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餌食
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えじき
ふりがな文庫
“
餌食
(
えじき
)” の例文
「疑いぶかいなあ。いないっていってるのに。——ぼやぼやしてると、虎か
大蛇
(
おろち
)
の
餌食
(
えじき
)
にされちまうぜ。はやくお帰りよ、おじさん」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし試みに、
餌食
(
えじき
)
を食いかけてる犬に口輪をはめてみるがいい! 人々が彼に言う言葉は皆、彼をますます刺激するばかりだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
旧約全書を研究して見ますといわゆるハンギングなる語は罪人の死体を釣るして野獣または肉食鳥の
餌食
(
えじき
)
とする意義と認められます。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ
妄想
(
もうそう
)
という怪獣の
餌食
(
えじき
)
となりたくないためばかりに、私はここへ逃げ出して来て、少々身体には毒な夜露に打たれるのである。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それを
餌食
(
えじき
)
とするアイヌが、追われながらやって来た。それから永い時代を経て、われらの父祖のあるものが足をふみ入れたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
▼ もっと見る
それから、月に
白
(
しら
)
んだ
小路
(
こうじ
)
をふさいで、黒雲に足のはえたような犬の群れが、右往左往に入り乱れて、
餌食
(
えじき
)
を争っているさまが見えた。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
可
(
い
)
い
塩梅
(
あんばい
)
な
酔心地
(
よいごこち
)
で、
四方山
(
よもやま
)
の話をしながら、
螽
(
いなご
)
一ツ飛んじゃ来ない。そう言や一体蚊も
居
(
お
)
らんが、大方その
怪物
(
ばけもの
)
が
餌食
(
えじき
)
にするだろう。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
醜悪なけだもののくせに、まるで芝居のせりふみたいなことを言いながら、人間豹は身を縮めた
餌食
(
えじき
)
の上にジリジリと迫ってきた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
はやこの上はこの身を以て親の
餌食
(
えじき
)
とならんものと、いきなり
堅
(
かた
)
く身をちぢめ、息を殺してはりより
床
(
ゆか
)
へと落ちなされたのじゃ。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「ここで人身御供が上らなけりゃあ、みすみす三十何人の乗合が残らず
鱶
(
ふか
)
の
餌食
(
えじき
)
になってしまうのだ、それでようござんすかエ」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
このお坊さんは元は
武士
(
さむらい
)
であったので、今度は獣の
餌食
(
えじき
)
になるような
意気地
(
いくじ
)
なしではなかろうと、村の人たちは安心していた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
五人、十人、二十人と、見ている間に信徒達は、侵入軍の
餌食
(
えじき
)
となった。そうして
漸次
(
だんだん
)
信徒達は、小路小路へ追い詰められた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「はは、可哀そうな、日本の飛行将校よ。太平洋の
鱶
(
ふか
)
の
餌食
(
えじき
)
にでもなりたまえ。さあ、これが君らの墓にささげる花束だ。」
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
しかし、大尉が本当にえらいか? 乃木大将は誰のために三万人もの兵士たちを弾丸の
餌食
(
えじき
)
として殺してしてしまったか?
