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賤
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いやし
ふりがな文庫
“
賤
(
いやし
)” の例文
阿父さんはこの家業を不正でないとお言ひなさるが、実に世間でも地獄の獄卒のやうに憎み
賤
(
いやし
)
んで、附合ふのも
耻
(
はぢ
)
にしてゐるのですよ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
能々
(
よく/\
)
見るに岡山に
在
(
おはせ
)
し時數年我が家に使ひたる若黨の忠八にて有ければ
餘
(
あま
)
りの事に言葉も出ず女の細き心にて
斯
(
かゝ
)
る
賤
(
いやし
)
き
姿
(
すがた
)
に成しを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
暗殺は
卑怯
(
ひけふ
)
なりとして
賤
(
いやし
)
められ、決闘は快事として重んぜらる、而して復讐なるものは尤も多く人に称せらる。人間何ぞ斯の如く奇怪なる。
復讐・戦争・自殺
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
勞働者勞働者と一口に
賤
(
いやし
)
んだツて、
我々
(
われ/\
)
も其の勞働者と些ツとも違やしないぢやないか。下らぬ
理屈
(
りくつ
)
を
並
(
なら
)
べるだけ
却
(
かえ
)
ツて惡いかも知れない。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
お父さんの説によると職業に貴賤上下の別がある。金そのものを直接の目的とする商売は
賤
(
いやし
)
く、報酬を二の次にする職業は貴いのだそうだ。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
軽んじ
賤
(
いやし
)
むる色はその
面
(
おもて
)
に出でたれど、われは逆らわで
頷
(
うなず
)
きぬ。かの人の継母なれば、心からわれも
渠
(
かれ
)
に対しては威なきものとなれるなるべし。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
原因事情の
如何
(
いかん
)
を問はず、
自
(
みず
)
から生命を害するは、独立自尊の旨に反する背理卑怯の行為にして、最も
賤
(
いやし
)
む可き所なり。
修身要領
(新字旧仮名)
/
福沢諭吉
、
慶應義塾
(著)
所為
(
しわざ
)
は
賤
(
いやし
)
けれども
芸術
(
げいじゆつ
)
の
極意
(
ごくい
)
もこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして
初学
(
しよがく
)
の人
芸
(
げい
)
に
進
(
すゝむ
)
の
一端
(
はし
)
を
示
(
しめ
)
す。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
その結果が恋愛となり自由結婚となりあるいは失恋となり自殺となり、中には最も
賤
(
いやし
)
むべき
情死
(
しんじゅう
)
なんぞとなる。よく娘や息子を持った親たちが平気でいられるね。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ソロモン王の如きも女子を
賤
(
いやし
)
めているけれども、彼は世にソロモンの栄華の称ある如く、
金殿玉楼
(
きんでんぎょくろう
)
酒池肉林
(
しゅちにくりん
)
におよそ人間として望み得らるべき物欲の限を満足せしめ
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それに引かへて、一方の老人は
賤
(
いやし
)
い処から武芸や
文事
(
ぶんじ
)
を磨いて、人が驚くほど立身して、江戸家老のお気に入りに其人ありと知られるほどの勢力のある生活を送つて来た。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
終生一主義を貫徹して死せり、彼が世を去るや彼の政府はただちに転覆され、彼の
屍
(
かばね
)
は
発
(
あば
)
かれ、彼の名は
賤
(
いやし
)
められ、彼の事業は一つとして跡を
留
(
とど
)
めざるがごときに至れり
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
これを読まば蕪村が漢詩の趣味を俳句に
遷
(
うつ
)
しし事も、李杜を貴び元白を
賤
(
いやし
)
みし事も明瞭ならん。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「四十余年戯楽中。老来猶喜迎春風。請看恵政方優渥。一邸不知歳歉豊。」前詩は
年
(
とし
)
豊
(
ゆたか
)
にして
米
(
こめ
)
賤
(
いやし
)
きを歎じ、後詩は年の豊凶と米価の昂低とに無頓着であるものと聞える。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
吾人
(
ごじん
)
は彼が
自
(
みず
)
から処する
所以
(
ゆえん
)
を視、人に処する所以を見れば、他の自から水を飲み、人に酒を強い、他を酔倒せしめて、
自
(
みず
)
から快なりとする
教唆
(
きょうさ
)
的
慷慨
(
こうがい
)
家の甚だ
賤
(
いやし
)
むべきを知るなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
俺が朋輩の
家禽
(
にはとり
)
や
牛馬
(
うしうま
)
の
夥伴
(
なかま
)
では、日本産でも純粋種は
大切
(
だいじ
)
にして雑種は
賤
(
いやし
)
んでおるさうだ。
夫
(
それ
)
が
当然
(
あたりまへ
)
の筈だのに、犬だけは雑種までが毛唐臭い顔付をしてけつかるは怪しからん咄だ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
ゆえにだんだんいわゆる理想の奥を探るとすこぶる
賤
(
いやし
)
