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笏
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しゃく
ふりがな文庫
“
笏
(
しゃく
)” の例文
そこで唯
頭
(
かしら
)
を垂れたまま、
唖
(
おし
)
のように黙っていました。すると閻魔大王は、持っていた鉄の
笏
(
しゃく
)
を挙げて、顔中の
鬚
(
ひげ
)
を逆立てながら
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ときおり向うの庇の間から、頭の君と道綱とが小声で取交わしている話し声に
雑
(
まじ
)
って、
笏
(
しゃく
)
に扇の打ちあたる音が微かに聞えてくる。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
一位と呼ぶ赤みがかった
木理
(
きめ
)
の美しい木を材料とするもので、今まではこれでよく
笏
(
しゃく
)
が作られました。編笠は今も盛に作られます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かの首領が例の股の骨の
笏
(
しゃく
)
でテーブルをとんとんとたたいて、次のような演説を始めて、一座の者の注意をそらしたのだった。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
町を去る三十五里の西高峯は眼の前にあり、
笏
(
しゃく
)
を執る
朝臣
(
ちょうしん
)
の如く真黒に頑張って、その周囲にギラギラとした白光は途方もなく拡がっていた。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
▼ もっと見る
という
顔色
(
がんしょく
)
で、竹の鞭を、ト
笏
(
しゃく
)
に取って、
尖
(
さき
)
を握って
捻向
(
ねじむ
)
きながら、帽子の下に暗い額で、髯の白いに、金が
顕
(
あらわ
)
な
北叟笑
(
ほくそえみ
)
。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、清忠が、玉座へむかって、
笏
(
しゃく
)
を正しかけたときである。後醍醐のおひざも、すっと同時にお立ちになった様子が、
簾
(
す
)
の下からうかがわれた。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
フランシスはやがて自分の
纏
(
まと
)
ったマントや手に持つ
笏
(
しゃく
)
に気がつくと、
甫
(
はじ
)
めて今まで
耽
(
ふけ
)
っていた歓楽の
想出
(
おもいで
)
の糸口が見つかったように苦笑いをした。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その夜の旅寝の夢の中に、彼は正式の
装束
(
しょうぞく
)
を着けた正香が来て、手にする
白木
(
しらき
)
の
笏
(
しゃく
)
で自分を打つと見て、涙をそそぎ、すすり泣いて目をさました。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
パリーは主権的な陽気さを持っている。その快活は火薬でできており、その滑稽は帝王の
笏
(
しゃく
)
を保っている。その
颶風
(
ぐふう
)
は時として一の渋面から出て来る。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
新任された開拓監事兼陸軍中佐の堀盛は、ゆるやかなきぬ
摺
(
ず
)
れの音をひびかせて
笏
(
しゃく
)
を、ふりまわしながらやって来た。衣冠をつけた正式の礼装であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
聟
(
むこ
)
の
十川
(
そごう
)
(十川
一存
(
かずまさ
)
の一系だろうか)を見放つまいとして、
搢紳
(
しんしん
)
の身ながらに
笏
(
しゃく
)
や筆を
擱
(
お
)
いて
弓箭
(
ゆみや
)
鎗
(
やり
)
太刀
(
たち
)
を取って武勇の沙汰にも及んだということである。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一人は年頃四十あまりと覚える人の、
唐綾
(
からあや
)
の装束に
冠
(
かんむり
)
を着けたのが、
笏
(
しゃく
)
を取り直して佛壇に坐している。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
王の側に
緑袍
(
りょくほう
)
を著て
笏
(
しゃく
)
を持った者が坐っていた。緑袍の男はこれを聞くと、王の方へ向って言った。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
でいちいの
笏
(
しゃく
)
を手に取り持った祭主殿が、最初から、あちら向きにひとり坐って神妙に控えてござる——さてまた祭主と祭壇の周囲には当然、それに
介添
(
かいぞえ
)
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その手に彼は専制君主の力を示す
笏
(
しゃく
