がたり)” の例文
新内がたりの〆蔵との馴れそめを打明け、あの人はお酒がよくないし、手慰てなぐさみもすきだし、万一の事でもあると困るから、体好ていよく切れたい。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたし狩獵しゆれふらない。が、ものでない、やまさちは、姿すがた、その、ものがたりくのにある、と、おもひつゝ。……
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それにつきては一条ひとくだりのものがたりあり、われもこよひは何ゆゑかいねられねば、起きて語り聞かせむ。」とうべなひぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ふすまりてしづかにけば、斷續だんぞくしてきこゆるものがたり意味いみ明亮めいりやうにあらねども、大方おほかたわたりぬ、ひとありとはらぬものゝことばあまりはたかからず、松野まつのむかひてしたるは竹村子爵たけむらしゝやく家從かじゆうなにがし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
強ひるやうに哀れげな昔がたり
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
……霞の滝、かくれ沼、浮城うきしろ、ものがたりを聞くのと違って、現在、誰の目にもながめらるる。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
假初かりそめならぬ三えんおなじ乳房ちぶさりしなり山川さんせんとほへだたりし故郷こきやうりしさへひがしかたあしけそけし御恩ごおん斯々此々かく/\しか/″\はゝにてはおくりもあえぬに和女そなたわすれてなるまいぞとものがたりかされをさごゝろ最初そも/\よりむねきざみしおしゆうことましてやつゞ不仕合ふしあはせかたもなき浮草うきくさ孤子みなしご流浪るらうちからたのむは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玉子なりの色の白い……このものがたりの土地では鶴子饅頭つるのこまんじゅうと云うそうである、ほっとり、くるりと、そのやや細い方をかしらに、のもみじを一葉ひとは挿して、それが紅い鳥冠とさかと見えるであろうか?
鳴子なるこ引板ひたも、半ば——これがためのそなえだと思う。むかしのものがたりにも、年月としつきる間には、おなじ背戸せどに、孫もひこむらがるはずだし、第一椋鳥むくどりねぐらを賭けて戦う時の、雀の軍勢を思いたい。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このものがたりの起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、真中央まんなかに城の天守なお高くそびえ、森黒く、ほりあおく、国境の山岳は重畳ちょうじょうとして、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のものがたりの起つた土地は、清きと、美しきと、二筋ふたすじ大川おおかわの両端を流れ、真中央まんなかに城の天守てんしゅほ高くそびえ、森黒く、ほりあおく、国境の山岳は重畳ちょうじょうとして、湖を包み、海に沿ひ、橋と、坂と
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
植込を向うへ引込ひきこんだ離座敷に、一寸ちょっと看板を出しました——百ものがたりにはつきものですが、あとで、一人ずつ順に其処そこへ行って、記念の署名をと云った都合なんで、勿論もちろん、夜が更けましてから……
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)