向島むかうじま)” の例文
向島むかうじま武蔵屋むさしや奥座敷おくざしき閑静しづかからう、丁度ちやうど桜花さくらも散つてしまうた四ぐわつ廿一にちごろと決したが、其披露文そのちらし書方かきかたが誠に面白おもしろい。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
月島つきしま埋立工事うめたてこうじが出来上ると共に、築地つきぢの海岸からはあらた曳船ひきふねの渡しが出来た。向島むかうじまには人の知る竹屋たけやわたしがあり、橋場はしばには橋場はしばわたしがある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はからざりき、かずに/\とつゞけるのをいて、ひらけば向島むかうじまなり。それより百花園ひやくくわゑんあそぶ。黄昏たそがれたり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宿入やどいりに出すが如き仕成しなしにて名代につかはしけるに彼の仲間の若者は萬八のくづれより向島むかうじまの花見と云ひなしそのじつ花街よしはらの櫻の景氣を見んと言ひ立ち伊勢五の養子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
向島むかうじま木母寺もくぼじ。平舞臺の下手へよせて、藁ぶき屋根の茶店あり。軒にあづま屋といふ行燈あんどうをかけ、門口に木振よき柳の立木あり。よきところに床几二脚ほどならべてあり。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は廉一の紙石板かみせきばんへ、山や船を描いてやつた。「向島むかうじま花ざかり、お茶屋のねえさんちよいとお出で。」——どうかするとそんな昔の唄が、覚束おぼつかない筆蹟を見せる事もあつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あゝ此行このかう氷川ひかはみやはいするより、谷中やなかぎ、根岸ねぎし歩行あるき、土手どてより今戸いまどで、向島むかうじまいたり、淺草あさくさかへる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
島なき場所も柳島やなぎしま三河島みかはしま向島むかうじまなぞと呼ばれ、森なき処にも烏森からすもりさぎもりの如き名称が残されてある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
向島むかうじま武蔵屋むさしや落語らくごくわい権三ごんざますと、四方よも大人うしふでにみしらせ、おのれ焉馬えんば判者はんじやになれよと、狂歌きやうかの友どち一ぴやく余人よにん戯作げさくの口を開けば、遠からん者は長崎ながさきから強飯こはめしはなし、近くば
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
同道どうだうしたる男は疑ひもなき敵とねらふ吾助にて有れば忠八はおのれ吾助とひながらすツくとあがる間に早瀬はやせなれば船ははやたんばかりへだたりし故其の船返せ戻せと呼はれ共大勢おほぜい乘合のりあひなれば船頭は耳にも入ず其うちに船は此方のきしつきけれとも忠八立たりしまゝ船よりあがらず又もや元の向島むかうじまの方へと乘渡り群集ぐんじゆの中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父親ちゝおや合點がてん母親はゝおや承知しようちで、向島むかうじま花見はなみかへりが夜櫻見物よざくらけんぶつつて、おいらんが、初會惚しよくわいぼれ、と寸法すんぱふるのであるが、耕地かうち二十石にじつこく百姓ひやくしやう次男じなんではうはかない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は向島むかうじま三囲みめぐり白髯しらひげに新しく橋梁の出来る事を決して悲しむ者ではない。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
這囘このたび向島むかうじま武蔵屋むさしやおいて、昔話むかしばなしくわい権三ごんざりやす」
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
以前いぜん牛込うしごめ矢來やらいおくころは、彼處等あすこいら高臺たかだいで、かへるいても、たまにひとふたつにぎないのが、ものりなくつて、御苦勞千萬ごくらうせんばん向島むかうじまめぐりあたり、小梅こうめ朧月おぼろづきふのを
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)