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ふりがな文庫
“
良人
(
おっと
)” の例文
結婚式の夜、茶の間で
良人
(
おっと
)
は私が堅くなってやっと
焙
(
い
)
れてあげた番茶をおいしそうに一口飲んでから、茶碗を膝に置いて云いました。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『あの女が
良人
(
おっと
)
も知合いも連れずに来てるのなら』とグーロフは胸算用をするのだった、『ひとつ付き合ってみるのも悪くはないな』
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この冬のうちに、
良人
(
おっと
)
と死別れするなんてこと、考えただけでもゾッとしてしまう。それじゃ、喬子があんまり可哀想過ぎると思う。
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
それにもう一つ悲しいことには、わたし達はそのとき、二人とも
寡婦
(
やもめ
)
になっていました。
何方
(
どちら
)
も、
良人
(
おっと
)
が戦争に出て戦死したのです。
二人の母親
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
と、僕は言いました、『心というものは、そんな
手狭
(
てぜま
)
なもんじゃありません。お父さんへの愛も愛なら、
良人
(
おっと
)
にたいする愛も愛です。 ...
真珠の首飾り:――クリスマスの物語――
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
▼ もっと見る
良人
(
おっと
)
の又五郎からよほどきびしく云われているらしい、お市までがそばから「父の承諾がなければ」などと、心配そうに口をそえた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
田舎では
問屋本陣
(
とんやほんじん
)
の家柄であった女主は、
良人
(
おっと
)
が
亡
(
な
)
くなってから、自分の経営していた製糸業に失敗して、それから東京へ出て来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
頃
(
ころ
)
良人
(
おっと
)
はまだ
若
(
わこ
)
うございました。たしか二十五
歳
(
さい
)
、
横縦
(
よこたて
)
揃
(
そろ
)
った、
筋骨
(
きんこつ
)
の
逞
(
たくま
)
ましい
大柄
(
おおがら
)
の
男子
(
おとこ
)
で、
色
(
いろ
)
は
余
(
あま
)
り
白
(
しろ
)
い
方
(
ほう
)
ではありません。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
良人
(
おっと
)
が新しい結婚をした場合に、その前からの妻をだれも
憐
(
あわれ
)
むことになっているが、高い貴族をその道徳で縛ろうとはだれもしない。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「じゃ、内の人も帰って来よう、三ちゃん、浜へ出て見ようか。」と
良人
(
おっと
)
の帰る嬉しさに、何事も忘れた
状
(
さま
)
で、女房は
衣紋
(
えもん
)
を直した。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
香水をにおわせているエレーナ・ニコライエヴナとトルストイ論の相手をしているのはリザ・フョードロヴナの
良人
(
おっと
)
の技師であった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
良人
(
おっと
)
頼春のまた
従兄弟
(
いとこ
)
にあたる、小次郎様であるようなら、その小次郎様に逢わせていただき、良人の居場所を知らせていただこう。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
配所の
晨
(
あした
)
は相変らず早い。
良人
(
おっと
)
が日課の読経をつとめている間、新妻は、居室を清掃し、
釜殿
(
かまどの
)
にまで出て、いそいそ立ち働いていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
良人
(
おっと
)
だけは、こんな云い方をした。そして、いかにも若い男らしい興味深そうな眼つきで、福子の顔をまじまじと眺めるのだった。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
書棚には支那の書物、外国の書物、例の『理想の
良人
(
おっと
)
』もある
訳
(
わけ
)
だな。——上下二冊揃だ。寝室がまた一間あって、真鍮のベッドかな。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その使いにはすみ子の
良人
(
おっと
)
の浩義を使った。幾割かの謝礼を払えば、人は小気味よく働いてくれるものだと云う事もきんは知っていた。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お気の毒なことに奥方の浪乃殿は、お里方が絶家して帰るところもなく
良人
(
おっと
)
将監殿が江戸へ帰るまでは、
滅多
(
めった
)
