“忿怒:ふんぬ” の例文
“忿怒:ふんぬ”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂20
吉川英治13
坂口安吾4
岩野泡鳴3
泉鏡花3
“忿怒:ふんぬ”を含む作品のジャンル比率
文学 > ロシア・ソヴィエト文学 > 小説 物語6.3%
文学 > フランス文学 > 小説 物語5.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
四天王とは、内心慈悲を蓄えながら、方法上、忿怒ふんぬの姿において人々を信服せしむる慈勇の魂を象徴したものであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さう信じると、私の脈搏の中には、リード、ブロクルハースト一味の人々に對する火のやうな忿怒ふんぬの衝動が湧き立つた。
お組と掴み合ひの喧嘩をした後の紛々ふんぷんたる忿怒ふんぬは、全く雷鳴以上の怖ろしいものがあつたに違ひありません。
忿怒ふんぬのまなじりを裂いた作左衛門は、手早く下緒さげおの端を口にくわえてたすきに綾どりながら、妻のお村を顧みて、
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎の忿怒ふんぬも、少し冗談じみますが、お葉に一杯かつがれたと知つて、その照れ臭さは救ひやうがありません。
勝造の忿怒ふんぬの視線を辿ると、人垣の後ろから、二十五六の化粧の上手な女が、赤い唇を歪めて、冷たい笑いを送っているのでした。
僕は忿怒ふんぬの余り躍り上った、そいつこそ、越野が教えて呉れたその男こそ、憎んでも憎んでも憎み足りない奴だった。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかもそれ等の霊魂は、死の瞬間におい忿怒ふんぬに充ち、残忍性に充ち、まるで悪鬼あっき夜叉やしゃの状態に置かれて居る。
後ろから、ウロウロとついて來たのは八五郎でした。心配と忿怒ふんぬがコビリ附いて、兩の頬をヒクヒク痙攣けいれんさしてをります。
gn をロシア流に hn にする一方で、「忿怒ふんぬ」から「心」を取り去って、呉音で読めば hnn である。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まッ黒な嫉妬ねたみにつつまれた小六は、忿怒ふんぬくらんだ力まかせ、可愛さあまったお延の姿へ、きらりと抜き浴びせて行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七十近い巌丈がんじょうな身体に、新しい忿怒ふんぬが火のごとく燃えて、物馴れた平次も少し扱い兼ねた様子です。
尾田は真面目なのか笑いごとなのか判断がつきかねたが、その太ぶとしい言葉を聞いているうちに、だんだん激しい忿怒ふんぬが湧き出て来て、
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
おお、もしも彼女に声があったなら、どんなに物すごい忿怒ふんぬの叫びを、園長は耳にしたことでありましょうか。
時がたつと復讐のねがひも消え失せ、忿怒ふんぬと嫌惡にはやる心ももくしてしまふことは有難いことである。
眼鏡めがねを取って、編物の上にそっと置きましたが、その顔には解き難い忿怒ふんぬの色が、サッと動きます。
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
天皇は日頃にも似ず、上皇に対して直々諷諫ふうかんをこゝろみた。上皇の忿怒ふんぬいかばかり。その日を期して、二人はまつたく不和だつた。
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
むツと忿怒ふんぬの氣が義雄のあたまにのぼつた。そして、やツぱり女郎は女郎だと思ふと、わざと思ひ切つて、高砂樓かその他へ行きたくなつた。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
と、切歯せっしして、忿怒ふんぬの余勢を、あたりの幕将たちへも、吐かずにいられない容子ようすだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆる君子なるものが俺と同じ強さの忿怒ふんぬを感じてなおかつそれを抑え得るのだったら、そりゃ偉い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
弥吉は、あまりと云えば無理な主人だ。いっそ飛びかかって白い喉笛のどぶえを食い切ってやろうかとまで、劇しい忿怒ふんぬにかられていた。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
帛紗ふくさのまま押しやったのは、どう少なくみても、百両は下らなかったでしょう。が、それを見ると松五郎の忿怒ふんぬは爆発点に達しました。
長次郎はとんでもない見幕でした。唇を噛んでこぶしを握ると、顔へはサッと忿怒ふんぬの血が上ります。
