はな)” の例文
私が猿楽町に下宿していた頃は、直ぐ近所だったので互に頻繁ひんぱんに往来し、二葉亭はいつでも夕方から来ては十二時近くまではなした。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
イヤ……お勢じゃない叔母に咄して……さぞ……厭な顔……厭な顔を咄して……口……口汚なくはな……して……アア頭が乱れた……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
平家琵琶へいけびわから分れてはなが立ち、『太平記たいへいき』や『明徳記めいとくき』や『大内義弘退治記おおうちよしひろたいじき』(応永記)のような講釈軍記の台本が書かれている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
かくさんと云るをきゝ共に涙にくれたりしがやがてお文は父母ふたおやの前にたり兩手をつきたゞ今お兩方樣ふたかたさまのおはなしを承まはり候に父樣は何方いづかたへかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白山はくさんに芸者家が出来たって云うはなしだがあの辺はどうだ。矢張やっぱり芸者家のある土地の方が仕出屋しだしやや何かの便利がきくからね。」
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なんでもこのはなしはさほど古いことではないのでしょう、わたくしはその村で、そのおうちと近しくしている方からききました。
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
出端でばなに油かけられた資人は、表情に隠さず心の中を表した此頃の人の、自由なはなし方で、まともに鼻をうごめかして語った。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
世界のはなしも相成可申か、此儀も白峯より与三郎より少〻うけたまハり申候。此頃おもしろき御咄しもおかしき御咄しも実に/\山〻ニて候。かしこ。
こんなに考えると子年だから鼠の話を書くなど誠に気の利かぬはなしだが、毎歳やって来たこと故書き続ける。
顔ガ売レタロウト皆ンナニはなシタトテ、松平ノ家来ノ松浦勘次ガオレニ咄シタニ、最早、隠居ハ吉原ヘ行ッテモ大丈夫ダトイッタ故、男谷ニテモ安心シタト。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう思った途端とたんに、耳の傍でなんだかかすかな声がした。ナニナニ。蠅が何かをはなして聴かせるって。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
周囲は駕籠かごが通り人々は煙草たばこをふかし、茶をのみ乍ら四方山よもやまはなしにふける普通の現実の世界である。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
……その折の不覚を、当人も心から慚愧ざんきしており、頭をって、おはなしゅうとしてでも、何とかもういちど、前田家へ帰参はかなうまいかと、一生の願いといたしております。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れいの通りおく一間ひとまにて先生及び夫人と鼎坐ていざし、寒暄かんけん挨拶あいさつおわりて先生先ず口を開き、このあいだ、十六歳の時咸臨丸かんりんまるにて御供おともしたる人きたりて夕方まではなしましたと、夫人にむかわれ
まる落語家はなしかはなしっても無いです。が、綸はまだ着いてましたので、旦那は急いで綸を執る、私は苫をほぐすで、又二度めの戦争が始まりましたが、どうかこうか抄い上げました。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
はなしをしているうち。一曲の踏舞は終り。斎藤は宮崎とともにいできたり。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
山上樹木欝葱うっそうたる上に銀河の白くかかりたる処、途上に人とはなしながらふと仰向けば銀河の我首筋に落ちかかる処、天の川を大きく見ず、かへつて二、三尺ほどの溝川みぞがわの如く見立てたる処
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鶴ヶ岳という山が第一だと申されたとはなしてくれた、これが自分が鶴ヶ岳と呼ぶ山が、自分の住居している国に存在しているという事を知った初めであって、んとなく気持よく自分の耳に響いた
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
青すだれ黒歯つけ/\のはなしかな 山鳳
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
夏の暮煙草の虫のはなし聞く 重厚
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
子供は駈けて来て親父にはなした
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
出して富右衞門に見せければ元來篤實とくじつの富右衞門なれば以ての外に驚き是は等閑なほざりに致し難しと言つゝ此事を主人平兵衞にはなしけるに平兵衞は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
実は昨日きのう朝飯あさはんの時、文三が叔母にむかって、一昨日おととい教師を番町に訪うて身の振方を依頼して来た趣を縷々るるはなし出したが、叔母は木然ぼくぜんとして情すくなき者の如く
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
