御手おんて)” の例文
カピ長 おゝ、モンタギューどの、御手おんてをばあたへさせられい。これをこそ愛女むすめへの御結納ごゆひなうともおもひまする、ほかのぞみとてはござらぬわい。
十月二十九日朝御暇乞おんいとまごいに参り、御振舞おんふるまいに預り、御手おんてずから御茶を下され、引出物ひきでものとして九曜のもん赤裏の小袖二襲ふたかさねたまわり候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
仰有おつしやつたが、御手おんて錫杖しやくぢやうをづいとげて、トンとろしざまに歩行あゆらるゝ……成程なるほど御襟おんゑり唾掛よだれかけめいたきれが、ひらり/\とれつゝらるゝ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
腰に廻された御手おんて、軽く握られたお手……別段殿下には、変った御様子もない。相変らずにこやかな笑みをたたえて曲に合わせて見事な弧を描いていらっしゃる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
仰ぎ願くは三世十方の諸佛、愛護あいご御手おんてを垂れて出離しゆつりの道を得せしめ給へ。過去精麗くわこしやうりやう出離生死しゆつりしやうじ證大菩提しようだいぼだい
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「神保帯刀様ご嫡男ちゃくなん、同姓市之丞様に物申す。いざ尋常にご覚悟あって、その御手おんてそびらにお廻わしあれや!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
隣の寺の観音様御手おんてを膝に柔和の御相これもめるがごとく、若いさかりの熱といふ物にあはれみ給へば、此処なる冷やかのお縫も笑くぼをほうにうかべて世に立つ事はならぬか
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
閻魔面えんまづらした院長さんでも。すぐに地蔵の笑顔に変って。慈悲の御手おんてで迎える代りに。ほかの患者を極楽まわしじゃ。金があってもまずこの通りじゃ……チャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また一冊はルイ十四世の御手おんてに残り、ルイ十五世に伝わり、十六世の時に獄屋の中で焼き捨てられた。しかしその写しの紙片かみきれが女王に渡された。女王はそれを聖書の中に挟まれた。
かの水精ナイアスの水したたる白い御手おんてに滋味を吸うこうの鳥、水に浮くこの聖鳥の如くに、わたくしもまた暗い時のには、斯人の手にうち伏し、うちすがり、わが心の糧——深き夢をば求めました。
「ついに泣かぬ弁慶も一期いちごの涙ぞ殊勝しゅしょうなる」から「判官ほうがん御手おんてを取り給い」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
願わくは御手おんてに随従して微力をつく
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
さては御手おんてに、『ゆくすゑ』の
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
時に、壁のかげの、昼も薄暗い、こうかおりのする尊い御厨子みずしの中に、晃然きらりと輝いたのは、妙見宮みょうけんぐう御手おんてつるぎであつた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
となりてら觀音樣くわんをんさま御手おんてひざ柔和にうわの御さうこれもめるがごとく、わかいさかりのねつといふものにあはれみたまへば、此處こゝなるひややかのおぬひくぼをほうにうかべてことはならぬか
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
程遠からぬ吉野の御山みやまへわずかに、おん住居をおん移しになるばかり、しかもやがては高野も熊野も、御手おんてにお入れあそばさるるご方寸、しかれば十津川は交通の要路、再々お通りあそばさるれば
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御手おんて隨從ずゐじゆうして微力びりよくつく
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さん御手おんてのひらに。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「や、や、狼藉ろうぜき。」と驚きたまう老婦人の両の御手おんてを左右よりとりしばりて勿体無くも引下ろせば、一人は背後うしろより抱竦だきすくめ、他は塩ッ辛き手拭を口に捻込ねじこ猿轡さるぐつわ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伊豆守幸豐君いづのかみゆきとよぎみ御手おんてひざたまひ、かうべ得上えあげで平伏へいふくせる何某なにがしをきつと
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんと、と殿樣とのさま片膝かたひざきつてたまへば、唯唯ははおそれながら、打槌うつつちはづれさふらふても、天眼鏡てんがんきやう淨玻璃じやうはりなり、ぢよをつとありて、のちならでは、殿との御手おんてがたし、とはゞからずこそまをしけれ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私たちの覚えたのは、内方うちかた袖方そでかた御手おんてに蝶や花、どうやどうんど、どうやどうんど、一丁、二丁、三丁、四丁ッてもう陽気なことばかりで、訳がわからないけれど、貢さんのはまた格別だねえ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ついておといて、裁形たちかた袖形そでかた御手おんてに、ちょうや……花。……
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)