こらえんとしても彼の四は、髪の根のしまるような忿怒ふんぬのために、身ぶるいを刻んで手の痛くなるまで鉄格子の下に握りしめている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公子 どこまで疑う。(忿怒ふんぬの形相)お前を蛇体と思うのは、人間の目だと云うに。おれの……魔……法。許さんぞ。女、悲しむものは殺す。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海老塚は忿怒ふんぬと反抗に燃え狂う目をクルリと一廻転して、あらわに軽蔑を示して、ソッポをむいた。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
平次は言い捨てて、プイと外に出ました。その後で、金太と八五郎が、お留の憤々ぷんぷんたる忿怒ふんぬの前に、どんなに深刻な家捜しをしたことか。
そうっている夫人の顔には、もうあの美しい微笑は浮んでいなかった。少しく、忿怒ふんぬを帯びた顔は、振い付きたいような美しさで、輝いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ムラムラと湧く忿怒ふんぬのやり場に困つたらしく、柿の市はグイグイと兩のこぶしを握るのです。
忍剣はいま、さながら羅刹らせつだ、夜叉やしゃだ、奸譎かんけつ非武士ひぶし卑劣ひれつ忿怒ふんぬする天魔神てんましんのすがただ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の忿怒ふんぬは、尋常でなかった。武士の群れはたちまち走って、二人を捕えて来た。——犬畜生でも見るように、曹操は、はッたと両名をめつけて、
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
練絹ねりぎぬのような美しいはだが、急にあかねさして、恐ろしい忿怒ふんぬに黒い瞳がキラリと光るのさえ、お駒の場合にはたまらない魅惑です。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そこへ来ているはずの手紙も見たかったし、絶望的な細君に対する不安や憐愍れんびんの情も、少しずつ忿怒ふんぬの消え失せた彼の胸に沁みひろがって来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
呂布は、王允にいざなわれて、竹裏館の一室へ通されたが、酒杯さかずきを出されても、沈湎ちんめんとして、けぬ忿怒ふんぬにうな垂れていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上自分が、十年の恐ろしい艱苦かんくさらされたのも、多の市が柄にもない検校になる野心のためと思うと、腹の底から忿怒ふんぬが煮えくり返ります。
平次は父親の忿怒ふんぬの隙を狙って、この娘から、なにかを引出そうとしているのです。
主人の擧げた顏は紫色の忿怒ふんぬいろどられて、この世の人とも思へぬ姿です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
川地は忿怒ふんぬの声荒々しく「九州炭山の同盟罷工教唆けうさも虚報と云ふのか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今し、また燃えさかった炉火で見ると、赤々と照らされた黒光りの肌と、忿怒ふんぬの形相、それは宮本武蔵が刻んだという肥後の国、岩戸山霊巌洞の不動そっくりの形です。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
青年らしい一本気で、狷之介の顔にはサッと忿怒ふんぬが一と刷毛はけ彩られます。
矜羯羅が柔和で立像、制吒迦が岩へ「踏み下げ」て忿怒ふんぬの相、不動の本体は安座あんざであって、片手が剣、片手が縛縄ばくなわ天地眼てんちがんで、岩がある。
……そこへ、二人の後ろから、体じゅう血だらけのベロヴゾーロフが、むくむく起き上がって、青ざめた唇を開くと、忿怒ふんぬにわななきながら、父をおどかすのだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
お留は我慢のならない忿怒ふんぬを噛みしめるように、糸切歯がキリリと鳴ります。
数日の後、その出来事を知ると、メルキオルは恐ろしい忿怒ふんぬにとらわれた。
こゝにも古い者と新しい者、若い者と年を取つた者の、宿命的な衝突があつたのです。萬兵衞の顏は姪の痛々しい死骸を前にしながらも、湧き上がる忿怒ふんぬに燃えるのでした。
彼は元の場所に坐ったまま、込み上げて来る忿怒ふんぬをじっと圧えつけていた。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
クリストフは憎悪の眼でいどみかかり、忿怒ふんぬのあまり身を震わしていた。
今はと、尊氏の全五体は否みようない死を知る忿怒ふんぬの皮膚に変っていた。
振りあげた志賀屋の顏、その眼の中には、メラメラと忿怒ふんぬが燃えます。
それらの中を一人の頑丈な、陰鬱な大男が沈黙と絶望の冷やかな足取りで歩きながら、こうした人々の心に不快と、忿怒ふんぬと、なんとはなしに悩ましげな倦怠とをいて行った。
台傘がさっと斜めになった。が、丸官の忿怒ふんぬは遮り果てない。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呂布の忿怒ふんぬは、小沛の方へ向けられた。しかしまだ多少疑って、
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが、かえってまた、彼の忿怒ふんぬあおったもののように。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この毒殺が、あまりに手際がよかったので相手の智恵のたくましさに、さすが平次も、煮えくり返るような忿怒ふんぬと、それとはおよそ似もつかぬ、一種の感歎をさえ覚えるのでした。