)
というべき
鞭
(
むち
)
をふりかざしていた。正義の鞭は王座の背後の三本の
釘
(
くぎ
)
にかけてあり、悪事をはたらくものを絶えず
脅
(
おび
)
やかしていた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
あなたは衣冠束帯で手に
笏
(
しゃく
)
を持ち、からだぜんたいから金色の光を放っていた。あたしはあまりの尊さにはっと頭をさげたところ、自分がまる裸でいる事に気がついた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ことに目にたつのは正月の十五日前で、これを子どもが持つと、ちょうど
神主
(
かんぬし
)
さんの
笏
(
しゃく
)
や
扇子
(
せんす
)
と同じく、彼らの言葉と行ないに或る威力がある、という
風
(
ふう
)
に
昔者
(
むかしもの
)
は今も感じている。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
左右に童子を随えて、
笏
(
しゃく
)
を捧げて立たせたまう、あの聡明と威厳を備えた御影である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
笏
(
しゃく
)
を持っていきり立った閻魔大王の姿を、しみ/″\と眺める事が出来るのだ。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
「大菩薩の使いでまいった。大仏殿再建の奉行に任じられた時はこの
笏
(
しゃく
)
をもて」
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
芸術はばらを捲いた
笏
(
しゃく
)
を、この都の上にさしのべて、ほほえんでいる。
神の剣
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
十日ほど経って、王様は国を
巡邏
(
じゅんら
)
されて、どこもかしこも、自分と同じ者ばかりで、もう一言の悪口も聞かれないのに、すっかり満足させられて、思わず王
笏
(
しゃく
)
を振りあげながら、万歳! と叫ばれた。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
右手の長き物は
笏
(
しゃく
)
で、左手の円き物は輪であると言うておる。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
(扇を
笏
(
しゃく
)
に)それ、山伏と言っぱ山伏なり。
兜巾
(
ときん
)
と云っぱ兜巾なり。お腰元と言っぱ美人なり。恋路と言っぱ
闇夜
(
やみよ
)
なり。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やっと、ややおちついて四
壁
(
へき
)
をみると、
龍燈
(
りゅうとう
)
、
鳳燭
(
ほうしょく
)
の光は、
碧
(
みどり
)
と
金色
(
こんじき
)
を
映
(
は
)
え
交
(
か
)
わし、二列となっている仙童女は、
旌
(
はた
)
、
香瓶
(
こうびん
)
、
笏
(
しゃく
)
、
供華
(
くげ
)
などをささげていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
華美を極めた晴着の上に
定紋
(
じょうもん
)
をうった
蝦茶
(
えびちゃ
)
のマントを着て、飲み仲間の主権者たる事を現わす
笏
(
しゃく
)
を右手に握った様子は、ほかの青年たちにまさった
無頼
(
ぶらい
)
の風俗だったが
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
烏帽子直垂の道庵先生は、こうして立ち上り、向き直って
笏
(
しゃく
)
を以て群集をさしまねきながら
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
百合
(
ゆり
)
の花を冠した国王の
笏
(
しゃく
)
はあった、地球を上にのせた皇帝の笏はあった、鉄でできたシャールマーニュ大帝の笏はあった、黄金でできたルイ大王の笏はあった、けれども革命は
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
杓子はこれを要するに主婦のスタッフ、大臣・
大納言
(
だいなごん
)
などの
笏
(
しゃく
)
に該当し、また楽長の指揮棒のごときもので、すなわち家刀自の権力のしるしであった。だから女房を山の神と謂うのだとの説もある。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
玄明は、
冠
(
かんむり
)
をかぶり、
笏
(
しゃく
)
を、装束の襟にさし、両手に、榊を捧げている。面には、何か、白い粉や
青隈
(
あおぐま
)
を塗り、付け
髯
(
ひげ
)
であろう、胸の辺まで、白髯を垂れていた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
従七位は、
白痴
(
ばか
)
の毒気を避けるがごとく、
笏
(
しゃく
)
を廻して、二つ三つ
這奴
(
しゃつ
)
の鼻の
尖
(
ささ
)
を払いながら