に死ぬわけにも行かない。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
貧乏でも、貧乏たらしくないところなど好きであったが、しかし結婚すべき
良人
(
おっと
)
としての美沢を考えると、前途は遼遠としていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なぜなら、現に今夜の若い時間に、彼の妻のいが栗頭の
波斯
(
ペルシャ
)
猫がわざわざ私に指示してこの男が
良人
(
おっと
)
であると証言したではないか。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
悪いことは皆
良人
(
おっと
)
の側の遺伝に定めていたが、唯一つ説明のつかなかった神経衰弱も果して然うと今日唯今初めて分ったのである。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
親が子をねたむということ、あるべしとは思われねど、浪子は
良人
(
おっと
)
の帰りし以来、一種異なる関係の姑との間にわき
出
(
い
)
でたるを覚えつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
暮のうち、
良人
(
おっと
)
の
岩矢天狗
(
いわやてんぐ
)
が、葉子をだせと云って二三度怒鳴りこんだことがあった。天狗は横浜の興行師で、バクチ打、うるさい奴だ。
投手殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「うまいことをいうのね、あなた御自分で買って来たのでしょう。しかし姉さんには、
歴
(
れき
)
とした
良人
(
おっと
)
があるのよ。なぜ私に下さらないの」
恐ろしき贈物
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
はじめアリスは冗談と思ったのだが、
良人
(
おっと
)
の手に力が加わって、
真気
(
ほんき
)
に沈めようとかかっているので、急に
狼狽
(
ろうばい
)
して
踠
(
もが
)
き始めた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
一向
(
ひたぶる
)
に名声
赫々
(
かくかく
)
の豪傑を
良人
(
おっと
)
に持ちし思いにて、その以後は毎日公判廷に
出
(
い
)
づるを楽しみ、かの人を待ち
焦
(
こが
)
れしぞかつは怪しき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
こんな絶望的な不安に攻めさいなめられながらも、その不安に駆り立てられて葉子は木村という降参人をともかくその
良人
(
おっと
)
に選んでみた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それを心得のある
良人
(
おっと
)
で実はこういう事件が起ったから今その事を考えているといわれれば妻君の疑問は
釈
(
と
)
けて心配の範囲は小さくなる。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
彼女は二月革命の一寸後に、
良人
(
おっと
)
と若い息子と一緒に、急いで彼等の生れ故郷に帰つたのだつた。彼女はあの大きな十月革命にも参加した。
子供の保護
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
今宵、紅子は、彼女の
良人
(
おっと
)
、川波大尉を射殺して置きながら、それを振返ってみようともしないのは、どうしたことであるか。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし、間もなく彼らの前で、長羅と反絵の
塊
(
かたま
)
りは、卑弥呼の二人の
良人
(
おっと
)
の仇敵は、戦いながら次第にその力を弱めていった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それにしても彼女の晩年において唯々一つの心残りであったのは、
嘗
(
かつ
)
て困苦を共にして来た最愛の
良人
(
おっと
)
の不慮の死であったに違いありません。
キュリー夫人
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
白蓮女史
失踪
(
しっそう
)
のニュースが、全面を
埋
(
う
)
めつくし、「
同棲
(
どうせい
)
十年の
良人
(
おっと
)
を捨てて、白蓮女史情人の
許
(
もと
)
へ走る。夫は五十二歳、女は二十七歳で結婚」
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その内に
良人
(
おっと
)
が政界に出ましてからは、良人の出世とか、家庭の幸福とか、アントワンヌの健康なぞに心をとられていました
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
女の言ったりしたりすることで、男のつごうが悪いと、世の
良人
(
おっと
)
諸君はみんなヒステリイで片づけてしまう。これは、余談。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「国の基」という雑誌に「
良人
(
おっと
)
を選ぶには、よろしく理学士か、教育者でなければいかん」と書いて物議を
