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一処
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ひとところ
ふりがな文庫
“
一処
(
ひとところ
)” の例文
旧字:
一處
胸を打って、襟を
掴
(
つか
)
んで、
咽喉
(
のど
)
をせめて、思いを
一処
(
ひとところ
)
に凝らそうとすれば、なおぞ、
千々
(
ちぢ
)
に乱れる、砕ける。いっそ諸共に水底へ。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
微暗
(
うすくら
)
い
窟穴
(
ほらあな
)
のような廊下の
前
(
さき
)
に
一処
(
ひとところ
)
扉が
開
(
あ
)
いていて、内から射した明るい
燈
(
ひ
)
が扉を背で押すようにして立っている者を照らしているところがあった。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
矢来に
一処
(
ひとところ
)
あったが、私は、
主婦
(
おかみ
)
を案内に空間を見たけれど、
仮令
(
たとい
)
何様
(
どん
)
な暮しをしようとも、これまで六年も七年も下宿屋の飯は食べないで来ているのに
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
これは新発明とか、創造とかには
或
(
ある
)
いは適さぬ性質かも知れない。
何故
(
なぜ
)
と言えば、余り深く
一処
(
ひとところ
)
、
一物
(
いちもつ
)
に執着して
研鑽
(
けんさん
)
を積むという性質ではないからである。
異性に対する感覚を洗練せよ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人
(
ふたり
)
は、こういって、いっしょうけんめいに
雪
(
ゆき
)
を
一処
(
ひとところ
)
にあつめて、
雪
(
ゆき
)
だるまをつくりはじめました。
雪だるま
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
此処は村での景色を
一処
(
ひとところ
)
に
聚
(
あつ
)
めた。北から流れて来る北上川が、観音下の崖に突当つて西に折れて、透徹る水が浅瀬に跳つて此吊橋の下を流れる。五六町行つて、川はまた南に曲つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
されど五重の塔の屋根には
日向
(
ひなた
)
と
日陰
(
ひかげ
)
といろいろにある故に、
先
(
ま
)
づ
一処
(
ひとところ
)
より解け
初
(
そ
)
むると思へば次第々々に
此処彼処
(
ここかしこ
)
と解けて、果てはどこもかも雫が落つるやうになりたりといふ意なり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
二羽
(
には
)
一処
(
ひとところ
)
にト
三羽
(
さんば
)
一処
(
ひとところ
)
にト
居
(
ゐ
)
てそして
一羽
(
いちは
)
が六
尺
(
しやく
)
ばかり
空
(
そら
)
へ
斜
(
なゝめ
)
に
足
(
あし
)
から
糸
(
いと
)
のやうに
水
(
みづ
)
を
引
(
ひ
)
いて
立
(
た
)
つてあがつたが
音
(
おと
)
がなかつた、それでもない。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
歩いて来た廊下が判らなくなって
一処
(
ひとところ
)
明採
(
あかりと
)
りのような窓から黄いろな
燈
(
ひ
)
が光っていた。それは長さが一尺四五寸、縦が七八寸ばかりの小さな光であった。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
まあそういうようにして、ちょび/\書籍を売っては、
銭
(
かね
)
を拵えて遊びにも行った。けれども、それでも矢張し物足りなくって、私の足は
一処
(
ひとところ
)
にとまらなかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
逸作は、息子の手紙を
畳
(
たた
)
んだりほぐしたりしながら比較的実際的な眼付きを
足下
(
あしもと
)
の
一処
(
ひとところ
)
へ寄せて居た。逸作は息子に次に送る
可
(
か
)
なりの費用の
胸算用
(
むなざんよう
)
をして居るのであろう。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『ハア然うですか。』と挨拶はしたものゝ、総身の血が何処か
一処
(
ひとところ
)
に
塊
(
かたま
)
つて了つた様で、右の手と左の手が交る/″\に一度宛、発作的にビクリと動いた。色を変へた顔を上げる勇気もない。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一処
(
ひとところ
)
、大池があって、朱塗の船の、
漣
(
さざなみ
)
に、浮いた
汀
(
みぎわ
)
に、盛装した
妙齢
(
としごろ
)
の派手な女が、
番
(
つがい
)
の
鴛鴦
(
おしどり
)
の宿るように目に留った。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ブーロウニュの森の
一処
(
ひとところ
)
をそっくり運んで来たようなショーウインドウを見る。枯れてまでどこ
迄
