師匠ししょう)” の例文
俳諧師はいかいし松風庵蘿月しょうふうあんらげつ今戸いまど常磐津ときわず師匠ししょうをしているじつの妹をば今年は盂蘭盆うらぼんにもたずねずにしまったので毎日その事のみ気にしている。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
冗談じょうだんじゃねえ。おせんちゃんは、師匠ししょうたのまれて、おいらがびにったんだぜ。——おめえはまだ、かおあらわねえんだの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
じいさんはあたかも寺子屋てらこやのお師匠ししょうさんとった面持おももちで、いろいろ講釈こうしゃくをしてくださいました。おじいさまはんなふうされました。——
「甘いなあ、これで一しもかかればなお甘いんだ。おいらばかりべているのはもったいない、お師匠ししょうさまにも一つべさせてあげたいな……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗十郎夫婦はその前は荻江節おぎえぶし流行はやらない師匠ししょうだった。何しろ始めは生きものをいじるということがみょうおそろしくって、と宗十郎は正直に白状した。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それが大正六年の新年号から掲載され始めたので、引きつづいてその一月から「湯屋の二階」「おばけ師匠ししょう」「半鐘の怪」「奥女中」を書きつづけました。
半七捕物帳の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
師匠ししょうさんの学校以来初めて見た不備な学校であったが、先生というのは大酒呑おおざけのみでひどく乱暴な男だった。
るよく晴れた日、須利耶さまはみやこに出られ、童子の師匠ししょうたずねて色々れいべ、また三巻みまき粗布あらぬのおくり、それから半日、童子をれて歩きたいともうされました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼の家のおむかいに住まっている習字のお師匠ししょうの娘であった。赤い花模様の重たげな着物を着て五六歩はしってはまたあるき五六歩はしってはまたあるきしていた。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
あんまの師匠ししょうは、そういう弟子でしをとりたがらないのだが、マスノの骨折りで、彼のばあいは首尾しゅびよく住みこめたという。その磯吉に、マスノはまるで弟あつかいの口をきき
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
お絹はお松を養って、今の神尾の家へ奉公に出した妻恋坂のお花のお師匠ししょうさんであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつも師匠ししょうに、鐘をつくなら、鐘を仏と心得て、それにふさわしい心のつつしみを忘れてはならぬ、と言い聞かされておりましたので、今朝もそれを思い出し、ひとつきごとに
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わし師匠ししょうきびしかったし、経を読む身体からだじゃ、はださえ脱いだことはついぞ覚えぬ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「とうとうお目出度めでたくなったそうだな、ほら、あの槙町まきちょう二弦琴にげんきん師匠ししょうも。……」
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころ赤間あかませきに、法一ほういちというびわ法師ほうしがいました。この法師は生まれつきめくらでしたので、子どものときから、びわをならい、十二、三さいのころには師匠ししょうけないようになりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
今では共に亡びてしまって行くえが分らず、奥許しの免状めんじょうに署名している茶の湯、生け花、琴三味線等の師匠ししょうの家筋も、多くは絶えてしまっていたので、結局前に挙げた文を唯一の手がかりに
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼女は数年ぜん夫に死別し、子供もなく、両親も兄弟もなく、ひどく淋しい身の上であったこと、少しは貯金もあったらしい様子だが、職業としては生華いけばな師匠ししょうをしていたこと、弟子の娘さん達の外に
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
びたお師匠ししょうさんの声が、かず離れず中間を縫ってゆく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と銀太夫君が師匠ししょう令嬢れいじょう美代子みよこさんに訊いた。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
春重はるしげかわものだってこたァ、いつも師匠ししょうがいってるじゃねえか。いまさらかわものぐれえに、おどろくおめえでもなかろうによ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「えッ、じゃあおじさんも武田たけだの浪人か——ふしぎだなア……おいらのお師匠ししょうさまも、ずっと昔は武田家たけだけさむらいだったんだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おッ師匠ししょうさん——子供達はそう呼ばされていた——は女で、四十五、六でもあったろうか、総前髪そうまえがみの小さな丸髷まるまげうて、あかじみた浴衣ゆかたしまの前掛けを当てていた。
師匠ししょうさまはご器量きりょうや芸能が諸人にすぐれておられたばかりに一生のうちに二度までも人のねたみをお受けなされたお師匠さまの御不運は全くこの二度のご災難のおかげじゃと云ったのを思い合わせれば
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
師匠ししょうの娘と駈落かけおちをした事だの、いろいろ悪いうわさも聞いています。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つづみなど師匠ししょうを取って勉強していました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お師匠ししょうさーん。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なん御用ごようぞんじませんが、一こくはやくお師匠ししょうさんにおにかかって、おねがいしたいことがあると、それはそれは、いそいでおりますんで。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うそなんかおいら大きらいだ、まったくの話をするとお師匠ししょうさまが呂宋兵衛るそんべえに、おまえのいのちはこよいのうちにあぶないぞっておどかしたんだよ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃア師匠ししょう、夢にもあっしの知合しりあいだなんてことは、いっちアいけやせんぜ。どこまでも笊屋ざるやとらに聞いて来た、ということにしておくんなさらなきゃ。——」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ねえや、あたいがお師匠ししょうさんになってあげるから、今夜から一緒においで」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところが師匠ししょう、笑わねえでおくんなせえ。忠臣蔵の師直もろのおじゃねえが、あっしゃア急に命が惜しくなって、はばかりへ行くふりをしながら、ふんどしもしずに逃げ出して来ちまったんで。……」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
講書こうしょ、弓馬の師匠ししょうもつけて、珠の如く守り育てていたのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お師匠ししょうさまでいらっしゃいますか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)