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贏
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か
ふりがな文庫
“
贏
(
か
)” の例文
到る所で私は『校長の子』といふハンディキャップの下に、特別に仲間入りをさせて呉れる尊敬を彼等の間に
贏
(
か
)
ち得たからであつた。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
然ればよろしく上海の戯園の如く上等桟敷には食卓を据え自由に公然芸者も呼べるようになさば政府も亦意外の遊興税を
贏
(
か
)
ち得べし。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして時雄もこの恋に関しての長い手紙を芳子の父に寄せた。この場合にも時雄は芳子の感謝の情を十分に
贏
(
か
)
ち得るように
勉
(
つと
)
めた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
この時五百はまだ十五歳であったから、尋常ならば
女小姓
(
おんなこしょう
)
に取らるべきであった。それが一躍して中臈を
贏
(
か
)
ち得たのは破格である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
媼
(
おうな
)
は忽ち身を起し、
健
(
すこや
)
かなる歩みざまして我前に來て云ふやう。能くも歌ひて、身のしろを
贏
(
か
)
ち得つるよ。
吭
(
のど
)
の響はやがて
黄金
(
こがね
)
の響ぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
贏
(
か
)
ちえたところは物
寂
(
さ
)
びている。
奈良
(
なら
)
の大仏の鐘をついて、そのなごりの響が、東京にいる自分の耳にかすかに届いたと同じことである。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お馨さんは、ブルックリン病院の生徒となって以来、忠実に職分を尽して、校長はじめ先輩、同僚、患者、すべての人の信愛を
贏
(
か
)
ち得た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
臥薪
(
ぐわしん
)
十年の後、
甚
(
はなは
)
だ高価なる同胞の資財と生血とを投じて
贏
(
か
)
ち得たる光栄の戦信に接しては、誰か満腔の誠意を以て歓呼の声を揚げざらむ。
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
世に
容
(
い
)
れられない思想に獻身する爲に、亨一は憲法が與へたすべての自由を奪はれた。十年奮鬪して何物をも
贏
(
か
)
ち得なかつた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
これによって自由幸福を
贏
(
か
)
ち得べしと考えたのがそもそもの誤りであるという説であって、即ち全然憲法制度の効用を否認するものである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
それ以来今日まで引続いて広く読まれていると共に、また文学史上においても確乎たる古典的地位を
贏
(
か
)
ち得ているのである。
宝島:01 序
(新字新仮名)
/
佐々木直次郎
(著)
その勇気と忠実と親切とは、当然教区民の絶大の敬慕を
贏
(
か
)
ち得たが、健康が許さないので、一八六八年他の教区に転任した。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
白面の一書生にして都下第一の美妓を
贏
(
か
)
ち得た恒川陽一郎も男子の本懐なら、当夜の小山内氏の如きに至つては正にそれ以上のものではないか。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
味わいつくしたと信じて投げ出して置いた書物から、新たに多大なる半面の内容を
贏
(
か
)
ち得たということは、このたびの著しい経験でありました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
無我とは結局無内容だ。無内容は
空
(
くう
)
だ。空な物が膽力どころではない、これから何物をも
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
ることは出來ないのだ。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
彼は実に
天佑
(
てんゆう
)
によって勝ち得べからざる勝を
贏
(
か
)
ったのである。満堂いずれも奇異の思いをなして一語を発する者もない。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
画讃の書も、他の陶人に見ることの出来ない乾山独特の権威ある書として、流暢な上に
磅礴
(
ほうはく
)
の一気を添え、能書乾山の実を
贏
(
か
)
ち得ていると思われる。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
私のこの健康を
贏
(
か
)
ち得ましたのは、前にもいったように全く植物の御蔭で、採集に行くために運動が足ったせいです。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
ついで三十一年にはそれが東大工科大学紀要となり、同君はこれに依って工学博士の学位を
贏
(
か
)
ち得られたのである。
法隆寺再建非再建論の回顧
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
翁の新しい詩集「
戦
(
そよ
)
ぐ麦」には以前の詩集「
触手
(
しよくしゆ
)
ある都会」と反対に作者自身の郊外生活から
贏
(
か
)
ち得た題目が多い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼
(
かれ
)
は
毎年
(
まいねん
)
冬
(
ふゆ
)
からまだ
草木
(
さうもく
)
の
萌
(
も
)
え
出
(
だ
)
さぬ
春
(
はる
)
までの
内
(
うち
)
に
彼等
(
かれら
)
にしては
驚
(
おどろ
)
くべき
巨額
(
きよがく
)
の四五十
圓
(
ゑん
)
を
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
るのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
嘲
(
あざけ
)
るやうな顏に優しさを喚び出し得たゞらうといふことを、またはそれより以上に、武器などなしに沈默の征服が
贏
(
か
)
ち得たであらうことを私は知つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
国太郎はまたどうかしてこの教育ある令嬢出のおかみさんの尊敬を
贏
(
か
)
ち得るような夫になろうと苦心した。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
明治維新のおり赤忠をもって
贏
(
か
)
ち得た一切の栄誉は、すべてみな
空
(
むな
)
しくされたものとなった。老後の栄職である枢密院の副議長の席も去らなければならなかった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
吾人
(
われわれ
)
は、いくらか名前を知られ、人の尊敬を
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
るようになると、
忽
(
たちま
)
ちもう
偉
(
え
)
らくなったような気がして、心が
弛
(
ゆる
)
み、
折角
(
せっかく
)
青年時代に守り本尊としていた理想を
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
