亜米利加アメリカ)” の例文
旧字:亞米利加
われわれの生活は遠からず西洋のように、殊に亜米利加アメリカの都会のように変化するものたる事はが眼にも直ちに想像される事である。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで我々は彼をして、妻が亜米利加アメリカへやって来ても決して会わないことを誓うべく余儀なくさせるため、断乎として迫った次第だ。
子爵は、知合いらしい亜米利加アメリカ人夫婦と何か隔てなく、話し合っていた。新子は、子爵の英語を相当なものだと感心して聴いていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
(ハリスを英人だと言へばあるひおこり出すかも知れない、生れは愛蘭アイルランドで今は亜米利加アメリカにゐるが、自分では巴里人パリジヤンの積りでゐるらしいから)
しかし、それから五年の後、私が刑務所ビッグ・ハウスから出て来ますと、日本の撮影場もすっかり、亜米利加アメリカのあの頃と同じようになっていました。
撮影所殺人事件 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
あらまあオウ・マイと鼻の穴から発声する亜米利加アメリカ女が、肌着はだぎ洗濯せんたくしたことのない猶太ユダヤ人が、しかし、仏蘭西フランス人だけは長い航海を軽蔑けいべつして
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
大分後になって、同じような仮説を出した学者が亜米利加アメリカにも前にあったことが分かったが、そんなことは別に問題にする必要はない。
実験室の思い出 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
亜米利加アメリカの使節が返ってみると、大切なる開国者の井伊掃部頭は桜田の変で不幸にも攘夷家達、乱暴なる有志に殺されたのである。
テーブルだのを捜して来てアトリエに並べ、壁にはメリー・ピクフォードを始め、亜米利加アメリカの活動女優の写真を二つ三つるしました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ほかに亜米利加アメリカのお婆さんは世界いたるところに散らばっている「あめりかのお婆さん」の型。独逸ドイツの女は、見たところ宣教師らしい。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
高崎は、研究が家政学であったし、ある亜米利加アメリカ人の家庭に暮していたりする関係上、平生親しく往来するというあいだでもなかった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今ならばこんな馬鹿げた事は勿論もちろんなかろうが、すでにその時にも亜米利加アメリカ人などは日本政府で払わなければいがといって居たことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
英国や、欧洲大陸や、亜米利加アメリカでは、まだスコットランドの領主ランドロードという封建時代の鎧兜よろいかぶとを珍重する。一体人間は仮装会を好むものらしい。
バットクラス (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
Hと云ふ若い亜米利加アメリカ人が自分の家へ遊びに来て、いきなりポケツトから下足札げそくふだを一枚出すと、「なんだかわかるか」と自分に問ひかけた。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
N君からは——ちょうど亜米利加アメリカ人が、ルーズベルトの一挙一動を、電報で知らせてよこすように、白峰山脈の一陰一晴を知らせて来る
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
日本美人や活動によく出てくる聖林ハリウッドあたりの亜米利加アメリカ美人に優る代物しろものが黒サンの国に見出されようとは考えられぬことであった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
おまけに警察でもこのうちでも、まだ秘密にしているから、新聞にも何も書いてないそうよ。おおかた亜米利加アメリカを怖がっているのでしょう。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寛保元年(千七百四十一年)においては、露国の海艦ベーリング、亜細亜アジア亜米利加アメリカ頸首けいしゅたる海峡をわたり、白令ベーリング海の名これより起れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
けれども、今客間の連中はこの有名な亜米利加アメリカ人に見とれてばかりはおられなかった。彼の遅刻がすでに客間の問題になっていたのである。
うして、世の辛酸をめつくした中老の亜米利加アメリカ女と、坊ちゃん育ちで、我儘わがままで天才的な若いスコットランド人との結婚生活が始まった。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
お腹に砂金があると亜米利加アメリカの或る学者が、まんまとかついで見たけれど、あれはアマゾンのまむしみたいなお魚だったのね。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「それに、その見晴し台には、舶来の正銘に千里見透しという遠眼鏡が備えてあるから、それで見ると、支那も、亜米利加アメリカも一目ですとさ」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
亜米利加アメリカに居た頃の楽しい時代でも思出したように、先生はその書架をうしろにして自分でも腰掛け、高瀬にも腰掛けさせた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのとき船は阿弗利加アフリカ沖をはしっていたが、ガルールは仏領南亜米利加アメリカはギヤーヌの徒刑場へ流されたくるしい経験を思いだし
彼は亜米利加アメリカより法学士の免状を持ち帰りし名誉をかえりみるのいとまだになく、貴重の免状も反古ほご同様となりて、戸棚の隅にねずみの巣とはなれるなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「ジョージ・ヤマ!……亜米利加アメリカで成功した千万長者!……小供の時に、新聞で評伝を読んだことがあります。しかし、ずいぶん昔のことですよ」
