つけ)” の例文
 前句をただ夕暮の淋しき景気と見てこのつけありたるならんか。但し田舎にては夕暮に棺を出す処多し。この句月を入れて秋季なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
御覧の通り、まことに下品な、シャクレた顔をした中年増ちゅうどしまで、顔一面に塗りつけております泥は、厚化粧のつもりだそうで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
單純たんじゆんなレウマチスせい頭痛づつうではあつたが、りよ平生へいぜいからすこ神經質しんけいしつであつたので、かりつけ醫者いしやくすりんでもなか/\なほらない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
く見れば白髪をそめた者だ、シテ見ると老人だナ(大)ハイ私しも初めは老人と見込をつけましたが猶お考え直して見ると第一老人は身体も衰え
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
しかし黄金は砂中しやちゆうに在つて人間の手に触れない方が黄金の質をけがさないで好い。詩は詩人の心に生きてさへ居れば満足であらうとヌエはつけ足した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「かしこまりました……それはそうと、賢夫人は、どこだ? 北の端のつけ書院か……こう広くちゃ、ベル・ボーイでも雇わないと、急な用事は足りません」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
思ひ出すには閑靜しづかなる所がよきものなり因て見張みはりつけるによりあき長屋ながやいたとくと考へ見よとて同心に遠見とほみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
粥河はもとより遊山半分信心はつけたりですから、眞葛の外に長治ちょうじという下男を連れて、それに芳町よしちょうやっこ小兼こかねという芸者、この奴というのは男らしいという綽名あだな
花道のつけぎはにとまり「金がかたきの世の中とはよく云つたことだなあ」と云ふせりふ、しんみりとせり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
きっとつけ坑夫になれて、金がうんともうかるてえようなうまい話でもしたんでしょう。それがさ、実際やって見るととうてい話の十が一にも行かないんだからつまらないです。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不動と云ったはつけたりで、小歌菩薩が約束の縁日、いずれ暮過のこととそのあくる日貞之進は、学校から帰って理髪床に用を足し、つゞいて一風呂という時小雨がぽつり/\遣って来て
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
長範の腕は盗みをするだけに寸も長かつたし、納骨にはつてつけの代物であつたが、山でもまだ一稼ぎしなければならぬので、一寸をしみをした。で、石でもつて前歯を一つ叩き折つた。
あなたあんな杯にお口をおつけなさりたくって。
(ちょっと順序をつけよう。)
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもその詐欺インチキ盗人ぬすっとつけ景気のお蔭で、品物がドンドンさばけて行きますので、地道に行きよったら生物なまものは腐ってしまいます。世の中チウものは不思議なもんだす。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つけ書院が化けた手頃な洋間に、五十雄君は、もと提灯部屋といっていたところを改造した、庭にむいた吸気室キュール風のサン・ルームに、百々子は、五日の間、ワニ氏が潜伏していた
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
勿論もちろんさうひとだから、かりつけ醫者いしやふのも人選にんせんをしたわけではなかつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
八百兩にて請出うけいだよめとなし吉之助きちのすけ勘當かんだうをも免し目出度めでたく夫婦ふうふとして喜八夫婦には横山町よこやまちやう角屋敷かどやしき穀物店こくものみせに三百兩つけあたへ家主平兵衞へいべゑへはみぎ横山町よこやまちやう地面ぢめん間口まぐちけん奧行おくゆき十八けん怙劵こけん種々いろ/\音物いんもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たたつけるように投込んだのは小歌の写真で、くるくると廻って沈んだと思うとすぐ浮上り、十二三分の間に写真は焦げただれて、昨日までは嬉しくながめられた目元口元、見る/\消てなくなったを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
つけないうまものだからついべ過ぎてすつかりつうじがとまりましたので、のぼせて目が悪くなつて、誠にどうも向うが見えませんからせまとほりへつて、拝観人はいくわんにんなかへでもむやうなことがあつて
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其曲者を私しの云う通り藻西自身だとすれば全く違ッて参りますうでも左の手へ血をつけおかねば成らぬのです、何故と仰有おっしゃれば藻西ならば其文字を本統に老人が書たものと認められては大変です
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
一、規則きそくつけ様等一々に説明しがたし。古書について見るべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お気をおつけなさいまし。今それが現れます。
爲ながらも餘りに不審ふしんと思ふ故此方に向ひてひざを進めちと失禮しつれいな事では御座れど營業しやうばいゆゑに貴君樣に伺ひまするは外でもなき只今おほつけられし彼お藥の調合にて弊家共も代をかさね此營業を致しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
云て自分でも聞き又かねて頼みつけの者にも捜らせた所
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
何卒どうぞ一ツなんとでも戒名かいめうをおつけなすつて。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ああ……タタキつけられちゃった」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さあ、お値段をおつけなさいまし。