成立なりた)” の例文
勘次かんじきはめてせま周圍しうゐいうしてる。しかかれせたちひさな體躯からだは、せま周圍しうゐ反撥はんぱつしてるやうな關係くわんけい自然しぜん成立なりたつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かういふふうにしてわが地球ちきゆう知識ちしきはだん/\すゝんでたけれども、其内部そのないぶ成立なりたちに立入たちいつた知識ちしき毛頭もうとうすゝんでゐないといつてよろしかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「一体和歌といふものは、諸君も御存じかも知らんが、三十一文字みそひともじといつて、ちやんと三十一字から成立なりたつてゐる。こゝに一つ例をあげると……」
如何いかんとなれば、人間にんげん全體ぜんたいは、うゑだとか、さむさだとか、凌辱はづかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレツトてき恐怖おそれなどの感覺かんかくから成立なりたつてゐるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それ甚麼どんなはずみ相近あひちかづく事につたのであるか、どうも覚えませんけれど、いつかフレンドシツプが成立なりたつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
軈て婚約を祝う奏楽につれて、コップになみなみと酒ががれました。私は同時にマルセーユと天津、ブタペストとホノルルとの婚約の成立なりたったのを見ました。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
これは他の文芸にはない所のものであって、季というものの束縛をうけて、しかしながら季というものの大いなる力にって、成立なりたって行くところの文芸である。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ただ市という者の本来の成立なりたちが、名を知らぬ人々と物を言う点において、農民に取っては珍しい刺戟しげきであった故に、例えばエビスというがごとき神をさえ祭り
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手前の此の身代は重二郎殿へ残らず差上げます、これ此の身代は助右衞門殿の三千円の金から成立なりたったものなれば、取りも直さず、皆助右衞門殿がのこされた財産で
品川湾の眺望に対する興味は時勢と共に全く湮滅してしまつたにかゝはらず、其のかはりとして興るべき新しい風景に対する興味は今日こんにちに於てはいま成立なりたたずにゐるのである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
絶頂をりて四、五町のところに、その普賢の石の祠はある。石楠花の咲いていたその背後の絶壁は、高さ九十尺幅百二十尺の屏風びょうぶを立てたような角閃かくせん安山岩から成立なりたつ。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
即ち玉子の白身は溶解性の蛋白質二割余、鉱物質一分六厘、水分七割八分余から成立なりたっている。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ただ単に迷信のみにて、実際成立なりたたざる咒詛のろいにもせよ、かかる罪悪を造る女心の浅ましく、はたまた咒わるる男も憐むべしと、見るから不快の念に堪えず直ちに他方に転ぜんとせし視線は
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それも道理千万なはなしで、早いたとえが、誤植だらけの活版本でいくら万葉集を研究したからとて、真の研究が成立なりたとう訳はない理屈だから、どうも学科によっては骨董的になるのがホントで
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ことごとくそれを忘れて仕舞しまうのではあるまいかという説も成立なりたちます。
さへぎりそれでは御存ごぞんじのきならん父御てゝごさまとあにとのなかにおはな成立なりたつておまへさまさへ御承知ごしようちならば明日あすにも眞實しんじつ姉樣あねさまいやか/\おいやならばおいやでよしと薄氣味うすきみわろきやさしげのこゑうそまことあまりといへばあまりのこと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この中岳なかたけ火口かこうまへしるしたとほり、南北なんぼく連續れんぞくした數箇すうこいけから成立なりたち、おもなものとして、北中南きたなかみなみみつつを區別くべつする。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
如何いかんとなれば、人間にんげん全体ぜんたいは、うえだとか、さむさだとか、凌辱はずかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレットてき恐怖おそれなどの感覚かんかくから成立なりたっているのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
十七字詩であって季を問題にしないという主張を持って居る人々は、伝統を重んずる上からいってもなおかつ成立なりたち得るのであるから、大いに考慮を払うべきであると思う。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
全体大原が女に向って野心を起すとは滑稽こっけいだね。僕の考えにはどうせ滑稽で成立なりたっているからこの半襟も滑稽的の物を択んだ方がいい。僕らは大原に対して平生へいぜい少し遺恨いこんがあるぜ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しなうちからは近所きんじよ風呂ふろたぬときた。いそがしい仕事しごとにはやとはれてもた。さういふあひだ彼等かれら關係くわんけい成立なりたつたのである。それはおしなが十六のあきである。それから足掛あしかけねんつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)