-
トップ
>
-
高樓
>
-
たかどの
一寸、
其の
高樓を
何處だと
思ひます……
印度の
中のね、
蕃蛇剌馬……
船着の
貿易所、——お
前さんが
御存じだよ、
私よりか
廂に
漾ひ
羽目に
靡いて、
颯と
水に
落つる、
幅二間ばかりの
紫を、
高樓で
堰き、
欄干にしぶきを
立たせて
散つたも
見える、
藤の
花なる
瀧である。
奇觀、
妙觀と
謂つべし。で、
激流に
打込んだ
眞黒な
杭を、
下から
突支棒にした
高樓なぞは、
股引を
倒に、
輕業の
大屋臺を、チヨンと
木の
頭で
載せたやうで
面白い。
他は、
自分のと
一間置いて
高樓の
一方の、
隅の
部屋に
客がある、
其處の
障子に
電燈の
影さすのみ。
例年だと、その
薄を、
高樓——もちとをかしいが、この
家で
二階だから
高いにはちがひない。
靜かに
進んで
禮をする
時、
牡丹に
八ツ
橋を
架けたやうに、
花の
中を
𢌞り
繞つて、
奧へ
續いた
高樓の
廊下づたひに、
黒女の
妼が
前後に三
人屬いて、
淺緑の
衣に
同じ
裳をした……
面は
藤の
花の
紫は、
眞晝の
色香朧にして、
白日、
夢に
見ゆる
麗人の
面影あり。
憧憬れつゝも
仰ぐものに、
其の
君の
通ふらむ、
高樓を
渡す
廻廊は、
燃立つ
躑躅の
空に
架りて、
宛然虹の
醉へるが
如し。
丁ど、まだ
灯を
入れたばかりの
暮方でね、……
其の
高樓から
瞰下ろされる
港口の
町通には、
燒酎賣だの、
雜貨屋だの、
油賣だの、
肉屋だのが、
皆黒人に
荷車を
曳かせて、……
商人は、
各自に