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拈
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ひね
ふりがな文庫
“
拈
(
ひね
)” の例文
忽
(
たちま
)
ち
衣嚢
(
かくし
)
を探りて先刻のコロップを取出し
宛
(
あたか
)
も初めて
胡桃
(
くるみ
)
を得たる小猿が其の
剥方
(
むきかた
)
を知ずして
空
(
むなし
)
く指先にて
拈
(
ひね
)
り廻す如くに其栓を
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ただ秘密あれば従って符牒あり。彼とこれとは背と腹のごとし。両々相待ちて(彼の件)という物体となる。(なぞと
拈
(
ひね
)
る奴さ)
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
虎ヶ窟の壁に
文字
(
もんじ
)
の跡が有るというのは、
頗
(
すこぶ
)
る興味を惹く問題であった。一座
悉
(
ことごと
)
く耳を傾けると、塚田巡査は首を
拈
(
ひね
)
りながら
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
遊佐は
強
(
し
)
ひて微笑を含みけれど、胸には
犇
(
ひし
)
と
応
(
こた
)
へて、はや八分の
怯気
(
おじけ
)
付きたるなり。彼は
悶
(
もだ
)
えて
捩断
(
ねぢき
)
るばかりにその
髭
(
ひげ
)
を
拈
(
ひね
)
り拈りて止まず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
其処には夜が転がつてゐる。電燈の笠をとらへ、ボンヤリとスイッチを
拈
(
ひね
)
つたら、たわいもなく夜は窓外へ散つてしまつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
好奇
(
ものずき
)
な
統計家
(
とうけいか
)
が
概算
(
がいさん
)
に依れば
小遣帳
(
こづかいちやう
)
に
元禄
(
げんろく
)
を
拈
(
ひね
)
る
通人迄
(
つうじんまで
)
算入
(
さんにう
)
して
凡
(
およ
)
そ
一町内
(
いつちやうない
)
に百「ダース」を
下
(
くだ
)
る事あるまじといふ。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
『あ、もう十二時が
遂
(
とう
)
に過ぎて居る。』と云ツて、少し頭を
拈
(
ひね
)
ツて居たが、『怎だ君、今夜少し飲まうぢやないか。』
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
すると、私はぐいとあの人の口を
拈
(
ひね
)
る。
調戯
(
からか
)
はれるのだとは知りながら、それでも憎しみが力強く湧いて来る。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
其の
罠
(
わな
)
へ入って能くノメ/\と文治郎の宅へ来たな、さア五十両の金を騙り取ろうなどとは申そうようなき大悪人、
兎
(
と
)
や
角
(
かく
)
申さば
立処
(
たちどころ
)
に
拈
(
ひね
)
り潰して仕舞うぞ
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼はその帽子に最後の一と
拈
(
ひね
)
りを呉れた。それと同時に彼の手が緩んだ。そして、ようよう寝床の中へよろけ込むか込まないうちに、ぐっすり寝込んでしまった。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
拈
(
ひね
)
り出したる書上の理窟を以て、万古不易の定論なりとし、之を実地に施行せんとするが如き、浅薄皮相の考にて、却て自国の国体歴史は、度外に置き、無人の境に
天皇:誰が日本民族の主人であるか
(新字新仮名)
/
蜷川新
(著)
それ等の驚くべき出来事のすべてが、直接に君自身と関係を持った話であることが、殆ど
電燈
(
でんき
)
のスイッチを
拈
(
ひね
)
るのと同様な鮮やかさで、一時に判明して来るであろう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
案を払ひ香を
拈
(
ひね
)
つては謹んで無量義経の其中に両眼の熱光を注ぎ、
兀坐寂寞
(
こつざじやくまく
)
たる或夜は、
灯火
(
ともしび
)
のかゝげ力も無くなりて
熄
(
と
)
まる光りを待つ我身と観じ、
徐歩
(
じよほ
)
逍遥
(
せうえう
)
せる或時は
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
予はただ笑止に思うに過ぎぬ。予はただここに
一炷
(
いっしゅ
)
の香を
拈
(
ひね
)
ってこれを弔するに過ぎぬ。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
君、そうして廷丁が三人も居るんだよ。それで
呼鈴
(
よびりん
)
と言うので、ちりりんと
拈
(
ひね
)
ると、そのまあ、ちり、ちり、ちりん、の工合で誰ということが分ると見えて、その人がやって来ますね。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いったん消した電気を
拈
(
ひね
)
ったり、鍵を掛けた扉をあけたりして、私を迎え入れた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
壮烈なるは
匕首
(
ひしゅ
)
を
懐
(
ふところ
)
にして不測の
秦
(
しん
)
に入り、頑固なるは首陽山の
薇
(
わらび
)
に余命を
繋
(
つな
)
ぎ、世を茶にしたるは竹林に
髯
(
ひげ
)
を
拈
(
ひね
)
り、
図太
(
づぶと
)
きは南禅寺の山門に昼寝して王法を
懼
(
おそ
)
れず、一々数へ来れば日も亦足らず
人生
