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うぬぼ
ふりがな文庫
“
自惚
(
うぬぼ
)” の例文
日本人がともすれば
自惚
(
うぬぼ
)
れがちで世界のどこに比してもすべての点で
遜色
(
そんしょく
)
ないもののように考えるのは甚だ間違っていると私は思う。
伝統と進取
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
すれ違いながら云わず語らずのうちに、ああ云うひと達と自分たちとは違うという女らしい
自惚
(
うぬぼ
)
れがみんなの心の内にあるのだった。
舗道
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
おまけに多くの候補者のうちではおそらく自分などは罪の軽い部ではなかろうか——などと都合の好さそうな
自惚
(
うぬぼ
)
れを持ったりした。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
私は
肝
(
きも
)
のつぶれるほどに驚倒し、それから、不愉快になりました。「
自惚
(
うぬぼ
)
れちゃいけない。誰が君なんかに本気で恋をするものか。」
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
吾輩だって
喜多床
(
きたどこ
)
へ行って顔さえ
剃
(
す
)
って
貰
(
もら
)
やあ、そんなに人間と
異
(
ちが
)
ったところはありゃしない。人間はこう
自惚
(
うぬぼ
)
れているから困る。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
私は聞いて呆れながら、お宮は、私がそんなにして女の
気嫌
(
きげん
)
を取るほど惚れていると
自惚
(
うぬぼ
)
れているのだろうかと思って柳沢の顔を見た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
万一の
僥倖
(
ぎょうこう
)
以外に、殆んど絶対といってもいい位不可能な事で、如何に
自惚
(
うぬぼ
)
れの強い私でも、そこまでの自信は持っていないのであった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
自分がおねだりなすつたことなどは、ちつとも書いておありにならないのですもの。だから、
自惚
(
うぬぼ
)
れが強くつて我儘だと申したのですわ。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
この明晰な頭で考えに考え抜いてやったことが、どうして発覚するものかという、
自惚
(
うぬぼ
)
れすぎた自信が、私を大胆にしました。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あるいは島民と同じ目で眺めていると
自惚
(
うぬぼ
)
れているのかも知れぬ。とんでもない。お前は実は、海も空も見ておりはせぬのだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
あの時は甘々とお糸にやられたよ、——長い間十手捕繩を預つて、今度のやうな見當違ひをしたのは始めてだ、岡つ引は
自惚
(
うぬぼ
)
れちやいけないな
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれどいくら
自惚
(
うぬぼ
)
れてみても、彼はかなりの良識と皮肉とをそなえていて、そういう機会が自分には到来しないことを知らないではなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
傷いた鷓鴣の羽根が落ちて来て、ひとりでに、この
自惚
(
うぬぼ
)
れの強い猟師の帽子にささったとしても、わたしは、それがあんまりだとは思わない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
自惚
(
うぬぼ
)
れではありませんが、呉もまたわれわれと結ばなければ、存立にかかわりましょう。もしわが主玄徳が、一朝に意気地を
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前の
言
(
げん
)
は、警察の刑事政策上からきた宣伝と警察の
自惚
(
うぬぼ
)
れと、刑事学者の驚くべき学問過信とからきたもののようである。
雑文一束
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
料理の世界にしても、これですべてがわかったという
自惚
(
うぬぼ
)
れは許されぬ。いつもいつも夢想だに出来ないことが存在することを知らねばならぬ。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
自惚
(
うぬぼ
)
れなんか起すんぢやないわ。西洋人の眼には、そんな風に見えるのかも知れないし、そこがまた、面白いぢやないの。
モノロオグ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「割いたんじゃなくって、あんたが嫌われたんだよ。会うのが厭だから隠れてんのさ。それが分らないのか知ら、
自惚
(
うぬぼ
)
れッて恐しいもんだなあ」
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
ある時は、自分を
凡俗
(
ぼんぞく
