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脳裡
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のうり
ふりがな文庫
“
脳裡
(
のうり
)” の例文
旧字:
腦裡
「礼に来てはならん。」という侍の言葉が
脳裡
(
のうり
)
に刻まれているので、伝二郎はおっかなびっくりで裏口から哀れな声で訪れてみた。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
少年は、此の矛盾に充ちた奇異な空想が
脳裡
(
のうり
)
に
湧
(
わ
)
いて、それが自分に無限の快感を与えていることを、自ら驚き、訝しんだのであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
電話のベルが廊下のあなたに三度四度と鳴らされて行きました。「
坩堝
(
るつぼ
)
に
滾
(
たぎ
)
りだした」不図こんな言葉が何とはなしに
脳裡
(
のうり
)
に
浮
(
うか
)
びました。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかしながら歴史的に国民として
脳裡
(
のうり
)
に一日も忘れることの出来ぬところの帝国の文明的運動の始まりは、明治大帝御即位に
端
(
たん
)
を発している。
吾人の文明運動
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
このたびの戦争で家を失った人たちの大半は、(きっとそうだと思うのだが)いつか一たびは一家心中という手段を
脳裡
(
のうり
)
に浮べたに違いない。
親友交歓
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
また自然そうしているうちに、彼自身の
脳裡
(
のうり
)
でも、火花のような智のひらめきを感じ出し、それを霊感と信じるような顔つきにもなってきた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私というものは私の
脳裡
(
のうり
)
に生ずる表象や感情や意欲の totum discretum であるのか。それは「観念の束」ででもあるのか。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
彼の生涯の線に宝沢法人が顔を出したり消えたりしたいくつかの時代が、不思議な
明瞭
(
めいりょう
)
さをもって彼の
脳裡
(
のうり
)
に
甦
(
よみがえ
)
ってきた。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
松岡の
鎮
(
しず
)
まった神経の先々から、これらの事情が浮び出して
脳裡
(
のうり
)
に集まって来た。そこからうしろのことは、悔いても取り返しはつかなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかし彼がその夢見るような眼をして、そういう処をさまよい歩いている間に、どんな活動が彼の
脳裡
(
のうり
)
に起っているかという事は誰にも分らない。
アインシュタイン
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
やはり上ノ山ぐらいの暗いところが幾処もあって、少年の私の
脳裡
(
のうり
)
には種々雑多な思いが流れていたはずである。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
わたくしは再び眼を上げて、
蓮
(
はす
)
の枯茎のOの字の並べ重なるのを見る。
怱忙
(
そうぼう
)
として
脳裡
(
のうり
)
に過ぎる十八年の歳月。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
自白すれば雲と同じくかつ
去
(
さ
)
りかつ
来
(
きた
)
るわが
脳裡
(
のうり
)
の現象は、
極
(
きわ
)
めて平凡なものであった。それも自覚していた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
奎吉
(
けいきち
)
……奎吉!」自分は自分の名を呼んで見た。悲しい顔付をした母の顔が自分の
脳裡
(
のうり
)
にはっきり映った。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
あの日の西村と彼女との闘争、解け難い疑問として残っている奇怪な出来事、それから野田の拘引、それらのことがひと呼吸のたびに艶子の
脳裡
(
のうり
)
で踊り狂うのだ。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
神谷の
脳裡
(
のうり
)
から、一日一日と、野獣の記憶が薄らいで行った。いや、薄らいだのはそればかりではない。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
つまり、
予言の薫烟
(
ヴァイスザーゲント・ラウフ
)
と云って、当時貴方の
脳裡
(
のうり
)
に浮動していた一つの観念が、
薔薇
(
ローゼン
)
に誘導され、そこで、
薔薇乳香
(
ローゼン・ヴァイラウフ
)
と云う一語となって意表面に現われたのでした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
歌麿の
脳裡
(
のうり
)
からは、亀吉の影は
疾
(
と
