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ばきん
ふりがな文庫
“
馬琴
(
ばきん
)” の例文
わたくしはかつて歴史の教科書に、
近松
(
ちかまつ
)
、
竹田
(
たけだ
)
の脚本、
馬琴
(
ばきん
)
、
京伝
(
きょうでん
)
の小説が出て、風俗の
頽敗
(
たいはい
)
を致したと書いてあるのを見た。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
のみならず、自分がこれまでに読んだ
馬琴
(
ばきん
)
や近松や
三馬
(
さんば
)
などとは著しく違った特色をもった作者であることが感ぜられた。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
馬琴
(
ばきん
)
春水
(
しゅんすい
)
の物や、『春雨物語』、『佳人の奇遇』のような小説類は沢山あったが、硯友社作家の新刊物は一冊もなかった。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その他の智識としては
馬琴
(
ばきん
)
、
為永
(
ためなが
)
の小説や経国美談、
浮城
(
うきしろ
)
物語を愛読し、ルッソーの民約篇とかを多少
噛
(
かじ
)
っただけである。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ところが、僕の下宿に
馬琴
(
ばきん
)
のものが置いてあつた。もう古びて、
何代
(
なんだい
)
もの留学生が異郷の寂しさをそれで紛らしたといふことを証拠立ててゐた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
十三歳に府立二中に入学したが、学科はそっちのけで、『太平記』や、『平家物語』をはじめ、江戸時代の
草双紙
(
くさぞうし
)
の中では
馬琴
(
ばきん
)
に私淑したとある。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
講釈では、
松鯉
(
しょうり
)
。伯山。先代
馬琴
(
ばきん
)
なんぞが活躍していたが、若いファンのあこがれは、何といっても娘義太夫である。戦後のジャズやロカビリー。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
馬琴
(
ばきん
)
の『八犬伝』のうちに、
犬飼現八
(
いぬかいげんぱち
)
が
庚申山
(
こうしんざん
)
で山猫の妖怪を射る
件
(
くだり
)
がありますが、それはこの『申陽洞記』をそっくり書き直したものでございます。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二葉亭も
院本
(
いんぽん
)
や小説に沈潜して好んで
馬琴
(
ばきん
)
や
近松
(
ちかまつ
)
の真似をしたが、根が漢学育ちで国文よりはむしろ漢文を喜び、かつ深く露西亜文に
親
(
したし
)
んでいたから
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼というのは
馬琴
(
ばきん
)
の事で、昔
伊勢本
(
いせもと
)
で南竜の中入前をつとめていた頃には、
琴凌
(
きんりょう
)
と呼ばれた若手だったのである。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この話は予の知るところでは、『太平記』十五巻に出たのが最も古い完全な物らしい、
馬琴
(
ばきん
)
の『
昔語質屋庫
(
むかしがたりしちやのくら
)
』
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
酒飲みで遊び好きの三馬は、またよく人と争い、人を罵って、当時の有名な
京伝
(
きょうでん
)
、
馬琴
(
ばきん
)
などの文壇人とも交際がなかった。ことに
曲亭
(
きょくてい
)
とは犬猿の仲であった。
仇討たれ戯作
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私の家は商家だったが、旧家だったため、草双紙、読本その他
寛政
(
かんせい
)
、
天明
(
てんめい
)
の
通人
(
つうじん
)
たちの作ったもの、
一九
(
いっく
)
、
京伝
(
きょうでん
)
、
三馬
(
さんば
)
、
馬琴
(
ばきん
)
、
種彦
(
たねひこ
)
、
烏亭焉馬
(
うていえんば
)
などの本が沢山にあった。
明治十年前後
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
この曲玉は
馬琴
(
ばきん
)
が、
八犬伝
(
はっけんでん
)
の中で、
八百比丘尼妙椿
(
やおびくにみょうちん
)
を出すのに借用した。が、
垂仁朝
(
すいにんちょう
)
の貉は、ただ
肚裡
(
とり
)
に
明珠
(
めいしゆ
)
を蔵しただけで、後世の貉の如く
変化
(
へんげ
)
自在を
極
(
きわ
)
めた訳ではない。
貉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
馬琴
(
ばきん
)
の『
弓張月
(
ゆみはりづき
)
』にまで書かれている
勝連按司
(
かつれんあじ
)
の
阿麻和利
(
あまわり
)
は、沖縄の歴史の上で、すっかり悪者にされてしまっているが、これは
伊波普猷
(
いはふゆう
)
君などが早くから注意したように
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
唯
(
ただ
)
昔から
馬琴
(
ばきん
)
其他の、作物は多く讀んだが、詰りが明窓淨几の人で無くつて
兵馬倥偬
(
へいばこうそう
)
に
成長
(
ひとゝな
)
つた方のだから自分でも文士などゝ任じては居らぬし、世間も大かた