)
より高いものに
自惚
(
うぬぼ
)
れて見たり、ある時は取るに足らぬものと
卑
(
いや
)
しめてみたり、その間に
起伏
(
きふく
)
する悲喜を生活として来た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
真面目な人なら、此処らで自分の愚劣を悟る所だろうが、私は反て
自惚
(
うぬぼ
)
れて、此分で行けば
行々
(
ゆくゆく
)
は日本の文壇を
震駭
(
しんがい
)
させる事も出来ようかと思った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「
自惚
(
うぬぼ
)
れてはいかん。とにかくこの代償として、わしはルーズベルト大統領がいつも鼻の上にかけている眼鏡を貰いたい。と、そういって伝えてくれ」
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
才と云うものに
自惚
(
うぬぼ
)
れてはならない。お母さんも、大分衰えている。一度帰っておいで、お前のブラブラ主義には不賛成です。——父より五円の為替。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
然し
自惚
(
うぬぼ
)
れなく、私たちはそのことをみんなに納得させること、つまりみんなの毎日の日常の生活に即して説明してやることでは、まだ/\
拙
(
まず
)
いのだ。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
我勝手
(
われがって
)
や。娘がこがれ
死
(
じに
)
をしたと聞けば、おのれが顔をかがみで見るまで、
自惚
(
うぬぼ
)
れての。何と、早や
懐中
(
ふところ
)
に抱いた気で、お稲はその身の前妻じゃ。——
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あなたは監督さんへのお手紙から、ああなったと思召すかも知れませんが、それは男の
自惚
(
うぬぼ
)
れと申すものですわ。
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
流石
(
さすが
)
は外国人だ、見るのも気持のいいようなスッキリした服を着て、沢山歩いたり、どうしても、どんなに私が
自惚
(
うぬぼ
)
れて見ても、勇気を振い起して見ても
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
とにかく
自惚
(
うぬぼ
)
れないことだ。いい気になって増長しないことだ。自分は強いと自惚れたら、もうそれは弱くなっている証拠なんだからね。やはり慈悲心さ。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
自惚
(
うぬぼ
)
れる奴自惚れない奴に
拘
(
かかわ
)
りなく、一人として偉いが偉いで、智者が智者で、終る奴はいないのである。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これは源吉の
自惚
(
うぬぼ
)
れでもなんでもなかった。京子は、明かに彼に好意を持っていたのだ。それは源吉の持出した「堅い約束」に、
唯々諾々
(
いいだくだく
)
と応じたのだから——。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
久しく忘れてゐた身じまひのあとのすが/\しい気分が、軽い
自惚
(
うぬぼ
)
れまでひき起して、帯や半襟やの
色彩
(
いろどり
)
がいくらか複雑に粧はれたのを、鏡の中に満足さうに見た。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「ところで、この
自惚
(
うぬぼ
)
れ女め、
手前
(
てめえ
)
はな、」とクランチャー君は、前後撞著に気がつかずに、言った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
まあ黙ってきいていたまえ。君は自分でどの位いい頭の所有者だと
自惚
(
うぬぼ
)
れているか判らないが、僕を
殺人迷路:08 (連作探偵小説第八回)
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
各
(
めい
)
/\
自惚
(
うぬぼ
)
れて嬢様へは勿論、旦那や
夫人
(
おくさま
)
の御機嫌を伺つて十分及第する気でゐるのが
笑止
(
をか
)
しいよ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
私は自分で編輯するこの雑誌を、出来る
丈
(
だ
)
け、立派なものにしたいと思ひます。けれども如何に、私が
自惚
(
うぬぼ
)
れて見ましても本当に貧弱な内容しか持つことが出来ません。
読者諸氏に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
一口にいうとやや悟って居る方だと
自惚
(
うぬぼ
)
れて居た。ところが病気がだんだん
劇
(
はげ
)
しくなる。ただ身体が衰弱するというだけではないので、だんだんに痛みがつのって来る。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
人並みの顔や姿でとんだ
自惚
(
うぬぼ
)
れでも持って、あの、口なくして玉の
輿
(
こし
)
なんて草双紙にでもあるようなことを考えてるなら、それこそ大間違い!