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
珍しいものだと
云
(
いっ
)
て皆
寄
(
よっ
)
て
拈
(
ひね
)
くって見ながら、
如何
(
どう
)
だろう
之
(
これ
)
を日本に
持
(
もっ
)
て
帰
(
かえっ
)
てさして
廻
(
まわっ
)
たら、イヤそれは
分切
(
わかりきっ
)
て居る、新銭座の艦長の屋敷から日本橋まで行く
間
(
あいだ
)
に浪人者に
斬
(
き
)
られて
仕舞
(
しま
)
うに違いない
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ちょっと
拈
(
ひね
)
ってここへ寝てみたい心持にでもなったのか
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「とは、また、酷く
拈
(
ひね
)
った……」
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
腥
(
なまぐさ
)
き油紙を
拈
(
ひね
)
りては人の首を獲んを待つなる狂女! よし今は何等の害を加へずとも、
終
(
つひ
)
にはこの家に
祟
(
たたり
)
を
作
(
な
)
すべき望を
繋
(
か
)
くるにあらずや。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
むかしは菖蒲湯または柚湯の日には、湯屋の番台に
三方
(
さんぼう
)
が据えてあって、客の方では「お
拈
(
ひね
)
り」と唱え、湯銭を半紙にひねって三方の上に置いてゆく。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
縦令
(
たとひ
)
石橋
(
いしばし
)
を
叩
(
たゝ
)
いて
理窟
(
りくつ
)
を
拈
(
ひね
)
る
頑固
(
ぐわんこ
)
党
(
とう
)
が
言
(
こと
)
の如く、
文学者
(
ぶんがくしや
)
を
以
(
もつ
)
て
放埓
(
はうらつ
)
遊惰
(
いうだ
)
怠慢
(
たいまん
)
痴呆
(
ちはう
)
社会
(
しやくわい
)
の
穀潰
(
ごくつぶ
)
し
太平
(
たいへい
)
の
寄生虫
(
きせいちう
)
となすも、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
文学者
(
ぶんがくしや
)
が
天下
(
てんか
)
の
最幸
(
さいかう
)
最福
(
さいふく
)
なる者たるに
少
(
すこ
)
しも
差閊
(
さしつかへ
)
なし。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
その声に驚いて、次の間から看護婦が飛んで来てスタンドを
拈
(
ひね
)
っても、ただ、スタンドが天井に大きな影を投げているだけで、家の中は
森閑
(
しいん
)
として、深夜の眠りを眠っているだけなのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
歯医者は
躊躇
(
もじもじ
)
して、帽子を
拈
(
ひね
)
っておりましたが、やがて
萎
(
しお
)
れて坐りました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
巡査が
髭
(
ひげ
)
を
拈
(
ひね
)
って、手続は万事
己
(
おれ
)
がするから好いと云うのを、少しも疑わなかったのである。その頃松永町の
北角
(
きたずみ
)
と云う雑貨店に、色の白い円顔で
腮
(
あご
)
の短い娘がいて、学生は「
頤
(
あご
)
なし」と云っていた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
文治はハッと身を
拈
(
ひね
)
り、矢の来た
辺
(
あたり
)
へ眼を付けて
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ふむ。」と、市郎は首を
拈
(
ひね
)
って、「で、
其
(
そ
)
の𤢖という奴は
何
(
ど
)
んなものだね。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
苦桃太郎
(
にがもゝたらう
)
冷笑
(
あざわら
)
ひ、
桃太郎
(
もゝたらう
)
風情
(
ふぜい
)
の
小童
(
こわつぱ
)
十人二十人、
虱
(
しらみ
)
を
拈
(
ひね
)
るよりなほ
易
(
やす
)
きに
鬼桃太郎
(旧字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と暫く首を
拈
(
ひね
)
って居りましたが
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
持ち出して
拈
(
ひね
)
くりまわしているうちに、一本か二本ぬけて落ちたのを誰も気がつかずにいて、けさになって小僧どもが掃き出してしまったんでしょう。どうです、何かのお役に立ちませんかね
半七捕物帳:40 異人の首
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は
遽
(
にはか
)
に
躊躇
(
ちゆうちよ
)
して、手形用紙を惜めるやうに
拈
(
ひね
)
るなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
桃太郎風情の
小童
(
こわっぱ
)
十人二十人、
虱
(
しらみ
)
を
拈
(
ひね
)
るよりなお易きに
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「どうです。
違
(
ちが
)
や
為
(
し
)
ませんか」と、巡査は首を
拈
(
ひね
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
拈
漢検1級
部首:⼿
8画
“拈”を含む語句
拈華微笑
拈出
拈定
拈花
拈香
手拈
拈弄
拈繰
拈繰返
拈華
拈華坊
拈華瞬目
拈転
拈轉
拈込
掻拈