醸
(
かも
)
したりした。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
けれどもどう骨を折っても、その推測を突き留めて事実とする事ができなかった。先生の態度はどこまでも
良人
(
おっと
)
らしかった。親切で優しかった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
身体の装飾、煮物の加減、裁縫手芸、
良人
(
おっと
)
の選択、これらは山出しの女中もまた思う事であり、また
能
(
よ
)
くする所である。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「おや、
肘
(
ひじ
)
をどうなすって? 怪我をなすっていらっしゃるじゃァありませんか」折江は
目敏
(
めざと
)
く、
良人
(
おっと
)
の肘の下が
蚯蚓腫
(
みみずばれ
)
になっているのを見付けた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
高田殿は
良人
(
おっと
)
忠直卿の事を考えて、常に慈悲深く、それ等の人を庇護された。幕府でもそうなると手を附けなかった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
鶴子はいよいよ門出の
幸
(
さち
)
あるを喜び、夏の
夕陽
(
ゆうひ
)
のまだ照り輝いている中、急いで家へ帰り
良人
(
おっと
)
の承諾を求めようと思うと、良人は既に外出した後で
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「はい、不しあわせな身の上でござんして、
良人
(
おっと
)
に死にわかれましてから、もう長らく、淋しく暮しております——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
妃全体
良人
(
おっと
)
が持って出た財宝は今誰の物になり居るか、従者に聴いた上妾を打たれよと言ったので王子返答も出ず。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そしていかなる立脚地に立っていいかわからなくなったので、リーリ・ラインハルトはすべてを非難しようときめ、
良人
(
おっと
)
はすべてをほめようときめた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
T君と喫茶店で紅茶を呑みながら同君の出品画「I崎の女」に対するそのモデルの
良人
(
おっと
)
からの撤回要求問題の話を聞いているうちに急激な地震を感じた。
震災日記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おきのは、走りよって、息子のことを、訊ねてみたかったが、醤油屋へ、
良人
(
おっと
)
の源作が労働に行っていたのを思い出して、なお卑下して、思い止まった。
電報
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
丁度
(
ちょうど
)
その時に榎本の妹の
良人
(
おっと
)
に
江連
(
えづれ
)
加賀守
(
かがのかみ
)
と
云
(
い
)
う人があって、この人は
素
(
も
)
と幕府の外国奉行を勤めて居て私は
外国方
(
がいこくがた
)
の飜訳方であったから
能
(
よ
)
く
知
(
しっ
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それで博士の
良人
(
おっと
)
が死んで以来、
或
(
あ
)
る学術研究会の調査部に入り、図書の整理係として働らいていた。彼女は毎朝九時に出勤し、午後の四時に帰宅していた。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
さて
稽古
(
けいこ
)
が
積
(
つ
)
んで、おのれの
工夫
(
くふう
)
が
真剣
(
しんけん
)
になる
時分
(
じぶん
)
から、ふと
眼
(
め
)
についたのは、
良人
(
おっと
)
の
居間
(
いま
)
に
大事
(
だいじ
)
にたたんで
置
(
お
)
いてある、もみじを
散
(
ち
)
らした一
本
(
ぽん
)
の
女帯
(
おんなおび
)
だった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
母が家を出てから丁度七日目のことでした。夜半に私は大変うなされたらしく
良人
(
おっと
)
に揺り起されました。
母の変死
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
良人
(
おっと
)
というのは、
鬚
(
ひげ
)
の濃い、顔色のつやつやとした、肩幅の広い男で、物わかりは余りいいほうではなかったが、根が陽気な
質
(
たち
)
で、見るからに
逞
(
たくま
)
しい
青年
(
わかもの
)
だった。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
“良人”の意味
《名詞》
良い人。
妻から見た夫。
(出典:Wiktionary)
良
常用漢字
小4
部首:⾉
7画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“良人”で始まる語句
良人操縱
良人宅
良人学校
良人操縦法