)” の例文
左様さう貴方のやうに言つたものでも有ませんよ。未来さきの事を夢に見るといふ話はく有ますよ。どうも私は気に成つて仕様が無い。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
峰の小屋の熊のような主は「危えぜ、く気を付けて行かっせ、何でも右へ右へと、小石の積んだのを目当てに行きせえすりぁ大丈夫だ。」
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
だが、気弱なほおが月のようにはにかんでいる。無器用ぶきよう小供こどものように卒直に歩く——実は長い洋行後駒下駄こまげたをまだ穿れて居ないのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして、十八の歳に師範学校の女子部に入つて、去年の春首尾く卒業したのである。兄は今青森の大林区署だいりんくしよに勤めてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
れが日本にウエブストルと云う字引の輸入の第一番、それを買てモウほかには何も残ることなく、首尾く出帆して来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
茶山よりわかきこと七歳、蘭軒の父信階のぶしなより少きこと十一歳であつた。宗伯は相貌魁梧で、く九十余歳の寿を保つたさうである。是が碧山の養祖父である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
気の惑いか軾棒かじぼうつまずき、御機嫌うという声を俯いて聞いたが、それから本郷へ帰って夢は一層巧になった。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
奏し国民の歓喜何ものかこれかんさきに宣戦の大詔煥発たいしょうかんぱつせらるるや義勇公に奉じたる将士は久しく万里の異境にりてく寒暑の苦難を忍び一意戦闘に従事しめい
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
じつに一行が首尾しゆび探検たんけん目的もくてきを達するを得たるは、忠実ちうじつ勇壮ゆうさうなる人夫の力大にあづかつてちからありとす。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
孔明は、銀坑の蛮都に入ってから、これを治めてかすめず、これを威服せしめて殺戮さつりくせず、くただ徳を布き、さらに軍をととのえて、王征を拡大して来た途にあった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし富岡先生にののしられたばかりなら彼は何とかして思切るほうにもがいたであろう、その煩悶はんもんも苦痛には相違ないが、これたたかいである、彼の意力はくこの悩にえたであろう。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
住民また甚だ太古のふうを存し、は皆齒にでつし、山袴やまばかまと稱する短袴たんこ穿うがち、ことに其の清麗透徹たる山水はく天然の麗質を生じて、世に見るを得べからざるの美すこぶる多しと聞く。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
終りをくし得たであろう歟、其中或は死よりも劣れる不幸の人、若くば醜辱の人を出すことなかったであろう歟、生死孰れが彼等の為めに幸福なりし歟、是れ問題である、兎に角
死生 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
「そんな事なら何も私にだんまりで、裏から逃げ出さなくっても好いでは有りませんか。私だって普通ただの女では無いんですからね。筋路さえ通った事なら、機嫌く御見送りしますよ」
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
生物界に於ける霊意識の作用の玄怪不可思議にして現代に於ける科学知識のく追随補捉し得べきものに非ざるは、単に姙娠に関する前記二三の特例に照すもかくの如く明瞭なる事然り。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つづいて、「く忠に克く孝に、億兆心を一にして、世々、の美をせるは」
新撰組もく力闘したが同時に勤皇諸有志が如何に勇戦したか、これで判る。
〔評〕徳川慶喜よしのぶ公は勤王きんわうの臣たり。幕吏ばくりの要する所となりて朝敵てうてきとなる。猶南洲勤王の臣として終りをくせざるごとし。公はつみゆるし位にじよせらる、南洲は永く反賊はんぞくの名をかうむる、悲しいかな。
それにく堪え忍んで来たという事実は、一方に於て十分彼女の為同情をよんだのでしたが、同時に他方に於ては、彼女の品行問題に就て却って彼女の噂に不利益な根拠を与えたわけなのです。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
『法隆まさニ季ナラントシ、妄庸ノ徒声利ニ垂涎すいぜんシ、粉焉沓然、風ヲ成シ俗ヲ成ス。』人は惜しむらくは罵詈ばりにすぎぬという。しかしく罵言をなす者すら五山八千の衆徒の中に一人もないではないか。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
ハヽヽヽと篠田は元気く打ち笑ひつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
