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と、その高山隊の使番のごときは、って、瀬兵衛の馬の口をつかみ、遮二無二、後方へ曳き退がろうとした程だったが、瀬兵衛は
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいや、なりませぬ! 断じてやることなりませぬ! って労役人夫入用ならば、当領内にはまだ百姓共が掃く程いる筈、そやつ等を
こう覚悟をきめてみると、ここに悠々としている必要はない、例の宝蔵院の槍のことも、この場合、っての所望しょもうでもないのですから。
もとより温厚の人でございますから、ってと云うので、是から無極の二階へ通りました。追々誂物あつらえものの肴が出てまいりましたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さればじゃ、あまりに其方そちの手裏剣が見事ゆえに、ってここまで足労をわずらわした次第だが、頼みというのはほかでもない——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
って行かしゃるなら、承知しねえ。赤湯から、大作様の跡をつけてきてるというのは、お前様かの、それが、本当なら、ただではおかんぞ」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
左官の彦兵衛は仮親を立てて貰うように、って主張しました。——万一自分の素姓が知れた時の用心だったのでしょう。
勉強するは上達のもといで、って止めもせず好きに任せておりましたが、師匠に素月という名を頂いて美術協会の展覧会にも二度ほど出品をしました。
晩餐ばんさんでも御一緒にと、ってお勧め申し上げたが、前触れもなく不意に立ち寄って、そんなお騒がせするも本意ではないと侍女をお顧みになって、さ
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その間で嫂がわずかに話す所を聞けば、市川のそれがしという家で先の男の気性も知れているに財産も戸村の家に倍以上であり、それで向うから民子をっての所望
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おはま それ程よく得心とくしんしているのなら、って親子といわないで、早く帰っておくれでないか。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
って這入れと勧めるから、両人共ふたりとも加入はいりました、其時、細君おときが、保険をつけると殺される事があると言ったのが原因もとで、大喧嘩をして、お叱りを受けたことがあります。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
着衣はシットリと夜氣にえてゐる。裾やら袖やら、川で濡らした此着衣を、智惠子とお利代がつて勸めて乾かして呉れたのだ。その間、吉野は誰の衣服を着てゐたか!
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
両親も大変喜んで種々いろいろ先方さきの男の様子も探ってみたが大した難もないし、ことに先方からのっての懇望のぞみでもあるから、至極良縁と思ってそれを娘にはなすと、一度は断ってはみたが
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
食事がすむと、私達は茶の間へ引退ひきさがつて、お茶を呑みながら、閑散な話を交へた。私は姉の法事につて招かれてゐたので、さうするとあひだ二日をこゝに過さなければならなかつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
縁續えんつゞきのものだけに、益々ます/\つてぢられてはむづかしい。……なにしろ此處こゝとほしてはらぬで。わし下室したつてつてよう。が、つむじまがりぢや、つてあがつてぬともかぎらぬ。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれど、私の執拗しつような希望には手の下しようもないとあきらめたか、大叔父はって私に学校をやめさせようとはしなかった。そこで私は、大叔父の家で家事の手伝いをしながら学校に通えるようになった。
夜叉王 って御所望ごしょもうとござりますれば……。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お光はって辞し帰ったのであった。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
って、進撃あるなら、貴殿は貴殿の考えで進まれるがよい。李典にはそんな盲戦はできぬ。城に残って、留守をかためていよう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それほどいやなものを、って話すとはいわぬ、わたしはただ、お前と歌子は、よい話し相手になるであろうと思うのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
杢「左様そうかえ、あの炭屋さんに女房を一人世話をしてお貰い申したいが、ってきたいという人があるんだから、女房に持って呉れようかね」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まアいい、せっかくそう言ってくれるなら、って聞くまい。俺の心の中だけで、兄哥の親切を忘れなきゃア——」
ってとはお願い申さぬ、実は貴殿のお身の上と言い、ただいま承ったところと申し、ちと不審の儀がござる」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もしってとのおおせならば、越前に代って、南町奉行を余人に申しつけ下されく、越前が、職におりまする限り、御老中の仰せ、公方くぼう様の仰せで御座りましょうとも