)
うに消し飛んで、十年前に、ふとしたことから
馴染
(
なじみ
)
になったのを縁に、
錦絵
(
にしきえ
)
にまで描いて売り出した、どぶ裏の
局女郎
(
つぼねじょろう
)
茗荷屋
(
みょうがや
)
若鶴
(
わかづる
)
の
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ごく
些細
(
ささい
)
な記憶も
脳裡
(
のうり
)
に刻まれる発熱時に、ルーヴル博物館を見物して以来、彼はレンブラントの画面の
雰囲気
(
ふんいき
)
に似た、熱い深い穏やかな雰囲気のうちに生きていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかし、ときどき彼の
脳裡
(
のうり
)
を
掠
(
かす
)
める、生と死との
絨毯
(
じゅうたん
)
はその度毎に少しずつぼやけて来はじめた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
国家ちょう問題が我々の
脳裡
(
のうり
)
に入ってくるのは、ただそれが我々の個人的利害に関係する時だけである。そうしてそれが過ぎてしまえば、ふたたび他人同志になるのである。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
それが患者にはくらくらに煮え返った熱湯と思われ、その狂った
脳裡
(
のうり
)
を、煮え湯や
灼熱
(
しゃくねつ
)
した鉄棒を使う拷問についての脈絡のないきれぎれの考えが、稲妻のように
閃
(
ひらめ
)
き過ぎた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
あるいは
急湍
(
きゅうたん
)
をなしあるいは深き
淵
(
ふち
)
を作りつつも、それは常に力強く流れてゆく。「ジャン・クリストフ」十巻は一つの河流として、作者ロマン・ローランの
脳裡
(
のうり
)
に映じていた。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その
有耶無耶
(
うやむや
)
になった
脳裡
(
のうり
)
に、なお
朧朦気
(
おぼろげ
)
に
見
(
み
)
た、
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
輝
(
てら
)
し
出
(
だ
)
されたる、
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
のようなこの
室
(
へや
)
の
人々
(
ひとびと
)
こそ、
何年
(
なんねん
)
と
云
(
い
)
うことは
無
(
な
)
く、かかる
憂目
(
うきめ
)
に
遭
(
あ
)
わされつつありしかと
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
観音様を彫ればそこらの芸妓
面
(
づら
)
をしていたり、恵比寿大黒が落語の百面相であったり、所詮われわれの
脳裡
(
のうり
)
にあるものを表現してはいないのである。技術はなるほど進歩している。
伝不習乎
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その記者の
脳裡
(
のうり
)
には実際はこんなふうに考えられているのだと想像してもいいね、——
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
教授のわが国における滞在はわずかに四十日あまりにすぎなかったのでしたが、しかしその特殊な印象は必ずいつまでもその
脳裡
(
のうり
)
に深く残されていることを、私たちは信じています。
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
革命の風雲
未
(
いま
)
だ天下を動かすに足らずといえども、その智勇弁力ある封建社会の
厄介物
(
やっかいもの
)
たる——小数人士の
脳裡
(
のうり
)
には、百万の人家
簇擁
(
そうよう
)
して、
炊烟
(
すいえん
)
東海の天を蔽う、堂々たる大江戸も
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
むしろ
一己
(
いっこ
)
の利害を見ることは知って居るけれども、国家の利害を見ることを知らない。大体国家の存在などということはチベット人の
脳裡
(
のうり
)
にはほとんど無いというてもよろしい位です。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
私の
脳裡
(
のうり
)
には
夙
(
はや
)
くすでに此の巨人の像が根を生やした様に大きく場を取ってしまっていた。此の映像の大塊を昇華せしめるには、どうしても一度之を現実の彫刻に転移しなければならない。
九代目団十郎の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
そういう呟きとはべつに、彼の
脳裡
(
のうり
)
ではしきりに対策が立てられていた。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼の
脳裡
(
のうり
)
には、もう空想の自宅が、完全に設計され、建造され、建具や家具や装飾をそなえつけられて、主人を迎え入れていたのである。此の自宅は、自分の所有なのだ。家賃を払う必要がないのだ。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
されどわが
脳裡
(
のうり