むべき
野卑
(
やひ
)
なる動機に到着することがしばしばある。自己の欲望の
汚穢
(
おわい
)
を
掩
(
おお
)
うために理想という文字を用うるものがたくさんある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
園芸を好んだので、
糞尿
(
ふんにょう
)
を格別忌むでも
賤
(
いやし
)
むでもなかったが、不浄取りの人達を糞尿をとってもらう以外没交渉の
輩
(
やから
)
として居た。来て其人達の中に住めば、
此処
(
ここ
)
も
嬉
(
うれ
)
し
哀
(
かな
)
しい人生である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
又死に際には権田時介との約束に縛られて其れが為に秀子に
賤
(
いやし
)
まれる様に仕向けた次第を打ち明け、充分に詫びて秀子の心を解く事も出来得るで有った者を、儘ならぬ浮世とは此の事だろう
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
貫一は吾を忘れて
嗤笑
(
あざわら
)
ひぬ。彼はその
如何
(
いか
)
に
賤
(
いやし
)
むべきか、謂はんやうもあらぬを
念
(
おも
)
ひて、更に
嗤笑
(
あざわら
)
ひ猶嗤笑ひ、
遏
(
や
)
めんとして又嗤笑ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
締殺し候覺え
毛頭
(
もうとう
)
御座なく元私し事は
賤
(
いやし
)
き者の娘にて津國屋が
未
(
まだ
)
神田に
住居
(
ぢうきよ
)
致せし節同人店に居候中兩親も死に
果
(
はて
)
候ひしを不便に思ひ私しを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
所為
(
しわざ
)
は
賤
(
いやし
)
けれども
芸術
(
げいじゆつ
)
の
極意
(
ごくい
)
もこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして
初学
(
しよがく
)
の人
芸
(
げい
)
に
進
(
すゝむ
)
の
一端
(
はし
)
を
示
(
しめ
)
す。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
極めて
生真面目
(
きまじめ
)
にして、人のその笑えるをだに見しものもあらざれども、
式
(
かた
)
のごとき白痴者なれば、
侮慢
(
ぶまん
)
は常に
嘲笑
(
ちょうしょう
)
となる、世に最も
賤
(
いやし
)
まるる者は時としては
滑稽
(
こっけい
)
の材となりて
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おのれにまさりて物しれる人は高き
賤
(
いやし
)
きを選ばず常に
逢
(
あい
)
見て事尋ねとひ、あるは物語を
聞
(
きか
)
まほしくおもふを、けふは
此
(
この
)
頃にはめづらしく日影あたたかに
久堅
(
ひさかた
)
の空晴渡りてのどかなれば
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
社会の文明を進めるのは心の礼を世間の人に教えなければならん、心で人を貴び人を敬し人を愛し人を
憐
(
あわれ
)
むのが人の道だ、しかるに今の世人は口で人を貴んで心で人を
賤
(
いやし
)
むという
風
(
ふう
)
がある
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
白壁の土蔵、
樫
(
かし
)
の刈り込んだ
垣
(
かき
)
、
冠木門
(
かぶきもん
)
、物心がついてから心から憎いと思ったのは、村の物持ちで、どうしてこの身ばかりこう
賤
(
いやし
)
く、こう憎まれ、こう侮られ、こう打たれるのかと思った。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「要するに同胞の為めを計る職業は貴く、自己の為めを計る職業は
賤
(
いやし
)
い」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
すなわち二十、二十一節にいう「たとい我れ正しかるともわが口われを悪しとなさん、たとい我れ
全
(
まった
)
かるともなおわれを罪ありとせん、我は全し、されども我はわが心を知らず、わが
生命
(
いのち
)
を
賤
(
いやし
)
む」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
立
(
たち
)
賤
(
いやし
)
き渡世は致せども然樣な惡事は少しも
爲
(
なさ
)
ず善か惡かは明日出て
聞給
(
きゝたま
)
へと平氣の挨拶なれば勘兵衞
是非
(
ぜひ
)
なく
受書
(
うけがき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
鉄色縮緬
(
てついろちりめん
)
の
頭巾
(
づきん
)
を
領
(
えり
)
に巻きたる
五十路
(
いそぢ
)
に近き
賤
(
いやし
)
からぬ婦人を載せたるが、南の
方
(
かた
)
より
芝飯倉通
(
しばいいぐらとおり
)
に来かかりぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
隣室には、しばらく
賤
(
いやし
)
げに、浅ましい、売女商売の話が続いた。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“賤”の意味
《名詞》
(しず) 身分や地位が低いこと。又、身分や地位が低い者。
(出典:Wiktionary)
“賤(五色の賤)”の解説
五色の賤(ごしきのせん)とは、律令制の元で設置された古代日本の5種の賤民である。
近世の被差別民や近現代日本の被差別部落の直接的な起源であるとする説が存在するが、議論がある。
(出典:Wikipedia)
賤
漢検準1級
部首:⾙
15画
“賤”を含む語句
卑賤
下賤
賤民
賤女
山賤
賤夫
賤機山
賤業
賤婦
賤奴
賤家
賤人
老若貴賤
貴賤
微賤
貧賤
賤劣
賤陋
賤機
賤業婦
...