妾手掛
(
めかけてか
)
けなら知らないこと
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
結局
(
けつく
)
あれほど
厭
(
い
)
やがるものを
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なと
氣
(
き
)
のつかぬでもなけれど、
如何
(
どう
)
かして
天晴
(
あつぱ
)
れの淑女に
育
(
そだ
)
てヽ
見
(
み
)
たく、
自惚
(
うぬぼ
)
れの
言
(
い
)
ひ
分
(
ぶん
)
と
笑
(
わら
)
ひ
給
(
たま
)
はんが
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
今日
(
けふ
)
まで
嫌
(
い
)
やがられに
來
(
き
)
しなり
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自惚
(
うぬぼ
)
れ鏡で拝見すると自分の顔が相応に踏める通り、自分の耳で拝聴すると自分の声が相応に聞える。謡曲の積りで歌っていることは本人が承知だ。今の節廻しは好かったと思う。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だのに、やつの
自惚
(
うぬぼ
)
れようはどうだい。あの思いあがりようはどうだい。こんど停年でやめてみれば、あいつのことなんか、世間じゃ誰ひとり覚えちゃいない。名もなにもありゃしない。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
高等人種だと
自惚
(
うぬぼ
)
れる。……オイ、お前達、下りて来るがいい!
俺
(
おい
)
らの国まで下りて来るがいい! 貧乏と病気と労働の国だ! 一旦ここまで下りて来ねえ。一切はそれからの問題だ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「——本当よ、あの
義姉
(
ひと
)
の鼻をあかしてやりたいのさ、威張りかへつて胸くそが悪いつたらありやしない、お客と云ふお客はみんな自分の器量にひかされて来ると
自惚
(
うぬぼ
)
れてるんだものねえ」
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
双方に
自惚
(
うぬぼ
)
れがなく、己れを知っている人達ならば、万歳だ——と、考えた。
縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
三太郎ツどんも惣七どんも、その御面相で
自惚
(
うぬぼ
)
れるさかい困るわい。お糸さんの相手になりそなのは、わしの外にはない筈じやがな、ナ、ナ、これ長吉ツどんナ旦那の眼鏡もそうやろがな。
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
「
自惚
(
うぬぼ
)
れにもほどがある。……紀久ちゃんが紀久ちゃんだけの意志で、いくらなんでもきみとなどと結婚をしようたあ思っちゃいないだろうなあ。それはおかしい。まったくおかしい……」
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
これは僕自身の話だが、何かの
拍子
(
ひやうし
)
に以前出した短篇集を開いて見ると、
何処
(
どこ
)
か流行に
囚
(
とら
)
はれてゐる。実を云ふと僕にしても、他人の
廡下
(
ぶか
)
には立たぬ位な、
一人前
(
いちにんまへ
)
の
自惚
(
うぬぼ
)
れは持たぬではない。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
実現して
眼
(
ま
)
のあたり見た上でない以上矢張り内心不安であり、空虚である。
畢竟
(
ひつきやう
)
誰にでもある単なる
自惚
(
うぬぼ
)
れ、架空の幻影ではないかと疑ふ。自分で疑ふ位なら人が
見縊
(
みくび
)
る事に文句は云へない。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
それにね、僕はこれでも
自惚
(
うぬぼ
)
れを起すことがあるんだぜ、自惚れを。滑稽さ。時々斯う自分を非凡な男に思つて爲樣が無いんだ。ははは。尤も二日か、三日だがね。長くても一週間位だがね。
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
見ると変てこな婆さんで、失礼何ですかと聞きかえすと、貴下は英国人ですかって云やがった、ははあ我輩の英語も
中々
(
なかなか
)
上達したんだなと、
自惚
(
うぬぼ
)
れた上、なるべく流暢なるイングリッシュで
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
あの方の心がわたしに傾いて居るようにお言われなさったのを悦んで居る。そしてともすればあの方が本当にわたしをえこひいきして下さったのじゃないかしらんと
自惚
(
うぬぼ
)
れ心がつけ上って来る。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これほどの英気あらばこそ錦城館のお富に
惚
(
ほ
)
れられるのだと
自惚
(
うぬぼ
)
れ置く。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
自
常用漢字
小2
部首:⾃
6画
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“自惚”で始まる語句
自惚家
自惚鏡
自惚心