)
に一点の彼を憎むこころ今日までも残れりけり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
味を永く
脳裡
(
のうり
)
に保たしめるのであるらしい。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
彼は窓ぎわに
涼
(
りょう
)
をとるような
恰好
(
かっこう
)
をしながら、その実、例の鏡の裏から読みとった新しい暗号の発展を
脳裡
(
のうり
)
に描いていた。
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかしまた、彼方の空の黒煙と火を見ると、彼の
脳裡
(
のうり
)
も狂気せんばかり燃え
熾
(
さか
)
った。あの煙の下、あの火の下に、なお父やある。父や
亡
(
な
)
きかと。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻と阿曽とが腕を組み合って須磨の海岸をぶらついている影絵が彼の
脳裡
(
のうり
)
に描かれていたので、「今夜会っているのなら明日は
差支
(
さしつか
)
えないであろう」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この
降雪
(
ゆき
)
に、どこにいることか——当り矢のころからのことが
走馬灯
(
そうまとう
)
のように一瞬、栄三郎の
脳裡
(
のうり
)
をかすめる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
肥沃の地に対するあれほどの渇望を、今こそ——今日の今から
医
(
いや
)
すことが出来るのだ。彼は足をはやめた。妻の姿は
脳裡
(
のうり
)
から消えていた。空腹さえうち忘れ得た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
この後、金兵衛の姿は、常に魔の如く、歌麿の
脳裡
(
のうり
)
にこびりついて、寸時も消えることがなかった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
袂
(
たもと
)
からがま口を出し、ひらくと、銅銭が三枚、
羞恥
(
しゅうち
)
よりも
凄惨
(
せいさん
)
の思いに襲われ、たちまち
脳裡
(
のうり
)
に浮ぶものは、仙遊館の自分の部屋、制服と蒲団だけが残されてあるきりで、あとはもう
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
クリストフは、日常生活から鼓吹された一連の
交響曲
(
シンフォニー
)
を書こうと企てた。ことに自己一流の家庭交響曲を
脳裡
(
のうり
)
に浮かべた。それはリヒアルト・シュトラウスのそれとは異なったものであった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして先生のおもかげと結びついて私の
脳裡
(
のうり
)
に消されずにのこっている。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
ついぞこの人生にありようもない絵そら事を読み上げて行くのだったが、それでもやっぱり聴いているのは楽しくいい気持で、
脳裡
(
のうり
)
には絶え間なくいかにも立派な安らかな想いが浮かんで来て
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
あの知性と、あの冷静な風采とは、明智どのとうわさすれば、すぐ
瞼
(
まぶた
)
に描けるほど、たれの
脳裡
(
のうり
)
にも、際だって、
鮮
(
あざ
)
やかに、また冷たく映っていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三千子は、
脳裡
(
のうり
)
に、
絹地
(
きぬじ
)
に画かれたこの鬼仏洞の部屋割の地図を思いうかべた。彼女は、今は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところなく、第一号室へとびこんだのであった。
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今から一箇月前、先月の五日に「雪」を舞った時の妙子の姿が、異様な
懐
(
なつか
)
しさとあでやかさを以て
脳裡
(
のうり
)
に浮かんだ。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
実に、拍子抜けがすると思う。その人の
脳裡
(
のうり
)
に在るのは、夏目漱石、森鴎外、尾崎紅葉、徳富蘆花、それから、先日文化勲章をもらった幸田露伴。それら文豪以外のひとは問題でないのである。
困惑の弁
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そのとき彼の
脳裡
(
のうり
)
に何がひらめいたか! イシカリ税庫の入札であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それがかれの
脳裡
(
のうり
)
を去らない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“脳裡”の意味
《名詞》
脳 裡 (のうり)
頭の中。
(出典:Wiktionary)
脳
常用漢字
小6
部首:⾁
11画
裡
漢検準1級
部首:⾐
12画
“脳”で始まる語句
脳
脳漿
脳髄
脳溢血
脳裏
脳震盪
脳味噌
脳天
脳貧血
脳膜