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私はまたある時、亜米利加アメリカ曠野こうやを過ぎていて、二羽の闘う小鳥が中空に向き合って、羽ばたきをする姿の美しいシンメトリイを見たことがある。
亜米利加アメリカに於ては天才を教育する学校を設立したと、独逸でも特別学校を開くと聞きましたが、その辺のことはかえって諸君の方が精しいでしょう。
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この老夫婦が他の亜米利加アメリカの宣教師たちとちがって、いかにも趣味のいい、そして地味な暮し方をしていたらしいのは
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
傾けつ「何でも先生、亜米利加アメリカで苦学して居た時に、雇主やとひぬしの令嬢に失恋したとか云ふことだ、先生の議論の極端過ぎるのも其の結果ヂヤ無いか知ラ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
亜米利加アメリカの排日案通過が反動団体のヤッキ運動となって、その傍杖そばづえが帝国ホテルのダンス場の剣舞隊闖入となった。
困惑せる少数者はこの時、亜米利加アメリカの自由はどうしてこの様に多数者のために裏切られたのであるか?と訊ねた。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
梅樹は得るところの利に於て甘藷かんしよを作るに如かず、他の一人は又た曰く、甘藷は市場に出ての相塲極めて廉なり、亜米利加アメリカ種の林檎りんごを植ゆるに如かずと。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
『だって、利益と云った所で、ルパンが壁布‥‥を亜米利加アメリカとかへ売るというだけのものだろう。それなら‥‥』
出発の朝、ぼくは向島むこうじまの古本屋で、啄木たくぼく歌集『悲しき玩具がんぐ』を買い、その扉紙とびらがみに、『はろばろと海をわたりて、亜米利加アメリカへ、ゆく朝。墨田すみだあたりにて求む』
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
其筈そのはずで、後に聞くと亜米利加アメリカ人だったが、私の額に手をあてたり、脈膊を数えたりして、やがて角砂糖にコンニャックをそそいで、口に含ませてくれた。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
僕が百代子から聞いたのでは、亜米利加アメリカ帰りという話であった彼は、叔母の語るところによると、そうではなくって全く英吉利イギリスで教育された男であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金がなくなれば労働をし、金が出来ると先へ進み、亜細亜アジア亜米利加アメリカ欧羅巴ヨーロッパとをほとんど皆尋ね廻り三月前から西班牙スペインのこのマドリッドへ来たのであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その船の名は、スターバックの『亜米利加アメリカ捕鯨史』にも記されているとおりで、一七八四年の夏ボストンに、鯨油六百バレルを持ち帰ったのが、最初の記録だった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
魯西亜ロシア国と日本の条約中、第五ヶ条に、函館並びに下田ケは、既に魯西亜ロシア人緩優交易の発端御取り用ひ相成り候間、和蘭オランダ亜米利加アメリカ貌利太尼西ブリタニア国民の儀も
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
それで僕も色々と想像を描いていたので、それを恋人と語るのが何よりのたのしみでした、矢張上村君の亜米利加アメリカ風の家は僕も大判の洋紙へ鉛筆で図取ずどりまでしました。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それから、半年ほど西洋へ行って来て、帰ると間もなく、赤坂田町の亜米利加アメリカ大使館の前へ越した。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
この頃の日本へは、亜米利加アメリカ系の虹鱒にじます河鱒かわます、北海道から姫鱒ひめますなどが移入されて繁殖しているが、その頃の利根川へは、古来東日本の河川に遡ってくる日本鱒である。
利根川の鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
亜米利加アメリカではあるまいし、いかり心頭しんとうに発したものだ。そうおっしゃればそうですが、何でも困ります、あれは酒の讃美ですというんだ。わからないのも程があると思ったね。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
フルベックはもと和蘭オランダ人で亜米利加アメリカ合衆国に民籍を有していた。日本の教育界を開拓した一人いちにんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ベースボールはもと亜米利加アメリカ合衆国の国技とも称すべきものにしてその遊技の国民一般に賞翫しょうがんせらるるはあたかも我邦わがくに相撲すもう西班牙スペイン闘牛とうぎゅうなどにも類せりとか聞きぬ。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
今日の所謂「デモクラシイ」は亜米利加アメリカ人によりて悪用された用語で本来の意味は喪はれて居る。
土民生活 (新字旧仮名) / 石川三四郎(著)
海外にあって最も輝かしかった三ツの歓喜、そのひとつは亜米利加アメリカワシントンで、故小村公使の尽力で、公使館夜会に招かれ、はじめて上流社会に名声を博し得たこと。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
亜米利加アメリカに於ける近代の革新策は多くの婦人を迷路に導いたことは誠に悲しむべきことである。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
船が平気だと、支那しなから亜米利加アメリカの方を見物がてら今度旅行を為て来るのも面白いけれど。日本の内ぢや遊山ゆさんあるいたところで知れたもの。どんなに贅沢ぜいたくを為たからと云つて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)