(
まで
)
もデリカを失わない
木
(
こ
)
の葉のなかへ、スマートな男女
散策
(
さんさく
)
の人形を置いたりしている。
巴里の秋
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「やかましい、どう盲人と、足のちぎれたばった野郎、よくもよくも、
一処
(
ひとところ
)
へ集まったものだ」銚子で
食卓
(
ちゃぶだい
)
の上を叩いて、「こんな
不具者
(
かたわ
)
ばかりの処で、酒なんか飲めるものでない」とついと
起
(
た
)
って
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一処
(
ひとところ
)
、
大池
(
おおいけ
)
があつて、
朱塗
(
しゅぬり
)
の船の、
漣
(
さざなみ
)
に、浮いた
汀
(
みぎわ
)
に、盛装した
妙齢
(
としごろ
)
の
派手
(
はで
)
な女が、
番
(
つがい
)
の
鴛鴦
(
おしどり
)
の宿るやうに目に
留
(
とま
)
つた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
空
(
そら
)
ざまに取って照らすや、
森々
(
しんしん
)
たる森の
梢
(
こずえ
)
一処
(
ひとところ
)
に、赤き光
朦朧
(
もうろう
)
と浮き
出
(
い
)
づるとともに、テントツツン、テントツツン、
下方
(
したかた
)
かすめて
遥
(
はるか
)
にきこゆ)
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
一処
(
ひとところ
)
に
団
(
かた
)
まるから、どの店も敷物の色ばかりで、枯野に
乾
(
ほ
)
した
襁褓
(
むつき
)
の
光景
(
ありさま
)
、七星の天暗くして、
幹枝盤上
(
かんしはんじょう
)
に霜深し。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吻
(
ほっ
)
と一息つく間もない、
吹煽
(
ふきあお
)
らるる北海の荒浪が、どーん、どーんと、ただ
一処
(
ひとところ
)
のごとく打上げる。……歌麿の絵の
蜑
(
あま
)
でも、かくのごとくんば
溺
(
おぼ
)
れます。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木屑は極めて細かく、極めて軽く、材木の
一処
(
ひとところ
)
から
湧
(
わ
)
くようになって、肩にも胸にも膝の上にも降りかかる。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
真紅
(
まっか
)
な椿も、濃い霞に包まれた、
朧
(
おぼろ
)
も暗いほどの土塀の
一処
(
ひとところ
)
に、石垣を
攀上
(
よじのぼ
)
るかと
附着
(
くッつ
)
いて、……つつじ、藤にはまだ早い、——荒庭の中を
覗
(
のぞ
)
いている——
絣
(
かすり
)
の筒袖を着た
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鶴沢宮歳
(
つるさわみやとし
)
とあるのを読んで、ああ、お師匠さん、と思う時、名の主は……早や次の
室
(
ま
)
の
葭戸越
(
よしどごし
)
、
背姿
(
うしろすがた
)
に、
薄
(
うっす
)
りと鉄瓶の湯気をかけて、
一処
(
ひとところ
)
浦の波が月に霞んだようであった。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鯉
(
こい
)
も
鮒
(
ふな
)
も、
一処
(
ひとところ
)
へ固まって、
泡
(
あわ
)
を立てて弱るので、台所の
大桶
(
おおおけ
)
へ
汲
(
く
)
み込んだ井戸の水を、はるばるとこの洗面所へ送って、橋がかりの下を
潜
(
くぐ
)
らして、池へ流し込むのだそうであった。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
南海霊山の
岩殿寺
(
いわとのじ
)
、奥の
御堂
(
みどう
)
の裏山に、
一処
(
ひとところ
)
咲満ちて、春たけなわな
白光
(
びゃっこう
)
に、
奇
(
く
)
しき
薫
(
かおり
)
の
漲
(
みなぎ
)
った紫の
菫
(
すみれ
)
の中に、白い山兎の飛ぶのを
視
(
み
)
つつ、病中の人を念じたのを、この時まざまざと
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廻廊の上を見れば、雪空ででもあるように、夜目に、額と額とほの暗く続いた中に、
一処
(
ひとところ
)
、雲を開いて、千手観世音の金色の文字が
髣髴
(
ほうふつ
)
として、二十六夜の月光のごとく拝される。……
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
柳を植えた……その柳の
一処
(
ひとところ
)
繁った中に、清水の
湧
(
わ
)
く井戸がある。……大通り
四
(
よ
)
ツ
角
(
かど
)
の郵便局で、東京から組んで
寄越
(
よこ
)
した
若干金
(
なにがし
)
の
為替
(
かわせ
)
を
請取
(
うけと
)
って、
三
(
み
)
ツ
巻
(
まき
)
に
包
(
くる
)
んで、ト
先
(
ま
)
ず懐中に及ぶ。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
処
常用漢字
小6
部首:⼏
5画
“一処”で始まる語句
一処不住