入営する青年たちは何をなすべきか
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
◯一世紀前、かの大ナポレオンは、世界をその飽くなき欲望の
餌食
(
えじき
)
たらしめんとした。しかしウォルターローの一戦は遂に彼のこの暴威を制した。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
死骸を熊か鷲の
餌食
(
えじき
)
にするつもりで、山又山を無茶苦茶に分け登って行くうちに、
過
(
あやま
)
って石狩川に陥入ったもの……。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
すると目の前に、
鱶
(
ふか
)
の
餌食
(
えじき
)
と化するはかない人間の姿と、チェーホフの心の色合が海底のように見えて来るのだった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
本能的とでもいうべきだろう。
風雪
(
ふうせつ
)
がおそい来る、外敵がやって来る、傷つくものも
仆
(
たお
)
れるものも出来る。その
屍体
(
したい
)
は怪鳥めいた他動物の
餌食
(
えじき
)
になる。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
吉「もう
兎
(
と
)
てもいけやせん、日頃悪事の報いか、
魚
(
うお
)
の
餌食
(
えじき
)
となるは
予
(
かね
)
ての覚悟だ、仕方が
無
(
ね
)
え、南無阿弥陀仏/\」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おれの妻の生んだ
粟津子
(
あわつこ
)
は、罪びとの子として、何処かへ連れて行かれた。野山のけだものの
餌食
(
えじき
)
に、くれたのだろう。可愛そうな妻よ。哀なむすこよ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
徒
(
いたずら
)
に現実の
餌食
(
えじき
)
となるのは堪えがたい。鶴見はこの上とも生きて生きてゆかねばならぬと覚悟しているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
自分の子にめぐり会った母親と、
餌食
(
えじき
)
に再会した
虎
(
とら
)
とである。ジャヴェルはそういう深い喜びにおどり上がった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「僕は、あなたの
餌食
(
えじき
)
になるには、あまりに骨ばっています。もっと若くて美しい
騎士
(
ナイト
)
たちが沢山居ますから、その方を探してごらんになってはどうですか」
人造人間殺害事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この上妹まで、
獣
(
けだもの
)
の
餌食
(
えじき
)
にしたくないばかり、——今晩が過ぎたら、何とかなるだろうと思う
浅墓
(
あさはか
)
な考えから、突くともなしに、後ろから突いてしまいました
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女
(
かれ
)
は単に𤢖の
餌食
(
えじき
)
となるべき若い女の不幸を
憫
(
あわ
)
れんで、何とかして
之
(
これ
)
を
拯
(
すく
)
って
与
(
や
)
りたいと思ったのである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その結果は、無論、その
餌食
(
えじき
)
がいかにまったく私の罠にかかっているかということを示すだけだった。一時間もたたないうちに彼は借金を四倍にしてしまった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
……あなたは、
餌食
(
えじき
)
がお入用なんだ! 現にこの僕は、もうこれで一ト月も怠けどおしに怠けて、何もかも放ったらかして、がつがつあなたの姿を追い回している。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
領土擴張慾に燃えつゝ
虎視眈々
(
こしたん/\
)
と四隣の形勢を
窺
(
うかゞ
)
っている彼の前に、それは全く
恰好
(
かっこう
)
な
餌食
(
えじき
)
であった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あの大泥棒の色魔の
餌食
(
えじき
)
になっておられる、この奥さんがかわいそうで、じっとして聞いておれなくなったものですから、ちょっと口をきこうと思って出かけて行ったのです
誰が何故彼を殺したか
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
わたしに残つてゐるものはグレー・ハウンドの犬一
疋
(
ぴき
)
と紋章旗だけだ。わたしの肉体とても婦人の病気以外には
殆
(
ほとん
)
どあらゆる病の
餌食
(
えじき
)
として与へてしまつたと云つても
宜
(
よ
)
い。
雪
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
狭い街中へこの対数で出れば、昨夜の例とは逆に、待構えている敵の
餌食
(
えじき
)
となるだけである。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
御厚意かたじけないが、わが輩のように、いつ魚の
餌食
(
えじき
)
になるか、裂弾、
榴弾
(
りゅうだん
)
の的になるかわからない者は、別に金もうけの必要もない。失敬だがその某会社とかに三万円を
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
餌食
(
