姉弟きょうだい)” の例文
そして私と清ちゃんが年も背丈も誰よりも小さかった。柳屋の姉弟きょうだいにはおっかさんがなく病身のおとっさんが、いつでも奥でせきをしていた。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
血を分けた姉弟きょうだいにそういう考えを持たせるというのはよくよくのことですよ。のっぴきならぬ証拠がそろいすぎるほど揃っていたのです。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
にん姉弟きょうだいは、おとうさんのかえりをっていました。そして、どうしてもたのんで、それをゆるしてもらわなければならないときめていました。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
この姉弟きょうだいが父のかたきを尋ねる苦心談があり、結局は丈助が前非を悔いて切腹し、めでたしめでたしに終わることになっている。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
成程なるほど、弟達は久しぶりで姉弟きょうだい三人一緒になったことを悦んでくれ、姉の好きそうなものを用意しては食膳の上のことまで心配してくれる。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……それもよい、なぜ、挨拶に来さっしゃらぬ、自体この新免家の姉弟きょうだいは、小癪こしゃくにさわる、この婆を何と思うていなさるのじゃ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叔父はこの言葉を証拠立しょうこだてるためだか何だか、さっそく立って浴衣ゆかたの尻を端折はしょって下へ降りた。姉弟きょうだい三人もそのままの姿で縁から降りた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうち少し大きくもなっていて双方で姉弟きょうだいの愛を感じ合うようになっていた子であると思い出してさえ夢のようにばかり浮舟には思われた。
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
父道庵が不思議な医者殺しの三人目の犠牲者に選ばれたと判ると、お絹、綾之助の姉弟きょうだいはいても立ってもいられません。
両親ふたおやに早く死に別れて、たった二人の姉弟きょうだいですから、互いに力にしていたのが、今では別れ別れになって、生き死にさえわからんようになりました。
少年の悲哀 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さらに目についたのは、この姉弟きょうだいの服装や一般的なしつけの標準になっているらしい、教育上の観点と観点とのあいだの、明らかに根本的な対比だった。
傳「えゝ主はない、たった姉弟きょうだい二人で弟は十六七でい男さ、此の弟は姉さん孝行姉は弟孝行で二人ぎりです」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人の姉弟きょうだいは腹を抱え面白そうに笑ったが、その心地よい笑い声は森や林へ反響し二人の耳へ返って来た。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そしてあの姉弟きょうだいはもうつかれてめいめいぐったり席によりかかってねむっていました。さっきのあのはだしだった足にはいつか白いやわらかなくつをはいていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本卦ほんけがえりにモウ二ツ三ツという年ごろ。頭は切下げにして。少し小肉のある気さくそうな婆さんは。葦男姉弟きょうだいの借住居せし長屋のあるじ。宮崎一郎の母なりけり。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
姉さんが一人、お悦といって後家ごけを通した人(後に私の養母である)、この人が台所をやるという風で、姉弟きょうだい三人水入らずで平和にむつまじくやっていたのであります。
「なぜッて、そう云うとね、他人は何だもの、姉弟きょうだいだと思わないで、おかしく聞くんだからね。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼と姉とは二人姉弟きょうだいで、姉は六年前に人妻になっていた。それにまだ子供は一人もなかった。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その子は近所のある有福な棟梁とうりょうの家の実の姉弟きょうだいなかに産れたのだという話であった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
姉弟きょうだいだって仲のいいのは小さい時だけで、大きくなれば何をするかわからない」
突堤 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
エリザヴェート姉上、我々姉弟きょうだいは早く両親ふたおやに死に別れました。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「あの赤ん坊とは、あたし姉弟きょうだいじゃないかも知れない。」
幻の園 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「さあ、桝本さんに三人のご姉弟きょうだい!」
彼女かのじょは、吹雪ふぶきのうちにうずもれている、故郷こきょうのさびしいむらえがいて、そこにあわれなははや、姉弟きょうだいおもったのであります。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
可憐な姉弟きょうだいを取り返そうとする一心である。お綱がその時の血相の前には、お十夜の怖るべきことも、周馬や一角の太刀たちの凄みもなかった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへうわさをしたばかりの姉弟きょうだいが三人づれで寺の廊下を回って来た。中でも、妻籠から来た正己はじっとしていない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「御姉弟きょうだいなのでしょう。お話ししたく思っていらっしゃることもあるでしょうから、座敷の中へお通ししましょう」