忿怒ふんぬ身顫みぶるいが傍聴人たちの間をつたわって行った。
(新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
それはある時は嗚咽であり、ある時は忿怒ふんぬの叱声であつた。
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
忿怒ふんぬ面相めんさう、しかしあつてたけからず、大閻魔だいえんままをすより、くちをくわつと、唐辛子たうがらしいた關羽くわんうてゐる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高さ一尺二、三寸の銅像で、左の足で蓮花を踏み、右の足を高く上げ、左の手は腰にあて、三鈷さんこを持った右の手を頭上に振りかざし、やや忿怒ふんぬの相を帯びた半裸体のものである。
金峰山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
彼とお雪の間に起った激しい感動や忿怒ふんぬは通過ぎた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
許すまじき忿怒ふんぬの相を認め合って殺気立った。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
またもや忿怒ふんぬがむらむらといて来た。
「馬鹿を云ふな!」義雄も默つてゐられなくなり、つか/\と出て行つて、妻と、それから今の巡査とに對して押さへてゐた忿怒ふんぬを一緒にして、この言葉と同時に、かの女の横ツつらを思ひ切りなぐつた。
堂々たるその勇姿、絶倫の性慾、全身の膨脹、悪戦苦闘の恐るべき忿怒ふんぬ相と残虐性亢奮こうふんとは今や去って、傲然たる王者の勝利感と大威力とに哄笑し快笑し、三度また頭を高く、激しくうち振った。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
東儀与力は、じりじりする忿怒ふんぬを抑えて、
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第二の灯が用意されました。野分のわきの後のような大混乱の店先に、ガラッ八の糞力に組み伏せられて、フウフウ言っているのは、誰あろう、石原利助の一の子分、伊三松の忿怒ふんぬに歪む顔だったのです。
二年前に自分を捨てて、男から男へと、放縦な生活を続けて行った若菜、死んだというだけで、踏み付けられた夫の胸から、忿怒ふんぬも怨恨も消え去ってしまうものでしょうか。博士は黙って眉を垂れました。
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
忿怒ふんぬげんずる明王みやうわう
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
七の足は忿怒ふんぬにふるえていた。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屈辱、忿怒ふんぬ
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
三枝庄吉は怒り心頭に発し、彼を知る共同の知友に手紙を書いてアイツはウヌボレ増長慢の気違い、礼儀を知らず、文学者の風上かざかみに置けぬ奴と宣言を発し、忿怒ふんぬ、憎悪、三ヶ年、憎さも憎し、然し、ふと、苦悩のたびに奴を思う。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「………」僕はさッきから独りで、どういう風に油をしぼってやろうかと、しきりに考えていたのだが、やさしい声をして、やさしい様子で来られては、今まで胸にこみ合っていたさまざまの忿怒ふんぬのかたちは、太陽の光に当った霧と消えてしまった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
しかし、もっともっと突込んだ本当の原因というのは、染五郎とお絹の仲が良過ぎて、ツイしゅうとの六兵衛の存在を忘れ、五十になったばかりの独り者の六兵衛は、筋違いの嫉妬しっとと、無視された老人らしい忿怒ふんぬのやり場に、若い二人の間をいたとも取沙汰されました。
羅刹らせつ地獄の六道の娑婆苦しゃばくも能く救うというお地蔵さまも、まことは、一仏二体がその本相であり、半面は慈悲をあらわしているが、もう半面の裏のおすがたは、忿怒ふんぬ勇猛な閻魔王えんまおうであって、もともと一個のうちに、大魔王と大慈悲との、二つのさがかたどっているものですよ、と母はよく言った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが御主君たるゆえに、非には目をふさぎ、理には事を曲げて、いて忿怒ふんぬの言をろうし、信長公を故なくうらむ仔細では断じてございませぬ。——まったくこのたびの御罷免ごひめんばかりは、いかなる御事情によるものか、何の落度を理由と召されたものか、右大臣家のお心のほど、われらずれには解するにも苦しみまする。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)