当時儒学の宗たる柴野栗山しばのりつざんに到底及ばざるを知って儒者を断念して戯作の群に投じたのであると語ったのを小耳に挟んで青年の私にはなした老婦人があった。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
祖母をさすりに毎晩交替でくる、栄良だの栄信だのという小あんまたちまでが、自分たちも見たようにはなすのだった。私たちも怖々こわごわ夜更けに出て見たことがある。
オレガ駕籠カラ顔ヲ出シタラ、帯刀ガキモヲツブシテ、ドウシテ来タト云イオルカラ、ウチヘ行ッテくわシクはなソウトテ、帯刀ノ座敷ヘ通リテ、斎宮いつきヘモ逢ッタガ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お身も、少しはなしたら、ええではないか。官位こうぶりはこうぶり。昔ながらの氏は氏——。なあ、そう思わぬか。紫徴中台しびちゅうだいの、兵部省のと、位づけるのは、うき世の事だわ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そのはなしにも竜神の伝説同様、旅僧が小判多く持ったとばかり言うて、金作りの鶏と言わず、熊野のはなしは東北国のより新しく作られ、その頃既に金製の鶏を宝とする風なかったものか。
○おかしきはなしあり、お竹に御申おまうし。直次事ハ此頃黒沢クロサワ直次郎と申おり候。
かれは、秀吉のおはなしゅうとして、大坂表へ移住した。思うに、もしこれが、信長の場合であったならば、こんな寛典かんてんにめぐまれるはずもなし、かれの首は、二つあっても足りなかったであろう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことわりてゐたりしかど金子翁かつて八百屋が先代の主人とは懇意なりける由にて事の次第をはなして頼みければ今の若き主人心よく承知して池にのぞ下座敷したざしきを清め床の間の軸も光琳こうりんが松竹梅の三幅対さんぷくつい
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何故はなさぬ
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
出し且又はなしの内に立せ間敷まじく其爲そのため朋輩ほうばいを頼み置きたりおはなしあらば心靜かに咄し給へといと發明はつめいなる働に傳吉は其頓智とんち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お勢を疑うなんぞと云ッておれ余程よっぽどどうかしている、アハハハハ。帰ッて来たら全然すっかりはなして笑ッてしまおう、お勢を疑うなんぞと云ッて、アハハハハ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
近松でも西鶴でも内的概念よりはヨリ多くデリケートな文章味を鑑賞して、この言葉のあやが面白いとかこの引掛けが巧みだとかいうような事を能くはなした。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
まずまず帰って目出たい、それには及ばぬ、年とって改心すればお役にも立つべし、よくよく手当してつかわすべしと言われた、それから一同安心したと皆がはなした
雨の日に、年をとつた勞働者が二三人、寒さうに顫へながら、小さな聲でこんなはなしをしてゐた。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
そうして、夜に入ってくたくたになって、家路を戻る。此為来しきたりを何時となく、女たちのはなすのを聞いて、姫が、女の行として、この野遊びをする気になられたのだ、と思ったのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「あるよ、山下町だったかでも査公に一ぺんとがめられたし、たしかこの家の門前でも咎められたよ。はなさなかったかねえ、自分の家へ、盗人ぬすっとにはいる奴もないじゃないか。」
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
支配ガ大兄ノ支配シタ越後水原すいばらニナッタカラ、国ノ風俗人気ノコトヲ聞クカラ、オレガモト行ッタ時ノ様子ヲハナシテ勤向キノコトモ、アラアラシカッタコトハはなシテヤッタ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何をはなしたか忘れてしまったが、今でも頭脳に固く印しているのは、その時卓子の上に読半よみさしの書籍が開いたまま置かれてあったのを何であるとくと、二葉亭は極めて面羞おもはゆげな顔をして
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
或時飯田町の三畳の書斎を訪ずれると、昨宵ゆうべ嵯峨さがが来て『罪と罰』という露西亜ロシアの小説の話をしたが、嵯峨の屋がモグモグしながら妙な手附きをしてはなすのが実に面白かったといった。
そのおうち子供衆方こどもしゅがたはなしでは、おばあさんの来るという日の夜に限って、山から狐が沢山に下りて、そのお宅の縁側は、土でざらざらになるのと、きっとその日は雨風であれるということです。
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
何か家のことでも聞いたりしたのかも知れないが覚えていない。ある日秋山先生が訪ねてきて、父と長くはなしていたが、それは私を送ってくれる先生が書生にしてくれといったのだとあとで聞いた。
薬売りがはなしますと、主人も驚いたには違いありませんが
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さうならおはなしだ。と言捨てて共に去つた。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)