然
(
さ
)
うだらう。
兵馬倥偬の人
(旧字旧仮名)
/
塚原渋柿園
、
塚原蓼洲
(著)
馬琴
(
ばきん
)
の
弓張月
(
ゆみはりづき
)
にも、露伴の二日物語にも、白峯は書かれている。けれど雨月物語の「白峯」には及ぶべくもない。秋成はあの作品で、自分が作中人物の西行になりすましている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『八犬伝』とか『
巡島記
(
しまめぐりのき
)
』とか、
馬琴
(
ばきん
)
の大部のものが多いのですが、それには大抵一冊に二、三個所ずつ絵があるのを、必ず一個所は
上手
(
じょうず
)
に切り取るので、その頃そんな本の表紙は
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
送らん
特
(
こと
)
に木曾とありては玉味噌と
蕎麥
(
そば
)
のみならん京味を忘れぬ爲め通り三丁目の嶋村にて汲まんと
和田鷹城子
(
わだおうじやうし
)
と共に勸められ南翠氏が
濱路
(
はまぢ
)
もどきに
馬琴
(
ばきん
)
そつくりの送りの
詞
(
ことば
)
に久しく飮まぬ
醉
(
ゑひ
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
是非
(
ぜひ
)
一読
(
いちどく
)
して
批評
(
ひゝやう
)
をしてくれと言つて百五六中
枚
(
まい
)
も有る
一冊
(
いつさつ
)
の
草稿
(
そうかう
)
を
私
(
わたし
)
に見せたのでありました、
其
(
そ
)
の小説はアルフレツド
大王
(
だいわう
)
の
事蹟
(
じせき
)
を
仕組
(
しく
)
んだもので
文章
(
ぶんしやう
)
は
馬琴
(
ばきん
)
を
学
(
まな
)
んで、実に
好
(
よ
)
く出来て
居
(
ゐ
)
て
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
もっとも
馬琴
(
ばきん
)
の作に「
侠客
(
きょうかく
)
伝」という未完物があるそうで、読んだことはないが、それは楠氏の一女
姑摩姫
(
こまひめ
)
と云う
架空
(
かくう
)
の女性を中心にしたものだと云うから、自天王の
事蹟
(
じせき
)
とは関係がないらしい。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
馬琴
(
ばきん
)
の八犬伝を守田座の座附作者が脚色したのが大変な評判で、染之助の
犬塚信乃
(
いぬづかしの
)
の芳流閣の立ち廻りが、大変よいと云う人の噂でありましたので、私はまた堪らないような懐しさに責められて
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
われ筆を執る事が不自由になりしより後は誰か代りて書く人もがなと常に思へりしがこの頃
馬琴
(
ばきん
)
が『八犬伝』の某巻に附記せる文を見るに、初めに自己が失明の事、草稿を書くに困難なる事など述べ
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「はい、左様でございます。わたくしは、深川仲町裏に住んで居りまする、
馬琴
(
ばきん
)
と申します若輩でございますが、少々先生にお願いの筋がございまして、
無躾
(
ぶしつけ
)
ながら、
斯様
(
かよう
)
に早朝からお邪魔に伺いました」
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
とは、天保の
馬琴
(
ばきん
)
が記したものにある。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馬琴
(
ばきん
)
いわく
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
喜多川歌麿
(
きたがわうたまろ
)
の絵筆持つ指先もかかる寒さのために
凍
(
こお
)
ったのであろう。
馬琴
(
ばきん
)
北斎
(
ほくさい
)
もこの置炬燵の火の消えかかった
果敢
(
はか
)
なさを知っていたであろう。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は
頃日
(
このごろ
)
、
馬琴
(
ばきん
)
翁の日記を読返して見て感じたのは、あの文人が八十歳にもなり、盲目にもなっていながら、著作を捨てなかった一生が、女史のそれと同様に
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
馬琴
(
ばきん
)
も歯が悪かった。「里見八犬伝」の終りに記されたのによると、「
逆上
(
のぼぜ
)
口痛の患ひ起りしより、年五十に至りては、歯はみな年々にぬけて一枚もあらずなりぬ」
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
読本は
京伝
(
きょうでん
)
、
馬琴
(
ばきん
)
の諸作、人情本は
春水
(
しゅんすい
)
、
金水
(
きんすい
)
の諸作の類で、書本は今
謂
(
い
)
う講釈
種
(
だね
)
である。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「それじゃ
馬琴
(
ばきん
)
の胴へメジョオ・ペンデニスの首をつけて一二年欧州の空気で包んでおくんですね」「そうすると月並が出来るでしょうか」迷亭は返事をしないで笑っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
震災で破壊された東京の史蹟のその中で最も
惜
(
おし
)
まれる一つは
馬琴
(
ばきん
)
の
硯
(
すずり
)
の水の井戸である。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ツマリ当時の奇人連中は、
