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はいだ
ふりがな文庫
“
這出
(
はいだ
)” の例文
霞
(
かすみ
)
ヶ
関
(
せき
)
には返り
咲
(
ざき
)
の桜が一面、陽気はづれの暖かさに、
冬籠
(
ふゆごも
)
りの長隠居、
炬燵
(
こたつ
)
から
這出
(
はいだ
)
したものと見える。
早
(
は
)
や
往来
(
おうらい
)
は
人立
(
ひとだち
)
だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
即ち印象派以後、ゴーグ、セザンヌ、立体派、野獣派等正に壮大にして衰弱せる老舗の下敷から
這出
(
はいだ
)
した処の勇ましき野蛮人の群であった。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
戸の
透間
(
すきま
)
も明るく成った。一番早く眼を
覚
(
さま
)
すものは子供で、まだ母親が知らずに眠っている間に、
最早
(
もう
)
床の中から
這出
(
はいだ
)
した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
地獄変相図の世界国ノアの洪水、ソファの下から
這出
(
はいだ
)
した
蜘蛛蟹
(
くもがに
)
のお化け。
熱
(
あ
)
つや苦しや、通風の悪い残暑の人いきれ。
二科狂想行進曲
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
日光の縞が
斑
(
まだら
)
にこぼれて、深山竜胆の鮮かな紫を染める時になると、蜥蜴はどこからかそろそろと
這出
(
はいだ
)
して来て、
定
(
きま
)
ったように或る一本の花蔭に身を落着ける。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
試験して見れば必ず失望するにきまってる事ですら、最後の失望を
自
(
みずか
)
ら事実の上に受取るまでは承知出来んものである。吾輩はたまらなくなって台所へ
這出
(
はいだ
)
した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鶴さんはそれでも落着いたもので、そっと書かけの手紙を床の下へ押込もうとしたが、同時に、お島の手は傍にあった折鞄を
浚
(
さら
)
っていくために
臂
(
ひじ
)
まで
這出
(
はいだ
)
して来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「やっぱり猿よ。きっと
東印度水夫
(
ラスカア
)
の屋根裏から
這出
(
はいだ
)
して、この
灯
(
あかり
)
にひかれてここへ来たのよ。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
但し
固
(
もと
)
より夢にては
無之
(
これなき
)
事に候間、とかくする中、東の空白みかゝり
塒
(
ねぐら
)
を離るゝ
鴉
(
からす
)
の声も聞え候ほどに、すこしは安心致し草むらの中より
這出
(
はいだ
)
し、崖下へ落ち候二人の侍
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、
這出
(
はいだ
)
す。
脚
(
あし
)
を
引摺
(
ひきず
)
りながら力の脱けた手で動かぬ体を動かして行く。死骸はわずか一間と隔てぬ所に在るのだけれど、その一間が時に取っては十里よりも……遠いのではないが、難儀だ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「ほう、床に転がっているこの丸太ん棒が
邪魔
(
じゃま
)
をしているから、檻が床までぴったり下らないのだ。これは天の
助
(
たすけ
)
だ。一彦君、君は小さいから、この檻と床との隙間をくぐって檻から
這出
(
はいだ
)
してごらん」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
中引
(
なかびけ
)
過ぎに
密
(
そ
)
ッと
這出
(
はいだ
)
して行って湯殿口でざっくり膝を切って、それが
許
(
もと
)
で亡くなったのも、お
前
(
めえ
)
、剃刀がそこに落ッこちていたんだそうさ。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
亭主と連立って、私達は小屋の
周囲
(
まわり
)
にある玉菜畠、葱畠、菊畠などの間を見て廻った。大根乾した下の箱の中から、
家鴨
(
あひる
)
が二羽ばかり
這出
(
はいだ
)
した。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あらゆる伝統と絵の組織の下敷から
這出
(
はいだ
)
す事が肝要であり、知り
悉
(
つく
)
した事を忘却せんとする処に新技法の必然的な意味が存在するのであるけれども
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
葉末から
滴
(
したた
)
り落ちる露がこの死んだような自然に一脈生動の気を通わせるのである。ひきがえるが
這出
(
はいだ
)
して来るのもこの大きな単調を破るに十分である。
夕凪と夕風
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
深川の堀割の
夜深
(
よふけ
)
、石置場のかげから
這出
(
はいだ
)
す辻君にも等しい
彼
(
か
)
の
水転
(
みずてん
)
の身の
浅間
(
あさま
)
しさを愛するのである。悪病をつつむ
腐
(
くさ
)
りし肉の上に、
爛
(
ただ
)
れたその心の悲しみを休ませるのである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
赤鏽
(
あかさび
)
の浮いた水には妙に無気味な感覚があって、どこかの草むらから錦の色をした蛇でも
這出
(
はいだ
)
しそうな気がした。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
実際、それが事実であったから仕方ない。何物にも換えられなかった楽しい結婚の
褥
(
しとね
)
、そこから老い行く
生命
(
いのち
)
を