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なるほど、この神主は一癖も二癖もありげで、ただ宮居の中に納まっているのみでなく、
笏
(
しゃく
)
を振って手下の者を差図し、奉納の鏡餅は鏡餅、お賽銭はお賽銭で
恭
(
うやうや
)
しげに処分をさせる。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もし光栄にして剣の
笏
(
しゃく
)
のうちに存するならば、帝国は光栄そのものであった。それは暴政の与え得るすべての
光耀
(
こうよう
)
を地上にひろげた、陰惨なる光耀を、いな、なお言わん、暗黒なる光耀を。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
と、
破
(
わ
)
れ
鐘
(
がね
)
のような声でこうご
託宣
(
たくせん
)
をくだしたのである。そして彼は広間の法廷に出て、壇の中央にある知事席に腰をすえ、大真面目で、
槐
(
えんじゅ
)
の
笏
(
しゃく
)
を胸のまえに構え込んだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「足許は
暗
(
やみ
)
じゃが、のう。」と
悄
(
しお
)
れた肩して膝ばかり、きちんと正しい扇を
笏
(
しゃく
)
。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聖化せしむる
苛責
(
かしゃく
)
である。最初のうちはそれを甘んじて受くることができる。赤熱した鉄の玉座にすわり、赤熱した鉄の冠を額にいただき、赤熱した鉄の王国を甘諾し、赤熱した鉄の
笏
(
しゃく
)
を執る。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「このごろの御大身と来たら、やくざが錦を着たようなものさ。どうせ
婆娑羅者
(
ばさらもの
)
なら、
笏
(
しゃく
)
も刀も持たない
素
(
す
)
の
無頼漢
(
ならずもの
)
のほうが、いっそどれほど可愛いか知れないじゃないの」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
袷
(
あわせ
)
の上に白の筒袖、仕事着の若いもの。かねて
誂
(
あつらえ
)
の
剃刀
(
かみそり
)
を、あわせて届けに来たと見える。かんぬしが
脂下
(
やにさが
)
ったという体裁、
笏
(
しゃく
)
の形の
能代塗
(
のしろぬり
)
の箱を
一個
(
ひとつ
)
、
掌
(
てのひら
)
に据えて、ト上目づかいに差出した。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先が
雨傘
(
あまがさ
)
になってる
王笏
(
おうしゃく
)
だ。実際今日のような天気では、僕はこう思うんだ。ルイ・フィリップはその王位を利用することができる。すなわち
笏
(
しゃく
)
の方を人民に差し伸べ、
雨傘
(
あまがさ
)
の方を空に開くことだ。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それが、趣向の眼目とみえ、彼女は、高貴な神の使わし
女
(
め
)
のような化粧と扮装をし、
笏
(
しゃく
)
を胸にあてて、眼をとじたまま、息をしているのか否かも分らないほど、肉感のない形相をしていた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と半ば
呟
(
つぶや
)
き呟き、
颯
(
さっ
)
と巻袖の
笏
(
しゃく
)
を上げつつ、とこう、石の鳥居の
彼方
(
かなた
)
なる、高き帆柱のごとき
旗棹
(
はたざお
)
の空を仰ぎながら、カタリカタリと足駄を踏んで、斜めに木の鳥居に近づくと、や! 鼻の
提灯
(
ちょうちん
)
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
笏
(
しゃく
)
と
輦
(
くるま
)
は持ちて行け
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「何をするんだ、ばかなッ、わしは
笏
(
しゃく
)
を持っている木像じゃない」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
従七位が、首を
廻
(
まわ
)
いて、
笏
(
しゃく
)
を振って、
臀
(
いしき
)
を廻いた。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
足にはこれも官人用の
皀靴
(
くろぐつ
)
、そして手に、
槐
(
えんじゅ
)
の木の
笏
(
しゃく
)
をにぎって
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
笏
(
しゃく
)
を正して、奏上していた。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“笏”の解説
笏(しゃく)とは、日本において束帯の着用の際、右手に持つ細長い板である。
(出典:Wikipedia)
笏
漢検1級
部首:⽵
10画
“笏”を含む語句
王笏
支笏
笏杖
蛇笏
仲笏
御笏
御笏代
法笏
笏代
笏形
笏拍手
笏梧朗