京伝
(
きょうでん
)
馬琴
(
ばきん
)
の一面、下っては
種彦
(
たねひこ
)
というような人の、耽奇の趣味を体得した人であったので、観音堂の傍で耳の
垢取
(
あかと
)
りをやろうというので、道具などを作った話もあります。
諸国の玩具:――浅草奥山の草分――
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
本棚の片隅には、
帙入
(
ちついり
)
の唐本の『
山谷
(
さんこく
)
詩集』などもありました。真中は洋書で、医学の本が重らしく、一方には
馬琴
(
ばきん
)
の
読本
(
よみほん
)
の『八犬伝』『巡島記』『
弓張月
(
ゆみはりづき
)
』『美少年録』など、予約出版のものです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
馬琴
(
ばきん
)
滝沢瑣吉
(
たきざはさきち
)
は、微笑しながら、
稍
(
やや
)
皮肉にかう答へた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
馬琴
(
ばきん
)
が説いたは、まずは
正鵠
(
せいこく
)
を得たものだろう。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
文政天保時代において画家北斎が文学者
馬琴
(
ばきん
)
とその傾向を同じうし共に漢学趣味によりてその品位を高めしが如く
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
馬琴
(
ばきん
)
を読む。京伝を読む。人が春水を借りて読んでいるので、又借をして読むこともある。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と、孝子が、ヒラヒラと見せびらかした一枚には「明治文学界八犬士」の
見立
(
みたて
)
がある。滝沢
馬琴
(
ばきん
)
の有名な作、八犬伝の八犬士の気質
風貌
(
ふうぼう
)
を、明治文壇第一期の人々に見立てたのだ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
わたしは千葉の者であるが、
馬琴
(
ばきん
)
の八犬伝でおなじみの里見の家は、
義実
(
よしざね
)
、義
成
(
なり
)
、義
通
(
みち
)
、
実尭
(
さねたか
)
、義
豊
(
とよ
)
、義
尭
(
たか
)
、義
弘
(
ひろ
)
、義
頼
(
より
)
、義
康
(
やす
)
の九代を伝えて、十代目の
忠義
(
ただよし
)
でほろびたのである。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
正直ですら
払底
(
ふってい
)
な世にそれ以上を予期するのは、
馬琴
(
ばきん
)
の小説から
志乃
(
しの
)
や
小文吾
(
こぶんご
)
が抜けだして、向う三軒両隣へ
八犬伝
(
はっけんでん
)
が引き越した時でなくては、あてにならない無理な注文である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
後
(
ご
)
文化の初め数年に
渉
(
わた
)
りては
専
(
もっぱら
)
馬琴
(
ばきん
)
その他の著作家の
稗史
(
はいし
)
小説類の挿絵を描き、これによつて錦絵摺物等の
板下絵
(
はんしたえ
)
においてはかつて試みざりし人物山水等を描くの便宜を得
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これに反して
馬琴
(
ばきん
)
のような小説は主観的分子はいくらでもありますが、この方面の融通が
利
(
き
)
かないから、つまりは
静御前
(
しずかごぜん
)
は虎のごとしなどと云う simile を使っているようなもので
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黙阿弥の劇中に見られるやうな毒婦は近松にも西鶴にも
春水
(
しゆんすゐ
)
にも
見出
(
みいだ
)
されない。
馬琴
(
ばきん
)
に至つて初めて「
船虫
(
ふなむし
)
」を発見し得るが、講談としては已に
鬼神
(
きじん
)
お
松
(
まつ
)
其他
(
そのた
)
に多くの類例を挙げ得るであらう。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
画家の謝礼を著者が支払うなんて云う事は
馬琴
(
ばきん
)
北斎
(
ほくさい
)
のむかしから聞いた事のない話です。「濹東綺譚」の表紙の意匠は私がしたのですがこれについて本屋は別に謝礼も何も寄越しはしませんでした。
出版屋惣まくり
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
戯子名所図会 三冊
馬琴
(
ばきん
)
撰 寛政十二年板
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“馬琴(
曲亭馬琴
)”の解説
曲亭 馬琴/滝沢馬琴(きょくてい ばきん/たきざわ ばきん、明和4年6月9日〈1767年7月4日〉- 嘉永元年11月6日〈1848年12月1日〉)は、江戸時代後期の読本作者。本名は滝沢 興邦(たきざわ おきくに、瀧澤 興邦󠄂 )、後に解(とく)に改めた。号は著作堂主人(ちょさくどうしゅじん)など。
代表作は『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』。ほとんど原稿料のみで生計を営むことのできた日本で最初の著述家である。
(出典:Wikipedia)
馬
常用漢字
小2
部首:⾺
10画
琴
常用漢字
中学
部首:⽟
12画
“馬琴”で始まる語句
馬琴物
馬琴滝沢瑣吉