきどまりの岸壁がんぺきにぶつかった。あらかじめこうあることとは、石見守いわみのかみからもいわれてきた熊蔵くまぞう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
資本主しほんぬし機械きかい勞働らうどうとに壓迫あつぱくされながらも、社會しやくわい泥土でいど暗黒あんこくとのそこの底に、わづかに其のはかな生存せいぞんたもツてゐるといふ表象シンボルでゞもあるやうなうたには
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あいそのものであり、そのどもがあるから、どんな暗黒あんこく時代じだいでも、未來みらいにひかりをるのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ヴェスヴィオに登山とざんしたひとは、通常つうじよう火口内かこうないには暗黒あんこくえる鎔岩ようがん平地へいち見出みいだすであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
わたくしおな滊船ふねで、はる/″\日本につぽん歸國きこく途中とちう暗黒あんこくなる印度洋インドやう眞中たゞなかおそ海賊船かいぞくせん襲撃しふげきひ、不運ふうんなる弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつともに、夫人ふじん生死せいしわたくしにはわからぬ次第しだいだが
トルストイの遺著いちょの中、英訳になった劇「けるしかばね」を読む。トルストイ化した「イナック、アヽデン」と云う様なものだ。「暗黒あんこくちから」程の力は無いが、捨てられぬ作である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
征衣せいいのまま昼夜草鞋わらじを解かず、またその間にはしばしば降雪にい、ために風力計凝結ぎょうけつして廻転をとどむるや、真夜中にるが如き寒冽なる強風をおかして暗黒あんこく屋後おくごの氷山にじ登り
碧水金砂へきすゐきんさひるおもむきとはちがつて、靈山りやうぜんさき突端とつぱな小坪こつぼはまでおしまはした遠淺とほあさは、暗黒あんこくいろび、伊豆いづ七島しちたうゆるといふ蒼海原あをうなばらは、さゝにごりにごつて、はてなくおつかぶさつたやうにうづだか水面すゐめん
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
依然いぜんたる前後の暗黒あんこくであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
暗黒あんこくを絶間もなく
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
伊那丸いなまるせま暗黒あんこくから暁天ぎょうてんへみちびかれて、自分のしんにゆくべき道をおしえられたような心地ここちがした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もつと山麓さんろくちかづくにしたがひ、温度おんどくだつひには暗黒あんこく固體こたいとなつてはやさもにぶつたけれども。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
誰があの暗黒あんこくのなかで、りにって非常に正確を要する延髄えんずいの真中にはりを刺しこむことが出来るだろうか。『赤外線男』という超人ちょうじんでなければ、到底とうてい想像し得られないことだった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ンとに」と、友は痛く感じたやうな語調てうしで、「僕等の將來は暗黒あんこくだ。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
熊蔵くまぞう雁六がんろくも、すこし道順みちじゅんがわからなくなってきた。まえには渓流けいりゅう、うしろは暗黒あんこく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、この退屈たいくつ平穏へいおん暗黒あんこくの空の旅は、地球の方ではあまり歓迎しなかった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)