えじき
)
に
餓
(
う
)
えた、二匹の野獣をみつめているような気がして、いつもであれば浅間しさに眼を
反
(
そむ
)
けずにはいられないのだが、今の場合、二人の姿がみぐるしく映れば映るほど
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「あれも、ボーイと一緒に、海へ飛込んだ。いまごろもう、
鱶
(
ふか
)
の
餌食
(
えじき
)
になったことだろう」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
列強の
餌食
(
えじき
)
になっている支那の真の自立こそは、東洋の平和のために欠くべからざる条件だというわしらの信念に共鳴したのだ。支那のその自立のためには革命が必要なのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
みんな悪魔の
餌食
(
えじき
)
になってしまったってかまいはしない、僕がいうのはただ子供だけのことだ、子供だけのことだ! おや、僕はおまえを苦しめてるようだね、アリョーシャ
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
幾人も
奴隷
(
どれい
)
を目の前に引き出さして、それを
毒蛇
(
どくじゃ
)
の
餌食
(
えじき
)
にして、その幾人もの
無辜
(
むこ
)
の人々がもだえながら絶命するのを、
眉
(
まゆ
)
も動かさずに見ていたという插話を思い出していた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
平生の志の百分の一も
仕遂
(
しと
)
げる事が出来ずに空しく
壇
(
だん
)
の
浦
(
うら
)
のほとりに水葬せられて
平家蟹
(
へいけがに
)
の
餌食
(
えじき
)
となるのだと思うと如何にも残念でたまらぬ。この夜から
咯血
(
かっけつ
)
の度は一層
烈
(
はげし
)
くなった。
病
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ああ気の毒に! 金さんはそれじゃ船ぐるみ吹き流されるか、それとも沖中で沈んでしまって、今ごろは魚の
餌食
(
えじき
)
になっておいでだろうとそう思ってね、私ゃ
弔供養
(
といくよう
)
をしないばかりでいたんだよ。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
自分の幸福も光栄も、生きているうちには決して無いとわかった時、ひとは、どんな気持になるものかね。努力。そんなものは、ただ、飢餓の野獣の
餌食
(
えじき
)
になるだけだ。みじめな人が多すぎるよ。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
申しますと、その蛾は
遂々
(
とうとう
)
、蝙蝠の
餌食
(
えじき
)
になってしまったのでございます。何故なら、私にあの難行をお命じになったのが、クリヴォフ様なんでございますものね。——それも、独りで
三十櫓楼船
(
ブチントーロ
)
を
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
あんな奴の
餌食
(
えじき
)
になるは死に
優
(
ま
)
した大不幸だ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
泡立
(
あわだつ
)
海に落入りて、
鰐魚
(
わに
)
の
餌食
(
えじき
)
となりけらし。
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
しゝ食うたむく犬は鷹の
餌食
(
えじき
)
かな 勝興
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
感覚を狂乱するままに放任して、おのれは口をつぐむ。しかしなおそばにうずくまって、じっと
窺
(
うかが
)
いながらおのれの
餌食
(
えじき
)
を選む……。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「君はどう思う。犬共は、生きている女を喰い殺したのでなくて、とっくに殺されている死骸を
餌食
(
えじき
)
にしたのじゃないだろうか」
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
兵馬ともにまったく疲れはてていたので、これは戦力もなく、ただ
潰乱混走
(
かいらんこんそう
)
して、魏軍の包囲下に手頃な
餌食
(
えじき
)
となってしまった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この高山も、目ぬきの大半を
祝融氏
(
しゅくゆうし
)
の
餌食
(
えじき
)
に与えているのだから、この怪物に余された
獲物
(
えもの
)
というものは、どんなものか知ら?
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「若くて美男でご名門なら、女子にとっては何よりの
餌食
(
えじき
)
、どんなにご本人が固くても、女の方で黙ってはいない。なんとお前達そうではないか」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
虎と蛇とは、一つ
餌食
(
えじき
)
を
狙
(
ねら
)
って、互に
隙
(
すき
)
でも
窺
(
うかが
)
うのか、暫くは睨合いの
体
(
てい
)
でしたが、やがてどちらが先ともなく、一時に杜子春に飛びかかりました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
餌
常用漢字
中学
部首:⾷
15画
食
常用漢字
小2
部首:⾷
9画
“餌”で始まる語句
餌
餌取
餌物
餌箱
餌差
餌壺
餌付
餌差町
餌料
餌肉