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかし運のわるい子で、六つの年に男親に死別れて、姉のおつねと姉弟きょうだいふたりは女親の手で育てられたのです。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
演奏旅行は九回にわたり、姉弟きょうだいの人気はいやが上にも高まるばかりであったが、この旅行のためにモーツァルトの健康は一生涯そこなわれたことも事実である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
おやま山之助の姉弟きょうだいは、白島山平が江戸詰になりましてから行方知れずになり、母は心配致して病死致した時はおやまが八歳、山之助が三歳でござりますから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いていたあねもハンケチでをふいて外を見ました。青年は教えるようにそっと姉弟きょうだいにまたいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼らはみんな一つ腹から生れた姉弟きょうだいですけれども、この姉とKとの間には大分だいぶ年歯としの差があったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小児こどもと申してもまましい中で、それでも姉弟きょうだいとも、ほんとも、賢之助は可愛くッてなりません。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「きみたち三人そろっていると、やはり姉弟きょうだいは争われないなあ。よく似ているぜ、そっくりだ」
五階の窓:05 合作の五 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「歩くぐれいなこと、夜どおし歩いた所で、何のこともねえが、いったいその女子おなごわらべというのは、お武家の召使か、それとも姉弟きょうだいたちかね」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ねこにとっては、それが、兄弟きょうだい永久えいきゅうわかれであったことはわかりませんでした。三にん姉弟きょうだいめずらしがって、ねこをしたきません。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
五人ある姉弟きょうだいの中での一番末の弟に生れた彼は、ついぞ妹を欲しいというようなことを胸に浮べたためしも無かったから。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そしてあの姉弟きょうだいはもうつかれてめいめいぐったりせきによりかかってねむっていました。さっきのあのはだしだった足にはいつか白いやわらかなくつをはいていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今の娘をい女だとめておいでなすったが、あれは白島村のなんです元は武士さむらいだと云いますが、ういう訳か伯父が有ると云うので、姉弟きょうだいで伯父の世話になって居ますが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし彼は黙って烟草タバコを吹かしていた。こんな些細ささいの点にも姉弟きょうだいの気風の相違は現われた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれは照吉さんのおっかさんがはじめた店を、そのおっかさんが亡くなって、姉弟きょうだい二人ぼっちになって、しようが無いもんですから、上州の方の遠い親類の人に来てもらって、それが世話をするんですけれど
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
隠してしまうこともまた恐ろしくてできぬ若い姉弟きょうだいであった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「この餓鬼がきめ!」と、その上にも土足をあげて、この抵抗力のない姉弟きょうだいをさいなんでいる三人組の浪人は、よりによってたくましい者ばかりだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、みんなのすこやかなかおて、こころから、よろこんでくれるのでした。姉弟きょうだいうちでも、二ばんめのおんなは、もっともこの小父おじさんをしたったのでした。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
姉弟きょうだいが話の糸口は未だ真実ほんとうほどけなかった。急に、正太は階下したから上って来て、洋燈の置いてあるところに立った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
燈台看守とうだいかんしゅはやっと両腕りょううでがあいたので、こんどは自分で一つずつねむっている姉弟きょうだいひざにそっときました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何卒どうぞ私が今まで了簡違いをした事は、お前腹も立つだろうが堪忍して、元の通りあかの他人とも、又姉弟きょうだいとも思って、末長くねえ、私も別に血縁たよりがないから、塩梅の悪い時はお前と
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ただ姉弟きょうだいからこういう質問を受けようと予期していなかっただけである。今更返す気だの、貰う積りだのと布衍ふえんすればする程馬鹿になるばかりだから、甘んじて打撃を受けていただけである。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姉弟きょうだい内端話うちわばなしをするような調子。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここ少しのあいだは、戦争もなかったが、いつ御城下に、兵火があがらぬとも限らぬ。中村におられた方が、母上や姉弟きょうだいたちにも、無事でもあるなあ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)