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「なに! 黄ろい奴が黄ろいことをほざいたな。って望みとあらば御対手せぬでもないが、当流釜淵流の槍術はちと手きびしゅうござるぞ。それにても大事ござらぬか」
吉野はグタリと首を垂れて眼をつぶつた。着衣きものはシツトリと夜気にえてゐる。裾やら袖やら、川で濡らした此着衣きものを、智恵子とお利代がつて勧めて乾かして呉れたのだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大島氏はってといってなかなか許しませんので、経験がないということも、その経験を作ることによって、智識もひらけ、腕も上達するというもの、聞けば蝋作りというものは
って用があるのならようござんす、お君ちゃん、おとっさんのお位牌もっといで。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
……ってお望みなら、そりゃお売りしてもかまいませんがな。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「おのれ、無礼な挨拶、って渡さぬと申すなら、宮津七万石の威光をもっても、必らず下手人を申し受ける手段をとるがどうじゃ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炭屋の心に惚れたのだろうが杢左衞門も鼻が高い、流石さすがは藤の屋の娘だ、宜しい、貴様がってあの炭屋の所へ嫁にきたいと云うなら遣ってやろうか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天竺のさる寺から、オランダの役人に頼んで、あの本尊樣は、海賊の手で盜み出されたものだから、是非返して貰ひ度いと、つての談判でございます。
ってあなた様があれへお越しになりたいと思召おぼしめすなら、これから少し参りますると、御禊みそぎの滝というのがございます、その滝壺で水垢離みずごりをおとりになって
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もしって、そのお安とやらだとおっしゃるんでございましたら、失礼でございますが、何か証拠と申すようなものを、見せていただきたいのでございます。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主婦おかみつて頼んだのでもなく、矢張普通の女中で、額の狹い、小さい目と小さい鼻をかくして了ふ程頬骨の突出た、土臼の樣な尻の、先づ珍しい許りの醜女ぶをんな肥滿人ふとつちよであつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
これは険呑けんのん至極と思いましたが、前にも申す如く、奥の婦人たちに向ってって口を入れて我意を張り通すことも、とにかく、元、私が医師を世話した関係上、私としては言い兼ねもしたので、まず
いかがでおじゃろう、ってとは申さぬ。
……御曹子、それでもなお、あなたはって、もう一度、生ける人にひき戻して、あえないお苦しみをそのお方にかけたいと思いますか
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何うでも死なんければならん死なんければ操が立たんと云う訳ならって止める訳にもいかんが、わたしが一通り聴いて成程と思えば決して止めはしません
小坊主は住職の顔を眺めながら、って反対の様子のないのを見定めて、厨子の几帳を半分ほど開きました。
今宵はお客様のっての所望しょもうで二度まで間の山節をうたい返した上、その因由いわれなどを知っている限り話させられたので、これほどおそくなろうとは思わなかった
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや、拙者も、何もってとは申しませぬが、しかし、伊豆屋伍兵衛と申しまするは——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主婦おかみつて頼んだのでもなく、矢張普通ただの女中で、額の狭い、小さい目と小さい鼻を隠して了ふ程頬骨の突出た、土臼どうすの様な尻の、先づ珍しい許りの醜女みたくなし肥満人ふとつちよであつた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「何といおうが、御加増返納などという手続は取りようがない。ってお断りするなら、自身浜松へまかり出て、直接申し上げるがいい」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ってというので、音助に言付け万事出立の用意が整いましたから立たせて遣り、ようやく五日目に羽生村へちゃく致しましたが、聞けば家宅うち空屋あきやに成ってしまい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
金に糸目を付けないからってと言う執心、一応も二応も断りましたが、何んと言っても聴きません。
どう致しまして、これは、わたしから御前ごぜんにお願いして、ってやらせていただく役目なんでございます、決して言いつけられてやっているお役目ではございません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それを、どうきめたのだときいておるのだ。べつにって聞こうとはいわんが——」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「でも……私、心配でなりません。いいえ、御舎弟たちも、寄り寄り、お案じ申して、私へ、って、お止めしてくれと仰っしゃいます」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)