蓮華寺へ行つたお志保——彼娘あのこがまた母親にく似て居て、眼付なぞはもう彷彿そつくりさ。彼娘の顔を見ると、直にせんの家内が我輩の眼に映る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
く研究して居る癖に、うして今日は土曜日だといふ事を忘却して居たものであらう、誠に頓馬な話である。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ただわずかに、その大きな未来の空間をみつめて、一箇の胸三寸に、天、地、人、三運の神機をとらえて、く自己の掌上に日月のうごきと麾下きか百万の生命とを照らしみながら
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
首尾く出来たから勝の首は乃公おれの物だ。しかし航海中、用も多いからしばらの首を当人に預けて置くといって、大に船中を笑わした事がある。かくもマア祝砲だけは立派に出来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
桜沢、若神子わかみこ贄川にえがわ、平沢の諸駅、名前だけはく耳にしていた。桜沢以西は既に西筑摩郡で、いわば前木曾ともいうべき処である。これらの村々から松本の町へ出て来る学生がある。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
旅装束何から何まで行き届かして、機嫌くお鉄は送り出して呉れた。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
『法隆まさニ季ナラントシ、妄庸ノ徒声利ニ垂涎すいぜんシ、粉焉沓然、風ヲ成シ俗ヲ成ス。』人は惜しむらくは罵詈ばりにすぎぬといふ。しかしく罵言をなす者すら五山八千の衆徒の中に一人もないではないか。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
今の家内を貰つたのは、丁度その下高井に居た時のことさ。そこはそれ、在に生れた女だけあつて、働くことは家内もく働く。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そして、其又顏といつたら、蓋し是れ天下の珍といふべきであらう。唯極めて無造作に凸凹でこぼここしらへた丈けで醜くもあり、馬鹿氣ても居るが、く見ると實に親しむべき愛嬌のある顏だ。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
まずく民を持つ——そのことを、敵に勝つ前の大事としていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここへ集るものは、女ですらく馬の性質を暗記している位。男が少年のうちからして乗馬の術にけているのは、不思議でもなんでも有ません。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、其又顔といつたら、けだし是れ天下の珍といふべきであらう、唯極めて無造作に凸凹をこしらへた丈けで醜くもあり、馬鹿気ても居るが、く見ると実に親しむべき愛嬌のある顔だ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たとえ男が長い冬の日を遊暮しても、女はく働くという田舎の状態ありさまを見て、てんで笑って御了いなさる。全く、奥様は小諸の女を御存ごぞんじないのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
總じて盛岡は、其人間、其言語、一切皆く雨に適して居る。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ああ、貴方が青木さんですか。御書きに成ったものはく雑誌で拝見していました」と原は丁寧に挨拶する。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
総じて盛岡は、其人間、其言語、一切皆く雨に適して居る。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その日も、三吉の書きかけた草稿を机の上にひろげて、すずしい、力のある父の達雄にく似た声で読聞かせた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そんなことは有ません」と布施は言葉をやわらげて、さも可懐なつかしそうに、「実際、私は原先生のものを愛読しましたよ。永田先生にもくその話をしましたッけ」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この「ネブ茶」はある灌木かんぼくの葉から製したもので、三吉も子供の時分にはく飲み慣れた飲料である。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一寸した仮寝うたたねにも直ぐ夢を御覧なさる位ですから、それは夢の多い睡眠ねむりに長い冬の夜を御明しなさるので、朝になっても又たくそれを忘れないで御話しなさるのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ、それでも、橋本の姉さんは父親おとっさんにて来ましたこと」とお倉が思わず言出した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さ、不思議なこともあればあるもので、私の同僚が今日の競馬に出た男のところへ娘をかたづけてあるという話さ。娘の名ですかい——お隅さん。あの子なら私は大屋でく知っていやす。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)