噛
(
か
)
むような
可恐
(
おそろ
)
しい虫が
這出
(
はいだ
)
そうとは……
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人形使 はッこれは——弘法様の
独鈷
(
とっこ
)
のように輝きます。
勿体
(
もったい
)
ない。(
這出
(
はいだ
)
して、画家の金口から吸いつける)
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
カチリと電燈を
捻
(
ね
)
じる響と共に、
黄
(
きいろ
)
い光が
唐紙
(
からかみ
)
の隙間にさす。先生はのそのそ置炬燵から次の間へ
這出
(
はいだ
)
して
有合
(
ありあ
)
う
長煙管
(
ながギセル
)
で二、三
服
(
ぷく
)
煙草を吸いつつ、余念もなくお妾の化粧する様子を眺めた。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
家
(
うち
)
の床下からノソノソ
這出
(
はいだ
)
して、やがて木犀の蔭に寝た。そのうちに、暮れかかって来た。あまり子供等の帰りが遅いと思って、私は門の外へ出て見た。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
戸籍
検
(
しら
)
べのおまわり様にゃ、
這出
(
はいだ
)
してお辞儀をして、名前の
傍
(
わき
)
に
生年月
(
うまれねんげつ
)
、日までを書いてある親仁だけれど、この山路に対したって、黙っちゃ
引込
(
ひっこ
)
まれねえんだ。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
男は夜具から
這出
(
はいだ
)
して
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一旦
(
いったん
)
蚊帳の内へ入って見たが、復た
這出
(
はいだ
)
した。夜中過と思われる頃まで、一枚ばかり開けた戸に
倚凭
(
よりかか
)
っていた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わっし
)
あ
猿坊
(
えてんぼ
)
のように、ちょろりと影を
畝
(
うね
)
って
這出
(
はいだ
)
して、そこに震えて立っている、お道姉さんの手に合鍵を
押
(
おッ
)
つけた。早く早く、と口じゃあ言わねえが、袖を突いた。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は
一旦
(
いったん
)
入った
臥床
(
とこ
)
から復た
這出
(
はいだ
)
して、
蚊帳
(
かや
)
の外で煙草を
燻
(
ふか
)
し始めた。お仙も眠れないと見えて起きて来た。豊世も起きて来た。三人は縁側のところへ煙草盆を持出した。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人の中を
這出
(
はいだ
)
して、片息になってお
前
(
めえ
)
、本尊の前へにじり出て、台に乗っけて小さな堂を据えてよ、
錦
(
にしき
)
の
帳
(
とばり
)
を棒の
尖
(
さき
)
で上げたり下げたりして、その度にわッと
唸
(
うな
)
らせちゃあ
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして袋の口を
解
(
ほど
)
くと、にょろにょろと
這出
(
はいだ
)
すのが、きっと一度、目の前でとぐろを巻いて、首を
擡
(
もた
)
げて、その人間の顔を
熟
(
じっ
)
と
視
(
み
)
て、それから横穴へ入って隠れるって言います。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
橋本の伯母と聞いて、お倉は古びた
簾
(
すだれ
)
の影から
這出
(
はいだ
)
した。毎年のようにお倉は
脚気
(
かっけ
)
を
煩
(
わずら
)
うので、その夏も
臥
(
ね
)
たり起きたりして、二人の娘を相手に
侘
(
わび
)
しい女暮しをしているのである。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
つかつかと行くと、
凄
(
すさま
)
じい虫の
唸
(
うなり
)
、やがて取って返した左の手に熊蜂が七ツ八ツ、羽ばたきをするのがある、
脚
(
あし
)
を振うのがある、中には掴んだ指の
股
(
また
)
へ
這出
(
はいだ
)
しているのがあった。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
返す気で、
在所
(
ありか
)
をおっしゃるからは
仔細
(
しさい
)
はない、と坊さんがまた
這出
(
はいだ
)
して、畳に擦附けるように、耳を澄ます。と水兵の方は、
真中
(
まんなか
)
で耳を傾けて、腕組をして立ってなすったっけ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰一人ほとんど
跫音
(
あしおと
)
を立てなかった処へ、屋根は熱し、天井は蒸して、吹込む風もないのに、かさかさと聞こえるので、
九十九折
(
つづらおり
)
の山路へ、一人、
篠
(
しの
)
、熊笹を分けて、
嬰子
(
あかご
)
の
這出
(
はいだ
)
したほど
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たとい
這出
(
はいだ
)
したところでぬらぬらとやられてはおよそ五分間ぐらい尾を出すまでに
間
(
ま
)
があろうと思う長虫と見えたので、やむことをえず
私
(
わし
)
は
跨
(
また
)
ぎ越した、とたんに
下腹
(
したっぱら
)
が
突張
(
つッぱ
)
ってぞッと身の毛
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
のそのそ、のそのそ、一面の南瓜の蔭から
這出
(
はいだ
)
したものは
蝦蟇
(
がま
)
である。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
這
漢検準1級
部首:⾡
11画
出
常用漢字
小1
部首:⼐
5画
“這”で始まる語句
這入
這
這々
這般
這奴
這上
這麽
這込
這個
這裏