若い時はイタリー・オペラの歌手として世界の第一人者を
贏
(
か
)
ち得たが、晩年は多く英米に暮して、『スウィート・ホーム』一点張りに歌って歩いたと言われている。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
そして不思議な偶然の機会から殆ど命掛けの勇気を出して恋愛の自由を
贏
(
か
)
ち得たと同時に、久しく私の個性を監禁していた旧式な家庭の
檻
(
おり
)
からも脱することが出来た。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
世間的な尊敬を
贏
(
か
)
ち得て目出たく職を退くと、田舎へひっこんで地主になる——つまり、押しも押されもせぬロシアの旦那衆として納まり、お客好きの地主となって
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この輩のごときは、かかる
多事紛雑
(
たじふんざつ
)
の際に何か
一
(
ひ
)
と
仕事
(
しごと
)
して
恰
(
あたか
)
も一杯の酒を
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
れば
自
(
みず
)
からこれを
愉快
(
ゆかい
)
とするものにして、ただ当人
銘々
(
めいめい
)
の
好事心
(
こうずしん
)
より出でたるに過ぎず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
ここにおいてかぐや姫は、現実の人間界において現実の人を動かしながらしかも現実の人の手には
贏
(
か
)
ち得られないものとして、すなわち理想として立てられたことになる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
さうだ、それにちがひない、それは昨夜のくるしみによつて
贏
(
か
)
ち得た朝であるから……でなければ、それは單に雪のあしたの眺に過ぎないであらう……私は奇蹟を見たのだ。
輝ける朝
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
それは芸術よりも先に、観客においてすら、どれ程多く
贏
(
か
)
ち得る所があつたか。さうして我々の知つた数人の、もう一流級に数へてよい人々の芸力ですら、我々を満足させない。
花の前花のあと
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
荘田は、何うかして、瑠璃子の微笑と歓心とを
贏
(
か
)
ちえようと、懸命になつて話しかけた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
それは一つの隷属を
贏
(
か
)
[#「贏」は底本では「※」]ち得んとする企図であった。この戦役においては、民主制の子孫たるフランス兵士の目的は、他人に課すべき
軛
(
くびき
)
の獲得であった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
弱點はあるが、同じく弱點のある王張二氏の所説に伍して、或は鼎足の位置を保ち得るか或は僥倖にして優勝の位置を
贏
(
か
)
ち得るかと、試に茲に發表して、學界の批正を仰ぎたいと思ふ。
司馬遷の生年に関する一新説
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
しかもかくまでしてようやく
贏
(
か
)
ち得たる愛を一年も経ぬ間に世にも惨めに失い、加うるにそのために一生の運命に決定的契機を与えるほどの大きな犠牲を払ったことを思えば思うほど
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
けれども、彼が一旬日ほど以前、
聖
(
セント
)
アレキセイ寺院のジナイーダの室において
贏
(
か
)
ち得たところの成功が、はたして今回も、繰り返されるであろうかどうか——それがすこぶる危ぶまれた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
長命
(
ながいき
)
は時々賭に
贏
(
か
)
つものだ。無理もない。天海は百八歳も生き延びたのだから。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
試問教授並に陪審教授から名誉ある賞賛を
贏
(
か
)
ち得たという事も併せて知った。
二人のセルヴィヤ人
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
何だか自分には不世出の天才を俟たなくてもノーベル賞を
贏
(
か
)
ち得られるということを示されたような気がするのである。ある意味においてはその方がさらに偉大な業のようにも思えるのである。
リチャードソン
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
或る一人の人が己の性命の時計の
鍼
(
はり
)
を前へ進めることを自分の特別な任務にしてゐるのである。その人のためには己の死が偶然の出来事では無くて、一の願はしい、殊更に
贏
(
か
)
ち得た恩恵である。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
この方法によつて成功を
贏
(
か
)
ち得る時、彼は
時宜
(
じぎ
)
に適すると適せざるとを問はず、一面にはそれが楽である所から、又一面には、それによつて成功する所から、
動
(
やや
)
もすればこの手段に赴かんとする。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
世の中へ出て名人の名を
贏
(
か
)
ち得たので、既に明治十三年の竜池会が出来た時分、間もなくその会員となって、山高、山本、岸などいう諸先生と知り合い、美術のことを研究していられたのであった。
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
何ぜなら、コルシカの平民ナポレオンが、オーストリアの皇女ハプスブルグのかくも若く美しき娘を持ち得たことは、彼がヨーロッパ三百万の兵士を殺して
贏
(
か
)
ち得た彼の版図の強大な力であったから。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
凡そ生活でも、自由でも、日々これを
贏
(
か
)
ち得て、11575
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
(もつて二十を
贏
(
か
)
ち得んや) はじめの
駑馬
(
うま
)
をやらふもの
文語詩稿 一百篇
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
『皇帝万歳!』の叫び共に
贏
(
か
)
ち得られたる
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
位
(
くらゐ
)
をつひに
贏
(
か
)
ち
獲
(
え
)
たり
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
それも、君だけの材能があって見れば、多少の
心当
(
こころあたり
)
がないでもない。若し
旨
(
うま
)
く行ったら、君は自ら
贏
(
か
)
ち得た報酬で宿屋の勘定をするが好い。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
贏
(
か
)
ち得た所は物
寂
(
さ
)
びてゐる。奈良の
大仏
(
だいぶつ
)
の
鐘
(
かね
)
を
撞
(
つ
)
いて、其
余波
(
なごり
)
の
響
(
ひゞき
)
が、東京にゐる自分の耳に
微
(
かす
)
かに
届
(
とゞ
)
いたと同じ事である。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
贏
漢検1級
部首:⾙
20画
“贏”を含む語句
輸贏
贏得
贏利
贏利虚妄
贏目
贏財