觀念くわんねん)” の例文
新字:観念
どつと尻火を切つた中に、觀念くわんねんまなこを閉ぢたお六の姿、八五郎はさすがにその手を取つて引つかつぐ氣力もありませんでした。
見拔みぬかれ追々證人等も引合せらるゝことになりしかば流石さすが強惡がうあくの久兵衞もたくみし事ども彌々露顯と觀念くわんねんなし居たりされば越前守殿の裁許は實に天眼通を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
良人をつとたんの觀念くわんねんなにとしてゆめさら/\あらんともせず、たのしみは春秋はるあき園生そのふはな、ならば胡蝶こてふになりてあそびたしと、とりとめもなきことひてくらしぬ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、畢竟ひつけうそれもまた名人上手とかいふ風な古來の形しきが當ぜん作り出すかたとらはれた觀念くわんねんと見られぬ事もない。
依頼心いらいしんおほくて、憤發心ふんぱつしんすくなくて、秩序ちつぢよとか整理せいりとかいふ觀念くわんねんとぼしくて、どうして複雜ふくざつ社會しやくわいつていへをさめてくことが出來できやうかとおもくらゐであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「どうせべられるなら、こんな孝行者かうこうものおやくちにはいるのは幸福しあはせといふもんだ」と、よろこんでその觀念くわんねんをとぢました。そして二ふたゝびひらきませんでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
休業きうげふのはりふだして、ぴたりととびらをとざした、なんとか銀行ぎんかう窓々まど/\が、觀念くわんねんまなこをふさいだやうに、灰色はひいろにねむつてゐるのを、近所きんじよ女房かみさんらしいのが、しろいエプロンのうすよごれた服裝なり
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで彼等かれらこゝろにはつてやれ、んでやれ、さうしてらねばはらえぬといふ觀念くわんねんせずして一致いつちするのである。ざるはこんだ饂飩うどん多人數たにんずう彼等かれら到底たうていぶん滿足まんぞくあたるものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
現身うつそみの世をゆるしえず、はたのろひえぬ觀念くわんねん
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
こゝろ變化へんくわするものなり、雪三せつざう徃昔そのかみ心裏しんりうかゞはゞ、糸子いとこたいする觀念くわんねん潔白けつぱくなること、其名そのなゆきはものかは、主人しゆじん大事だいじ筋道すぢみちふりむくかたもかりしもの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、暫く自分の心持を落着けると、白々とした觀念くわんねんの顏を擧げ、キツと平次を睨み、それから主人勘兵衞を見据ゑ乍ら、少しかすれたが、落着拂つた聲でう言ふのです。
ずとも最早もはや有體ありていに白状致せと申さるゝに流石さすが奸惡かんあくの九郎兵衞も茲に至て初めて觀念くわんねんなし今は何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
卯平うへいこゝろにもおなじく觀念くわんねんまず往來わうらいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
繃帶だらけの手を後ろに廻して、宗吉は觀念くわんねんの眼をつぶるのです。
引捕ひつとらへ三次は其邊そこら見廻みまはしつゝおれは元よりうらみもなけりや殺す心はなけれ共頼まれたのがたがひの不運かうなる上は觀念くわんねんろと又も一太刀切倒きりたふされ立んとしてもたゝれずばツたり其處へ打倒れ流るゝ血汐ちしほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)