ぎり)” の例文
女の写真屋の話はそれぎりで、その後コッチから水を向けても「アレは空談サ」とばかり一笑に附してしまったから今もって不可解である。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
宗近君はずんどぎり洋袴ズボンを二本ぬっと立てた。仏見笑ぶっけんしょう二人静ふたりしずか蜆子和尚けんすおしょうきた布袋ほていの置物を残して廊下つづきを中二階ちゅうにかいへ上る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
の活動写真屋を見ろ。あんな映画を一本作るために、映画会社が何人の男女優を絞め殺したり、八ツぎりにしたりしているか知っているか。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
即ち家に伝わる長い脇差の刀に化けたのが一本、小刀で拵えた短い脇差が一本、それぎりほかには何もない。そうして小さくなって居るばかり。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
アラらしつたよ、チヨイとおつかさん旦那だんなが、うもまア貴方あなた本当ほんたうあきれるぢやアありませぬか、過日こなひだかいんなすつたぎりらつしやらないもんですから
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
刺身ッていやあ一寸試いっすんだめしだ、なますにすりゃぶつぶつぎりか、あのまた目口めくちのついた天窓あたまへ骨がつながって肉がまといついて残る図なんてものは、といやな顔をするからね。ああ
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
住持はその席へ蕎麦そばを出して、「これは手討のらんぎりでございます」と、茶番めいた口上を言った。親戚は笑い興じて、只一人打ちしおれているりよを促し立てて帰った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「机の上に新らしい四つぎりの紙が一枚あったはずじゃが、」と彼は言った。
とぢぎり一言も發せず居るゆゑ平左衞門はかねてお島に心あるにより又々押止おしとゞ先々まづ/\御待ち成さるべし手引はかれが致せしにもせよぬすみ出せしは伴建部の兩人なれば此者どもの有家ありかさへ知るれば藤五郎殿御兄弟の行衞ゆくゑも知れ候は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こりゃ仕方がない、鉄砲洲てっぽうずから九段阪下まで毎日字引じびきを引きに行くとうことはとてあわぬ話だ。ソレもようやく入門してたった一日いっぎりで断念。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
刺身さしみツていやあ一寸試いつすんだめしだ、なますにすりやぶつ/\ぎりか、あのまた目口めくちのついた天窓あたまほねつながつてにくまとひついてのこなんてものは、といやかほをするからね。あゝ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お釈迦さまからわたしを越えるとすぐに向うが下矢切村でございますけれども、江戸へとては十六の時に来たぎりで、浅草の観音さまを其の時初めて拝んだという人で、供に附いて来た男は
僅かに十二三兩位に預けしぎり流しては餘り口惜くちをしき事に候はずや因て考ふるに一まづ此金子にて請出うけいだし其上外方へ賣拂ひ候はゞ相應さうおうの代金手に入べし其時市之丞殿持參致されたる金子だけ返濟へんさい致す共おそからぬ事ゆゑ其中の融通ゆうづうつか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……しかしおこの別誂べつあつらへもつて、とりのブツぎりと、玉葱たまねぎと、凍豆腐こゞりどうふ大皿おほざらんだのを鉄鍋てつなべでね、沸立わきたたせて、砂糖さたう醤油しやうゆをかきぜて、わたし一寸ちよつと塩梅あんばいをして
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それもさ、きざんだのではないで、一本いつぽんぎりにしたらうといふ握太にぎりぶとなのを横啣よこくはえにしてやらかすのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ご存じの楚蟹ずわえの方ですから、何でも茨を買って帰って——時々話して聞かせます——一寸いっすん幅の、ブツぎりで、雪間ゆきま紅梅こうばいという身どころをろうと、家内と徒党をして買ったのですが
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左様そうだ、刺身さしみは一すんだめしで、なますはぶつぶつぎりだ、うおの煮たのは、食べると肉がからみついたまま頭につながって、骨が残る、の皿の中の死骸にうして箸がつけられようといって身震みぶるいをする
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左樣さうだ、刺身さしみは一すんだめしで、なますはぶつぶつぎりだ、うをたのは、べるとにくがからみついたまゝあたまつながつて、ほねのこる、さらなか死骸しがいうしてはしがつけられようといつて身震みぶるひをする
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私はちょっと其処そこへ掛けて、会釈で済ますつもりだったが、古畳で暑くるしい、せめてのおもてなしと、竹のずんどぎり花活はないけを持って、庭へ出直すと台所の前あたり、井戸があって、撥釣瓶はねつるべ
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのずんどぎりな、たらたらと濡れた鼻頭はなづらに、まざまざと目を留めると、あの、前世を語りそうな、意味ありげな目で、じっと見据えて、むぐむぐと口を動かしざまに、ぺろりと横なめをした舌が円い。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)